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ルイーズは赤い顔をして寝ている。その横で従者の男が煎じ薬を飲ませていた。
ここはフレデリックの部屋だ。
思わず自室に連れてきてしまった。奥の寝室のベッドに寝かせている。ぐったりしたルイーズを放っておけず、何故かここに連れてきてしまったのだ。
そっと寝室を出て続きの部屋にあるソファーに座る。
病気なのか?小さな身体の感触がまだ残っている。
どうしたら良いのか分からずため息をつく。
サリエルに返した方が良いのだろうか…。
ガチャリと寝室の扉が開いて従者が入って来た。フレデリックの側まで来ると平伏した。
「殿下、ありがとうございました。」
「治るのか?」
「はい。薬も飲みましたし、しばらく休めば問題ないと思います。」
「おまえたちはたった二人でここまで来たのか?」
フレデリックは疑問に思っていた事を口にした。一国の王子がたった二人で国を移動する事なんてあり得ない。しかも二人は馬車にも乗っていなかったと聞く。
「いえ、ご、護衛が二人ほどいましたが、途中で怪我をして。ルイーズ様がその…サリエルに返しました。」
「二人?たった二人しか護衛をつけなかったのか?一国の王子がか?サリエルはニケーアか惜しくなり、オメガの王子を厄介払いしたのか。」
何故かまた腹立たしくなった。やはりサリエルは要らないルイーズを押し付けたのだ。
「とんでもございません。厄介払いなんて、そんな。」
「そうだろう?サリエルの至宝ニケーアの代わりがオメガの王子か。聞いて呆れる。」
従者はチラチラ寝室の扉を見ている。ルイーズを気にしているのだろうか。
「お、畏れながら殿下。サリエルの至宝はニケーア様ではございません。……ルイーズ様こそが真のサリエルの至宝でございます。」
「………。」
一瞬何を言っているのか理解出来なかった。
ルイーズがサリエルの至宝?要らない王子を押し付けるための文言か?
「は?何を言っている。オメガの王子がか?見たところルイーズには魔力もないだろう。」
「ルイーズ様には魔力は必要ありません。ルイーズ様は、その、……精霊使いなのです。」
精霊は天地の至る所に存在すると言われる。
精霊が願えば大地を震わし、天候を操り災害を起こすことも可能だ。
太古の昔には存在したと言われる精霊使いは精霊たちと心を通わせ、精霊を意のままに動かす事が出来る。
その力は神と一緒だ。
太古の昔、精霊と人間とが共存していた時代があったと聞く。
しかしそんなものはおとぎ話だ。精霊を見た者すらいない。
この者は一体何を言っているのだ。
「信じられないのも無理はありません。」
従者は立ち上がりフレデリックに背を向けた。そのまま着ていたジレの両肩を抜いて腰まで下げる。
フレデリックは瞠目した。
シャツが肩から腰まで剣で切られたように斜めに裂けていたのだ。その裂け目は血で汚れていた。血は乾いてはいたがまだ新しい。ただよく見ると皮膚には傷が付いていない。
「それは…?」
「これはここへ来る途中に襲われて出来たものです。傷はルイーズ様が治して下さいました。2人の護衛も負傷してルイーズ様が応急処置をしてサリエルに返しました。ルイーズ様が精霊様にお願いして傷を治して頂いたのです。ルイーズ様は精霊様と一緒に大きな力を使うと今のように熱を出してしまわれます。」
従者はジレを羽織りまた平伏した。
信じられない。
精霊使いだと?傷を治せる?そんな事が本当にあるのか?
「そ、それを信じろと?」
その時ガチャリと寝室の扉が開いてルイーズが現れた。
まだ顔が赤く息も荒い。
すぐに従者が駆け寄る。『大丈夫』と従者に声をかけてフレデリックの近くまで来てそのまま平伏した。
「フレデリック殿下…。大変申し訳ございませんでした。黒の森の戦いで殿下が…殿下が大怪我をされて。私のせいで…。」
泣いているようだ。最後は涙声でよく聞き取れなかった。何故ルイーズがフレデリックの怪我のことを知っているのだろうか。怪我のことはバートレットの重要機密なのだ。他国にこの事を知られればその隙に攻め入って来られるかもしれない。それくらいバートレットにとってフレデリックの怪我は大損失だった。
「何故それを…」
泣いているルイーズを驚いて見つめた。
「精霊たちが教えてくれました。」
確かにフレデリックの怪我は黒の森の大戦で負ったものだ。左肩から背中に及ぶ大怪我で何とか一命を取り留めたが、大きな後遺症を残し肩より上に腕が上がらない。天気の悪い日にはしくしく痛む。
それを精霊が教えたの言うのか?
