15 / 87
15
しおりを挟む
「あれ、ここは?」
ルイーズは目を覚ました。
白い天幕の中にいるようだ。ガバッと起き上がるとタライに生けてある月下草が目に入ってきた。
昨日は…。月下草を採って帰って来られた。そしてその後…。
「そうだ。殿下…。」
フレデリックと一緒に寝たのだ。
お互いの気持ちを語り、通じ合って寝た…?
「夢だったのかな。」
寝台にはフレデリックの姿はない。寒くて疲れて寝てしまい、自分に都合の良い夢でも見たのではないか。
「ルイーズ、起きてたのか?今、ちょうど起こしに来た。」
バサッと天幕が開いてフレデリックが入ってきた。ルイーズを見ると蕩けるような笑顔を向ける。
「おはようございます。殿下。」
「ああ、おはよう。ほらこれで顔を拭いてやろう。少し目が腫れているな。」
フレデリックが絞ったタオルで顔を拭いてくれる。その顔はとても優しかった。
昨日の事は夢ではないのか。ぼーっと彼の顔を見つめる。
「うん?どうした?」
「いいえ。昨日の事は夢ではなかったんですね。」
「夢?」
「はい。」
ふふっとフレデリックが笑う。そのままちゅっちゅっとルイーズの顔中にキスをする。さらに唇にも何度もキスをしてペロリと舐めた。
「で、殿下⁉︎」
「どうだ。これでも夢か?ルイーズがキスはして良いと言っただろう?」
悪戯っぽく笑ってまたキスをする。
そのキスは耳に、そして首筋にまで降りてきた。そのまま顔を埋めて思いっきり匂いを嗅いでくる。
「殿下!僕はその、湯浴みをしてませんし、臭いますよ。」
慌ててルイーズは言った。
「ん?ああ、すごく匂うな。良い匂いだ。食べてしまいたい。」
また顔や首筋にキスをし始める。
良い匂いなわけがない。散々歩いて汗をかいたのだ。
恥ずかしくなってフレデリックの身体を押して引き離した。
「ダメか?」
「臭います。恥ずかしいです。」
「良い匂いだ。堪らない。」
うっとりとルイーズを見て頬を撫でる。その手は顎をくすぐり、首筋を撫でた。擽ったくて思わず笑ってしまった。
「あぁ、本当に可愛いな。」
とろりとし目でルイーズを見つめ、そのままキツく抱きしめられる。
「可愛い、私のルイーズ。結婚するまでダメか?」
耳元で囁かれる。ダメ?何が?キス?ルイーズが考えているとそのまま寝台に押し倒された。
「ダメか?」
硬くなった下半身をグイッと押し付けられ、もう一度聞かれた。その意味を理解したルイーズは驚いてフレデリックを見つめた。
「おまえが可愛くて我慢できない。」
え?ここで?待って!ルイーズは驚きながらも抵抗した。
「ここでですか?ダ、ダメに決まってます。」
「ふふっ。ここではしないよ。もうみんな起きているしな。ここじゃなければ良いのか?」
さらに腰を押し付けニヤリと笑いながら聞いてくる。ルイーズがどうして良いのか分からなくて黙ってしまうとまた顔中にキスをしてくる。
「可愛い…。本当に可愛いなルイーズ。可愛い、可愛い。」
ルイーズの唇にちゅっちゅっと触れるだけのキスをして何度も可愛いと囁いた。
「殿下、朝食の用意が出来ました。」
天幕の外からオリバーが声をかける。ルイーズはビクッとして起き上がった。
「ああ、すぐに行く。」
フレデリックも返事をしながら起き上がる。ルイーズはほっとして息を吐いた。
「続きは後だな。」
そう言って寝台からルイーズを起こして頭を撫でた。
続きは後って…。思わず顔を赤らめる。
天蓋の入り口を捲り外に出ると空気はひんやりと冷たい。中はフレデリックが暖めてくれていたんだと知ってルイーズは胸がきゅうと締め付けられた。
すぐにイアンが飛んできて声をかけてくる。
「ルイーズ様、大丈夫ですか?どこか具合の悪いところは?」
