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第十五話 六歳の誕生日

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一年後…

「おめでとう、サウル」
「ありがとうございます」

 月日が流れるのはあっという間である。
 今日は六歳になる日だ。
 この世に生を受けて六年が経つのだ。

「六歳になった記念に少し旅行に行くぞ」
「旅行?」
「あぁ、アルス王国って所に観光に行くぞ!」

 アルス王国には冒険者ギルドがあり、適性試験を受けて今後の将来を見据える。
 子供には能力を知りに行くために観光ということにしているのだろう。
 その方が子供にとっても嬉しいし、喜んで行くからだ。

「観光ですか!? 楽しみです!!」

 子供らしくはしゃぐサウルを見て、両親は嬉しそうにする。
 
「じゃあ、二日後に出かけるとしよう!」
「はい!」
 
 サウルは窓の外を見る。
 村以外の場所に行ったことが無いので、どんなものなのだろう。
 初めての王宮、そしてギルドに期待を膨らませながら二日過ごすのだった。

 二日後。

 約束通り三人は冒険者ギルドに向かっている。
 前世の日本とは違い、整備されていない道路を馬が走っている。
 この世界は服装は違えど、中世ヨーロッパの時代を連想させる。

「早いな、サウルももう六歳か……」
「おじさん臭いよ、それにこの話題何回目よ」

 遠くを見るウオラに呆れたようにミリーが言う。
 ウオラは楽しそうに、しながら馬車を走らせている。
 周りには馬車が沢山通る場所なのか、この道だけ草木は生えていない。
 恐らくここは整備されてないだけで、この世界では道路なのだろう。
 稀に商人ともすれ違うので沢山通った為、土の道が出来たのだろう。
 馬車酔いというのを経験すると思っていたのだが、生憎サウルには縁のない事だったようだ。
 
 
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