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第298話
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大切に思っているのに、大切に思っているからこそ、どうしようもなくすれ違ってしまっていた。
言語で表すことのできない鬱屈とした激情に蓋をする。
それでも私は……
「それでも……っ! 皆が必死に考えて動いて、そのおかげで私がここにいるのだとしたらっ! 私は皆がしたことを否定したくない!」
「フォリア……」
『何故』『どうして』、心の底から溢れてくる感情は答えの分かりきった疑問で埋め尽くされていた。
けどそれを口にした瞬間、全ては瓦解を始める。
私たちは笑っていた。
泣きながら笑っていた。
やけくそかと言われれば、まあ、やけくそだ。
だって家族も、知人も、物も、そして私たちの世界すらも無くなろうとしてるのだから。
やけくそでも何でもいい、今を走る気力さえ湧くのなら何でも。
「カナリア、再構築を。あれがここまで来たら私でも全部を防ぐのは無理だから」
先ほどの光球を、しかし先ほどを超える速度で編み始めていた彼女が鼻を鳴らす。
「ふん、私を誰だと思っている。既に再開しているさ」
「流石、天才だね」
「貴様も随分と分かって来たじゃないか、この私の才能と技術の偉大さをな!」
大層に胸を張る彼女へ笑おうとしたその時、耳が風切り音を察知する。
「おい!」
「ふんっ!」
激しい踏み込み。アスファルトが罅割れ、トラックほどの破片がいくつか地面に生まれる。
「よっこい……っしょぉ!」
指先を隙間へと滑り込ませ全力で放り投げたアスファルト塊が、くるくると激しい回転で飛翔物を巻き込み、そのまま爆音を上げモンスター達のど真ん中へと直撃。
ついでに巻き込みからうまく逃れたいくつかの飛翔物……よく見ると手のひらほどの羽根だった……を弾き飛ばし、背後のカナリアへ声を張る。
「大丈夫!?」
「ああ、完璧だ! 後二分ばかし稼げ!」
二分、きっと彼女なりの最短が二分なのだろう。
……が、その言葉に顔をしかめる。
恐らくあの膨大なモンスター達がここまでたどり着くのに、何もしなければ一分もかからない。
そしてカナリアの魔法陣は今ですら彼女の身長程、最終的には相当巨大なサイズになるだろう。
つまり的としても当たりやすくなる、私一人で覆い切れるものではない。
ここまでママや馬場さんのおかげもあり、戦闘は群れへと大穴を穿ったあの一回だけで済んでいる。
この先予想される戦いのため、出来ることなら一度足りとてスキルを使いたくないのは確かだが、しかし今回ばかりは避けようもない。
――直接突っ込んで気を引くか?
私があそこへ飛び込めば当然群れの動きはしっちゃかめっちゃかになる、スキルを使わずとも撹乱は可能だ。
カナリアが合図をした瞬間『アクセラレーション』で飛び出せばいい、流石にあの加速した世界で追い付けるモンスターは存在しないだろう。
これが最適か、一つの問題を除けば。
「おい、無闇に近づくと消滅に巻き込まれるかもしれん! 攻撃をするにしても、なるべく遠距離で済ませろ!」
姿勢を低くした瞬間、まるで後ろに目が付いているのかと勘繰るほど正確に、ぴしゃりと彼女が警告を飛ばした。
「ですよ……ねっとぉ!」
目の前に飛んできた羽根達を右手で全て摘み足元へ叩き捨て、苛立たしさに唇を噛む。
そう、ダンジョンの崩壊において最も恐れるべきは、いつ起こるかもわからない世界の消滅。
モンスターを中心として起こるそれは、私ですら目視することが出来ないほど一瞬で、その上ありとあらゆるものを吸い込む絶対的なもの。
モンスターの数が多ければ多いほど、当然その場所で消滅が起こる確率は跳ね上がる。
あの群れだ、なるべく触れないよう一瞬で仕留めて離れる、などは難しい。
たとえどれだけ弱いモンスターでかすり傷すら負わない存在であっても、目の前で消滅が起こってしまえばもう終わりだ。
じゃあどうしろっての!
じりじりと熱を帯びる後頭部、怒りに声が溢れそうになる。
多分、私は私が思っている以上に焦っていた。
「……っ、ふぅ……」
落ち着け……冷静になれ、私。
何か利用できるものは? 周囲には何がある?
