つくりもののお花

いっき

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「そんな……そんなことが……」

キャロルのお話を聞いて、ルイは言葉をうしないました。

お花のことを口にしてはいけない……お花をさがしているのをひみつにしなければいけないことに、そんな理由があっただなんて、知らなかったのです。

「ええ。だから王さまは、王女さまを守るために国にお花をうえることを禁止しているの」

キャロルはさびしそうに言いました。

すると、ルイはグッと手をにぎりしめて言いました。

「私……王さまのお城に行ってくる」

「えっ、でも……」

 キャロルもマリーも、おどろきました。

王さまのお城になんか行ったら、ろうやに閉じこめられてしまうかも知れない。帰って来れないかも知れない……でも、ルイの目はまっすぐに前を向いていました。

「だって、王女さまのお花のところに連れて行ってあげたらマリーは元気になれるかも知れないし、それに……王女さまも一人じゃなくなるから」

「一人じゃなくなる……」

「そう」

 ルイはにっこりとほほえみました。

「だって、王女さまは一人でお花になってしまって……きっと、さびしくて、心細くてたまらないと思うの。だから、マリー。王女さまのお友達になってあげて。王女さまを元にもどす方法は、そのあと、みんなで考えましょう」

 とても温かくて、愛と勇気にあふれたルイ。その言葉に、お花のようせいのマリーの胸もじんわりと温かくなりました。

ルイはもう、まっすぐにお城へ向かって歩きはじめています。

 キャロルはそんなルイを見て、にっこりとうれしそうに言いました。

「ルイ。あなたなら、もしかすると……私とお父さまをすくえるかも知れないわ。私、お城で待ってる」

「えっ?あれ……」

 キャロルの言葉をふしぎに思って、ふり返ったルイはおどろきました。

「キャロル?」

 さっきまでベンチにすわっていたはずのキャロルがいなくなっていたのです。

「うそ……どうしたんだろう」

 あたりを見回しましたが、やっぱりどこにもキャロルはいませんでした。

 しかし……

(お城で待ってる)

 キャロルはたしかに、そう言いました。

 だから、キャロルのことが気にかかりながらも、ルイはお城への道を急いだのでした。
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