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「フフフ、私が誰かだって?そのうち分かる。いや、その前に生きてはいないかもな。」
「え⁉︎」
「やれ、サイ。」
サイと呼ばれた右側の男が魔法陣を唱えると紫の蝶が現れた。蝶はフレデリックが張った結界にペタリとくっつくとドロリと溶けて結界に穴を開ける。
「くそっ、結界がっ!」
フレデリックがもう一度結界を張り直そうと、魔法陣を唱えようとするが結界を溶かし中に入っていた蝶が鋭いナイフとなってフレデリックたちを襲った。
間一髪で剣で弾き返したが、ルイーズを庇って負傷してしまう。セルゲイはジルを庇ったのだろう。やはり左肩と背中を負傷したようだ。
「次はラルフ、おまえだ。」
ラルフと呼ばれた左側の男が唱えた魔法陣で紫色の大豪球が出現しフレデリックたちに向かってくる。
「殿下っ!」
オリバーがフレデリックに覆い被さるように抱きつきその大豪球から庇おうとした。
「オリバーっ!」
「オリバー様っ!」
紫色の炎で燃え盛る大豪球がオリバーに迫っていった時だ。ルイーズの優しい歌声が響き、窓の外から大量の水が津波のように押し寄せその豪球を流し消し去る。さらにその水は黒いローブの男たち目掛けて飲み込もうとするかのように波を立てた。
「チッ!」
「アイツがルイーズか。」
水に飲み込まれる直前に三人は背中から紫色の羽を広げ宙に浮いた。
「サイ、アイツがルイーズだ。『天使の歌声』だ。じゃああの金髪は…?そうか、番いか。」
「ガリア様、アイツを。」
「ああ。その番いもろとも消してやる。」
美しい顔を歪めたガリアと呼ばれた男が魔法陣を唱えると高い天井が吹き飛びセピア色の空が見えた。
「『天使の歌』はおまえだけだと思うなよ。」
ガリアはルイーズと同じように歌を歌いだした。
ルイーズは驚いてガリアの顔を見る。
すると空のセピア色が濃くなり雷の音が聞こえる。
フレデリックは素早く魔法陣を唱え結界を張ろうとするが紫色の蝶が邪魔をする。
「ルイーズっ!」
ルイーズを守ろうとフレデリックは抱き上げた。
稲妻が雨のように降り注ぎ攻撃してくる。
何とかフレデリックが結界を張ったがセルゲイがケガをしているので攻撃力不足だ。
「セルゲイ、ルイーズを頼む。」
ルイーズをセルゲイに預けたフレデリックは力を振り絞って魔法陣を唱えた。
「聖光息吹」
フレデリックの後ろから現れた大きな天使が大きく息を吸い込み、敵に向かって吐き出す。
それを直に浴びた男たちのローブが溶け出し肌が露出した。天使の息は止まることなく吐き出され男たちの身体も溶け出す。
「これは…聖魔法!」
「ガリア様っ!」
「くっ!聖魔法か。それならば…」
ガリア以外の二人の男は溶けて倒れた。ガリアは苦々しげに魔法陣を唱えると漆黒の蝶が現れた。
その蝶は人のように大きくなりフレデリックに近付こうと羽ばたいた。
聖魔法で魔力をほぼ使い切ったフレデリックはよろよろと剣を構える。エイベルとオリバーが剣で応戦するが金属のように硬い。それどころか触れた剣があっという間に錆びてボロボロと崩れた。
「これはどういうことだ。」
唖然とするオリバーたちに目もくれず漆黒の蝶がフレデリックに近づいて包み込もうとしている。
「呪われろ…。聖魔法の騎士よ。」
ガリアがニヤリと笑った。何かに気付いたジルがセルゲイの腕の中かから大声で叫んだ。
「これは闇魔法っ!フレデリック殿下その蝶に触れてはなりません!」
「闇魔法⁉︎フィル逃げて!フィルーーーっ!!」
セルゲイに庇われるように抱き込まれていたルイーズが泣きながら叫ぶ。
蝶がフレデリックを包み込もうとした時だ。突然床から大きな手が現れてその蝶をいとも簡単に握りつぶした。
「「え⁉︎」」
「何だあれは!」
皆がその手を見て唖然としている。フレデリックはハッと気がついた。その手を見たことがある。スィールで矢に貫かれそうになった時に現れた手だ。