所々抉れた道路、へし折れた街路樹や街灯、元協会本部であったビル、家の残骸。
木……は無理、柔らかすぎる。
二千レベル程度のでっかいダチョウですら粉砕してきたのだ、まともに通じるわけがない。
ならば……
「まずはこれでお試しかな」
横に建てられていた街灯の根元へ足がめり込む。
子気味の良い音を立て千切れる内部の配線、一層力を籠めれば街灯は容易く外れた。
そして捩じり切り取られた街灯の根元を二度、三度と踏み付け、平たく潰していく。
あまり投擲は戦いで使ったことがないけど……まあ、こんだけ馬鹿みたいにいるなら、適当に投げても当たるでしょ。
ぐるりと回した首から、コキパキと音が上がる。
「よ……っこいしょぉ!」
少し力を籠め過ぎたせいで握っていた場所が指型に抉れるが、しかしそれが上手く回転を掛けることに一役を買ったようで、凄まじい回転を纏い槍投げよろしく一直線で滑空する街灯。
突き刺さり、貫通し、無数のモンスターが空中で魔石へと姿を変える。
「もいっちょ!」
更に空中の魔石は放たれた追撃の街灯に叩き潰され、砕け散り……盛大な爆風の連鎖を生み出した。
「おぉ……」
思わぬ結果、見事なまでの大爆発に思わず拍手をしてしまう。
異常なまでに過密したモンスター達との戦闘による思わぬ副産物。
それは魔石同士が連鎖的に爆発を起こすことで、私のように魔法が使えなくとも遠距離から起爆、広範囲へのダメージが狙える事であった。
勿論魔石自体が頑丈なのもあり余程レベル差がないと起こりえない現象ではあるが、これは運が良い。
「ハァッ! せあっ!」
それから私は手当たり次第に投げた。
電柱、家の屋根、コンクリート塊、踏み割ったアスファルト。時々カナリアの方向へ飛ぶモンスターの攻撃を遮り、ひたすらに。
そして周囲にまともにダメージを与えられそうなものが無くなったことに気付き、ふと手を止めた。
「やっぱり……っ」
流石に、厳しいか。
そもそも投擲に向いている物があまりない。
ほとんどが砕かれたり千切れたりしてしまっているのだ。最低限のサイズとして軽自動車以上、それ以下のサイズではまともにダメージを与えることも叶わない。
その上投擲の衝撃で砕けないことも重要だ。多くの物は地震の衝撃で罅などが入ってしまっているので、投げた途中で分解してしまうものも多い。
私の視線が向いたことに気付いたのだろう、カナリアが小さく首を振る。
「まだだ」
投げられるものは、ある。
ただしここから離れれば、という言葉が付くが。
当然だ、私は周囲にあるものを投げていたのだから、場所を移動すればまだ使えそうなものはある。
しかしそれはカナリアから距離を取るということ。
離れれば魔法陣の護衛は叶わない、間違いなく攻撃を防ぎきることはできないだろう。
最後に残されたものは……
言語で表すことのできない鬱屈とした激情に蓋をする。
それでも私は……
「それでも……っ! 皆が必死に考えて動いて、そのおかげで私がここにいるのだとしたらっ! 私は皆がしたことを否定したくない!」
「フォリア……」
『何故』『どうして』、心の底から溢れてくる感情は答えの分かりきった疑問で埋め尽くされていた。
けどそれを口にした瞬間、全ては瓦解を始める。
私たちは笑っていた。
泣きながら笑っていた。
やけくそかと言われれば、まあ、やけくそだ。
だって家族も、知人も、物も、そして私たちの世界すらも無くなろうとしてるのだから。
やけくそでも何でもいい、今を走る気力さえ湧くのなら何でも。
「カナリア、再構築を。あれがここまで来たら私でも全部を防ぐのは無理だから」
先ほどの光球を、しかし先ほどを超える速度で編み始めていた彼女が鼻を鳴らす。
「ふん、私を誰だと思っている。既に再開しているさ」
「流石、天才だね」
「貴様も随分と分かって来たじゃないか、この私の才能と技術の偉大さをな!」
大層に胸を張る彼女へ笑おうとしたその時、耳が風切り音を察知する。
「おい!」
「ふんっ!」
激しい踏み込み。アスファルトが罅割れ、トラックほどの破片がいくつか地面に生まれる。
「よっこい……っしょぉ!」
指先を隙間へと滑り込ませ全力で放り投げたアスファルト塊が、くるくると激しい回転で飛翔物を巻き込み、そのまま爆音を上げモンスター達のど真ん中へと直撃。
ついでに巻き込みからうまく逃れたいくつかの飛翔物……よく見ると手のひらほどの羽根だった……を弾き飛ばし、背後のカナリアへ声を張る。
「大丈夫!?」
「ああ、完璧だ! 後二分ばかし稼げ!」
二分、きっと彼女なりの最短が二分なのだろう。
……が、その言葉に顔をしかめる。
恐らくあの膨大なモンスター達がここまでたどり着くのに、何もしなければ一分もかからない。
そしてカナリアの魔法陣は今ですら彼女の身長程、最終的には相当巨大なサイズになるだろう。
つまり的としても当たりやすくなる、私一人で覆い切れるものではない。
ここまでママや馬場さんのおかげもあり、戦闘は群れへと大穴を穿ったあの一回だけで済んでいる。
この先予想される戦いのため、出来ることなら一度足りとてスキルを使いたくないのは確かだが、しかし今回ばかりは避けようもない。
――直接突っ込んで気を引くか?
