上 下
30 / 44
一年生編

幼馴染みと鍋を囲む

しおりを挟む
 ……重い……。
 一度帰り、親に紅羽の家でご飯を食べてくるといったらこんなに持たされてしまった。
 酒やつまみ、全部親父の秘蔵品だった。
 ……後で高いつまみ、奢ってあげよう。
 シクシクなく、親父の姿が目に浮かんだ。
 っというか、この状況でおまわりさんに声を掛けられたら補導確定だ。
 酒とつまみ……完全に高校生が買うものでもないし、酒に関しても買える物でもない。

 まぁ、堂々としていれば大丈夫だろう。
 そうして紅羽の家に着くと、青羽さんがとても嬉しそうな表情を浮かべていた。

「いいの!? 本当に!?」
「はい、両親からなので」
「ありがとう~」

 そう言って袋を受け取ると、青羽さんはそっちのけで冷蔵庫の方向へ向かって行った。

「ごめんね、あれお義父さんのでしょ?」
「うん、まぁ帰りにつまみでも買って帰ることにするよ」
「ささ、上がって上がって……」

そう言われ僕は食卓へ向かうと、既に準備は整っていた。
お手洗い等を済ませ、僕は席に着く。

「誠一は何がいい?」

 並べられたのはペットボトルの山と持ってきたビールだった。

「じゃ、ビールで」
「馬鹿じゃないの」

素の顔で紅羽に突っ込まれてしまった。
その、氷のように蔑む目はやめてもらえませんかね?
僕の心のHPが少しずつ毒のように削られていく。

「冗談でその目は、マジでドM以外は心に来るからやめてくれ」
「え、お兄ちゃんってそうじゃないの?」

 美優ちゃんが僕の心を下から上に切り返してくる。
 何なの、振り下ろしからの切り替えし……どこかの剣豪なのか、貴様ら。

「僕のそんな趣味はない」
「え、そうなの!?」

 君ら姉妹、僕の事を何だと思っているのだろう。
 っというか、紅羽は本当に僕の事が好きなのだろうか?
 怪しくなってきた。

「とにかく、冗談で精神削られるのは不本意なのでやめていただきたい」
「もっとやれって事かな?」
「多分……」
「聞こえてるぞ」
「乙女の秘密を盗み聞ぎなんて趣味が悪いよ、お兄ちゃん」

 僕が悪いのか?

「とりあえず、ジンジャエールで」
「どうぞ、旦那~」
「どこの代官様だ僕は……」

美優ちゃんの言葉に突っ込みを入れてる。
 そうして、僕らはいただきますと言って料理を食べる。
 今日の鍋はキムチ鍋だ。
 キムチ鍋の素に野菜や肉が溢れそうなくらいぶち込んである。

「いや、肉や野菜は少しずつ入れろよ」
「面倒くさい!!」

 そうだった、こいつは料理に関しては凄く大雑把だった。
 まぁ、鍋なので大丈夫だろう。

「紅羽」
「うん?」
「本選出場おめでとう」
「「おめでとう」」

 そう言うと僕らは鍋を囲み、楽しく過ごした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...