サンタなんかじゃない

的射 梓

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注がれたスキはマガイモノ?

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「ほなみん、良かった……」

 はぁはぁと肩で息をしながら、かっちゃんはぼくを抱き寄せようとする。
 それだからぼくは身をひるがえらせてかっちゃんに背中を向けた。

「だから今はほなみんじゃないって言ってるだろ」

 釘を刺す。萎えるようなことを言ったはずなのに、おしりにはかっちゃんのもうち直りかけているものが当たっていて。
 そっか。ユズキちゃんっていう子とエッチしたくて仕方ないんだね……。
 かっちゃんがぐぐっと抱え込むようにして立ち上がるから、ぼくも合わせるように立って。

「ユズキ、そこ、壁に手をついて」

 言われたとおりに壁に手をつくと、スカートをまくり上げられて、ショーツを下ろされた。
 ぼくの中をほぐして湿らせようとして、ローションまみれのかっちゃんの指が入ってきて……。
 入ってきた瞬間、ぞくっとした刺激がそこから広がった。

「入れて、平気か?」
「うん……」

 ずぶ、とかっちゃんの中心が背中からぼくの中に突き刺さる。
 変な声を漏らしてしまいそうになって、だから、くちびるんで必死にこらえた。

「……っ、ん……」

 ローションを塗り広げるようにかっちゃんの切っ先がゆるゆるとうごめく。
 かちかちという時計の音ばかりが部屋の中に響いて。
 脈拍がとっても鬱陶うっとうしい。嬉しい。嬉しいはず。確かに、嬉しいのに……。

「……ぁ……っは……んっ……」

 せきを切ったようにかっちゃんの律動りつどうが激しくなる。
 がっしりした腕に捕えられたままバックから切っ先を突き立てられて、体ががくんがくんと揺れる。
 ぱんっ、ぱんっ、とカラダのぶつかる音がして。

「……っ……ぁ……」

 立っているのがつらくなってきて、壁にほおを寄せて耐える。
 口元をおおって、なんとか声をおさえる。でも、息づかいはごまかしきれなくて。

 一番深いところでつながっている筈なのに、かっちゃんとぼくとは何も繋がってないみたいな気がする。
 かっちゃん、ぼくのこと呼んで欲しいよ……。
 苦しいんだ、すごく。
 なのに。

「っ、ユズキ、ユズキっ!」

 感極まってきたらしいかっちゃんは、ぼくじゃなくて本当に抱きたかった子の名前を呼ぶ。
 ぼくが言い出したことなんだけど。
 その子の名前を呼びながら、更にはげしく体を揺らしてくる。お尻に、かっちゃんのあと、残っちゃいそうだ。
 ああぁ、胸が苦しいよ……。かっちゃんがその子の名前を呼ぶたびにきりきりといたむ。
 でも、その痛みさえ、かっちゃんがくれてるんだって思うと、嬉しく思ってしまって。

「……っ」

 とぷ、とぼくの中に、かっちゃんの欲望が吐き出された。
 ぼくの中だ。全部、ぼくの中に。
 すごく、熱い。
 でも……
 冷え冷えとしてきて。

  * * *

 何回もからだ穿うがたれて、ようやくお風呂で暖まれる。
 ぼくだって望んでしたことなのに、全然すっきりしなくて、胸の中が……もやもやする。
 それでも心地よいお風呂にかれば全て解決するはずで。

 ふと、鏡が目に入る。
 マガイモノのメイク。
 マガイモノのコーデ。
 嘘ばっかりだ。
 マガイモノの愛情がお似合いだ。

「あは」

 さっさとお風呂に入ろうとして、気づく。

「あれ、着替え忘れて来ちゃった」

 アホすぎる。お風呂セットは持ってきてるのに着替えが足りない。
 着替えを取りに、バッグを置かせてもらっている部屋に戻ると。

 かっちゃんがお取り込み中だった。

悠李ゆうり……悠李……っ!!」

 至近距離に入るまで気づかずにいたぼくは、その光景を目の当たりにして頭が動かなくって。
 だって……かっちゃんがぼくの名前を呼びながら、自分の分身をしごいているんだもの。

「っ!? 悠李? 見てたのか!?」

 おかしい。
 かっちゃんだったらぼくのこと、ほなみんって呼ぶはずだ。

 ぼくが動けないでいるうちに、かっちゃんはふらふらと目の前まで来ていて。
 来て、それで……押し倒された。

「ふぅっ!?」

 強引に唇を奪われた。
 すぐやめるのかなって思ったら、角度とかよくないだけだったみたいで、い方をずらして再びキスされる。
 かっちゃんの手がぼくの両脇の床に伸びていて、捕えられている。

 怖い。
 いつものかっちゃんと違う。

「悠李ッ!」

 体がきしむんじゃないかっていう程に強く抱きしめられた。隙間がなくなるくらいに密着してる。
 かっちゃんの切っ先はまだ固くて……その切っ先を……

 ぼくの後蕾こうらいに宛てがった。

 ぼくはただ、かっちゃんの首すじにしがみついて。

「やっ……やだ……やめて……ぼくだってかっちゃんのこと好きだよ、でもこんなの嫌!」
「つ!ごめん悠李」

 むくっと体を起こしたかっちゃんは。
 今度は、包むように優しく抱きしめてくれて。

「悠李……ずっと好きだった」

 未だ心臓の音がうるさくて、すぐに返事ができなくて。
 胸が苦しくて息がしづらいけれど、嫌な感じじゃない。……やっぱ苦しい。
 ぽわんと胸の中に暖かいものが広がるけれど、寒い日に家に帰ってきて暖房をつけたばかりの時みたいに、なかなかその暖かさが馴染まなくて、痛い。
 ドキドキさせられたのもかっちゃんなのに、安心させてくれるのもかっちゃんだ。

「……うん」

 いつか好きって言いたいなって思ってたのに……とりあえず返事をするだけで精一杯だ。
 いつか好きって返したい。
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