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厩の前まで行くと楽しそうな話し声が聞こえてきた。
ルイーズとジョシュアと馬丁たちの声だ。イアンもいる。
楽しそうな声にムッとする。
これが嫉妬か。分かっていてもイライラする気持ちが抑えられない。
でもルイーズは自分の婚約者だ。フレデリックはそう言い聞かせて厩の中に入っていった。
「あれ?で、殿下?どうされました?」
フレデリックを見た馬丁が驚いて声を上げた。
「ルイーズの様子を見にきた。」
「え?ルイーズ様、ですか?」
「ああ。」
ルイーズたちもフレデリックに気付き驚いた顔をしている。
「ルイーズ、そろそろ戻って来なさい。」
そう言いながら近づいてルイーズの腕を引く。
「あ、殿下。ダメです。」
ルイーズはその腕を振り解いた。
振り解かれた手を見つめて愕然とする。
やはり嫌われて…
「殿下、僕はその、汚れてしまって。僕に触ると殿下も汚れてしまいます。」
「え?」
まじまじとルイーズを見ると服が泥まみれで可愛い顔にも泥が飛んでいた。
「何があったんだ?」
「さっき、そこで転んでしまったんです。」
「転んだ?」
「…はい。」
恥ずかしそうに俯いてしまった。
「ルイーズ様は思いっきり転んでましたよ。」
「ええ。豪快にスライディングしてましたねぇ。」
馬丁たちが思い出して笑っている。
それに釣られてジョシュアとイアンも一緒に笑いだした。
「うわっ!フレデリック殿下⁉︎」
フレデリックは自分が汚れるのも気にせずルイーズを横抱きにした。
「ルイーズ!転んでケガでもしていたらどうするんだ!すぐに医者に見てもらう。」
「え?え?で、殿下?」
唖然とする全員を残してフレデリックは厩をあとにした。
「殿下、大丈夫です。汚れますから下ろしてください。」
「私のことはいい。とにかく医者に…。」
「どこもケガしてませんから。」
「いや、ダメだ。ルイーズに何かあったら…。」
ルイーズは自分を心配するフレデリックの真剣な顔を見て涙がこぼれた。
「え、ルイーズ!どうした?どこか痛いのか?」
「いいえ。殿下と久々にお話ができて…嬉しくて。すいません、泣いたりして。どこも何ともありませんから。」
フレデリックはルイーズが滞在している客間の前でそっと下ろした。護衛は外で待たせて二人で中に入る。
「ルイーズ、すまなかった。」
「え?何がですか?」
「私は、その、やきもちを焼いていたようだ。義理姉上に言われて初めて気が付いた。」
「やきもち、ですか?誰に?」
「ルイーズとジョシュアが仲良くしていて、だから、その、ルイーズが全然私と過ごしてくれなくて…。ジョシュアばかりに構うから…。」
いつも堂々としている彼とは違ってゴニョゴニョと口ごもりながら話す。
そんなフレデリックをルイーズは驚いて見ている。
「あの、殿下は僕が嫌いになったのかと…。」
「え?ルイーズを?そんなっ!嫌いになるわけないだろ!ずっとルイーズと話がしたかった。ジョシュアじゃなくて私を選んで欲しいと。」
「僕は、僕にはフレデリック殿下だけです。ジョシュア様は可愛いですけど弟みたいな…。」
「ルイーズ…私もだ。でもジョシュアが可愛いくて弟みたいって。向こうはそうは思ってない。」
「え?」
「いや、何でもない。そんなことよりルイーズ…。」
フレデリックが手を伸ばして抱きしめようとするとルイーズがするりと逃げてしまった。
「だ、ダメです。こんなに泥だらけで恥ずかしいです。殿下まで汚れてしまいます。あ、そうだ。僕、お風呂に入って来ますから。」
「そうだな。」
「はい。じゃあ…え?殿下?」
部屋に備え付けてあるバスルームに行こうとするルイーズのあとをフレデリックがついてくる。
「で、殿下?」
「私も汚れてしまったから一緒に入ろう。」
「ええっ!」
「さあ、ルイーズ。早く行こう。」
