1 / 7
1
しおりを挟む
ヤルトは赤いレンガのお家がたちならぶ、小さな国です。ヤルトでは、お花を育ててはいけないことになっていました。王さまが、お花を植えることを禁止していたのです。ヤルトでは王さまの言うことは絶対で、逆らったらろうやに閉じこめられてしまいます。だから、みんなは王さまの言うとおりにして、国にはお花が一つもありませんでした。
ヤルトの町なかに住んでいる、一人の女の子がいました。名前はルイといいます。
ルイは本が大好きで、毎日、色んな本を読んでいました。冒険のお話、昔々のお話、そして、ちがう国のお話……。
そんなある日のことです。本に書いてあった、一つの言葉がルイの目にとまりました。
「お花……」
それは、ルイは知らないものでした。なぜなら、ヤルトでは植えることを禁止されていたからです。ヤルト以外の国に行ったことのないルイが、見たことも聞いたこともないのは当たり前のことでした。
「ねぇ、お母さん。お花って、なぁに?」
ルイがたずねたとたん、お母さんの顔は青ざめました。
「ルイ、その言葉はぜったいに言ってはいけません!」
「えっ、どうして?」
「ろうやに入れられてしまうし……お母さんにもお父さんにも会えなくなるのよ」
そう話すお母さんはとても悲しそうで、目にはなみだがあふれていました。そんなお母さんを見たルイは、もう何も言えなくなったのでした。
しかし、ルイは日に日にお花というものが気になって、たまらなくなりました。
ひらひらとした『花びら』というものがあって、いいにおいがして、赤、白、青……たくさんの色のものがあって、すごくきれいだというお花。一体、どんなだろう。
見てみたくて、さわってみたくてたまらなくって。ルイは本に書いてあるとおりに、お花をつくってみることにしました。
ピンク色の紙を切ってヒラヒラと重ねて、緑色のくきと葉っぱを作って……小さなかわいらしい、つくりもののお花ができあがりました。
「お花って、こんななのかな。すごくかわいいなぁ」
ルイはつくったお花をうっとりとながめました。
「こんなにかわいいお花にかこまれたら、とっても楽しいだろうなぁ」
ルイがそんなことを考えて、楽しい気分になっていた時でした。
ヒラヒラとしたきれいな羽をもつ何かが、ふわりとそのお花にとまりました。
「あれ、何だろう?」
にじ色をしているけれどもとうめいで、チョウチョみたいでとってもきれいな羽でした。だけれども、それはチョウチョではありませんでした。
「ようせいさん?」
それはまた、本の中でしか会ったことがありませんでした。とっても小さくて、かわいいかわいい女の子。それがまさに、今、ルイの目の前にいたのです。
そのようせいさんはルイと目が合うと、びっくりして花びらのかげにかくれました。
だからルイは、あわてて言いました。
「こわがらないで。出ておいで」
すると、ようせいさんはおそるおそる、花びらのかげから顔を出しました。
「私はルイ。あなたは?」
ルイがにっこりとほほえむと、ようせいさんも安心して笑顔になりました。
「私はお花のようせい、マリーよ」
マリーはチョウチョのような羽をつけて小さかったですが、よく見るとまつげが長くて目が青く、黄色いドレスを着ていてとてもかわいい女の子でした。ルイはうれしくなりました。
「お花にはようせいさんが来てくれるんだぁ。うれしい」
ルイはマリーと、いろいろなお話をしました。本で読んだ物語のお話、お父さんとお母さんのお話、ヤルトの町のお話。
マリーははじめて聞くことばかりみたいで、目をかがやかせて聞いていました。
ルイもそんなマリーの様子がうれしくて、毎日、ワクワクしながらマリーにお話しました。そんなルイとマリーは、すぐにとても仲のよいお友達になったのでした。
ヤルトの町なかに住んでいる、一人の女の子がいました。名前はルイといいます。
ルイは本が大好きで、毎日、色んな本を読んでいました。冒険のお話、昔々のお話、そして、ちがう国のお話……。
そんなある日のことです。本に書いてあった、一つの言葉がルイの目にとまりました。
「お花……」
それは、ルイは知らないものでした。なぜなら、ヤルトでは植えることを禁止されていたからです。ヤルト以外の国に行ったことのないルイが、見たことも聞いたこともないのは当たり前のことでした。
「ねぇ、お母さん。お花って、なぁに?」
ルイがたずねたとたん、お母さんの顔は青ざめました。
「ルイ、その言葉はぜったいに言ってはいけません!」
「えっ、どうして?」
「ろうやに入れられてしまうし……お母さんにもお父さんにも会えなくなるのよ」
そう話すお母さんはとても悲しそうで、目にはなみだがあふれていました。そんなお母さんを見たルイは、もう何も言えなくなったのでした。
しかし、ルイは日に日にお花というものが気になって、たまらなくなりました。
ひらひらとした『花びら』というものがあって、いいにおいがして、赤、白、青……たくさんの色のものがあって、すごくきれいだというお花。一体、どんなだろう。
見てみたくて、さわってみたくてたまらなくって。ルイは本に書いてあるとおりに、お花をつくってみることにしました。
ピンク色の紙を切ってヒラヒラと重ねて、緑色のくきと葉っぱを作って……小さなかわいらしい、つくりもののお花ができあがりました。
「お花って、こんななのかな。すごくかわいいなぁ」
ルイはつくったお花をうっとりとながめました。
「こんなにかわいいお花にかこまれたら、とっても楽しいだろうなぁ」
ルイがそんなことを考えて、楽しい気分になっていた時でした。
ヒラヒラとしたきれいな羽をもつ何かが、ふわりとそのお花にとまりました。
「あれ、何だろう?」
にじ色をしているけれどもとうめいで、チョウチョみたいでとってもきれいな羽でした。だけれども、それはチョウチョではありませんでした。
「ようせいさん?」
それはまた、本の中でしか会ったことがありませんでした。とっても小さくて、かわいいかわいい女の子。それがまさに、今、ルイの目の前にいたのです。
そのようせいさんはルイと目が合うと、びっくりして花びらのかげにかくれました。
だからルイは、あわてて言いました。
「こわがらないで。出ておいで」