昔からイアンは過保護だ。バートレット行きが決まった時も危険を承知で真っ先に着いてくると言った。追手に剣を向けられた時も体を挺してルイーズを守った。
だいぶ心配させたのだろう。イアンの顔色は悪くクマができていた。
「大丈夫。心配かけてごめん。」
ほっと息を吐いたイアンが首を横に振った。
そのまま焚き火の前の丸太に案内され座る。
「暖かい…。」
火に手をかざして暖を取るルイーズの肩にふわりと暖かい布がかけられた。
「ルイーズ、寒いのか?」
フレデリックが自分のマントを脱いで肩にかけてくれたのだ。
にこりと笑って隣に座り頭を撫でる。反対側に座っていたイアンは驚き目を見開いてその様子を見ていた。
そんな三人に隊員がパンと干し肉を配ってくれた。
ルイーズは干し肉を噛み千切ろうとするが固くて千切れない。隣のイアンも悪戦苦闘している。ビリッと音を立ててイアンは何とか噛みちぎった。
それを見たルイーズももう一度噛み付くが全く歯が立たない。ぐるりと周りを見渡すと隊員たちは苦もなくその干し肉を食べている。
僕のだけ硬い、なんて事はないよね?
「硬くて食べられないのか?」
フレデリックの方を向くと楽しそうにルイーズを見ていた。
コクンと頷くと急にフレデリックの顔が近づいて来た。そのままキスをしたかと思ったら口の中に噛み砕いて柔らかくなった干し肉が入ってきた。
「これは味は良いんだが硬いからな。でも食べないと力が出ないぞ。」
ルイーズの頭を撫でながら言った。
ルイーズは目を覚ました。
白い天幕の中にいるようだ。ガバッと起き上がるとタライに生けてある月下草が目に入ってきた。
昨日は…。月下草を採って帰って来られた。そしてその後…。
「そうだ。殿下…。」
フレデリックと一緒に寝たのだ。
お互いの気持ちを語り、通じ合って寝た…?
「夢だったのかな。」
寝台にはフレデリックの姿はない。寒くて疲れて寝てしまい、自分に都合の良い夢でも見たのではないか。
「ルイーズ、起きてたのか?今、ちょうど起こしに来た。」
バサッと天幕が開いてフレデリックが入ってきた。ルイーズを見ると蕩けるような笑顔を向ける。
「おはようございます。殿下。」
「ああ、おはよう。ほらこれで顔を拭いてやろう。少し目が腫れているな。」
フレデリックが絞ったタオルで顔を拭いてくれる。その顔はとても優しかった。
昨日の事は夢ではないのか。ぼーっと彼の顔を見つめる。
「うん?どうした?」
「いいえ。昨日の事は夢ではなかったんですね。」
「夢?」
「はい。」
ふふっとフレデリックが笑う。そのままちゅっちゅっとルイーズの顔中にキスをする。さらに唇にも何度もキスをしてペロリと舐めた。
「で、殿下⁉︎」
「どうだ。これでも夢か?ルイーズがキスはして良いと言っただろう?」
悪戯っぽく笑ってまたキスをする。
そのキスは耳に、そして首筋にまで降りてきた。そのまま顔を埋めて思いっきり匂いを嗅いでくる。
「殿下!僕はその、湯浴みをしてませんし、臭いますよ。」
慌ててルイーズは言った。
「ん?ああ、すごく匂うな。良い匂いだ。食べてしまいたい。」
また顔や首筋にキスをし始める。
良い匂いなわけがない。散々歩いて汗をかいたのだ。
恥ずかしくなってフレデリックの身体を押して引き離した。
「ダメか?」
「臭います。恥ずかしいです。」
「良い匂いだ。堪らない。」
うっとりとルイーズを見て頬を撫でる。その手は顎をくすぐり、首筋を撫でた。擽ったくて思わず笑ってしまった。
「あぁ、本当に可愛いな。」
とろりとし目でルイーズを見つめ、そのままキツく抱きしめられる。
「可愛い、私のルイーズ。結婚するまでダメか?」