この二週間あれだけ機嫌が悪かったフレデリックは同一人物と思えないほど上機嫌でルイーズの背中を押してバスルームに向かった。
「殿下、恥ずかしいです。」
「どうして?婚約者だろ?」
嬉々としてルイーズの服を脱がせている。
あっという間に全裸にされてしまったルイーズはタオルで体を隠した。
フレデリックは何の抵抗もなく服を脱ぎ始める。
均整の取れた美しい身体にぼーっと見惚れてしまう。
「そんなにじっと見られるとさすがに照れるな。」
「え?え?あ、ご、ごめんなさいっ、」
「ほら、ルイーズも。よく見せてくれ。」
パッとタオルを取られてしまい慌てて手で隠す。
「はぁ、すごい…綺麗だ。」
「僕なんて…殿下の方が、」
ルイーズは恥ずかしくなって後ろを向く。
「ルイーズ、可愛い…。私のものだ。ジョシュアにも誰にもやらない。」
そう言って後ろから抱きしめてきた。直に身体の熱とフレデリックの昂りを感じた。
「殿下、僕は、僕は…」
「嫌か?」
「いいえ、で、でも。」
「大丈夫だ。ルイーズの嫌がることはしない。今日は二人で身体を洗うだけだ。」
ルイーズを抱き上げてバスルームに入る。大理石出てきた風呂にお湯が溜まっている。
バートレットは温泉が湧き出ることでも有名だ。客室や王族の私室には温泉が引かれており二十四時間入ることが出来る。乳白色のお湯は湯あたりが良く滑らかだ。
フレデリックはバスチェアーにルイーズを座らせるとお湯をかけて身体や顔に着いた泥を落とした。
そして瓶の蓋を開けて中に入っているとろりとした液体石鹸を掬いルイーズの身体に塗り込む。
「あ、く、擽ったい。自分で洗います。」
「ダメだ。」
フレデリックの大きな手はルイーズの身体を優しく這い回る。
「綺麗な身体だ。いつか食べてしまうかもしれない。それもそう遠くないうちに。」
「え?あ、あ、はぁ、殿下っ!ん、」
「可愛いな。ルイーズ。そうだ、今日から毎日一緒に風呂に入ろうな。」
ルイーズとジョシュアと馬丁たちの声だ。イアンもいる。
楽しそうな声にムッとする。
これが嫉妬か。分かっていてもイライラする気持ちが抑えられない。
でもルイーズは自分の婚約者だ。フレデリックはそう言い聞かせて厩の中に入っていった。
「あれ?で、殿下?どうされました?」
フレデリックを見た馬丁が驚いて声を上げた。
「ルイーズの様子を見にきた。」
「え?ルイーズ様、ですか?」
「ああ。」
ルイーズたちもフレデリックに気付き驚いた顔をしている。
「ルイーズ、そろそろ戻って来なさい。」
そう言いながら近づいてルイーズの腕を引く。
「あ、殿下。ダメです。」
ルイーズはその腕を振り解いた。
振り解かれた手を見つめて愕然とする。
やはり嫌われて…
「殿下、僕はその、汚れてしまって。僕に触ると殿下も汚れてしまいます。」
「え?」
まじまじとルイーズを見ると服が泥まみれで可愛い顔にも泥が飛んでいた。
「何があったんだ?」
「さっき、そこで転んでしまったんです。」
「転んだ?」
「…はい。」
恥ずかしそうに俯いてしまった。
「ルイーズ様は思いっきり転んでましたよ。」
「ええ。豪快にスライディングしてましたねぇ。」
馬丁たちが思い出して笑っている。
それに釣られてジョシュアとイアンも一緒に笑いだした。
「うわっ!フレデリック殿下⁉︎」
フレデリックは自分が汚れるのも気にせずルイーズを横抱きにした。
「ルイーズ!転んでケガでもしていたらどうするんだ!すぐに医者に見てもらう。」
「え?え?で、殿下?」
唖然とする全員を残してフレデリックは厩をあとにした。
「殿下、大丈夫です。汚れますから下ろしてください。」
「私のことはいい。とにかく医者に…。」
「どこもケガしてませんから。」
「いや、ダメだ。ルイーズに何かあったら…。」
ルイーズは自分を心配するフレデリックの真剣な顔を見て涙がこぼれた。
