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「12.3人くらい乗れる船がすぐ買えるそうです。少し古いですが、整備も済んでいるのですぐに出せます。寝室は四つ付いてます。どうしますか?」
「それでいい。それを買おう。」
「操舵手もすぐに行ける者が何人かいます。すぐに出航の手続きをしましょう。」
レオナルド様が手配して船と操舵手はすぐに見つかった。すぐに働ける料理人がなかなかいないみたいだ。
「ラザウェル様。僕、少しなら料理が出来ます。」
「え?ルーファスがか?」
「はい。向こうの大陸へは五日ほどで着くんですよね?五日間我慢してもらえれば…。」
祖母に少し習っただけなので大したものは作れない。でも、時間も勿体無いし、料理人を探すよりは良いはずだ。
「お願いできるか?」
「はい。もちろんです。」
「ルーファス、私も手伝うよ。」
「俺もだ。戦場の野営で作ったりしたからな。」
レオナルド様とオズベルト様が手伝ってくれるみたいだ。五日間なら何とかなるかもしれない。
食事はみんなでなんとかすることにして明日出荷だ。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「操舵手長のサウルだ。他の船員はまた後で紹介する。」
レオナルド様がサウルさんを紹介した
大きい!レオナルド様やラザウェル様も背が高いけどサウルさんはみんなとは違って何というか、筋肉の塊みたいな人だ。
「サウル。よろしく頼む。あまり時間がないんだ。隣のナチェン大陸まで全速力でお願いしたい。」
ラザウェル様がサウルさんと握手をしながら言った。
「旦那、任せて下さい!」
サウルさんは豪快な笑顔で笑った。
歯が金ピカだ…。
船の厨房は狭いが僕一人なら充分だ。早速昼食の準備を始める。買い込んだ食料の中から日持ちが悪いものから使って行く。これは冒険小説に書いてあった。
今日の昼食はサンドウィッチだ。パンに挟めば良いだけなので僕にでも作れる。
パンをスライスして、野菜を切って…。
「あれ?君は料理人?」
黒髪の知らない男の人が入ってきた。手には大きな魚を持っている。
「あ、はい。一応。」
うーん、料理人かな…。大したものは出来ないけど。
「でも簡単なものしか作れません。」
「そう。魚は捌ける?」
手に持った大きな魚を高くあげた。あんなの捌けないよ~!
「出来ません。ごめんなさい。」
「あはは、いいよ。俺がやるから。俺は副操舵手のジンだ。君は?」
そう言いながら魚をカッティングボードに乗せた。
船員さんか。
「ルーファスです。」
「ルーファス?あ、金髪の旦那が探してたルーファス?」
金髪の旦那?レオナルド様かな?あ、そう言えば何も言ってこなかった。厨房にいるって言っておかないと。でも邪魔されそうだしな。
僕が少し考え事しているうちに、ジンさんは大きな魚を手早く捌きだした。ショリショリと鱗を取って内臓を取り出しあっという間に骨と身が分かれた。三枚おろしというらしい。身が二枚に骨が一枚だからだ。
「これは何ていう魚ですか?」
「これはスズキだよ。美味いぞ~。生でも焼いても煮ても美味い。食ってみるか?」
「はい!」
美味しい物は大好きだ!
薄く切ってくれた身に塩を振って食べようとするとガチャリと厨房の扉が開いた。
「あ、レオナルド様!」
「ルーファス、こんな所に居たの?探したよ。」
僕に駆け寄ってぎゅっと抱きしめた。
「やっぱり、おまえさんが探してたルーファスか?」
ジンさんが僕の顔を見て言った。
「君は?」
レオナルド様、顔が怖い!やきもち焼きだからな。
「あ、この人は副操舵手のジンさん。魚を捌くのを見せてもらっていたんです。」
「ふーん。私の妻が世話になったね。」
「妻?こちらの旦那の奥さんなのか?料理人だとばっかり…。そりゃ失礼しました。」
「エヘヘ。僕がそう言ったんだよ、気にしないで。」
「ルーファス、ダメだよ?勝手に居なくなっちゃ。心配するだろ?」
そう言いながら僕の顔中にキスをする。ジンさんが見てるよ!恥ずかしいっ!
