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第四章 王都防衛戦
139.続・王都デート
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フラム達がまだ出てこないとわかり再び冒険者ギルドの外に出て話をするエイシェルとアリス。そろそろお昼時になるので例のクレープ屋へ行こうと王都の北側へ向かう話をしていた。
「ふたりがまだならクレープ屋にいこう?……それにしても、いつの間にか普通に喋れるようになったね?」
「ん?なんの事だ?」
「敬語」
アリスが指摘したのはエイシェルの敬語だった。初めて会った時のエイシェルの敬語は壊滅的だった。敬語が出来ないというより緊張でうまく喋れないような感じだろう。それを見ていたアリスはエイシェルの成長を素直に誉めた。
「あれは……慣れてなかったというか……緊張して余計にというか……」
「あら、わたしと話すのに緊張してたんだー?」
エイシェルの言い訳にアリスは少しからかってしまう。イタズラする子供のような顔でクスクスと笑っている。緊張するという事は多少なりとも相手を意識しているという事だろう。そう考えたアリスはちょっと嬉しくなりからかってしまったのだ。
しかし、そんなアリスの気も知らないでエイシェルはただ答える。
「いや、村にいた時は同い年くらいの人がいなかったから、どう接していいか分からなかったんだ。敬語で話すべきかも迷ってたし」
「そ、そうなのね……」
エイシェルの返事に明らかにテンションが下がるアリス。ひとりで変に盛り上がっていたとわかり恥ずかしくなったのと違っていたのかと残念に思う気持ちでシュンとする。
そんなコロコロと表情を変えるアリスを見てキュンとしたエイシェルは少しだけ勇気を出すのだった。
「……それに、いきなりかわいい女の子が話しかけてきたら誰だって緊張するよ」
「えっ……?」
エイシェルは恥ずかしそうに言いそっぽを向く。アリスはいつものようにキョトンとし、一気に顔を赤くする。ただ、その表情はニマニマしており、かわいいと言ったか?今言ったよな!?というような表情をしていた。それからまたいたずらっ子の顔を浮かべて何やら企んでいる。
「えいっ!」
「うお!?あ、アリス!?」
アリスはそっぽを向くエイシェルの左腕に絡みついた。エイシェルの腕に柔らかいものがあたる。エイシェルは慌てているが振り解くわけにもいかない。そうこうしているとアリスがエイシェルの腕を引っ張る。
「えへへ……このまま腕組んでいこう!」
「~~~!」
顔を真っ赤にしたエイシェルを強引に引っ張り王都の北側を目指すアリス。はたからみるとただのバカップルであった。
そんなふたりの後ろ姿を眺める人影がある。
「受付の人に言われて出てみれば……」
「完全にデートだね……っていうかあの様子だともうくっついた?」
実はエイシェルが受付にフラム達のことを聞いてギルドの外に出たすぐ後にフラム達が用事を済ませて出てきたのだ。
それを見た受付が気を利かせて話しかけてくれたのでフラム達も急いで外に出てきたわけだが……
「これ、ついて行ったら邪魔にしかならないわね……」
「こっそりついて行くのも面白そうだけど、ずっとあの調子だとこっちまで恥ずかしくなりそうだよ……」
いつのまにか距離が縮まるどころか密着しているではないか。あまりのイチャイチャっぷりに驚き固まっていたフラムとフルームはこれからどうしようか考える。
「あのふたりは放っておくとして、私たちはこれからどうしようね?」
「 そうね……ここ数日、トレーニング出来てなかったから西の公園に行ってみない?」
「いいね、どうせ人いないだろうし」
昨日実戦で体を動かしたばかりだったがふたりとも剣術のトレーニングをしに行くようだ。もともとエイシェル達と行動を共にするまではふたりでの剣術のトレーニングが日課だったが最近はエイシェル達に合わせている為トレーニングが出来ていなかった。最近トレーニングをしたのは時間が有り余っていた船の上くらいである。その為、時間が出来たふたりはトレーニングに励もうと西の公園に向かうのだった。
そんな中エイシェルとアリスはクレープ屋に着いていた。店に到着するまで腕を組んで歩いていた為エイシェルは終始顔を真っ赤にしてあるいていた。店に着いてからアリスが看板に書かれたメニューを見に行こうと離れた時はホッとした気持ちもあったがどこか寂しさもあり複雑な心境だ。そんなエイシェルの気持ちを知ってか知らずか少し離れた場所でメニューを見ていたアリスが満面の笑みで話しかける。
