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好き
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僕の箏奏に美夏の歌声が重なった瞬間、僕達の時空間はあの頃に戻った。そう。美夏が元気に海辺を走り回っていた、あの頃に。
僕達が裸足で歩くその海辺は、いつでもずっと冷たくて。きっと永遠にその冷たさは変わらない。
爪が弦を弾く度に零れる旋律は、いつまでもずっと変わらない美夏の歌声に包まれた。永遠を思わせるその調べは僕達を包み込み、その余韻をこの空間に響かせた。
「このまま時が止まって欲しい」
そんな言葉さえも忘れてしまうほどに、僕達はこの調べと……この時空間と一体となっていた。知らぬ間に、僕の頬を涙が伝って落ちた。
最後の音をその部屋に響かせて、僕の爪はその動きを止めた。束の間の静寂が僕の部屋に流れた。
「涼平兄ちゃん。私、ずっと、歌い続けるよ」
美夏の頬にも一筋の雫が、窓から射す光を反射して光っていた。
「もう絶対……あんなこと、言わない」
美夏の口からあの不安が否定された瞬間……僕の胸にも微かな光が射して。思わず美夏を抱き締めた。
「好きだよ、涼平……」
従妹の美夏が放ったその「好き」という言葉がどういう「好き」なのかは分からなかった。でも……僕は気が付いたら、彼女の口から『兄ちゃん』という言葉が出る前に、その唇を自らの唇で塞いでいたのだった。
僕達が裸足で歩くその海辺は、いつでもずっと冷たくて。きっと永遠にその冷たさは変わらない。
爪が弦を弾く度に零れる旋律は、いつまでもずっと変わらない美夏の歌声に包まれた。永遠を思わせるその調べは僕達を包み込み、その余韻をこの空間に響かせた。
「このまま時が止まって欲しい」
そんな言葉さえも忘れてしまうほどに、僕達はこの調べと……この時空間と一体となっていた。知らぬ間に、僕の頬を涙が伝って落ちた。
最後の音をその部屋に響かせて、僕の爪はその動きを止めた。束の間の静寂が僕の部屋に流れた。
「涼平兄ちゃん。私、ずっと、歌い続けるよ」
美夏の頬にも一筋の雫が、窓から射す光を反射して光っていた。
「もう絶対……あんなこと、言わない」
美夏の口からあの不安が否定された瞬間……僕の胸にも微かな光が射して。思わず美夏を抱き締めた。
「好きだよ、涼平……」
従妹の美夏が放ったその「好き」という言葉がどういう「好き」なのかは分からなかった。でも……僕は気が付いたら、彼女の口から『兄ちゃん』という言葉が出る前に、その唇を自らの唇で塞いでいたのだった。
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