2 / 11
第2話 カップル枠。
しおりを挟む(ブブッ)
ひとしきり一人で騒いでいると、スマホにメッセージが届いた。
りか『うみくん、いつinするの?待ってるんですけど~』
通知はTwitterのDMだった。
うみくんとは僕の使う偽名だ。
東雲 海斗(しののめ かいと)、本名を出したく無くてうみくん。と名乗っている。
生粋のモブである僕にも恋人がいる――有名FPSゲーム内のカップル枠。現実の恋人で無いのが残念で仕方ない。そんな彼女からの連絡だった。
一つため息を零し、直ぐに返信をする。
うみくん『今inする。待たせてごめんね』
りか『りょ』
返信をすると、直ぐに簡潔すぎる返信が届いた。
タブレットを起動しアプリアイコンをタッチしローディングを待つと、有名アニメの主人公が画面中央に現れる。
コラボしていた時に五万突っ込んで得たスキン。つまり僕がこのゲーム内で操るキャラクターだ。
(ピコンッッッ)
ログインすると同時に軽快な音と共に、チームへ招待。の文字。
OKボタンを押すと、女の子の可愛いくも怒った声が装着したイヤホンを通して僕の耳に届く。
『おそいっ。本当に遅いっ』
どうやらご立腹のようだ。
ふんすと鼻で奏でる呼吸が聞こえてきた。
『ごめんな、りか。でもどうか僕の話しを聞いてほしい。マジで大問題が起こったんだ』
『...なに?』
謝罪してすぐに主張する僕に呆れる彼女は、僕の話しをきいてくれるだろうと思う。
毎日このゲームで会話する彼女は僕の話しを聞くのが好きだと、楽しいと言ってくれていた。
『シュリがね...なんとね...』
『可愛かったよね~それで?』
『......怒ってる?』
『べっつに~?』
彼女は怒っている。断言できる。
僕はこのゲームを四年間していて、三年前に彼女と知り合ってからほぼ毎日こうして彼女とゲームをし、会話をしてきた。
そんな僕が断言する。
彼女は今、非常に虫の居所が悪い。
普段の彼女なら思った事はそのまま口に出す。
例えば...
『ねぇ、なんで今撃たなかったの?眠いんでしょ?もう寝る?』とか。
『期末試験があるんでしょ?一回だけ付き合ってもらおうかなっ』とか。
『なんで私以外の女の子と遊んでたの?言い訳は?』とか。
基本的に思った事はそのまま口に出すタイプなのだ。
(アレ?僕かなり愛されてない?)
ふと浮かんだ疑問が温かいモノになり胸を満たすが、彼女は今怒っている。こちらの事など待ってはくれない。
『それで?その、うみくんの推しが何?』
不満を声に表し、コチラの返答を待つ彼女。
そんな無言の圧に負けた僕はゆっくりと口を開く。
『何でもないです。りかとゲームがしたいです』
『よろしいっ』
選択肢を間違える事なく、彼女の機嫌が戻り、ゲームが始まる。デュオと言われている二人組ペア、計100人で一位を争う。僕達はゲームに夢中になり、先程までの話をする事は無くなった。
___________________________________________
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
私のモチベに繋がりますので
星、ハート、フォローなど、頂けると幸いです。
次回 お誘い。 乞うご期待。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?
詩海猫
恋愛
私の家は子爵家だった。
高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。
泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。
私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。
八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。
*文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる