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白キツネはラッパを三回吹き鳴らす ※
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何もできないし何もしてあげられてないのに。
気がつくと寄り添っていてくれる春都の腕に、ずる……ともたれかかる。
「ねえ、千影? 僕も千影のこと欲しくて。いい?」
「うん……」
春都はスラックスの前をくつろげて、手際よく避妊具を装着する。
それがなんだか唐突で、どうしたらいいか分からなくてどきどきしながら見守っていた。
すると背中から腕を回してもらって抱き寄せられる。
もう少しだけ、このままでいて欲しいような気もしてしまう。
「手、ついて」
春都が腕を持ってくれて、テーブルの上まで持っていかれる。
だからそのままテーブルに下ろして、腰から上を傾けた。
背中の春都が見えなくて、緊張しながら待っていたら。
おしりの形に添って、大きな手のひらで撫でられる……。
「恥ずかしい……」
直接的な快感がないだけ、意識が冴えたままだからかえって羞恥心が強くて。
「お尻も可愛らしいよ、千影は」
はやくしてって言うのも恥ずかしくて、そのまま春都に身を委ねた。
何度か撫でられると、手とは違う硬い感触が触れた。
(今日は後ろかな……)
でも、春都の分身は会陰部を沿って前の方に回ってくる。
充血した花びらの上を行き来して、花芽をとんとんとつつかれた。
それだけで、さっき呼び起こされたわたしの中の熱がまた戻ってくる。
「千影。挿れるよ」
「うん……」
先っぽが、つぷ、とわたしの中に埋まったら。
背中から抱き締められて、春都の体温に包まれる。
そのままぐぐって押し開かれて、最奥まで繋がる。
目の前はただがらんとした真っ暗闇なのに、一つになれた多幸感がすごい。
「はぁ、ぁ……!!」
きゅうきゅうと中の春都を締め付けたり緩めたり。
テーブルの上に倒れ込んで……嘘イキ、した。
すぐに春都に抱き戻される。
「挿れただけでイッてしまった?」
「ごめんなさい……」
「謝らなくていいよ。あは、本当に可愛いなあ」
春都はそのまま少しぎゅうって抱き締めててくれる。
これが気持ちよくって、ときどき彼のことを騙してしまう……。
感情の希薄なわたしは神経もどこか欠落しているみたいで。
本当は、春都の分身が与えてくれるものだけじゃ気持ちよくなりきれない。
自分の体の中の形だって、ぐにゃぐにゃしてて彼の硬いのじゃないとよく分からないのに。
こんな人間だかそうでないのかさえ曖昧な、中途半端なわたしなのに。
本気で好きでいてくれて、かちかちに硬くしてくれること、心底うれしいと思ってしまう。
(気持ちだけでいけるんだったら、いけそうなのに、な……)
「ありがとう。も、大丈夫」
「千影、疲れてない? 平気?」
「ううん……春都にも気持ちよくなって、欲しいから」
だって、大好きな春都がわたしの中で気持ちよくなって、いって……くれるのが本当にしあわせなんだもの。
そしたら強く抱き締められて、中の春都自身が一際大きく膨張した。
はだけた胸が彼の程よく筋肉の乗った腕に擦れて、じりじりと電気が走る。
「そんなに締め付けないで欲しいな、千影。そうでなくても収まりが良いのだから」
「だって、春都が大きくする……から……!」
春都に腰を持たれて、中で硬いのがゆるゆると動き出す。
ほん少しだけもどかしい刺激だけど、確かな彼の存在感が感じられて幸せあふれる。
春都が教えてくれた気持ちいいところにいっぱい引っ掛けられて、じゅくじゅくと蜜が染み出していて。
その蜜をすくって花芽にまぶされれば、くりくりってこねられた。
「ん……っ。春都、はる……と……」
「ああ、可愛いな、可愛いよ千影」
春都の顔は見えないけれど、その分大好きな声がいっぱい聴こえた。
目を閉じると、少し苦しげな春都の声と、体と体のぶつかる音、ちょっとだけ……えっちな水音と。
それに奥深くまで繋がってまた抜けていく律動だってより強く感じられて。
「あ、ん……ん、あぅ……」
「千影、千影……ッ」
揺れる花芽を指の腹でつぶされれば、じわりと気持ちいい波紋が伝った。
時おり律動と重なると、苦しいくらいに感じてしまって、でも痛気持ちよくて。
身をくねらせてその波を逃がせば、中の春都自身が別のところにあたってまた身悶える。
「千影の中、暖かくてとても気持ちいい」
「あぁ……ん、くぅ……春都、すき……!」
