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第6話 休日デート 後編 

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現在咲夜姉から逃げるように映画館を飛び出してご飯屋さんを探している。

『夏菜、どーする?俺結構お腹空いてるんだよね』
『良いお店知ってるんだけど、優くんはイタリアンか中華だとどっちが好き?』
どちらも捨てがたい。が気分はイタリアンだ。

『僕はイタリアンがいいかな。夏菜は?』
『私もイタリアンのが好きっ』
合わせてくれたのかはわからないが、すんなりと決定し夏菜おすすめのイタリアンレストランへ向かっていく。


歩いて五分弱で目的地のレストランへと到着する。
大きな佇まいに綺麗な外観。店内は休日という事で非常に賑わっていた。

『夏菜は何を食べる?』
メニューを見ながら問いかける。
『んー、私は明太子としそのパスタにしようかな』
(やっぱり明太子は定番だよな)
迷っていた1つを夏菜が食べるようだ。

『そっか。僕はベーコンのカルボナーラにして、マルゲリータも頼もうかな。良かったら夏菜もピザ食べてね』
メニューが決まったところで店員さんをベルで呼び、注文を伝える。



料理が出てくるまでこの後行くショッピングモールにどんなお店が入っているのかをスマホで調べていると店員さんが料理を運んできてくれた。

『お待たせ致しました~。明太子としそのパスタの方~』
『はい、って、えっ?』
夏菜が返事をして店員さんからパスタを受け取っている。が、様子がおかしい。

スマホから視線外し確認する。
『それじゃあ残りのマルゲリとカルボは優か。はいよっ、お待ちどーさん』
フランクすぎる言葉遣いに馴染みのある声。この店の制服に身を包んだヒロがいた。そして優の耳に顔を近づけてくる。

『優。これはデートってことでいいのか?』
ニヤリ。と不気味な笑みで問いかけてくるヒロ。

『そーだね。僕はそのつもり』
『うん。そうか。じゃ夏菜邪魔したね。ごゆっくり~』

優の言葉に満足したのだろう。ヒラヒラと手を振りさっていく。
今回はこれ以上の追求をするつもりは無いようだ。
だが学校にいったら面倒くさいのは確定した。

『びっくりしたね優くん。まさかヒロくんがここでバイトしてるなんて...知らなかった』
ヒロはあまり自分の話をしない。そのためお互いに把握できていなかった。

『だね、僕も知らなかったよ。冷めちゃうから食べようか』
突然の遭遇に驚いてしまったが、食事を開始した。



『あの、優くん......』
映画の話やこの後に行くショッピングモールの話しをしながら食べ進めていると、夏菜がなにやら言いづらそうに俯きモジモジしている。

『どーした?』
『さっきピザ貰っちゃったらね?お腹いっぱいになっちゃって、出来たらこのパスタ食べてくれないかな』

貰いたかったが、口にすることが出来なかったので素直に嬉しい。

『実は明太子も気になってたんだよね。是非食べたいな』
『良かった』
一つ安堵し。こちらへパスタ皿を渡してくれる夏菜。
お皿を受け取りパスタを食べようとしたところでまた声をかける。

『あら、優ちゃんたちもここに来たの?また会っちゃったね』
満面の笑みの咲夜である。

『ねえ、咲夜姉たまたまだよね?』
『?うん。ここ人気のお店だからね』
表情から察するに事実だろう。
『そっか。変な言い方してごめんね』

疑ってしまったのには理由がある。
最近気付いたのだが、咲夜は優の携帯の位置情報を調べることができる。

咲夜名義の音楽配信アプリを使わせてもらうときに家族設定をした。そうすると携帯を探す。というアプリで相手の位置を知ることが出来るようになる。

勿論疑っているわけではない。
そのアプリ自体緊急事態の時などは役に立つものだし、咲夜に位置を調べられて困ることもない。

だが、こうも接触が多いと疑ってしまうのも無理もないだろう。


『それじゃ私美希ちゃんの所に戻るから、夜ご飯は家で食べるのかな?』
ニコニコと笑顔で問いかけてくる咲夜。
だがこれに関しては今朝伝えたことである。

『うん。そのつもり』
忘れてしまったのかと思い、応えたところで咲夜は自席へと戻っていった。

『本当ごめん。夏菜』
『ううん、大丈夫だよ。お姉さん優くんのことが心配なんだろうね』
優しく見つめられる。本当にこの子は寛大とゆーか心が広いと思う。
(それにしても今日は良く知り合いに会うな...)

