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川野が走り去ってしばらくは、何だかとってもつかれて、ぼくと真緒はボーッとしていた。だって、思い返してみると、今日の放課後は色々とありすぎた。ぼくたち二人のドッペルゲンガーを見て、空き地で何だかよく分からないままにクラスメイトの三人とケンカした。そして、クラスメイトたちが帰った後、タツマキにのまれて……どういうわけか無事だったぼくたちは、心配になって、大急ぎで三人に会いに行った。
……って、あれ? 何だか、グルグル、グルグル……頭の中がまるでタツマキにのまれているかのように、ぼくたちは混乱していたのだけれど。
「……ねぇ、何だか、おかしくない?」
ぼそっとつぶやいた真緒の言葉に、ぼくはうなずいた。
「うん……ぼくも今そう、思ってた」
「だって、あの三人とケンカした時、私たちがタツマキにのまれたって聞いたとか、みんな言ってたわよね」
「そうだよな。本当にぼくたち、タツマキにのまれたんだから、ウソつきなんかじゃないよな?」
「でも、タツマキにのまれたのって、三人が帰ってからじゃん?」
「じゃあ、三人が空き地にいる時には、ぼくと真緒、まだタツマキにのまれてなかったし……やっぱりウソつきじゃん」
「いや、でも。学校が終わってからは、空き地で初めてあの三人に会ったんだし……ウソもつきようがないじゃない」
ぼくと真緒の言い合いは、まるでタツマキのようにグルグル、グルグルと回るばかりで、頭の中もグルグル、グルグル……ただ、ひたすらに混乱していた。
「あー、もう!」
「頭、おかしくなりそうだわ……」
二人して、頭をかかえこもうとした時……聞きなれた大声がひびいた。
「こら、お前たち! まだ、帰ってなかったのか!」
ぼくたちの背後で、塚田先生がうでを組んで立っていたのだ。
「先生~!」
「何か、おかしいんです。教えて下さい!」
ぼくたちが泣きつくと、先生は目を丸くした。
「何だ、何だ? 何がおかしいんだ?」
ぼくと真緒が今日の放課後の出来事を説明すると、先生はこくこくとうなずきながら聞いてくれた。
全てを聞き終わった塚田先生は、ぼくたちもびっくりするようなことを言い出した。
「それは、もしかして……お前たち、タツマキにのまれて過去に飛ばされたんじゃないのか?」
その言葉に、今度はぼくたちの目が丸くなった。
「先生、何を言ってんの? そんな非科学的なことを……」
「そうですよ。仮にも先生でしょ?」
代わる代わる言うぼくたちに、先生はまるで子供のようにムキになった。
「だって、しょうがないだろ。そうでないと、説明がつかないんだから。それに、もしタツマキにのまれて過去に飛ばされたとしたら……今日のふしぎな出来事、全部が納得できるだろ?」
「あっ……」
「言われてみたら、確かに……」
ぼくと真緒は、顔を見合わせてよく考えた。もし、タツマキにのまれて過去に飛ばされたなら。ぼくと真緒が見た、空き地から出て来たぼくたちは、過去にもどったぼくたちということだ。それなら、ぼくたちはクラスメイト三人に会ってタツマキにのまれた話もしたし、三人が空き地に集まった時、過去にもどる前のぼくたちもそこへ行って……三人からその話を聞いたことも納得できる。
「でも……」
「そんなこと、信じられない」
首をかしげるぼくと真緒に、先生はふふんと得意そうに笑った。
「この世界ではな。たま~に、信じられない……科学では説明できないことが起きるものだ。今日、起こったことも、本当にありえないことだけどな……もし、そのタツマキが光より速く回っていたとしたら、お前らを過去にとばすなんてこともできるかも知れない」
「えっ!」
「光より速いと、過去にとばせるんですか?」
目を丸くするぼくたちに、先生はニッと白い歯を見せた。
「あぁ、それは科学の世界でも言われている。だから、もし光より速い乗り物ができたとしたら、それはタイムマシンということになるんだ」
「すごい……」
学校の授業をたいくつに感じていたぼくは、塚田先生の子供っぽい笑顔が苦手だったけれど……その時は、キラキラとかがやく先生の笑顔が、何だかとても好きになった。
そんなぼくを見て、先生はにっこりとほほえんだ。
「金谷。お前、いつも授業中、つまんなさそうにしてるけどな……勉強ってのも、知れば知るほどに楽しいぞ。今日はまぁ、より道したのはよくないが、これをきっかけにして、明日からはちゃんと授業も聞くんだぞ」