耳元で囁かれる。ダメ?何が?キス?ルイーズが考えているとそのまま寝台に押し倒された。
「ダメか?」
硬くなった下半身をグイッと押し付けられ、もう一度聞かれた。その意味を理解したルイーズは驚いてフレデリックを見つめた。
「おまえが可愛くて我慢できない。」
え?ここで?待って!ルイーズは驚きながらも抵抗した。
「ここでですか?ダ、ダメに決まってます。」
「ふふっ。ここではしないよ。もうみんな起きているしな。ここじゃなければ良いのか?」
さらに腰を押し付けニヤリと笑いながら聞いてくる。ルイーズがどうして良いのか分からなくて黙ってしまうとまた顔中にキスをしてくる。
「可愛い…。本当に可愛いなルイーズ。可愛い、可愛い。」
ルイーズの唇にちゅっちゅっと触れるだけのキスをして何度も可愛いと囁いた。
「殿下、朝食の用意が出来ました。」
天幕の外からオリバーが声をかける。ルイーズはビクッとして起き上がった。
「ああ、すぐに行く。」
フレデリックも返事をしながら起き上がる。ルイーズはほっとして息を吐いた。
「続きは後だな。」
そう言って寝台からルイーズを起こして頭を撫でた。
続きは後って…。思わず顔を赤らめる。
天蓋の入り口を捲り外に出ると空気はひんやりと冷たい。中はフレデリックが暖めてくれていたんだと知ってルイーズは胸がきゅうと締め付けられた。
すぐにイアンが飛んできて声をかけてくる。
「ルイーズ様、大丈夫ですか?どこか具合の悪いところは?」
昔からイアンは過保護だ。バートレット行きが決まった時も危険を承知で真っ先に着いてくると言った。追手に剣を向けられた時も体を挺してルイーズを守った。
だいぶ心配させたのだろう。イアンの顔色は悪くクマができていた。
「大丈夫。心配かけてごめん。」
ほっと息を吐いたイアンが首を横に振った。
そのまま焚き火の前の丸太に案内され座る。
「暖かい…。」
火に手をかざして暖を取るルイーズの肩にふわりと暖かい布がかけられた。
「ルイーズ、寒いのか?」
フレデリックが自分のマントを脱いで肩にかけてくれたのだ。
にこりと笑って隣に座り頭を撫でる。反対側に座っていたイアンは驚き目を見開いてその様子を見ていた。
そんな三人に隊員がパンと干し肉を配ってくれた。
ルイーズは干し肉を噛み千切ろうとするが固くて千切れない。隣のイアンも悪戦苦闘している。ビリッと音を立ててイアンは何とか噛みちぎった。
それを見たルイーズももう一度噛み付くが全く歯が立たない。ぐるりと周りを見渡すと隊員たちは苦もなくその干し肉を食べている。
僕のだけ硬い、なんて事はないよね?
「硬くて食べられないのか?」
フレデリックの方を向くと楽しそうにルイーズを見ていた。
コクンと頷くと急にフレデリックの顔が近づいて来た。そのままキスをしたかと思ったら口の中に噛み砕いて柔らかくなった干し肉が入ってきた。
「これは味は良いんだが硬いからな。でも食べないと力が出ないぞ。」
ルイーズの頭を撫でながら言った。
5
お気に入りに追加
735
あなたにおすすめの小説
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
噛痕に思う
阿沙🌷
BL
αのイオに執着されているβのキバは最近、思うことがある。じゃれ合っているとイオが噛み付いてくるのだ。痛む傷跡にどことなく関係もギクシャクしてくる。そんななか、彼の悪癖の理由を知って――。
✿オメガバースもの掌編二本作。
(『ride』は2021年3月28日に追加します)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる