31 / 44
一年生編
デート?
しおりを挟む次の日の日曜日、椎名さんとの待ち合わせをしている
「おまたせ~、待った?」
「うん、十分ほど待った」
「そこは、今来たところっていうものじゃない?」
「そんな鉄板ネタ恥ずかしくて言えるか」
そう言うと、椎名さんはふふっと口元を手で押さえて笑う。
「それじゃあ、いこっか」
そう言って中に入る。
もう閉店セールとは思えないほど、否閉店セールだからこその最後の花火というべきだろうか、活気づいていた。
「凄い人だな」
「だね~、特売の時並みに人多いね~」
そう言うと、彼女は僕の手を握ってくる。
「離れたらいけないから、いい?」
横目で彼女は照れ臭そうに言ってくる。
「うん」
「やった」
そう言うと、彼女は身体を寄せてくる。
「ちょっ」
「いいっていったじゃん」
「それは手をつなぐ意味じゃ」
「私、そんな事は言ってないよ?」
言葉遊びになってきた。
確かに僕がそう思っただけで、彼女自身は手を繋ぐだけだとは一言も言っていない。
彼女は悪戯っぽく、それで揶揄うような顔で僕を見てくる。
「はぁ~」
この顔は見たことがある。
紅羽が僕をからかう時の顔にそっくりだった。
「……駄目だった?」
「駄目じゃないけど、どっかの誰かに似てるなって思ってさ」
そう言うと、不機嫌そうになる。
喜怒哀楽の激しい子だな。
「どうかしたか?」
「何でもない」
わけが分からん。
「あ、あそこ見てもいい?」
彼女の指差す方に視線を移す。
そこは夏を前にピッタリの水着売り場だった
「私、新しい水着が欲しくって」
「うん、わかった……僕はここで待って」
「君も来るの~!!」
僕の腕を引っ張ってくる。
そして中に入ると、彼女は水着を選んでいる。
「これとこれ、どっちがいいかな?」
白を基調としたビキニと紅を基調としたビキニを見せてくる。
どうして僕が選ぶのだろうか。
「どっちもいいけど、紅い方が似合うと思う」
「こっちか……すみませ~ん、試着させてくださ~い」
そう言うと、試着室の前で待機させられる。
この状況は何だろうか。
目の前で椎名さんが着替えていると思うと、なんだかよくわからない気持ちに駆られてしまう。
しばらくしてカーテンが開かれると、例の水着を着た彼女が出てくる。
「どう……かな……?」
「その、とてもよく似合ってる」
正直、何て言って良いかわからなかった。
ただ純粋に似合っているとしか言いようがなかった。
「……すみません、これ買いま~す!!」
「いいのか?」
「うん、これがいいの」
そう言って彼女は着替えると、会計を済ませる。
「お腹空いたね~」
時間を見ると、お昼の時間だった。
「うわ~、どこも混んでるね~」
「この時間は何処も混んでそうだね」
「だったら、ここを出た所のたい焼きを食べない?」
「いいね、テイクアウトだし、近くの公園で食べよう」
そう言って僕らはここを出てたい焼きを注文しに向かった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる