隠された彼女の真実

ゆうき

文字の大きさ
上 下
1 / 2

前編

しおりを挟む
 彼女はいきなり命を絶った。
 理由は知る由もない。
 死因は自殺だとされている。
 だけど僕は知っている。
 彼女が自殺するなんてありえないということを。
 だからこれから聞き込みをしていこうと思う。
 
 クラスメイトで彼女と仲の良かったグループにまず話を聞く為、教室へ向かう。

「え~? 彼女の事? 本当に知らないなぁ~」
「何かおかしな点とかは?」
「そう言われても……」
「あ、でもおかしな点と言えば……」

 もう一人の女生徒は何かを思い出したかのように話し始める。

「そう言えばあいつに呼び出されてたよね? ほら、数学の……そう! 奥寺!」
「あ~そう言われてみれば、結構な頻度で呼び出されてたよね~」
「呼出?」
「あ、うん、数学の教科書の手伝いとか……ほらあの子って断れない子じゃない?」
 
 確かに彼女は教師や皆から頼みごとを押し付けられることが多々あった。
 少し減ったが未だにお願いする輩は後を絶たないことが多かった。
 
 もしかして無理難題で悩んで自殺したとか?

「私達が知ってるのはそのくらいかな…」
「ありがとう……」
「ねぇ永田、言いたくないけど引きずらない方が良いよ」
「そうそうあんたの所為じゃないんだし」
「まぁ、でもこれはけじめだから……」
「?」

 そうこれはけじめだ。
 もし僕が彼女の事を困らせた原因の一部ならそれを受け止め生きていくことにする。
 クラスメイトが行っていた数学の奥寺に話を聞く為、職員室に向かう。

「失礼します。 奥寺先生に用があるのですが」
「どうした?」
 
 扉を開けると、奥寺が職員室にいた。

「ん~まぁ、最近告白されることとその……変な頼み事を言われることが多いと相談を受けていてな……」
「変な事?」
「ほら、あの子って断れない子だろ? その俺の口からは直接言えないがそういうお願いする輩が一定数はいるらしいんだよ……まぁ、僕はそういった輩は先生がちゃんと注意したし、親衛隊全体にも伝えたから警備は強化されていたとは思うんだが……」
「その面子のリスト書いてもらってもいいですか?」
「生徒の個人情報に関わるから聞くのなら親衛隊から聞くなら親衛隊に頼むんだな」
「わかりました……」
 
 告白か……そりゃ可愛いもんな……

 彼女は黒髪ショートに顔に丸い黒い瞳、小動物を連想させる風貌の少女なのでモテないはずがない
 今更ながら彼女がそんな苦労してたなんて知らなかった……

 教えてくれればいいのに!
 
 そう思いながら次の親衛隊の方に話を聞きに向かう
 部屋に入るといつも活気だって僕が入ると敵意むき出しの彼らが彼女がいなくなり途方に暮れている

「ちょっといいか?」
 あ~永田か? 何の用だ?」
「彼女の悩みについて聞きたい……」
「悩み?」
「奥寺から彼女が奥寺に相談してたのは知ってるよな?」
「うん、その情報なら代表から聞いてたよ」
「代表は今どこに?」
「ここ最近は休んでいるよ……相当ショックだったみたいだから……」
「そうか、その相談の奴らのリストはあるのか?」
「あぁ、そう言えば……ここ最近見ていないな……」 
「そうか、そのリストの奴らをお前たちはどうしたんだ?」
「うん? 言う必要ある?」
 
 恐らくそれ相応の罰を与えたのだろう
 
「流石だな…」
「それでも彼女を救えなかった……俺達は親衛隊失格だよ……」
「執行した奴は覚えているか?」
「あぁ、書こうか?」
「頼む……」
 
 彼が覚えているリストを書き出してもらう
 
「ありがとう……」
「それにしても今更何を調べ回っている?」
「俺はどうしても彼女が自殺したとは思えなくてな……悪い……」
「そうか、何か見つけたら教えろよ……代表にもそれとなく聞いてみることにするから……」
「あぁ……」
 
 そう言って彼女の親衛隊の根城を後にした
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ショートミステリー入門編4 〜ダイイング・メッセージ3〜

紅陽悠理
ミステリー
ダイイング・メッセージ その3 今回の犯人は誰だ❗️

 罠

紫 李鳥
ミステリー
急行・池袋行き。車内はいわゆるすし詰め状態だった。もうすぐ池袋駅に着くという寸前、若い女の悲鳴が静寂を切り裂いた。 ※これは、交通系ICカードが普及する以前の物語です。

ショートミステリー入門編7〜凶器の行方〜

紅陽悠理
ミステリー
今回は見つからない弾です

支配するなにか

結城時朗
ミステリー
ある日突然、乖離性同一性障害を併発した女性・麻衣 麻衣の性格の他に、凶悪な男がいた(カイ)と名乗る別人格。 アイドルグループに所属している麻衣は、仕事を休み始める。 不思議に思ったマネージャーの村尾宏太は気になり 麻衣の家に尋ねるが・・・ 麻衣:とあるアイドルグループの代表とも言える人物。 突然、別の人格が支配しようとしてくる。 病名「解離性同一性障害」 わかっている性格は、 凶悪な男のみ。 西野:元国民的アイドルグループのメンバー。 麻衣とは、プライベートでも親しい仲。 麻衣の別人格をたまたま目撃する 村尾宏太:麻衣のマネージャー 麻衣の別人格である、凶悪な男:カイに 殺されてしまう。 治療に行こうと麻衣を病院へ送る最中だった 西田〇〇:村尾宏太殺害事件の捜査に当たる捜一の刑事。 犯人は、麻衣という所まで突き止めるが 確定的なものに出会わなく、頭を抱えて いる。 カイ :麻衣の中にいる別人格の人 性別は男。一連の事件も全てカイによる犯行。 堀:麻衣の所属するアイドルグループの人気メンバー。 麻衣の様子に怪しさを感じ、事件へと首を突っ込んでいく・・・ ※刑事の西田〇〇は、読者のあなたが演じている気分で読んで頂ければ幸いです。 どうしても浮かばなければ、下記を参照してください。 物語の登場人物のイメージ的なのは 麻衣=白石麻衣さん 西野=西野七瀬さん 村尾宏太=石黒英雄さん 西田〇〇=安田顕さん 管理官=緋田康人さん(半沢直樹で机バンバン叩く人) 名前の後ろに来るアルファベットの意味は以下の通りです。 M=モノローグ (心の声など) N=ナレーション

クオリアの呪い

鷲野ユキ
ミステリー
「この世で最も強い呪い?そんなの、お前が一番良く知ってるじゃないか」

ウアジャトの目

moca.
ミステリー
ある日俺が目撃したものは俺の人生を変えるものだった。

「ここへおいで きみがまだ知らない秘密の話をしよう」

水ぎわ
ミステリー
王軍を率いる貴公子、イグネイは、ある修道院にやってきた。 目的は、反乱軍制圧と治安維持。 だが、イグネイにはどうしても手に入れたいものがあった。 たとえ『聖なる森』で出会った超絶美少女・小悪魔をだまくらかしてでも――。 イケメンで白昼堂々と厳格な老修道院長を脅し、泳げないくせに美少女小悪魔のために池に飛び込むヒネ曲がり騎士。 どうしても欲しい『母の秘密』を手に入れられるか??

繋がっていた蔓

紫 李鳥
ミステリー
忌まわしい現実から逃れるために、美希子は木下と見合いをした。

処理中です...