井守

いっき

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そんなある日。
村民達の家の中にイモリが現れるようになった。
イモリは両生類。
本来は水場から離れることはなく、家の中に入るわけがないのだが、何処からか這い上がり、家へ入ってくる。

「それ、見たことか。お前らみな井守様に祟られたんじゃ。ああ、恐ろしや、恐ろしや。井守様、どうか、お許し下され」

老人達はイモリに向かって手を擦り合わせ、涙ながらに許しを乞う。

若者達は、

「何を、馬鹿なことを」

と老人達を嘲るが、この上なく気味悪く感じていた。


やがて、村では世代が交代しかつての老人達はいなくなった。
若者達は、好き放題に村の自然を壊した。

木を切り倒し、木材を都会に売りさばいて収入を得た。
村の周辺の山々は、見るも無残な裸地と化した。

若者達は山の麓にある製薬会社へ入職し、薬剤の廃液を元の清流へ流し込んだ。
清流だった川は、その面影もないほどにドロドロのドブ川となり、村民達の家へ現れていたイモリ達も、いつしか姿を消してその村ではイモリを見ることはなくなった。
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