ゴミ国

いっき

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誕生したばかりのその国は、ゴミを周辺の国から譲り受けることで成り立っていた。
そのため、周辺諸国からは『ゴミ国』との異名で呼ばれていた。

ゴミ国は、飲食業の盛んな国から大量の残飯を譲り受けて、国民の食料とした。
そして畜産業の盛んな国からは、大量の畜糞を譲り受けて堆積して肥料とし、それを農業の盛んな国に売り渡した。

初期のゴミ国のゴミビジネスはこの二つのみであったが、小さなその国は徐々に財を蓄えた。
何しろ、食料は産み出さずとも手に入るし、畜糞を堆積するだけで金になるのだ。
財力は年々上がっていった。

ゴミ国は次には工業国と取引をするようになった。
まずは工業国に溢れていた大量のプラスチックゴミに目をつけた。
プラスチックゴミは環境面の問題から工業国も処理に困っていたものであったので、引取りは有償にすることができたのだ。

プラスチックゴミは、その国にあった火山の火口に廃棄された。

火口の灼熱によりプラスチックは跡形もなく消えるかに思え、さらに有償で引き取ることができるメリットから、その国は年を経るごとにより一層、大量のプラスチックゴミを周辺諸国から引き取り、廃棄した。

プラスチックを引き取る際に得た金はゴミ国の蓄財となり、積み重なる一方だった。

ある時、火山活動は停止した。

すると、どうだろう。
今までずっとプラスチックゴミを廃棄していたその火口は、大量の石油を蓄える油田となったのだ。

ゴミ国は石油を周辺諸国に売ることで、より一層の富を得ることができた。

そして、ゴミ国はその後もゴミビジネスの手を止めることもなく……空き缶や冷蔵庫、廃車。そういった金属や家財道具等の廃棄物を周辺諸国から受け取り、それをリサイクル品として輸出することで、最大の富を得ることができたのだ。
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