私があそこへ飛び込めば当然群れの動きはしっちゃかめっちゃかになる、スキルを使わずとも撹乱は可能だ。
カナリアが合図をした瞬間『アクセラレーション』で飛び出せばいい、流石にあの加速した世界で追い付けるモンスターは存在しないだろう。
これが最適か、一つの問題を除けば。
「おい、無闇に近づくと消滅に巻き込まれるかもしれん! 攻撃をするにしても、なるべく遠距離で済ませろ!」
姿勢を低くした瞬間、まるで後ろに目が付いているのかと勘繰るほど正確に、ぴしゃりと彼女が警告を飛ばした。
「ですよ……ねっとぉ!」
目の前に飛んできた羽根達を右手で全て摘み足元へ叩き捨て、苛立たしさに唇を噛む。
そう、ダンジョンの崩壊において最も恐れるべきは、いつ起こるかもわからない世界の消滅。
モンスターを中心として起こるそれは、私ですら目視することが出来ないほど一瞬で、その上ありとあらゆるものを吸い込む絶対的なもの。
モンスターの数が多ければ多いほど、当然その場所で消滅が起こる確率は跳ね上がる。
あの群れだ、なるべく触れないよう一瞬で仕留めて離れる、などは難しい。
たとえどれだけ弱いモンスターでかすり傷すら負わない存在であっても、目の前で消滅が起こってしまえばもう終わりだ。
じゃあどうしろっての!
じりじりと熱を帯びる後頭部、怒りに声が溢れそうになる。
多分、私は私が思っている以上に焦っていた。
「……っ、ふぅ……」
落ち着け……冷静になれ、私。
何か利用できるものは? 周囲には何がある?
所々抉れた道路、へし折れた街路樹や街灯、元協会本部であったビル、家の残骸。
木……は無理、柔らかすぎる。
二千レベル程度のでっかいダチョウですら粉砕してきたのだ、まともに通じるわけがない。
ならば……
「まずはこれでお試しかな」
横に建てられていた街灯の根元へ足がめり込む。
子気味の良い音を立て千切れる内部の配線、一層力を籠めれば街灯は容易く外れた。
そして捩じり切り取られた街灯の根元を二度、三度と踏み付け、平たく潰していく。
あまり投擲は戦いで使ったことがないけど……まあ、こんだけ馬鹿みたいにいるなら、適当に投げても当たるでしょ。
ぐるりと回した首から、コキパキと音が上がる。
「よ……っこいしょぉ!」
少し力を籠め過ぎたせいで握っていた場所が指型に抉れるが、しかしそれが上手く回転を掛けることに一役を買ったようで、凄まじい回転を纏い槍投げよろしく一直線で滑空する街灯。
突き刺さり、貫通し、無数のモンスターが空中で魔石へと姿を変える。
「もいっちょ!」
更に空中の魔石は放たれた追撃の街灯に叩き潰され、砕け散り……盛大な爆風の連鎖を生み出した。
「おぉ……」
思わぬ結果、見事なまでの大爆発に思わず拍手をしてしまう。
異常なまでに過密したモンスター達との戦闘による思わぬ副産物。
それは魔石同士が連鎖的に爆発を起こすことで、私のように魔法が使えなくとも遠距離から起爆、広範囲へのダメージが狙える事であった。
勿論魔石自体が頑丈なのもあり余程レベル差がないと起こりえない現象ではあるが、これは運が良い。
「ハァッ! せあっ!」
それから私は手当たり次第に投げた。
電柱、家の屋根、コンクリート塊、踏み割ったアスファルト。時々カナリアの方向へ飛ぶモンスターの攻撃を遮り、ひたすらに。
そして周囲にまともにダメージを与えられそうなものが無くなったことに気付き、ふと手を止めた。
「やっぱり……っ」
流石に、厳しいか。
そもそも投擲に向いている物があまりない。
ほとんどが砕かれたり千切れたりしてしまっているのだ。最低限のサイズとして軽自動車以上、それ以下のサイズではまともにダメージを与えることも叶わない。
その上投擲の衝撃で砕けないことも重要だ。多くの物は地震の衝撃で罅などが入ってしまっているので、投げた途中で分解してしまうものも多い。
私の視線が向いたことに気付いたのだろう、カナリアが小さく首を振る。
「まだだ」
投げられるものは、ある。
ただしここから離れれば、という言葉が付くが。
当然だ、私は周囲にあるものを投げていたのだから、場所を移動すればまだ使えそうなものはある。
しかしそれはカナリアから距離を取るということ。
離れれば魔法陣の護衛は叶わない、間違いなく攻撃を防ぎきることはできないだろう。
最後に残されたものは……
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