名前を呼んで呼ばれて、体も心も擦れ合う。
わたしの中で春都が動いてるのってなんだかとても不思議で、すごく気持ちいい……。
弱いところだってそうじゃないところだって、彼と重なっているっていうだけでぽかぽかしてくる。
口下手だから、体を重ねてるときが一番春都を近くに感じられるのかもしれない……。
「や、……んん、ふ……」
時間のことも考えられなくて、ただただ彼のことだけを感じた。
けれど時間が経つに連れて、摘まれた花芽と胸の先にもどかしいのがきて。
ただ他人事みたいに体が昂ぶってくるのを感じてく。
いっぱいになれば、びくん、ってなって。
「ふぁ……!!」
「……ッ。千影、もう出そうだ」
花芽をこねられながらそんなこと言われたら、きゅんと熱が高まって。
奥の刺激の強い所を春都自身でぐりぐりと弄られる。
そこ、まだ、痛い……。
「ん、も少し、優しくして……」
「ああすまない。愛してる、千影」
がつがつした律動が少しゆっくりになって、挿入も浅くなった。
我慢できないくらいに求めてくれるのも、もっと強くしたいのに我慢してくれるのも。
どっちもうれしくて、胸の中まで春都でいっぱいになる。
「千影、出る、出すよ」
耳も頭もおなかの奥も、みんな春都でいっぱいで。
花芽を擦りつけながら、ぎゅって中の春都自身のことをハグした。
「ん……っ。ふぁあ……」
体じゅう蕩かされて、抓られた拍子にぴんと弓なりになった。
そのまま、大きな泡になって弾け散る快感にたゆたう。
「千影、可愛い……ッ」
体の芯まで春都に穿たれて、小さな呻き声を拾った――
後片付けをしてしまうとまた心寂しくなる。
だからまた、横から春都に抱きついて甘えた……。
「そろそろ帰ろうか」
「や。もう少しこうしてたい」
「電車なくなるよ? 可愛いな、千影は」
あやすように頭を撫でくれる春都が好き。
春都とだったら、窓の外の景色なんて何でも綺麗に映る。
(お店でえっちなんて、普通しないしね……)
* * *
女の子は言います。
「男の子が言うのです。俺のものにならないのなら、タルト代を返せと」
白キツネはラッパを三回吹き鳴らすと、読み上げます。
「罪状。時間泥棒ならびに愛情恐喝。女王陛下、判決をお願いします」
女王さま――かつてお姫さまであった――は淡々と宣いました。
「では、その男の子の頸を刎ねてしまいましょう」
(終)
気がつくと寄り添っていてくれる春都の腕に、ずる……ともたれかかる。
「ねえ、千影? 僕も千影のこと欲しくて。いい?」
「うん……」
春都はスラックスの前をくつろげて、手際よく避妊具を装着する。
それがなんだか唐突で、どうしたらいいか分からなくてどきどきしながら見守っていた。
すると背中から腕を回してもらって抱き寄せられる。
もう少しだけ、このままでいて欲しいような気もしてしまう。
「手、ついて」
春都が腕を持ってくれて、テーブルの上まで持っていかれる。
だからそのままテーブルに下ろして、腰から上を傾けた。
背中の春都が見えなくて、緊張しながら待っていたら。
おしりの形に添って、大きな手のひらで撫でられる……。
「恥ずかしい……」
直接的な快感がないだけ、意識が冴えたままだからかえって羞恥心が強くて。
「お尻も可愛らしいよ、千影は」
はやくしてって言うのも恥ずかしくて、そのまま春都に身を委ねた。
何度か撫でられると、手とは違う硬い感触が触れた。
(今日は後ろかな……)
でも、春都の分身は会陰部を沿って前の方に回ってくる。
充血した花びらの上を行き来して、花芽をとんとんとつつかれた。
それだけで、さっき呼び起こされたわたしの中の熱がまた戻ってくる。
「千影。挿れるよ」
「うん……」
先っぽが、つぷ、とわたしの中に埋まったら。
背中から抱き締められて、春都の体温に包まれる。
そのままぐぐって押し開かれて、最奥まで繋がる。
目の前はただがらんとした真っ暗闇なのに、一つになれた多幸感がすごい。
「はぁ、ぁ……!!」
きゅうきゅうと中の春都を締め付けたり緩めたり。
テーブルの上に倒れ込んで……嘘イキ、した。
すぐに春都に抱き戻される。
「挿れただけでイッてしまった?」
「ごめんなさい……」
「謝らなくていいよ。あは、本当に可愛いなあ」
春都はそのまま少しぎゅうって抱き締めててくれる。
これが気持ちよくって、ときどき彼のことを騙してしまう……。
感情の希薄なわたしは神経もどこか欠落しているみたいで。
本当は、春都の分身が与えてくれるものだけじゃ気持ちよくなりきれない。