「殿下の怪我を治したくこちらに参上しました。本来ならもっと早くに来るべきでした…。怪我を拝見させて頂きませんか?」
ルイーズが顔を上げた。あの黒曜石の瞳が涙で揺らめいている。
ここはフレデリックの部屋だ。
思わず自室に連れてきてしまった。奥の寝室のベッドに寝かせている。ぐったりしたルイーズを放っておけず、何故かここに連れてきてしまったのだ。
そっと寝室を出て続きの部屋にあるソファーに座る。
病気なのか?小さな身体の感触がまだ残っている。
どうしたら良いのか分からずため息をつく。
サリエルに返した方が良いのだろうか…。
ガチャリと寝室の扉が開いて従者が入って来た。フレデリックの側まで来ると平伏した。
「殿下、ありがとうございました。」
「治るのか?」
「はい。薬も飲みましたし、しばらく休めば問題ないと思います。」
「おまえたちはたった二人でここまで来たのか?」
フレデリックは疑問に思っていた事を口にした。一国の王子がたった二人で国を移動する事なんてあり得ない。しかも二人は馬車にも乗っていなかったと聞く。
「いえ、ご、護衛が二人ほどいましたが、途中で怪我をして。ルイーズ様がその…サリエルに返しました。」
「二人?たった二人しか護衛をつけなかったのか?一国の王子がか?サリエルはニケーアか惜しくなり、オメガの王子を厄介払いしたのか。」
何故かまた腹立たしくなった。やはりサリエルは要らないルイーズを押し付けたのだ。
「とんでもございません。厄介払いなんて、そんな。」
「そうだろう?サリエルの至宝ニケーアの代わりがオメガの王子か。聞いて呆れる。」
従者はチラチラ寝室の扉を見ている。ルイーズを気にしているのだろうか。
「お、畏れながら殿下。サリエルの至宝はニケーア様ではございません。……ルイーズ様こそが真のサリエルの至宝でございます。」
「………。」
一瞬何を言っているのか理解出来なかった。
ルイーズがサリエルの至宝?要らない王子を押し付けるための文言か?
「は?何を言っている。オメガの王子がか?見たところルイーズには魔力もないだろう。」
「ルイーズ様には魔力は必要ありません。ルイーズ様は、その、……精霊使いなのです。」
精霊は天地の至る所に存在すると言われる。
精霊が願えば大地を震わし、天候を操り災害を起こすことも可能だ。
太古の昔には存在したと言われる精霊使いは精霊たちと心を通わせ、精霊を意のままに動かす事が出来る。
その力は神と一緒だ。
太古の昔、精霊と人間とが共存していた時代があったと聞く。
しかしそんなものはおとぎ話だ。精霊を見た者すらいない。
この者は一体何を言っているのだ。
「信じられないのも無理はありません。」
従者は立ち上がりフレデリックに背を向けた。そのまま着ていたジレの両肩を抜いて腰まで下げる。
フレデリックは瞠目した。
シャツが肩から腰まで剣で切られたように斜めに裂けていたのだ。その裂け目は血で汚れていた。血は乾いてはいたがまだ新しい。ただよく見ると皮膚には傷が付いていない。
「それは…?」
「これはここへ来る途中に襲われて出来たものです。傷はルイーズ様が治して下さいました。2人の護衛も負傷してルイーズ様が応急処置をしてサリエルに返しました。ルイーズ様が精霊様にお願いして傷を治して頂いたのです。ルイーズ様は精霊様と一緒に大きな力を使うと今のように熱を出してしまわれます。」
従者はジレを羽織りまた平伏した。
信じられない。
精霊使いだと?傷を治せる?そんな事が本当にあるのか?
「そ、それを信じろと?」
その時ガチャリと寝室の扉が開いてルイーズが現れた。
まだ顔が赤く息も荒い。
すぐに従者が駆け寄る。『大丈夫』と従者に声をかけてフレデリックの近くまで来てそのまま平伏した。
「フレデリック殿下…。大変申し訳ございませんでした。黒の森の戦いで殿下が…殿下が大怪我をされて。私のせいで…。」
泣いているようだ。最後は涙声でよく聞き取れなかった。何故ルイーズがフレデリックの怪我のことを知っているのだろうか。怪我のことはバートレットの重要機密なのだ。他国にこの事を知られればその隙に攻め入って来られるかもしれない。それくらいバートレットにとってフレデリックの怪我は大損失だった。
「何故それを…」
泣いているルイーズを驚いて見つめた。
「精霊たちが教えてくれました。」
確かにフレデリックの怪我は黒の森の大戦で負ったものだ。左肩から背中に及ぶ大怪我で何とか一命を取り留めたが、大きな後遺症を残し肩より上に腕が上がらない。天気の悪い日にはしくしく痛む。
それを精霊が教えたの言うのか?
「殿下の怪我を治したくこちらに参上しました。本来ならもっと早くに来るべきでした…。怪我を拝見させて頂きませんか?」
ルイーズが顔を上げた。あの黒曜石の瞳が涙で揺らめいている。
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