その後は何事もなく、会計を済ませてレストランを出たのだった。 




    *            *             *            *



突然だが私、松原夏菜は今隣を楽しそうに話しながら歩く優くんの事が異性として気になっている。

いつからなのかは分からない。
自転車で送ってもらった時かもからしれないし、そのお礼に2人でカフェに行った時からかもしれない。はたまた日常のふとした時なのかもしれない。

ハッキリといつからとは言えないが、私が優くんを思う気持ちはハッキリと理解している。

だって、ただ隣を歩いてるいるだけでこんなにも胸がドキドキしているんだから。今日誘うための連絡をするのに1時間ほど悩んだのだから。今日着てきた服を選ぶのに2時間以上かかったのだから。

私は他の誰でも優くんを異性としてしっかりと意識している。

そんな私が今彼とデートしているというのに不貞腐れている。

それもそうだろう。あの人に何回も会ってしまえば不満だって溜まってくる。
あの人。優が親戚のお姉ちゃんと慕っている咲夜だ。

私がやっとの思いでデートに誘ったというのに。
あの人は私が欲しいモノを沢山持っている。

優くんからの信頼。優くんとの過去。優くんとの生活。誰もが認める美貌にスタイル。どれも私が喉から手が出るほどに欲しいモノだ。

それを持っている彼女が、私がやっとの想いで手に入れた初デートにまで手を伸ばした。
これ以上奪われる訳にはいかない。
あの人は絶対に優くんの事を異性として好きだ。

さっき映画館で目があった時に気が付いた。
このままじゃ負け戦だって私の女の感がずっと言っている。

負けるわけにはいかない。
不利でもいい。私なりに頑張って彼に選ばれるしかない。
今はそう思うしか無い。

多分私の気持ちなんて何にも知らずに楽しそうに隣を歩く彼を私は最後には絶対手に入れる。

恋愛を知るまでは知らなかった嫌な自分がどんどんと出てくる。
けど今は必死に内に押し留め笑う。

(優くん。覚悟しててね?私諦めないから)

優が楽しそうに話してる先程の映画の話に相槌を打ち、終わったところでコチラから新しい話題を出すのだった。


     *          *           *           *



『さっき言ってたショッピングモールで私お洋服見たいんだけどいいかな?』
『うん、俺もついでに服買いたいな。夏菜もし良かったら試着するから感想聞いても良い?』
『うんっ。任せて。じゃあ私も優くんに見てもらおう』
『慣れてないけど頑張るよ』


(今回は手を繋がないのか...)
と、期待してしまっていたことだけは絶対に表情に出ないよう意識する。

こうして2人並んでショッピングモールへと向かうのだった。



『優くん、この服似合うかな?』
試着室から出てきた夏菜。
オフショルダーの白のニットを着ている。
露出が少し多いが清楚美少女である夏菜に似合わないものはない。そう思わされる。

『うん、似合ってるよ。かわいい』
優の言葉を受け頬を朱に染めもじもじとしている。
露出の多い服は恥じらいもセットで輝くと思う。

『ありがとう。でも少し恥ずかしいから保留にしようかな』
やはり恥ずかしいようだ。可愛すぎる。


『優くん、こっちはどうかな?』
次は黒のオーバーオールにシャツを合わせたスタイルだ。
背が小さく幼い印象を受ける夏菜にピッタリだ。とても似合っている。

『それもいいね、なんだろ。庇護欲をそそられるって感じかな』
『なんか褒められてる気がしないんだけど?』
『ううん。可愛いから大丈夫だって』

こうして他何着かも見せてもらい、次は優の番になる。

メンズコーナーに向けて歩いていく。
『優くんは服選ぶの苦手なんだよね?』
『そうそう。なんかどれも同じに見えるというか、考えれば考えるだけ分からなくなるんだよね』
『なんか優くんらしいね』
嬉しそう笑っている夏菜。
だが彼女の口にした"優らしさ"がどうしても気になってしまう。

『俺らしいってどういうこと?』
問いかけたところで顎に手を当て考える夏菜。

『私から見ると優くんって周りの人に対してすごい優しいけど自分にはその優しさを向けられてない気がするんだよね』
一度言葉を区切り、再度優しく微笑む。

『だから優くんが私に優しくしてくれるみたいに自分のことにも気を遣ってあげてほしい。と思うかな』
『そう...だな。うん。今度から意識してみるよ』

正直自覚はなかった。自分は正直どうでも良いとは思っているが、他人に対して優しいなんて自覚はなかった。
でも夏菜がそう感じてくれて、信じてくれてる自分を否定するつもりにはなれない。