科学的なのか、そうじゃないのか分からない塚田先生は、そんな風にうまくまとめて。「今度こそ、まっすぐに帰るんだぞ」とだけ言って去って行った。
……って、あれ? 何だか、グルグル、グルグル……頭の中がまるでタツマキにのまれているかのように、ぼくたちは混乱していたのだけれど。
「……ねぇ、何だか、おかしくない?」
ぼそっとつぶやいた真緒の言葉に、ぼくはうなずいた。
「うん……ぼくも今そう、思ってた」
「だって、あの三人とケンカした時、私たちがタツマキにのまれたって聞いたとか、みんな言ってたわよね」
「そうだよな。本当にぼくたち、タツマキにのまれたんだから、ウソつきなんかじゃないよな?」
「でも、タツマキにのまれたのって、三人が帰ってからじゃん?」
「じゃあ、三人が空き地にいる時には、ぼくと真緒、まだタツマキにのまれてなかったし……やっぱりウソつきじゃん」
「いや、でも。学校が終わってからは、空き地で初めてあの三人に会ったんだし……ウソもつきようがないじゃない」
ぼくと真緒の言い合いは、まるでタツマキのようにグルグル、グルグルと回るばかりで、頭の中もグルグル、グルグル……ただ、ひたすらに混乱していた。
「あー、もう!」
「頭、おかしくなりそうだわ……」
二人して、頭をかかえこもうとした時……聞きなれた大声がひびいた。
「こら、お前たち! まだ、帰ってなかったのか!」
ぼくたちの背後で、塚田先生がうでを組んで立っていたのだ。
「先生~!」
「何か、おかしいんです。教えて下さい!」
ぼくたちが泣きつくと、先生は目を丸くした。
「何だ、何だ? 何がおかしいんだ?」
ぼくと真緒が今日の放課後の出来事を説明すると、先生はこくこくとうなずきながら聞いてくれた。
全てを聞き終わった塚田先生は、ぼくたちもびっくりするようなことを言い出した。
「それは、もしかして……お前たち、タツマキにのまれて過去に飛ばされたんじゃないのか?」
その言葉に、今度はぼくたちの目が丸くなった。
「先生、何を言ってんの? そんな非科学的なことを……」
「そうですよ。仮にも先生でしょ?」
代わる代わる言うぼくたちに、先生はまるで子供のようにムキになった。
「だって、しょうがないだろ。そうでないと、説明がつかないんだから。それに、もしタツマキにのまれて過去に飛ばされたとしたら……今日のふしぎな出来事、全部が納得できるだろ?」
「あっ……」
「言われてみたら、確かに……」
ぼくと真緒は、顔を見合わせてよく考えた。もし、タツマキにのまれて過去に飛ばされたなら。ぼくと真緒が見た、空き地から出て来たぼくたちは、過去にもどったぼくたちということだ。それなら、ぼくたちはクラスメイト三人に会ってタツマキにのまれた話もしたし、三人が空き地に集まった時、過去にもどる前のぼくたちもそこへ行って……三人からその話を聞いたことも納得できる。
「でも……」
「そんなこと、信じられない」
首をかしげるぼくと真緒に、先生はふふんと得意そうに笑った。
「この世界ではな。たま~に、信じられない……科学では説明できないことが起きるものだ。今日、起こったことも、本当にありえないことだけどな……もし、そのタツマキが光より速く回っていたとしたら、お前らを過去にとばすなんてこともできるかも知れない」
「えっ!」
「光より速いと、過去にとばせるんですか?」
目を丸くするぼくたちに、先生はニッと白い歯を見せた。
「あぁ、それは科学の世界でも言われている。だから、もし光より速い乗り物ができたとしたら、それはタイムマシンということになるんだ」
「すごい……」
学校の授業をたいくつに感じていたぼくは、塚田先生の子供っぽい笑顔が苦手だったけれど……その時は、キラキラとかがやく先生の笑顔が、何だかとても好きになった。
そんなぼくを見て、先生はにっこりとほほえんだ。
「金谷。お前、いつも授業中、つまんなさそうにしてるけどな……勉強ってのも、知れば知るほどに楽しいぞ。今日はまぁ、より道したのはよくないが、これをきっかけにして、明日からはちゃんと授業も聞くんだぞ」
科学的なのか、そうじゃないのか分からない塚田先生は、そんな風にうまくまとめて。「今度こそ、まっすぐに帰るんだぞ」とだけ言って去って行った。
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