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かつて、王さまには、一人の娘……かわいいかわいい王女さまがいました。王さまは王女さまをとてもかわいがっていましたが、かわいがるあまり、あぶないからとお外には一歩も出しませんでした。
でも、王女さまはお外にあこがれていて、本でしか読んだことのないお花を一回でいいから見てみたくって。ある日、お城をぬけ出してお花畑を見に行ったのでした。
お花畑には赤、白、黄色……色とりどりのお花がありました。それらは本当にきれいで、王女さまはとても感動しました。
しかし、王さまはとつぜんにお城をぬけ出した王女さまのことをひどく心配しました。だから、王女さまが見つかるとお城の中の王女のお部屋に閉じこめてしまったのです。
お部屋の中で、王女さまはずっと泣いていました。王さまが自分を心配して閉じこめていることは分かっています。でも、王女さまはお外もお花も大好きで、自由にお花畑に行きたいのです。
王女さまはお花畑からつんだ、一りんのお花を取り出しました。そして、そっとつぶやきました。
「閉じこめられるばかりだったら、私……もう、いなくなってしまった方がいいわ」
青くすんだその目からは、大つぶのなみだがポタポタと落ちました。その時でした。
「そうか、王女。お前は王の前からいなくなりたいのだね」
とつぜんに王女さまの前に黒い服をまとったおばあさんがあらわれました。
「だれ?」
おびえながら王女さまがたずねると、おばあさんはニヤリと笑いました。
「私はお花の魔女だ」
「お花の魔女……」
「ああ、そうだ。お前の心の悲しみによばれてここに来たのさ。お前はいなくなりたい……そう、言ったな?」
魔女のその言葉に、王女さまは青ざめました。
「いや、それは……私はお花が好きだから、もっと自由になりたくて。だって、お父さまは私を自由にして下さらないんだもの」
すると、魔女はうすきみ悪い笑いをうかべました。
「そうかい、そうかい。では、王をこらしめてやる。お前をお花にしてやろう」
「えっ、そんな……」
王女さまはふるえあがりました。
「だって、お前はお花が好きなのだろう?」
魔女はそう言って呪文をとなえはじめました。すると、王女さまはみるみるうちに、ピンク色のかわいらしいお花になってしまったのです。
「何ということだ……」
王さまが部屋に入ってきた時には、王女さまは魔女の手によってお花になってしまっていました。まっ青な顔の王さまに、魔女は不気味な笑いを向けました。
「この国にお花があると、王女のお花の栄養を吸い取り枯らしてしまうよ」
「おのれ……王女を元にもどすのだ!」
王さまは怒りのあまり声をふるわせました。
しかし……
「王よ。お前が本当に大事なことに気づくまでは、王女はずっとこのままだよ」
魔女はそう言ってにやりと笑い、消えてしまったのでした。
その日から、王さまは家来に命令して、国中のお花を全部、引っこぬきました。
そして、王さまは王女さまのお花だけを自分の所におき、国民がお花について口にするだけでろうやに閉じこめてしまうようになったのでした。
かつて、王さまには、一人の娘……かわいいかわいい王女さまがいました。王さまは王女さまをとてもかわいがっていましたが、かわいがるあまり、あぶないからとお外には一歩も出しませんでした。
でも、王女さまはお外にあこがれていて、本でしか読んだことのないお花を一回でいいから見てみたくって。ある日、お城をぬけ出してお花畑を見に行ったのでした。
お花畑には赤、白、黄色……色とりどりのお花がありました。それらは本当にきれいで、王女さまはとても感動しました。
しかし、王さまはとつぜんにお城をぬけ出した王女さまのことをひどく心配しました。だから、王女さまが見つかるとお城の中の王女のお部屋に閉じこめてしまったのです。
お部屋の中で、王女さまはずっと泣いていました。王さまが自分を心配して閉じこめていることは分かっています。でも、王女さまはお外もお花も大好きで、自由にお花畑に行きたいのです。
王女さまはお花畑からつんだ、一りんのお花を取り出しました。そして、そっとつぶやきました。
「閉じこめられるばかりだったら、私……もう、いなくなってしまった方がいいわ」
青くすんだその目からは、大つぶのなみだがポタポタと落ちました。その時でした。
「そうか、王女。お前は王の前からいなくなりたいのだね」
とつぜんに王女さまの前に黒い服をまとったおばあさんがあらわれました。
「だれ?」
おびえながら王女さまがたずねると、おばあさんはニヤリと笑いました。
「私はお花の魔女だ」
「お花の魔女……」
「ああ、そうだ。お前の心の悲しみによばれてここに来たのさ。お前はいなくなりたい……そう、言ったな?」
魔女のその言葉に、王女さまは青ざめました。
「いや、それは……私はお花が好きだから、もっと自由になりたくて。だって、お父さまは私を自由にして下さらないんだもの」
すると、魔女はうすきみ悪い笑いをうかべました。
「そうかい、そうかい。では、王をこらしめてやる。お前をお花にしてやろう」
「えっ、そんな……」
王女さまはふるえあがりました。
「だって、お前はお花が好きなのだろう?」
魔女はそう言って呪文をとなえはじめました。すると、王女さまはみるみるうちに、ピンク色のかわいらしいお花になってしまったのです。
「何ということだ……」
王さまが部屋に入ってきた時には、王女さまは魔女の手によってお花になってしまっていました。まっ青な顔の王さまに、魔女は不気味な笑いを向けました。
「この国にお花があると、王女のお花の栄養を吸い取り枯らしてしまうよ」
「おのれ……王女を元にもどすのだ!」
王さまは怒りのあまり声をふるわせました。
しかし……
「王よ。お前が本当に大事なことに気づくまでは、王女はずっとこのままだよ」
魔女はそう言ってにやりと笑い、消えてしまったのでした。
その日から、王さまは家来に命令して、国中のお花を全部、引っこぬきました。
そして、王さまは王女さまのお花だけを自分の所におき、国民がお花について口にするだけでろうやに閉じこめてしまうようになったのでした。
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