「はぁ~、仲がよろしいことで。」
ジンさんは呆れ顔だ。
レオナルド様も手伝ってくれて昼食が出来上がった。
サンドウィッチは三種類でトマトときゅうり、ハムとチーズ、スズキをムニエルにして挟んだものだ。
後はスズキを生のまま薄切りにして、塩コショウとオリーブオイル、レモンを絞ってトマトを小さくカットしてスズキの上に散らす。ジンさんに教えてもらったカルパッチョという料理だ。さっぱりしてすごく美味しい。さらにみんなに熱い紅茶を淹れて出した。
「ルーファス、すごいな!」
「あぁ、美味そうだ。」
ラザウェル様とオズベルト様も喜んでくれた。
「レオナルド様も手伝ってくれました。あと、副操舵手のジンさんも。」
「私はお皿を出したりしただけだよ。」
船員さんたちにも喜ばれた。ラザウェル様はカルパッチョが気に入ったようで、美味い、美味いと言って食べてくれた。
「きっとリトも気にいるはずだ。目が覚めたら作ってやってくれ。」
「はい、もちろんです。」
夜、トイレで目を覚ますとデッキにラザウェル様が居た。海を見ながら泣いている。リト様を思い出しているのだろう。
リト様が目を覚さないことにサーカス団が関係しているのかは分からない。本当に病気なのかもしれない。
でもラザウェル様は藁にも縋りたい気持ちなのだ。何とかして目を覚ます方法を見つけたい。
僕はそっと部屋に戻った。
「それでいい。それを買おう。」
「操舵手もすぐに行ける者が何人かいます。すぐに出航の手続きをしましょう。」
レオナルド様が手配して船と操舵手はすぐに見つかった。すぐに働ける料理人がなかなかいないみたいだ。
「ラザウェル様。僕、少しなら料理が出来ます。」
「え?ルーファスがか?」
「はい。向こうの大陸へは五日ほどで着くんですよね?五日間我慢してもらえれば…。」
祖母に少し習っただけなので大したものは作れない。でも、時間も勿体無いし、料理人を探すよりは良いはずだ。
「お願いできるか?」
「はい。もちろんです。」
「ルーファス、私も手伝うよ。」
「俺もだ。戦場の野営で作ったりしたからな。」
レオナルド様とオズベルト様が手伝ってくれるみたいだ。五日間なら何とかなるかもしれない。
食事はみんなでなんとかすることにして明日出荷だ。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「操舵手長のサウルだ。他の船員はまた後で紹介する。」
レオナルド様がサウルさんを紹介した
大きい!レオナルド様やラザウェル様も背が高いけどサウルさんはみんなとは違って何というか、筋肉の塊みたいな人だ。
「サウル。よろしく頼む。あまり時間がないんだ。隣のナチェン大陸まで全速力でお願いしたい。」
ラザウェル様がサウルさんと握手をしながら言った。
「旦那、任せて下さい!」
サウルさんは豪快な笑顔で笑った。
歯が金ピカだ…。
船の厨房は狭いが僕一人なら充分だ。早速昼食の準備を始める。買い込んだ食料の中から日持ちが悪いものから使って行く。これは冒険小説に書いてあった。
今日の昼食はサンドウィッチだ。パンに挟めば良いだけなので僕にでも作れる。
パンをスライスして、野菜を切って…。
「あれ?君は料理人?」
黒髪の知らない男の人が入ってきた。手には大きな魚を持っている。
「あ、はい。一応。」
うーん、料理人かな…。大したものは出来ないけど。
「でも簡単なものしか作れません。」
「そう。魚は捌ける?」
手に持った大きな魚を高くあげた。あんなの捌けないよ~!
「出来ません。ごめんなさい。」
「あはは、いいよ。俺がやるから。俺は副操舵手のジンだ。君は?」
そう言いながら魚をカッティングボードに乗せた。
船員さんか。
「ルーファスです。」
「ルーファス?あ、金髪の旦那が探してたルーファス?」
金髪の旦那?レオナルド様かな?あ、そう言えば何も言ってこなかった。厨房にいるって言っておかないと。でも邪魔されそうだしな。
僕が少し考え事しているうちに、ジンさんは大きな魚を手早く捌きだした。ショリショリと鱗を取って内臓を取り出しあっという間に骨と身が分かれた。三枚おろしというらしい。身が二枚に骨が一枚だからだ。
「これは何ていう魚ですか?」
「これはスズキだよ。美味いぞ~。生でも焼いても煮ても美味い。食ってみるか?」
「はい!」
美味しい物は大好きだ!
薄く切ってくれた身に塩を振って食べようとするとガチャリと厨房の扉が開いた。
「あ、レオナルド様!」
「ルーファス、こんな所に居たの?探したよ。」
僕に駆け寄ってぎゅっと抱きしめた。
「やっぱり、おまえさんが探してたルーファスか?」
ジンさんが僕の顔を見て言った。
「君は?」
レオナルド様、顔が怖い!やきもち焼きだからな。
「あ、この人は副操舵手のジンさん。魚を捌くのを見せてもらっていたんです。」
「ふーん。私の妻が世話になったね。」
「妻?こちらの旦那の奥さんなのか?料理人だとばっかり…。そりゃ失礼しました。」
「エヘヘ。僕がそう言ったんだよ、気にしないで。」
「ルーファス、ダメだよ?勝手に居なくなっちゃ。心配するだろ?」
そう言いながら僕の顔中にキスをする。ジンさんが見てるよ!恥ずかしいっ!
「はぁ~、仲がよろしいことで。」
ジンさんは呆れ顔だ。
レオナルド様も手伝ってくれて昼食が出来上がった。
サンドウィッチは三種類でトマトときゅうり、ハムとチーズ、スズキをムニエルにして挟んだものだ。
後はスズキを生のまま薄切りにして、塩コショウとオリーブオイル、レモンを絞ってトマトを小さくカットしてスズキの上に散らす。ジンさんに教えてもらったカルパッチョという料理だ。さっぱりしてすごく美味しい。さらにみんなに熱い紅茶を淹れて出した。
「ルーファス、すごいな!」
「あぁ、美味そうだ。」
ラザウェル様とオズベルト様も喜んでくれた。
「レオナルド様も手伝ってくれました。あと、副操舵手のジンさんも。」
「私はお皿を出したりしただけだよ。」
船員さんたちにも喜ばれた。ラザウェル様はカルパッチョが気に入ったようで、美味い、美味いと言って食べてくれた。
「きっとリトも気にいるはずだ。目が覚めたら作ってやってくれ。」
「はい、もちろんです。」
夜、トイレで目を覚ますとデッキにラザウェル様が居た。海を見ながら泣いている。リト様を思い出しているのだろう。
リト様が目を覚さないことにサーカス団が関係しているのかは分からない。本当に病気なのかもしれない。
でもラザウェル様は藁にも縋りたい気持ちなのだ。何とかして目を覚ます方法を見つけたい。
僕はそっと部屋に戻った。
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