「これはっ!!」
ガリアも驚き固まっている。その顔には恐怖が滲んでいた。
蝶を握り潰した『手』は空間を貫き、穴を開けた。フレデリックたちを次々に回収しその穴の外に出してしまう。ガリアがそれに気付いた時にはもう遅く、フレデリックたちの姿はそこから消えて居なくなっていた。
「…か、殿下っ!」
自分を呼ぶ声にフレデリックが目を覚ますと城の近くの林に倒れていた。ガバッと起き上がり辺りを見渡すとルイーズやセルゲイたちも倒れている。
「オリバー、一体何が?」
ルイーズを抱き起こしながらオリバーに尋ねた。
「分かりません。ここはバートレットのようです。戻ってきたのだと思います。いや、こちらの世界に戻されと行った方が…」
セルゲイたちも目を覚まし起き上がる。ルイーズも目を開けて辺りを見回している。
「フレデリック、どういうことだ?」
「分からない。あの『手』に戻されたようだ。」
「あの手は何なんだ?」
フレデリックはスィールでもあの手に助けられたことを話した。
「じゃあ今回も?」
「そうかもしれない…。」
「一体あれは何なんだ?あのガリアと呼ばれた男といい、あのモノクロの世界といい、何だったんだ?」
フレデリックにも分からない。とにかくあのままでは闇魔法を使うガリアという男に全員やられていたのは確かだ。
「とにかく別の世界はあった…。そして良くないことが起ころうとしている。」
ルイーズを抱きしめながらフレデリックは青い顔で呟いた。
「え⁉︎」
「やれ、サイ。」
サイと呼ばれた右側の男が魔法陣を唱えると紫の蝶が現れた。蝶はフレデリックが張った結界にペタリとくっつくとドロリと溶けて結界に穴を開ける。
「くそっ、結界がっ!」
フレデリックがもう一度結界を張り直そうと、魔法陣を唱えようとするが結界を溶かし中に入っていた蝶が鋭いナイフとなってフレデリックたちを襲った。
間一髪で剣で弾き返したが、ルイーズを庇って負傷してしまう。セルゲイはジルを庇ったのだろう。やはり左肩と背中を負傷したようだ。
「次はラルフ、おまえだ。」
ラルフと呼ばれた左側の男が唱えた魔法陣で紫色の大豪球が出現しフレデリックたちに向かってくる。
「殿下っ!」
オリバーがフレデリックに覆い被さるように抱きつきその大豪球から庇おうとした。
「オリバーっ!」
「オリバー様っ!」
紫色の炎で燃え盛る大豪球がオリバーに迫っていった時だ。ルイーズの優しい歌声が響き、窓の外から大量の水が津波のように押し寄せその豪球を流し消し去る。さらにその水は黒いローブの男たち目掛けて飲み込もうとするかのように波を立てた。
「チッ!」
「アイツがルイーズか。」
水に飲み込まれる直前に三人は背中から紫色の羽を広げ宙に浮いた。
「サイ、アイツがルイーズだ。『天使の歌声』だ。じゃああの金髪は…?そうか、番いか。」
「ガリア様、アイツを。」
「ああ。その番いもろとも消してやる。」
美しい顔を歪めたガリアと呼ばれた男が魔法陣を唱えると高い天井が吹き飛びセピア色の空が見えた。
「『天使の歌』はおまえだけだと思うなよ。」
ガリアはルイーズと同じように歌を歌いだした。
ルイーズは驚いてガリアの顔を見る。
すると空のセピア色が濃くなり雷の音が聞こえる。
フレデリックは素早く魔法陣を唱え結界を張ろうとするが紫色の蝶が邪魔をする。
「ルイーズっ!」
ルイーズを守ろうとフレデリックは抱き上げた。
稲妻が雨のように降り注ぎ攻撃してくる。
何とかフレデリックが結界を張ったがセルゲイがケガをしているので攻撃力不足だ。
「セルゲイ、ルイーズを頼む。」
ルイーズをセルゲイに預けたフレデリックは力を振り絞って魔法陣を唱えた。
「聖光息吹」
フレデリックの後ろから現れた大きな天使が大きく息を吸い込み、敵に向かって吐き出す。