「ねぇねぇ!ここ黄金鶏の卵を使ったプリンアラモードクレープってやつがあるよ!わたしこれ食べたい!」
アリスが興奮して話す。西の丘の上の店ではオムライスを食べたが、まだデザートに黄金鶏の卵を使用した料理を食べていないのだ。オムライスがとても美味しかった為、その卵を使ったプリンも期待できる。その気持ちが興奮に現れていた。
ひとしきり興奮したあとアリスが訊ねる。
「それで、エイシェルは何にするの?」
アリスの話を聞くためにメニュー前に移動していたエイシェルは何を食べようか迷っていた。アリスの言うように黄金鶏の卵を使ったプリンは興味がある。でも、朝から甘いものだけで終わらせるのは抵抗があった。
メニューを上から見ていくといぜん見つけたしゃくじけいメニューに目が止まった。そこに書かれたメニューが気になり、食べる事に決めたのだった。
「おれはこれにしようかな。ツナと黄金鶏卵のサラダクレープ」
「あ!甘くないやつね!……それもおいしそうなのよねー」
どうやらアリスも気になっていた様だ。ふたりは食べるものを決めるとさっそく店に入った。
店はぱっと見とても綺麗でピンク調に統一された内装をしていた。席がけっこうあるがそのほとんどが埋まっている事から人気の店だと分かる。客のほとんどが女性客でありエイシェルは少し居づらそうにしている。
そんな事はお構い無しにと店員に誘導されるアリスがエイシェルの手をぐいぐい引いてくる。当のアリスはおそらく無意識だろう。とても楽しそうにエイシェルの手を引き店内を歩いている。
席に着いたふたりは早速注文した。待つこと十分くらいでクレープが運ばれてきた。アリスの頼んだプリンアラモードクレープはもちもちのクレープ生地を器がわりに大きいプリンやたくさんの生クリーム、キウイやいちごなどのフルーツがふんだんに使われており、見た目もとても豪華であった。
「わぁ!みてみて!綺麗!すごい美味しそう!」
自分のクレープをみたアリスはその見た目に感動しとても興奮している。次にエイシェルが頼んだツナと黄金鶏卵のサラダクレープはパリパリの生地にツナとマヨネーズを混ぜたものにとろとろ具合で焼いた卵をレタスで巻いたようなものが包まれている。食事系と言うこともあり暖かい。どうやらデザート系と食事系でクレープの生地が違う様だ。きっとそれぞれの中身に合う様に変えているのだろう。とても手間がかかるはずだがそれをやると言う事は店としてもこだわりたいポイントなのだろう。
食事が揃ったふたりはさっそく食べ始めた。プリンのクレープにアリスがかぶりつく。
「んーーー!……もぐもぐ、美味しい!プリンが甘くて濃厚で、下の上でとろけちゃう!クリームも甘すぎないでプリンを引き立てるのと、プリンと果物の甘味の橋渡しをしているような感じね!」
アリスがよく分からないことを口走る。ただ、それだけ美味しいことは伝わった。笑顔でクレープを頬張るアリスはとても可愛らしかった。
アリスの食べている様子に釘付けになっていたエイシェルだったが我にかえり自分のクレープに手を出した。
「これは……すごく美味しいな。レタスのシャキシャキ感がしっかりしてる上にクレープの生地もパリパリしてて食感がいい。それに、マヨネーズもコクがあるから……黄金鶏の卵を使ったものっぽいな。卵自体も言うことなしだ。トロトロふわふわな感じがとても……」
エイシェルもついアリスに釣られて解説をしてしまった。そしてエイシェルがその解説中にアリスを見るとクレープをガン見しているではないか。思わず言葉が止まりポロリと思った言葉をこぼしてしまう。
「……一口食べてみる?」
「いいの!!?」
するとアリスは満面の笑みでエイシェルからクレープを受け取る。そしてなんの躊躇もなくクレープにかじりついた。
「んーーーーー!!……もぐもぐ、これもとっても美味しい!!食感がとてもいいのと塩加減もちょうど良くてすごく美味しい!!エイシェルありがとうね!!」
そう言ってエイシェルにクレープを返すアリス。そこでお返しをしなきゃとアリスが続けて話す。
「エイシェルもプリンのクレープ食べてみてよ!はい!どうぞ!」
今度はアリスが食べていたクレープがエイシェルに差し出される。たしかに黄金鶏の卵を使ったプリンは気になるが、もっと気になる問題が発生していた。
(こ、これって間接なんちゃらってやつじゃ……!?え、食べていいの?っていうか、おれのクレープも既に……!?)