すると、ようせいさんはおそるおそる、花びらのかげから顔を出しました。
「私はルイ。あなたは?」
ルイがにっこりとほほえむと、ようせいさんも安心して笑顔になりました。
「私はお花のようせい、マリーよ」
マリーはチョウチョのような羽をつけて小さかったですが、よく見るとまつげが長くて目が青く、黄色いドレスを着ていてとてもかわいい女の子でした。ルイはうれしくなりました。
「お花にはようせいさんが来てくれるんだぁ。うれしい」
ルイはマリーと、いろいろなお話をしました。本で読んだ物語のお話、お父さんとお母さんのお話、ヤルトの町のお話。
マリーははじめて聞くことばかりみたいで、目をかがやかせて聞いていました。
ルイもそんなマリーの様子がうれしくて、毎日、ワクワクしながらマリーにお話しました。そんなルイとマリーは、すぐにとても仲のよいお友達になったのでした。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
シャルル・ド・ラングとピエールのおはなし
ねこうさぎしゃ
児童書・童話
ノルウェジアン・フォレスト・キャットのシャルル・ド・ラングはちょっと変わった猫です。人間のように二本足で歩き、タキシードを着てシルクハットを被り、猫目石のついたステッキまで持っています。
以前シャルル・ド・ラングが住んでいた世界では、動物たちはみな、二本足で立ち歩くのが普通なのでしたが……。
不思議な力で出会った者を助ける謎の猫、シャルル・ド・ラングのお話です。
おねこのさんぽみち
はらぺこおねこ。
児童書・童話
おねこのうたを詩や物語にしてみました。
今まで書いた詩を……
これから書く詩を……
徒然るままに載せていきます。
また。ジャンルがなにになるかわかりませんのでおそらく一番近い「児童書・童話」で書かせていただきます。
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜
うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】
「……襲われてる! 助けなきゃ!」
錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。
人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。
「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」
少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。
「……この手紙、私宛てなの?」
少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。
――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。
新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。
「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。
《この小説の見どころ》
①可愛いらしい登場人物
見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎
②ほのぼのほんわか世界観
可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。
③時々スパイスきいてます!
ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。
④魅力ある錬成アイテム
錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。
◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。
◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。
◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。
わたしの師匠になってください! ―お師匠さまは落ちこぼれ魔道士?―
島崎 紗都子
児童書・童話
「師匠になってください!」
落ちこぼれ無能魔道士イェンの元に、突如、ツェツイーリアと名乗る少女が魔術を教えて欲しいと言って現れた。ツェツイーリアの真剣さに負け、しぶしぶ彼女を弟子にするのだが……。次第にイェンに惹かれていくツェツイーリア。彼女の真っ直ぐな思いに戸惑うイェン。何より、二人の間には十二歳という歳の差があった。そして、落ちこぼれと皆から言われてきたイェンには、隠された秘密があって──。
放課後モンスタークラブ
まめつぶいちご
児童書・童話
タイトル変更しました!20230704
------
カクヨムの児童向け異世界転移ファンタジー応募企画用に書いた話です。
・12000文字以内
・長編に出来そうな種を持った短編
・わくわくする展開
というコンセプトでした。
こちらにも置いておきます。
評判が良ければ長編として続き書きたいです。
長編時のプロットはカクヨムのあらすじに書いてあります
---------
あらすじ
---------
「えええ?! 私! 兎の獣人になってるぅー!?」
ある日、柚乃は旧図書室へ消えていく先生の後を追って……気が付いたら異世界へ転移していた。
見たこともない光景に圧倒される柚乃。
しかし、よく見ると自分が兎の獣人になっていることに気付く。
ドラゴンの愛
かわの みくた
児童書・童話
一話完結の短編集です。
おやすみなさいのその前に、一話ずつ読んで夢の中。目を閉じて、幸せな続きを空想しましょ。
たとえ種族は違っても、大切に思う気持ちは変わらない。そんなドラゴンたちの愛や恋の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる