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一年生編
そして決着はつかない
しおりを挟む「相変わらず、陰湿な戦い方ね」
「勝負にルール以外の卑怯なんてない……そやろ?」
「ま、それは否定しない」
彼女の言う通り、スポーツは戦いだ。
ルールのある戦いで、守ってさえいれば試合中に戦い方をとやかく言われる筋合いはない。
「でも、妹の仇は取らせてもらうよ」
彼女がそう言うと、綾辻さんは敵意むき出しの笑顔で彼女を見る。
「やる気になってくれて嬉しいわ」
そう言うと、サーブを決める。
結果は紅羽がサーブとなった。
互いに戦い方は違えど、サービスゲームが得意な二人だ。
この試合は紅羽がサービスゲームをキープするか綾辻さんがブレイク……つまり、彼女がゲームを取るかで決まる。
互いに、配置につく。
試合が始まる。
まずは紅羽がサービスラインのセンター側に打つ。
「フォルト」
ギリギリではあるが、ラインが逸れていた。
「え、フォルト!?」
「……確認する」
ラインに乗っていなかった。
「フォルトだ」
そう言って僕は審判台に戻る。
そして、彼女は少し遅めのスライスサーブをセンターに打つ。
ラリー戦に持ち込む。
「これ、苦手やろ!!」
紅羽の苦手なスライス系のロブを上げる。
彼女は前に出て、ノーバウンドでスマッシュを放つ。
このロブはセンターラインに近くなければ、只の絶好球だ。
「なっ!?」
「誠一の真似してるか知らないけど、甘いよ」
そう言って試合が続く。
紅羽はサーブを決め、1-0になる。
「負けるか~!!」
紅羽との打ち合いが続く。
いつもの展開、紅羽の球を必死に食らいつく綾辻さん。
もう、完全にオフの自主練じゃない。
互いに打ち合うと、1-1になった。
「はい、そこまで」
時間が迫っていた。
「またかいな!!」
「ま、仕方ない……本選で決着つけよ」
そう言うと、紅羽に手を出す。
綾辻さんはそう言われ、深く溜息を吐いた後彼女の手を取る。
「さて、それじゃあ整備のジャンケンしよう」
「えぇ~」
「三人ともつかれてるし、僕がやっとくよ」
「本当!? ありがと~!!」
美優ちゃん、さっきまで僕を見てたのはそれか……。
なんだか、異様に可愛らしい視線を送ってきたのは、僕に整備をさせるためらしい。
「なんか、大丈夫か? 紅羽の妹……」
「多分……」
僕が整備を済ませると、互いに着替え終えると集合する。
「アイス食べたい!!」
「仕方ないな~」
そう言って紅羽は僕の方を見る。
「何がいい?」
「僕はいいよ」
「そう」
そう言って三人はアイスを買って美味しそうに食べている。
食べ終えると、綾辻さんと途中で分かれ紅羽を送ると、僕は家に帰宅した。
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