それを直に浴びた男たちのローブが溶け出し肌が露出した。天使の息は止まることなく吐き出され男たちの身体も溶け出す。
「これは…聖魔法!」
「ガリア様っ!」
「くっ!聖魔法か。それならば…」
ガリア以外の二人の男は溶けて倒れた。ガリアは苦々しげに魔法陣を唱えると漆黒の蝶が現れた。
その蝶は人のように大きくなりフレデリックに近付こうと羽ばたいた。
聖魔法で魔力をほぼ使い切ったフレデリックはよろよろと剣を構える。エイベルとオリバーが剣で応戦するが金属のように硬い。それどころか触れた剣があっという間に錆びてボロボロと崩れた。
「これはどういうことだ。」
唖然とするオリバーたちに目もくれず漆黒の蝶がフレデリックに近づいて包み込もうとしている。
「呪われろ…。聖魔法の騎士よ。」
ガリアがニヤリと笑った。何かに気付いたジルがセルゲイの腕の中かから大声で叫んだ。
「これは闇魔法っ!フレデリック殿下その蝶に触れてはなりません!」
「闇魔法⁉︎フィル逃げて!フィルーーーっ!!」
セルゲイに庇われるように抱き込まれていたルイーズが泣きながら叫ぶ。
蝶がフレデリックを包み込もうとした時だ。突然床から大きな手が現れてその蝶をいとも簡単に握りつぶした。
「「え⁉︎」」
「何だあれは!」
皆がその手を見て唖然としている。フレデリックはハッと気がついた。その手を見たことがある。スィールで矢に貫かれそうになった時に現れた手だ。
「これはっ!!」
ガリアも驚き固まっている。その顔には恐怖が滲んでいた。
蝶を握り潰した『手』は空間を貫き、穴を開けた。フレデリックたちを次々に回収しその穴の外に出してしまう。ガリアがそれに気付いた時にはもう遅く、フレデリックたちの姿はそこから消えて居なくなっていた。
「…か、殿下っ!」
自分を呼ぶ声にフレデリックが目を覚ますと城の近くの林に倒れていた。ガバッと起き上がり辺りを見渡すとルイーズやセルゲイたちも倒れている。
「オリバー、一体何が?」
ルイーズを抱き起こしながらオリバーに尋ねた。
「分かりません。ここはバートレットのようです。戻ってきたのだと思います。いや、こちらの世界に戻されと行った方が…」
セルゲイたちも目を覚まし起き上がる。ルイーズも目を開けて辺りを見回している。
「フレデリック、どういうことだ?」
「分からない。あの『手』に戻されたようだ。」
「あの手は何なんだ?」
フレデリックはスィールでもあの手に助けられたことを話した。
「じゃあ今回も?」
「そうかもしれない…。」
「一体あれは何なんだ?あのガリアと呼ばれた男といい、あのモノクロの世界といい、何だったんだ?」
フレデリックにも分からない。とにかくあのままでは闇魔法を使うガリアという男に全員やられていたのは確かだ。
「とにかく別の世界はあった…。そして良くないことが起ころうとしている。」
ルイーズを抱きしめながらフレデリックは青い顔で呟いた。
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感想を二回も頂けて嬉しいです。
時間がないのでイアンのお話は週末にしか公開できず申し訳ありません😓
これからもよろしくお願いします💕
イアンの恋の行方も気になりますね😌
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イアンもルイーズに負けず劣らず可愛らしい容姿なのでしょうねきっと♥
ルイーズとフレデリックは、すっかりとラブラブすぎて止まりませんね😍
このまま、平和にイチャイチャしてほしいですが、ルイーズを狙う輩がそう簡単にはイチャイチャさせてくれ無さそうですね😖
いつもありがとうございます😊
すぐに他のカップルを作りたくなってしまう悪い癖が😱
イアンは誰かと結ばれるんでしょうか。
ルイーズとフレデリックももう一波乱ありそうですね。
長編ですがお付き合い下さいハート💕