『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA

文字の大きさ
205 / 257

第二百五話

しおりを挟む
「くっ、離せ!」
「青いな。力だけで経験が足りない、端的に言って未熟で歪だ」

 押しても引いてもびくともしない、とんでもない力でカリバーが掴まれてしまっている。
 私と見た目の年齢も大して変わらないのに、圧倒的なレベル差が彼女との間にはあった。

 集中しすぎていたのだろう。
 視界の端で、彼女の片手がゆっくりと伸びてきていることにようやく気付く。

 思い出せ。そう、こういう時は……

『武器だけに』
「――固執しないっ!」

 脳内で蘇る彼の声。
 過去の記憶に従ってカリバーを手放し、ついでに少女の顎を蹴り上げ後退。

 その瞬間、轟音を響かせ私の居た場所に雷撃が落ちた。

「あぶなっ!?」
「ふむ……案外聡いか」
「生憎とっ、素晴らしい師匠が私にはいるからねっ!」

 だが一発で当てられるとは考えていなかったのだろう。
 左右へランダムにステップを踏みながら高速で走り回る度、一瞬前に私がいた場所がはじけ飛ぶ。

 雷撃そのものは恐ろしく速く、目で追うことなんて出来そうにない。
 加えてその恐ろしい威力。かつて体験し、先ほどカリバーを掴まれた力から鑑みて、恐らく今の私ですら一発食らってしまえばアウトだ。
 しかし全て直線であり、彼女の腕からまっすぐにしか飛ばないのが幸いだ。

 時々恐ろしいほど正確に私の進行先へ雷撃が飛ぶが、その度琉希によって生み出された岩が盾代わりとなって防ぐ。
 流石のアシストだ。

 しばらく逃げ回っていると、ふと雷撃の音が消えたことに気付く。
 どうやらいったん打ち止めのようで、私もその隙を突いて琉希の下へ舞い戻る。

「ごめん、取られちゃった」
「鉄パイプならありますよ」
「ん、それでいいや。ありがと」

 彼女が『アイテムボックス』から取り出した一本の鉄パイプ。
 スキルの拡張性から様々なものを入れているのだろう、グリップなど握りやすさこそ劣るものの、今はカリバーの代わりに振れるものがあるだけでありがたい。

 軽く力を籠めるも歪みすらしない。彼女のスキルで強化されているので頑丈だ、これならいける。

「やはり奇妙だ、貴様らは年齢の割に魔力が多すぎる」
「私からすればこんな寒い中、裸足に服一枚のお前の方が変だけどね」

 見ていて寒々しいにもほどがある。

 しかし腹立たしいことだが、彼女にとって私たちの事は敵ですらないのだろう。
 視線は右へ左へ、そして独り言にしてはあまりに大きい呟きと共に、しかし私たちの質問には一切答えないまま、少女は私のカリバーを適当に振り回しながら思案に沈み込んでいた。

 少し動き回ったせいなのか、はたまた別の理由からか額に汗が垂れる。

 はっきり言ってこいつ強すぎる。
 ちょっと攻撃を与えて縛るだとか、手加減だとかなんて言っていられる状況ではない。

 反撃の意志はあっても本格的に攻撃してくるつもりがないのなら、これは一旦撤退するのも選択肢に入れるべきか。

「私はそういう風には創っていない・・・・・・はず……まさかアレがなにか仕掛けて……? おい貴様、負荷・・はどうした?」
「ふか……?」

 思考と共にあちこちへ彷徨っていた彼女の目線が、突如として私たちへ突き刺さる。

 ふか、ふかってなんだ。
 まさかフカヒレのフカじゃないだろう、いきなりサメが出てくるのはB級映画だけで十分だ。

 何を言っているのかさっぱり分からない。
 彼女の中で巡り、完結した問いをいきなり私たちに投げかけられたところで、それに完璧な返答を返せるのはエスパーだけだろう。
 もし会話する意思が有るというのなら、一から説明くらいしてくれたっていいじゃないか。

「ふん……気が変わった、直接見た方が早い」

 しかし残念ながら説明より己の目で確かめることを選んだらしい。

 何を言っているのかと私が眉をひそめた瞬間、一直線に空を舞い・・・・、猛烈な勢いでこちらへ飛び込んでくる少女。

 来る……!