エイシェルはアリスが既に自分のクレープを食べていたことを思い出し覚悟を決めてクレープにかじりついた。口いっぱいにプリンと生クリームの甘みが広がる。しかし、エイシェルは気になってしまいそれどころではなくなっていた。
「あ、ありがとう……その、すごく美味しいな」
「でしょ!?これ本当に美味しいから、お返しにエイシェルにも食べて貰いたく……て……?」
アリスも遅れて状況に気づいた。時既に遅し。暴走の果てに訪れた結果はアリスの顔を赤く染める。
(ややややっちゃったあああああああ!!?これ間接キスじゃないの!?わたしもエイシェルのクレープに普通にかじりついちゃったし!あわわわわ……ど、どうする!?いや、どうしようもないけど、そ、そうよ!どうしようもないの!!それならこのまま何事もなく食べるしかない!!)
アリスは覚悟を決めてエイシェルから返されたクレープにかぶりつく。もうどうにでもなれという感じで自棄になっていた。
(あ、アリスが普通に食べてる……?気にするのは村のみんなだけなのか……?それなら郷に入れば郷に従えだ!!)
そしてエイシェルも覚悟を決めて自分のクレープにかぶりついた。
(あ!?エイシェルも食べた!!かかか間接キス成立しちゃった!!?いや、今更なのはわかるんだけど!わたしの分で既に成立済みなのは分かるんだけど!!?)
アリスも食事どころではなくなっていた。一度気になるとずっと気になってしまうのはふたりとも同じ様だ。
その後一心不乱にクレープにかじりついたエイシェルとアリス。食べ終わったふたりは両方とも顔が真っ赤になっていた。
「お、美味しかったな」
「そ、そうね」
「並んできてるし、そろそろ出るか」
「う、うん。フラム達も終わってるかもだし」
ぎこちないやりとりが続き店を出ることにしたふたり。しかしその目の前に問題が転がり込んできた。
コロコロコロ…………
「あれ、宝石?……大きい……」
「あ、すんません!」
「何落としてるのよ!ごめんなさい」
「いえ」
若い冒険者のカップルだろうか、気付けば隣の席で注文を待っていた。そのカップルが落としたのだろう宝石をアリスが拾おうとしたその時、宝石に書かれた紋様が光出す。
「なっ!?ダメだアリス!そいつから離れろ!!」
「えっ?」
そして、その紋様はエイシェルにとって警戒するに値するものであった。かつて村を襲ったイノシシに書かれていた紋様。召喚陣そのものであった。
「ふたりがまだならクレープ屋にいこう?……それにしても、いつの間にか普通に喋れるようになったね?」
「ん?なんの事だ?」
「敬語」
アリスが指摘したのはエイシェルの敬語だった。初めて会った時のエイシェルの敬語は壊滅的だった。敬語が出来ないというより緊張でうまく喋れないような感じだろう。それを見ていたアリスはエイシェルの成長を素直に誉めた。
「あれは……慣れてなかったというか……緊張して余計にというか……」
「あら、わたしと話すのに緊張してたんだー?」
エイシェルの言い訳にアリスは少しからかってしまう。イタズラする子供のような顔でクスクスと笑っている。緊張するという事は多少なりとも相手を意識しているという事だろう。そう考えたアリスはちょっと嬉しくなりからかってしまったのだ。
しかし、そんなアリスの気も知らないでエイシェルはただ答える。
「いや、村にいた時は同い年くらいの人がいなかったから、どう接していいか分からなかったんだ。敬語で話すべきかも迷ってたし」
「そ、そうなのね……」
エイシェルの返事に明らかにテンションが下がるアリス。ひとりで変に盛り上がっていたとわかり恥ずかしくなったのと違っていたのかと残念に思う気持ちでシュンとする。
そんなコロコロと表情を変えるアリスを見てキュンとしたエイシェルは少しだけ勇気を出すのだった。
「……それに、いきなりかわいい女の子が話しかけてきたら誰だって緊張するよ」
「えっ……?」
エイシェルは恥ずかしそうに言いそっぽを向く。アリスはいつものようにキョトンとし、一気に顔を赤くする。ただ、その表情はニマニマしており、かわいいと言ったか?今言ったよな!?というような表情をしていた。それからまたいたずらっ子の顔を浮かべて何やら企んでいる。
「えいっ!」
「うお!?あ、アリス!?」
アリスはそっぽを向くエイシェルの左腕に絡みついた。エイシェルの腕に柔らかいものがあたる。エイシェルは慌てているが振り解くわけにもいかない。そうこうしているとアリスがエイシェルの腕を引っ張る。