「え、ルイーズ!どうした?どこか痛いのか?」
「いいえ。殿下と久々にお話ができて…嬉しくて。すいません、泣いたりして。どこも何ともありませんから。」
フレデリックはルイーズが滞在している客間の前でそっと下ろした。護衛は外で待たせて二人で中に入る。
「ルイーズ、すまなかった。」
「え?何がですか?」
「私は、その、やきもちを焼いていたようだ。義理姉上に言われて初めて気が付いた。」
「やきもち、ですか?誰に?」
「ルイーズとジョシュアが仲良くしていて、だから、その、ルイーズが全然私と過ごしてくれなくて…。ジョシュアばかりに構うから…。」
いつも堂々としている彼とは違ってゴニョゴニョと口ごもりながら話す。
そんなフレデリックをルイーズは驚いて見ている。
「あの、殿下は僕が嫌いになったのかと…。」
「え?ルイーズを?そんなっ!嫌いになるわけないだろ!ずっとルイーズと話がしたかった。ジョシュアじゃなくて私を選んで欲しいと。」
「僕は、僕にはフレデリック殿下だけです。ジョシュア様は可愛いですけど弟みたいな…。」
「ルイーズ…私もだ。でもジョシュアが可愛いくて弟みたいって。向こうはそうは思ってない。」
「え?」
「いや、何でもない。そんなことよりルイーズ…。」
フレデリックが手を伸ばして抱きしめようとするとルイーズがするりと逃げてしまった。
「だ、ダメです。こんなに泥だらけで恥ずかしいです。殿下まで汚れてしまいます。あ、そうだ。僕、お風呂に入って来ますから。」
「そうだな。」
「はい。じゃあ…え?殿下?」
部屋に備え付けてあるバスルームに行こうとするルイーズのあとをフレデリックがついてくる。
「で、殿下?」
「私も汚れてしまったから一緒に入ろう。」
「ええっ!」
「さあ、ルイーズ。早く行こう。」
この二週間あれだけ機嫌が悪かったフレデリックは同一人物と思えないほど上機嫌でルイーズの背中を押してバスルームに向かった。
「殿下、恥ずかしいです。」
「どうして?婚約者だろ?」
嬉々としてルイーズの服を脱がせている。
あっという間に全裸にされてしまったルイーズはタオルで体を隠した。
フレデリックは何の抵抗もなく服を脱ぎ始める。
均整の取れた美しい身体にぼーっと見惚れてしまう。
「そんなにじっと見られるとさすがに照れるな。」
「え?え?あ、ご、ごめんなさいっ、」
「ほら、ルイーズも。よく見せてくれ。」
パッとタオルを取られてしまい慌てて手で隠す。
「はぁ、すごい…綺麗だ。」
「僕なんて…殿下の方が、」
ルイーズは恥ずかしくなって後ろを向く。
「ルイーズ、可愛い…。私のものだ。ジョシュアにも誰にもやらない。」
そう言って後ろから抱きしめてきた。直に身体の熱とフレデリックの昂りを感じた。
「殿下、僕は、僕は…」
「嫌か?」
「いいえ、で、でも。」
「大丈夫だ。ルイーズの嫌がることはしない。今日は二人で身体を洗うだけだ。」
ルイーズを抱き上げてバスルームに入る。大理石出てきた風呂にお湯が溜まっている。
バートレットは温泉が湧き出ることでも有名だ。客室や王族の私室には温泉が引かれており二十四時間入ることが出来る。乳白色のお湯は湯あたりが良く滑らかだ。
フレデリックはバスチェアーにルイーズを座らせるとお湯をかけて身体や顔に着いた泥を落とした。
そして瓶の蓋を開けて中に入っているとろりとした液体石鹸を掬いルイーズの身体に塗り込む。
「あ、く、擽ったい。自分で洗います。」
「ダメだ。」
フレデリックの大きな手はルイーズの身体を優しく這い回る。
「綺麗な身体だ。いつか食べてしまうかもしれない。それもそう遠くないうちに。」
「え?あ、あ、はぁ、殿下っ!ん、」
「可愛いな。ルイーズ。そうだ、今日から毎日一緒に風呂に入ろうな。」
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