自分の体の中の形だって、ぐにゃぐにゃしてて彼の硬いのじゃないとよく分からないのに。
こんな人間だかそうでないのかさえ曖昧な、中途半端なわたしなのに。
本気で好きでいてくれて、かちかちに硬くしてくれること、心底うれしいと思ってしまう。
(気持ちだけでいけるんだったら、いけそうなのに、な……)
「ありがとう。も、大丈夫」
「千影、疲れてない? 平気?」
「ううん……春都にも気持ちよくなって、欲しいから」
だって、大好きな春都がわたしの中で気持ちよくなって、いって……くれるのが本当にしあわせなんだもの。
そしたら強く抱き締められて、中の春都自身が一際大きく膨張した。
はだけた胸が彼の程よく筋肉の乗った腕に擦れて、じりじりと電気が走る。
「そんなに締め付けないで欲しいな、千影。そうでなくても収まりが良いのだから」
「だって、春都が大きくする……から……!」
春都に腰を持たれて、中で硬いのがゆるゆると動き出す。
ほん少しだけもどかしい刺激だけど、確かな彼の存在感が感じられて幸せあふれる。
春都が教えてくれた気持ちいいところにいっぱい引っ掛けられて、じゅくじゅくと蜜が染み出していて。
その蜜をすくって花芽にまぶされれば、くりくりってこねられた。
「ん……っ。春都、はる……と……」
「ああ、可愛いな、可愛いよ千影」
春都の顔は見えないけれど、その分大好きな声がいっぱい聴こえた。
目を閉じると、少し苦しげな春都の声と、体と体のぶつかる音、ちょっとだけ……えっちな水音と。
それに奥深くまで繋がってまた抜けていく律動だってより強く感じられて。
「あ、ん……ん、あぅ……」
「千影、千影……ッ」
揺れる花芽を指の腹でつぶされれば、じわりと気持ちいい波紋が伝った。
時おり律動と重なると、苦しいくらいに感じてしまって、でも痛気持ちよくて。
身をくねらせてその波を逃がせば、中の春都自身が別のところにあたってまた身悶える。
「千影の中、暖かくてとても気持ちいい」
「あぁ……ん、くぅ……春都、すき……!」
名前を呼んで呼ばれて、体も心も擦れ合う。
わたしの中で春都が動いてるのってなんだかとても不思議で、すごく気持ちいい……。
弱いところだってそうじゃないところだって、彼と重なっているっていうだけでぽかぽかしてくる。
口下手だから、体を重ねてるときが一番春都を近くに感じられるのかもしれない……。
「や、……んん、ふ……」
時間のことも考えられなくて、ただただ彼のことだけを感じた。
けれど時間が経つに連れて、摘まれた花芽と胸の先にもどかしいのがきて。
ただ他人事みたいに体が昂ぶってくるのを感じてく。
いっぱいになれば、びくん、ってなって。
「ふぁ……!!」
「……ッ。千影、もう出そうだ」
花芽をこねられながらそんなこと言われたら、きゅんと熱が高まって。
奥の刺激の強い所を春都自身でぐりぐりと弄られる。
そこ、まだ、痛い……。
「ん、も少し、優しくして……」
「ああすまない。愛してる、千影」
がつがつした律動が少しゆっくりになって、挿入も浅くなった。
我慢できないくらいに求めてくれるのも、もっと強くしたいのに我慢してくれるのも。
どっちもうれしくて、胸の中まで春都でいっぱいになる。
「千影、出る、出すよ」
耳も頭もおなかの奥も、みんな春都でいっぱいで。
花芽を擦りつけながら、ぎゅって中の春都自身のことをハグした。
「ん……っ。ふぁあ……」
体じゅう蕩かされて、抓られた拍子にぴんと弓なりになった。
そのまま、大きな泡になって弾け散る快感にたゆたう。
「千影、可愛い……ッ」
体の芯まで春都に穿たれて、小さな呻き声を拾った――
後片付けをしてしまうとまた心寂しくなる。
だからまた、横から春都に抱きついて甘えた……。
「そろそろ帰ろうか」
「や。もう少しこうしてたい」
「電車なくなるよ? 可愛いな、千影は」
あやすように頭を撫でくれる春都が好き。
春都とだったら、窓の外の景色なんて何でも綺麗に映る。
(お店でえっちなんて、普通しないしね……)
* * *
女の子は言います。
「男の子が言うのです。俺のものにならないのなら、タルト代を返せと」
白キツネはラッパを三回吹き鳴らすと、読み上げます。
「罪状。時間泥棒ならびに愛情恐喝。女王陛下、判決をお願いします」
女王さま――かつてお姫さまであった――は淡々と宣いました。
「では、その男の子の頸を刎ねてしまいましょう」
(終)
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