「えへへ……このまま腕組んでいこう!」
「~~~!」
顔を真っ赤にしたエイシェルを強引に引っ張り王都の北側を目指すアリス。はたからみるとただのバカップルであった。
そんなふたりの後ろ姿を眺める人影がある。
「受付の人に言われて出てみれば……」
「完全にデートだね……っていうかあの様子だともうくっついた?」
実はエイシェルが受付にフラム達のことを聞いてギルドの外に出たすぐ後にフラム達が用事を済ませて出てきたのだ。
それを見た受付が気を利かせて話しかけてくれたのでフラム達も急いで外に出てきたわけだが……
「これ、ついて行ったら邪魔にしかならないわね……」
「こっそりついて行くのも面白そうだけど、ずっとあの調子だとこっちまで恥ずかしくなりそうだよ……」
いつのまにか距離が縮まるどころか密着しているではないか。あまりのイチャイチャっぷりに驚き固まっていたフラムとフルームはこれからどうしようか考える。
「あのふたりは放っておくとして、私たちはこれからどうしようね?」
「 そうね……ここ数日、トレーニング出来てなかったから西の公園に行ってみない?」
「いいね、どうせ人いないだろうし」
昨日実戦で体を動かしたばかりだったがふたりとも剣術のトレーニングをしに行くようだ。もともとエイシェル達と行動を共にするまではふたりでの剣術のトレーニングが日課だったが最近はエイシェル達に合わせている為トレーニングが出来ていなかった。最近トレーニングをしたのは時間が有り余っていた船の上くらいである。その為、時間が出来たふたりはトレーニングに励もうと西の公園に向かうのだった。
そんな中エイシェルとアリスはクレープ屋に着いていた。店に到着するまで腕を組んで歩いていた為エイシェルは終始顔を真っ赤にしてあるいていた。店に着いてからアリスが看板に書かれたメニューを見に行こうと離れた時はホッとした気持ちもあったがどこか寂しさもあり複雑な心境だ。そんなエイシェルの気持ちを知ってか知らずか少し離れた場所でメニューを見ていたアリスが満面の笑みで話しかける。
「ねぇねぇ!ここ黄金鶏の卵を使ったプリンアラモードクレープってやつがあるよ!わたしこれ食べたい!」
アリスが興奮して話す。西の丘の上の店ではオムライスを食べたが、まだデザートに黄金鶏の卵を使用した料理を食べていないのだ。オムライスがとても美味しかった為、その卵を使ったプリンも期待できる。その気持ちが興奮に現れていた。
ひとしきり興奮したあとアリスが訊ねる。
「それで、エイシェルは何にするの?」
アリスの話を聞くためにメニュー前に移動していたエイシェルは何を食べようか迷っていた。アリスの言うように黄金鶏の卵を使ったプリンは興味がある。でも、朝から甘いものだけで終わらせるのは抵抗があった。
メニューを上から見ていくといぜん見つけたしゃくじけいメニューに目が止まった。そこに書かれたメニューが気になり、食べる事に決めたのだった。
「おれはこれにしようかな。ツナと黄金鶏卵のサラダクレープ」
「あ!甘くないやつね!……それもおいしそうなのよねー」
どうやらアリスも気になっていた様だ。ふたりは食べるものを決めるとさっそく店に入った。
店はぱっと見とても綺麗でピンク調に統一された内装をしていた。席がけっこうあるがそのほとんどが埋まっている事から人気の店だと分かる。客のほとんどが女性客でありエイシェルは少し居づらそうにしている。
そんな事はお構い無しにと店員に誘導されるアリスがエイシェルの手をぐいぐい引いてくる。当のアリスはおそらく無意識だろう。とても楽しそうにエイシェルの手を引き店内を歩いている。
席に着いたふたりは早速注文した。待つこと十分くらいでクレープが運ばれてきた。アリスの頼んだプリンアラモードクレープはもちもちのクレープ生地を器がわりに大きいプリンやたくさんの生クリーム、キウイやいちごなどのフルーツがふんだんに使われており、見た目もとても豪華であった。
「わぁ!みてみて!綺麗!すごい美味しそう!」
自分のクレープをみたアリスはその見た目に感動しとても興奮している。次にエイシェルが頼んだツナと黄金鶏卵のサラダクレープはパリパリの生地にツナとマヨネーズを混ぜたものにとろとろ具合で焼いた卵をレタスで巻いたようなものが包まれている。食事系と言うこともあり暖かい。どうやらデザート系と食事系でクレープの生地が違う様だ。きっとそれぞれの中身に合う様に変えているのだろう。とても手間がかかるはずだがそれをやると言う事は店としてもこだわりたいポイントなのだろう。
