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一年生編

デート?

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 次の日の日曜日、椎名さんとの待ち合わせをしている

「おまたせ~、待った?」
「うん、十分ほど待った」
「そこは、今来たところっていうものじゃない?」
「そんな鉄板ネタ恥ずかしくて言えるか」

 そう言うと、椎名さんはふふっと口元を手で押さえて笑う。
  
「それじゃあ、いこっか」

 そう言って中に入る。
 もう閉店セールとは思えないほど、否閉店セールだからこその最後の花火というべきだろうか、活気づいていた。

「凄い人だな」
「だね~、特売の時並みに人多いね~」

 そう言うと、彼女は僕の手を握ってくる。
 
「離れたらいけないから、いい?」

 横目で彼女は照れ臭そうに言ってくる。

「うん」
「やった」

 そう言うと、彼女は身体を寄せてくる。

「ちょっ」
「いいっていったじゃん」
「それは手をつなぐ意味じゃ」
「私、そんな事は言ってないよ?」

 言葉遊びになってきた。
 確かに僕がそう思っただけで、彼女自身は手を繋ぐだけだとは一言も言っていない。
 彼女は悪戯っぽく、それで揶揄うような顔で僕を見てくる。

「はぁ~」

 この顔は見たことがある。
 紅羽が僕をからかう時の顔にそっくりだった。
 
「……駄目だった?」
「駄目じゃないけど、どっかの誰かに似てるなって思ってさ」

 そう言うと、不機嫌そうになる。
 喜怒哀楽の激しい子だな。
 
「どうかしたか?」
「何でもない」

 わけが分からん。
 
「あ、あそこ見てもいい?」

 彼女の指差す方に視線を移す。
 そこは夏を前にピッタリの水着売り場だった

「私、新しい水着が欲しくって」
「うん、わかった……僕はここで待って」 
「君も来るの~!!」

 僕の腕を引っ張ってくる。
 そして中に入ると、彼女は水着を選んでいる。

「これとこれ、どっちがいいかな?」

 白を基調としたビキニと紅を基調としたビキニを見せてくる。
 どうして僕が選ぶのだろうか。

「どっちもいいけど、紅い方が似合うと思う」
「こっちか……すみませ~ん、試着させてくださ~い」

 そう言うと、試着室の前で待機させられる。
 この状況は何だろうか。
 目の前で椎名さんが着替えていると思うと、なんだかよくわからない気持ちに駆られてしまう。
 しばらくしてカーテンが開かれると、例の水着を着た彼女が出てくる。
 
「どう……かな……?」
「その、とてもよく似合ってる」

 正直、何て言って良いかわからなかった。
 ただ純粋に似合っているとしか言いようがなかった。

「……すみません、これ買いま~す!!」
「いいのか?」
「うん、これがいいの」

 そう言って彼女は着替えると、会計を済ませる。

「お腹空いたね~」

 時間を見ると、お昼の時間だった。
 
「うわ~、どこも混んでるね~」
「この時間は何処も混んでそうだね」
「だったら、ここを出た所のたい焼きを食べない?」
「いいね、テイクアウトだし、近くの公園で食べよう」

 そう言って僕らはここを出てたい焼きを注文しに向かった。
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