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第2話 カップル枠。

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(ブブッ)

ひとしきり一人で騒いでいると、スマホにメッセージが届いた。

りか『うみくん、いつinするの?待ってるんですけど~』
通知はTwitterのDMだった。

うみくんとは僕の使う偽名だ。
東雲 海斗(しののめ かいと)、本名を出したく無くてうみくん。と名乗っている。

生粋のモブである僕にも恋人がいる――有名FPSゲーム内のカップル枠。現実の恋人で無いのが残念で仕方ない。そんな彼女からの連絡だった。

一つため息を零し、直ぐに返信をする。

うみくん『今inする。待たせてごめんね』

りか『りょ』

返信をすると、直ぐに簡潔すぎる返信が届いた。

タブレットを起動しアプリアイコンをタッチしローディングを待つと、有名アニメの主人公が画面中央に現れる。

コラボしていた時に五万突っ込んで得たスキン。つまり僕がこのゲーム内で操るキャラクターだ。

(ピコンッッッ)
ログインすると同時に軽快な音と共に、チームへ招待。の文字。

OKボタンを押すと、女の子の可愛いくも怒った声が装着したイヤホンを通して僕の耳に届く。

『おそいっ。本当に遅いっ』

どうやらご立腹のようだ。
ふんすと鼻で奏でる呼吸が聞こえてきた。

『ごめんな、りか。でもどうか僕の話しを聞いてほしい。マジで大問題が起こったんだ』
『...なに?』

謝罪してすぐに主張する僕に呆れる彼女は、僕の話しをきいてくれるだろうと思う。

毎日このゲームで会話する彼女は僕の話しを聞くのが好きだと、楽しいと言ってくれていた。


『シュリがね...なんとね...』
『可愛かったよね~それで?』

『......怒ってる?』
『べっつに~?』

彼女は怒っている。断言できる。

僕はこのゲームを四年間していて、三年前に彼女と知り合ってからほぼ毎日こうして彼女とゲームをし、会話をしてきた。

そんな僕が断言する。
彼女は今、非常に虫の居所が悪い。

普段の彼女なら思った事はそのまま口に出す。

例えば...
『ねぇ、なんで今撃たなかったの?眠いんでしょ?もう寝る?』とか。
『期末試験があるんでしょ?一回だけ付き合ってもらおうかなっ』とか。
『なんで私以外の女の子と遊んでたの?言い訳は?』とか。
基本的に思った事はそのまま口に出すタイプなのだ。

(アレ?僕かなり愛されてない?)
ふと浮かんだ疑問が温かいモノになり胸を満たすが、彼女は今怒っている。こちらの事など待ってはくれない。

『それで?その、うみくんの推しが何?』

不満を声に表し、コチラの返答を待つ彼女。
そんな無言の圧に負けた僕はゆっくりと口を開く。

『何でもないです。りかとゲームがしたいです』
『よろしいっ』

選択肢を間違える事なく、彼女の機嫌が戻り、ゲームが始まる。デュオと言われている二人組ペア、計100人で一位を争う。僕達はゲームに夢中になり、先程までの話をする事は無くなった。



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