食事が揃ったふたりはさっそく食べ始めた。プリンのクレープにアリスがかぶりつく。
「んーーー!……もぐもぐ、美味しい!プリンが甘くて濃厚で、下の上でとろけちゃう!クリームも甘すぎないでプリンを引き立てるのと、プリンと果物の甘味の橋渡しをしているような感じね!」
アリスがよく分からないことを口走る。ただ、それだけ美味しいことは伝わった。笑顔でクレープを頬張るアリスはとても可愛らしかった。
アリスの食べている様子に釘付けになっていたエイシェルだったが我にかえり自分のクレープに手を出した。
「これは……すごく美味しいな。レタスのシャキシャキ感がしっかりしてる上にクレープの生地もパリパリしてて食感がいい。それに、マヨネーズもコクがあるから……黄金鶏の卵を使ったものっぽいな。卵自体も言うことなしだ。トロトロふわふわな感じがとても……」
エイシェルもついアリスに釣られて解説をしてしまった。そしてエイシェルがその解説中にアリスを見るとクレープをガン見しているではないか。思わず言葉が止まりポロリと思った言葉をこぼしてしまう。
「……一口食べてみる?」
「いいの!!?」
するとアリスは満面の笑みでエイシェルからクレープを受け取る。そしてなんの躊躇もなくクレープにかじりついた。
「んーーーーー!!……もぐもぐ、これもとっても美味しい!!食感がとてもいいのと塩加減もちょうど良くてすごく美味しい!!エイシェルありがとうね!!」
そう言ってエイシェルにクレープを返すアリス。そこでお返しをしなきゃとアリスが続けて話す。
「エイシェルもプリンのクレープ食べてみてよ!はい!どうぞ!」
今度はアリスが食べていたクレープがエイシェルに差し出される。たしかに黄金鶏の卵を使ったプリンは気になるが、もっと気になる問題が発生していた。
(こ、これって間接なんちゃらってやつじゃ……!?え、食べていいの?っていうか、おれのクレープも既に……!?)
エイシェルはアリスが既に自分のクレープを食べていたことを思い出し覚悟を決めてクレープにかじりついた。口いっぱいにプリンと生クリームの甘みが広がる。しかし、エイシェルは気になってしまいそれどころではなくなっていた。
「あ、ありがとう……その、すごく美味しいな」
「でしょ!?これ本当に美味しいから、お返しにエイシェルにも食べて貰いたく……て……?」
アリスも遅れて状況に気づいた。時既に遅し。暴走の果てに訪れた結果はアリスの顔を赤く染める。
(ややややっちゃったあああああああ!!?これ間接キスじゃないの!?わたしもエイシェルのクレープに普通にかじりついちゃったし!あわわわわ……ど、どうする!?いや、どうしようもないけど、そ、そうよ!どうしようもないの!!それならこのまま何事もなく食べるしかない!!)
アリスは覚悟を決めてエイシェルから返されたクレープにかぶりつく。もうどうにでもなれという感じで自棄になっていた。
(あ、アリスが普通に食べてる……?気にするのは村のみんなだけなのか……?それなら郷に入れば郷に従えだ!!)
そしてエイシェルも覚悟を決めて自分のクレープにかぶりついた。
(あ!?エイシェルも食べた!!かかか間接キス成立しちゃった!!?いや、今更なのはわかるんだけど!わたしの分で既に成立済みなのは分かるんだけど!!?)
アリスも食事どころではなくなっていた。一度気になるとずっと気になってしまうのはふたりとも同じ様だ。
その後一心不乱にクレープにかじりついたエイシェルとアリス。食べ終わったふたりは両方とも顔が真っ赤になっていた。
「お、美味しかったな」
「そ、そうね」
「並んできてるし、そろそろ出るか」
「う、うん。フラム達も終わってるかもだし」
ぎこちないやりとりが続き店を出ることにしたふたり。しかしその目の前に問題が転がり込んできた。
コロコロコロ…………
「あれ、宝石?……大きい……」
「あ、すんません!」
「何落としてるのよ!ごめんなさい」
「いえ」
若い冒険者のカップルだろうか、気付けば隣の席で注文を待っていた。そのカップルが落としたのだろう宝石をアリスが拾おうとしたその時、宝石に書かれた紋様が光出す。
「なっ!?ダメだアリス!そいつから離れろ!!」
「えっ?」
そして、その紋様はエイシェルにとって警戒するに値するものであった。かつて村を襲ったイノシシに書かれていた紋様。召喚陣そのものであった。
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