 握り慣れぬ鉄パイプを正面に構え、浅く息を吐き出す。
 覚悟を決めたなんて言った手前恥ずかしいことだが、正直気圧されてしまっていた。

 小さい体であるが凄まじい威圧感だ。
 今まで全く動くことのなかった少女、圧倒的に力の差がある彼女が自発的に攻撃を仕掛ける。
 その飛翔は速さに自信のある私ですらもはや影としか捉えられず、ほとんど反応することも出来ず、ただこの身に襲い掛かってくるであろう衝撃に構えることが限界であった。


「ぐぅっ……!?」
「琉希!?」


 だが、想定して居たそれは来なかった。

 背後から響く苦悶の声に振り向く。

 浮かんだまま琉希を掴み上げ、彼女のコートを引っ張る少女。
 琉希も岩やチェーンソーを操り必死にぶつけるが、そのどれもがまるで当たってすらいないように弾き返されている。

 やられた。
 目的は最初からアタッカーの私ではなく後衛である琉希か……!

「お前……っ! 『アクセラレーション』!」

 不味い……!



 しかしあと一歩のところまで近づいた瞬間。

「ふん。所詮魔術の体系すら理解していない貴様らが、この私に勝てるわけないだろう」

 無数の光輝く魔法陣が少女の背後から展開される。

 こんなもの……嘘でしょ……?

 魔法なんて使えないし、使っているところだってこんなに無数の魔法陣が折り重なり、一枚の巨大な魔法陣を形成しているのなんて見たことがない。
 いっそ芸術的とすら言える、緻密な文字と幾何学によって描かれた極光の芸術品。

 圧倒的だった。
 そして同時に理解した。彼女は理外に存在する怪物なのだと、私たちが歯向かってはいけない存在なのだと。

 決して誰も介入することの出来ないはず・・の加速した世界。
 しかし彼女は琉希を手放し、地面に叩き落される・・・・・・・・・彼女を気にする素振りもなくこちらに振り向くと、呆れたように顔をしかめた。

「――!? は」
「貴様が遅いだけだ」


 加速した世界で声が伝わる訳がない。
 信じがたいことだが、私のスキルは発動した瞬間に打ち消されてしまったらしい。

 それに気づいたのは、お腹へ恐ろしい勢いでカリバーが叩きつけられ、めり込み、吹き飛び、いくつもの木へ叩きつけられへし折り、力なく地面へ転がった後だった。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活

さとう
ファンタジー
生まれつき絶大な魔力を持つハーフィンクス公爵家に生まれた少年、シャドウ。 シャドウは歴代最高と言われるほど絶大な魔力を持っていたが、不幸なことに魔力を体外に放出する才能が全くないせいで、落ちこぼれと呼ばれ冷遇される毎日を送っていた。 十三歳になったある日。姉セレーナ、妹シェリアの策略によって実家を追放され、『闇の森』で魔獣に襲われ死にかける。 だが、シャドウは救われた……世界最高峰の暗殺者教団である『黄昏旅団』最強のアサシン、ハンゾウに。 彼は『日本』から転移した日本人と、シャドウには意味が理解できないことを言う男で、たった今『黄昏旅団』を追放されたらしい。しかも、自分の命がもう少しで尽きてしまうので、自分が異世界で得た知識を元に開発した『忍術』をシャドウに継承すると言う。 シャドウはハンゾウから『忍術』を習い、内に眠る絶大な魔力を利用した『忍術』を発動させることに成功……ハンゾウは命が尽きる前に、シャドウに最後の願いをする。 『頼む……黄昏旅団を潰してくれ』 シャドウはハンゾウの願いを聞くために、黄昏旅団を潰すため、新たなアサシン教団を立ちあげる。 これは、暗殺者として『忍術』を使うアサシン・シャドウの復讐と、まさかの『学園生活』である。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

処理中です...