『ありがとう夏菜』
『うんっ』
照れ臭くなってしまい頬を掻きながら感謝を伝えるととびきりの笑顔を見せてくれた。

その後夏菜に選んでもらった服を試着して、夏菜の意見を取り入れながら気に入ったモノを数点購入した。



『優くん。今日はありがとう。楽しかった』
微笑みながら嬉しそうに伝えてくれる。
『僕も楽しかったよ。また今度他にも案内してよ』
夏菜とのデートは素直に楽しかった。
優の考える理想の同級生とのデートそのものだった。

『うん。私もまた優くんと出かけたいな』
夏菜が告げてくれた時夏菜の奥に見覚えのある、今日何度も見た自分が姿を表す。

『優ちゃん今帰りなの?私もだから一緒に帰ろっ』
本日3回目になる咲夜の降臨だ。

正直に言う。今はいい雰囲気だった。
夏菜も照れながらもまた次の予定を考えてくれているってわかったところだったのだ。

『すいません。1人で帰ってくれやしませんか?』
『優くん?反抗期なの?ねぇ優しいと書いて優くん。帰ってきなさい』

夏菜はドン引きである。
なんだよ、優しいって書いて優って。
クソ滑ってるのに尚も続けている。

『私は優しい優くんが好きよ?ほら帰ってきてちょうだい?』
『ああ、もー良いよ。ありがとう』
諦めた。何もかもを諦め咲夜へと諦めの冷たい視線をこれでもかと注ぐ。

『で?何?咲夜姉はこれから帰るの?』
『うんっ、美希ちゃんバイトだし。優くんの夜ご飯作らないといけないからね』
(はぁ。なんでよりにもよってこのタイミングで)
夏菜には悪いが、このまま解散させてもらうしかないだろう。

『夏菜。また学校でね。今日は本当にありがとう』
『う、うん。優くんまたね』
控えめに手を振り背を向ける夏菜。
正直に言うと次の約束を取り付けたかった。
それくらい今日は楽しかった。
優の願いも虚しくどんどんと距離が開いていく。

『はぁ、それじゃ咲夜姉帰ろっか』
『うん。手繋いでも良い?良いよね?』
あんなに時間をかけても夏菜と出来なかったイベントの壁を、モノの数秒で飛び越えてきた。
(これでこそ咲夜姉だよな)
全てを諦めされるがままに帰路につくのだった。




『優くんスーパー寄って行っても良い?』
『別に良いけど、昨日も行ってたよね?』
夏菜と別れてからずっと繋いでる手を意識しないようにと1人心を無にしていた。

『うーん。そうなんだけどね?優くんの今食べたい物を作ってあげたいと思ってね』
『うん。わかった。ありがとう咲夜姉』
これは素直に嬉しい。一つ頷き2手を繋いだまま、スーパーへと向かっていく。


『それで優ちゃん何食べたい?』
カートを押しながら隣を歩く咲夜から笑顔で問われる。
『うーん。唐揚げ食べたいかも。少しめんどくさいかな?』
料理のスキルはないが知識だけは少しある。
揚げ物が作るのも後処理も面倒なのも知っている。

『ふふっ、優ちゃんが食べたいのなら作るわよ』
笑顔で面倒をも受け入れると咲夜は言う。
『それなら唐揚げがいい。勿論手伝うから』
『えっ?良いの?楽しみ増えたわ。早く買って帰りましょう』
パッと表情を明るくさせルンルンである。

『今日は気分がいいからお酒飲んじゃっても良い?』
『飲みすぎないならいいよ。前飲んだ時すごい大変だったんだから』

咲夜姉はお酒に強くない。なのでたまに家でなら飲んで良いと約束してる。外で咲夜がお酒を飲むのが心配だからだ。

『本当ごめんね?今日は程よく飲むね』
そうして笑顔でお酒の缶をカゴへ放り込んでいく。
お酒の事は詳しくないが四缶入れている。これは多くない?適度?分からないから何も言えない。

『それじゃ帰ろう。優くん。荷物持ってくれてありがとね』
『いーよ。その代わり美味しい唐揚げ頼むよ』
会計を終えエコバッグへと食材を詰め優が持つ。
そのまま店を出たところで空いている手を咲夜に取られた。

(これを天然でやってたら恐ろしい)
隣で微笑んでる咲夜に相槌を打ちながら繋いだ手を見てしまう。
絶対に離れないよう、指と指を絡める繋ぎ方。所謂恋人繋ぎで繋がれた2人の手。

『優くん話聞いてるの?』
『あ、ごめんごめん』
1人考え込んでしまい咲夜に返事をしてなかったようだ。
頬を膨らませ不貞腐れる咲夜に謝りながら2人仲良く自宅へと向かい歩いていく。






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