1 / 11
プロローグ
しおりを挟む
*
「なぁ、星奈
せな
。お父さんの指の先……白く輝いている、七つのお星様を見上げてごらん」
当時……小学一年生で幼かった私は、父親の言葉通りに、飲み込まれそうなほどに真っ暗な夜空に輝く七つの小さな星を見上げた。
「あれが、オリオン座なんだ」
「オリオン?」
聞き慣れない言葉に不思議そうにする私に、父親はやや憂いを帯びた瞳で頷いた。
「そう。右手に棍棒、左手にライオンの毛皮を持っている、強い猟師なんだ。でも、その強さのためにさそりに刺されて死んでしまったんだ。そして……お星様になった」
「死んでしまったらお星様になるの?」
幼さ故に何も知らなかった私は、その時の父親の言葉に何も違和感も感じずに聞き返した。
「そう。お星様になって、ずっとお空で輝けるんだ。お空で輝いて、ずっと星奈のことを見守っている。でも……お星様になったらもう二度とこっちには降りて来れないし、お母さんにも会えない。だから……星奈は絶対にお星様になろうなんて思ったらいけないよ」
「うん、分かった。降りて来れなくなってしまったら、怖いもん」
父親の言葉に漠然とした怖さを感じた私は素直に頷いた。
そんな私を父親は両手で抱きしめて……言葉にならない涙を流した。
(どうして……お父さん、泣いてるの?)
当時の私には、何も分からなかった。
父親が自身の体を蝕んでいた癌に倒れて……お星様になってもう二度と降りて来れなくなったのは、それから一週間後のことだった。
「なぁ、星奈
せな
。お父さんの指の先……白く輝いている、七つのお星様を見上げてごらん」
当時……小学一年生で幼かった私は、父親の言葉通りに、飲み込まれそうなほどに真っ暗な夜空に輝く七つの小さな星を見上げた。
「あれが、オリオン座なんだ」
「オリオン?」
聞き慣れない言葉に不思議そうにする私に、父親はやや憂いを帯びた瞳で頷いた。
「そう。右手に棍棒、左手にライオンの毛皮を持っている、強い猟師なんだ。でも、その強さのためにさそりに刺されて死んでしまったんだ。そして……お星様になった」
「死んでしまったらお星様になるの?」
幼さ故に何も知らなかった私は、その時の父親の言葉に何も違和感も感じずに聞き返した。
「そう。お星様になって、ずっとお空で輝けるんだ。お空で輝いて、ずっと星奈のことを見守っている。でも……お星様になったらもう二度とこっちには降りて来れないし、お母さんにも会えない。だから……星奈は絶対にお星様になろうなんて思ったらいけないよ」
「うん、分かった。降りて来れなくなってしまったら、怖いもん」
父親の言葉に漠然とした怖さを感じた私は素直に頷いた。
そんな私を父親は両手で抱きしめて……言葉にならない涙を流した。
(どうして……お父さん、泣いてるの?)
当時の私には、何も分からなかった。
父親が自身の体を蝕んでいた癌に倒れて……お星様になってもう二度と降りて来れなくなったのは、それから一週間後のことだった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
シチュボ(女性向け)
身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。
アドリブ、改変、なんでもOKです。
他人を害することだけはお止め下さい。
使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。
Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる