タツマキにのまれて……

いっき

文字の大きさ
上 下
4 / 6

しおりを挟む
 どのくらい回り続けていただろう?

 ぼくたちはいつの間にか、気を失っていて、目を覚ました時には二人して、その空き地にねころがっていた。

「あれ……ここは?」

 同時に目を開けたぼくと真緒は顔を見合わせて、何があったかを思い出すと……二人して、顔が真っ青になった。

「そうだ。ぼくたち、タツマキにのまれたんだ……」

「ええ。でも私たち、何ともないわよね」

「うん。よかった……」

ぼくたちは、とりあえずほっと胸をなで下ろした。しかし、ぼくはあの三人の顔を思い出して、あわてて口を開いた。

「でも……みんなは?」

 どういうわけか、ぼくたちは大丈夫だったみたいだけれど……空き地に集まっていたクラスメイトたちが出て行ってすぐに、あんなに大きなタツマキがおそってきたんだ。みんなが無事なのかどうか、ぼくと真緒は気になって仕方がなかった。

「確かめに行こう!」

「うん!」

 さっきまで空き地にいたのは、飯田さんに羽村、川野だ。みんな、空き地から見て学校とは反対の方角に住んでいる。学校の方角からだれかが見ているような気がしたけれど、ぼくと真緒はそんなことは気にせずにかけ出した。

 まずは、飯田さんの家。空き地からはちょっと遠いけど、三人の中では一番近い。ぼくと真緒はその道をひたすらに、全速力で走ったんだ。


「い……飯田さん!」

「無事だったんだ……」

 息を切らしているぼくたちを見て、家に入ろうとしていた飯田さんは目を丸くした。

「金谷くんに今野さん? どうしたの、そんなに急いで……」

「良かったわ、本当に……」

「え、良かったって、何が?」

「あの後、空き地で大きなタツマキにおそわれてさ。ぼくと真緒、のまれてしまったんだ」

「え、うそ? タツマキに? 大丈夫だったの?」

 飯田さんはさらに目を大きく見開いた。

「ええ、私たちはどうにか無事だったの。でもそのタツマキ、飯田さんの方に向かって行っていないかって、気になって……」

 真緒がそう言うと、飯田さんは何かを思い出して青くなった。

「おじいちゃん……」

「えっ?」

「私のおじいちゃん、空き地の近くに住んでるの。まきこまれてたら、どうしよう……」

 飯田さんは真っ青な顔で、空き地に向かって一目散にかけ出した。

ぼくと真緒は、そんな飯田さんのことが気がかりだったけど……それ以上に、羽村と川野が無事かどうかの方が気になった。だから、次は羽村の家へ向かったのだった。


「お前ら、どうしたんだ?」

 羽村は家から出たところで、首をかしげた。

「良かった、無事だったのね」

「えっ、無事って?」

「ぼくと真緒、空き地でタツマキにのまれたんだ。どうにか、ぼくたちは大丈夫だったんだけど、すごく大きかったから羽村は無事かどうか、気になって……」

「うそ! タツマキ……見てみたかったぁ」

 羽村は目をかがやかせる。

「いや、見てみたかったじゃなくて。本当に大きくて、危なかったんだって」

「タツマキが通った後って、どんなだろう? 見に行こう!」

 そんなことを言って、羽村は空き地の方へ走って行ってしまった。

「まぁ、無事は無事だったんだし……それよりも、川野さんが気になるわ」

 あきれ顔で羽村を見送りながら、真緒がつぶやいた。

「そうだな。残るは川野……会いに行ってみよう」

 その三人の家は、空き地から見た方角がちょっとずつちがう。だから、三人ともに会ってみないと、無事かどうか確かめられなかったんだ。


 川野には、家に向かうとちゅうで会った。

「あら、あなたたち。放課後に二人でいるなんてめずらしいわね」

「川野さん……」

「無事だったんだ」

 ぼくと真緒は一気に力がぬけて、すわりこみそうになった。

「無事って?」

 川野は、ふしぎそうに首をかしげた。

「私と要、空き地で大きなタツマキにのまれて……」

「どうにか二人とも無事だったんだけど、川野は大丈夫かなって。気になって、しかたがなかったんだ」

 真緒とぼくがかわるがわる話すと、川野は目を丸くした。

「うそっ、そんなことが……? それで、周りの人とか、家は大丈夫だったの?」

「えっ、多分、大丈夫だと思うけど……」

「川野たち、三人が無事かどうかが気になって、あまり見てなかったな……」

 ぼくと真緒が顔を見合わせていると、川野は「大変!」と言ってあわて始めた。

「空き地でそんなことがあったなら、その近くでも何か飛ばされたりとか、あったかも知れないじゃない」

「そっか……私と金谷、そこまで気が回らなかった」

「私、空き地見に行ってくる!」

 とっても責任感の強い川野は、空き地へ向かってかけ出したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日戻りカレンダー

はりもぐら
児童書・童話
カレンダーを毎日めくるのが僕の日課。だけど、めくってもめくっても、なぜか最初に戻ってしまうんだ。

灰かぶりの子ども・サンドリヨン

山口かずなり
児童書・童話
サンドリヨンは、美人な子ども。 毎日お掃除ばかりで灰まみれ。 三つの呼び鈴が鳴ったら、3人の女のお世話ばかり。 そんな可哀想なサンドリヨンにも、叶えたい夢がありました。 その夢とは…。 (不幸でしあわせな子どもたちシリーズでは、他の子どもたちのストーリーが楽しめます。 短編集なので気軽にお読みください)

シャルル・ド・ラングとピエールのおはなし

ねこうさぎしゃ
児童書・童話
ノルウェジアン・フォレスト・キャットのシャルル・ド・ラングはちょっと変わった猫です。人間のように二本足で歩き、タキシードを着てシルクハットを被り、猫目石のついたステッキまで持っています。 以前シャルル・ド・ラングが住んでいた世界では、動物たちはみな、二本足で立ち歩くのが普通なのでしたが……。 不思議な力で出会った者を助ける謎の猫、シャルル・ド・ラングのお話です。

ドラゴンの愛

かわの みくた
児童書・童話
一話完結の短編集です。 おやすみなさいのその前に、一話ずつ読んで夢の中。目を閉じて、幸せな続きを空想しましょ。 たとえ種族は違っても、大切に思う気持ちは変わらない。そんなドラゴンたちの愛や恋の物語です。

マサオの三輪車

よん
児童書・童話
Angel meets Boy. ゾゾとマサオと……もう一人の物語。

勇者ぴよ

まめお
児童書・童話
普通に飼育されてた変な動物。 それがぴよ。 飼育員にある日、突然放り出されて旅に出る話。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

灰色のねこっち

ひさよし はじめ
児童書・童話
痩せっぽちでボロボロで使い古された雑巾のような毛色の猫の名前は「ねこっち」 気が弱くて弱虫で、いつも餌に困っていたねこっちはある人と出会う。 そして一匹と一人の共同生活が始まった。 そんなねこっちのノラ時代から飼い猫時代、そして天に召されるまでの驚きとハラハラと涙のお話。 最後まで懸命に生きた、一匹の猫の命の軌跡。 ※実話を猫視点から書いた童話風なお話です。

処理中です...