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第二百五話
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「くっ、離せ!」
「青いな。力だけで経験が足りない、端的に言って未熟で歪だ」
押しても引いてもびくともしない、とんでもない力でカリバーが掴まれてしまっている。
私と見た目の年齢も大して変わらないのに、圧倒的なレベル差が彼女との間にはあった。
集中しすぎていたのだろう。
視界の端で、彼女の片手がゆっくりと伸びてきていることにようやく気付く。
思い出せ。そう、こういう時は……
『武器だけに』
「――固執しないっ!」
脳内で蘇る彼の声。
過去の記憶に従ってカリバーを手放し、ついでに少女の顎を蹴り上げ後退。
その瞬間、轟音を響かせ私の居た場所に雷撃が落ちた。
「あぶなっ!?」
「ふむ……案外聡いか」
「生憎とっ、素晴らしい師匠が私にはいるからねっ!」
だが一発で当てられるとは考えていなかったのだろう。
左右へランダムにステップを踏みながら高速で走り回る度、一瞬前に私がいた場所がはじけ飛ぶ。
雷撃そのものは恐ろしく速く、目で追うことなんて出来そうにない。
加えてその恐ろしい威力。かつて体験し、先ほどカリバーを掴まれた力から鑑みて、恐らく今の私ですら一発食らってしまえばアウトだ。
しかし全て直線であり、彼女の腕からまっすぐにしか飛ばないのが幸いだ。
時々恐ろしいほど正確に私の進行先へ雷撃が飛ぶが、その度琉希によって生み出された岩が盾代わりとなって防ぐ。
流石のアシストだ。
しばらく逃げ回っていると、ふと雷撃の音が消えたことに気付く。
どうやらいったん打ち止めのようで、私もその隙を突いて琉希の下へ舞い戻る。
「ごめん、取られちゃった」
「鉄パイプならありますよ」
「ん、それでいいや。ありがと」
彼女が『アイテムボックス』から取り出した一本の鉄パイプ。
スキルの拡張性から様々なものを入れているのだろう、グリップなど握りやすさこそ劣るものの、今はカリバーの代わりに振れるものがあるだけでありがたい。
軽く力を籠めるも歪みすらしない。彼女のスキルで強化されているので頑丈だ、これならいける。
「やはり奇妙だ、貴様らは年齢の割に魔力が多すぎる」
「私からすればこんな寒い中、裸足に服一枚のお前の方が変だけどね」
見ていて寒々しいにもほどがある。
しかし腹立たしいことだが、彼女にとって私たちの事は敵ですらないのだろう。
視線は右へ左へ、そして独り言にしてはあまりに大きい呟きと共に、しかし私たちの質問には一切答えないまま、少女は私のカリバーを適当に振り回しながら思案に沈み込んでいた。
少し動き回ったせいなのか、はたまた別の理由からか額に汗が垂れる。
はっきり言ってこいつ強すぎる。
ちょっと攻撃を与えて縛るだとか、手加減だとかなんて言っていられる状況ではない。
反撃の意志はあっても本格的に攻撃してくるつもりがないのなら、これは一旦撤退するのも選択肢に入れるべきか。
「私はそういう風には創っていないはず……まさかアレがなにか仕掛けて……? おい貴様、負荷はどうした?」
「ふか……?」
思考と共にあちこちへ彷徨っていた彼女の目線が、突如として私たちへ突き刺さる。
ふか、ふかってなんだ。
まさかフカヒレのフカじゃないだろう、いきなりサメが出てくるのはB級映画だけで十分だ。
何を言っているのかさっぱり分からない。
彼女の中で巡り、完結した問いをいきなり私たちに投げかけられたところで、それに完璧な返答を返せるのはエスパーだけだろう。
もし会話する意思が有るというのなら、一から説明くらいしてくれたっていいじゃないか。
「ふん……気が変わった、直接見た方が早い」
しかし残念ながら説明より己の目で確かめることを選んだらしい。
何を言っているのかと私が眉をひそめた瞬間、一直線に空を舞い、猛烈な勢いでこちらへ飛び込んでくる少女。
来る……!
握り慣れぬ鉄パイプを正面に構え、浅く息を吐き出す。
覚悟を決めたなんて言った手前恥ずかしいことだが、正直気圧されてしまっていた。
小さい体であるが凄まじい威圧感だ。
今まで全く動くことのなかった少女、圧倒的に力の差がある彼女が自発的に攻撃を仕掛ける。
その飛翔は速さに自信のある私ですらもはや影としか捉えられず、ほとんど反応することも出来ず、ただこの身に襲い掛かってくるであろう衝撃に構えることが限界であった。
「ぐぅっ……!?」
「琉希!?」
だが、想定して居たそれは来なかった。
背後から響く苦悶の声に振り向く。
浮かんだまま琉希を掴み上げ、彼女のコートを引っ張る少女。
琉希も岩やチェーンソーを操り必死にぶつけるが、そのどれもがまるで当たってすらいないように弾き返されている。
やられた。
目的は最初からアタッカーの私ではなく後衛である琉希か……!
「お前……っ! 『アクセラレーション』!」
不味い……!
しかしあと一歩のところまで近づいた瞬間。
「ふん。所詮魔術の体系すら理解していない貴様らが、この私に勝てるわけないだろう」
無数の光輝く魔法陣が少女の背後から展開される。
こんなもの……嘘でしょ……?
魔法なんて使えないし、使っているところだってこんなに無数の魔法陣が折り重なり、一枚の巨大な魔法陣を形成しているのなんて見たことがない。
いっそ芸術的とすら言える、緻密な文字と幾何学によって描かれた極光の芸術品。
圧倒的だった。
そして同時に理解した。彼女は理外に存在する怪物なのだと、私たちが歯向かってはいけない存在なのだと。
決して誰も介入することの出来ないはずの加速した世界。
しかし彼女は琉希を手放し、地面に叩き落される彼女を気にする素振りもなくこちらに振り向くと、呆れたように顔をしかめた。
「――!? は」
「貴様が遅いだけだ」
加速した世界で声が伝わる訳がない。
信じがたいことだが、私のスキルは発動した瞬間に打ち消されてしまったらしい。
それに気づいたのは、お腹へ恐ろしい勢いでカリバーが叩きつけられ、めり込み、吹き飛び、いくつもの木へ叩きつけられへし折り、力なく地面へ転がった後だった。
「青いな。力だけで経験が足りない、端的に言って未熟で歪だ」
押しても引いてもびくともしない、とんでもない力でカリバーが掴まれてしまっている。
私と見た目の年齢も大して変わらないのに、圧倒的なレベル差が彼女との間にはあった。
集中しすぎていたのだろう。
視界の端で、彼女の片手がゆっくりと伸びてきていることにようやく気付く。
思い出せ。そう、こういう時は……
『武器だけに』
「――固執しないっ!」
脳内で蘇る彼の声。
過去の記憶に従ってカリバーを手放し、ついでに少女の顎を蹴り上げ後退。
その瞬間、轟音を響かせ私の居た場所に雷撃が落ちた。
「あぶなっ!?」
「ふむ……案外聡いか」
「生憎とっ、素晴らしい師匠が私にはいるからねっ!」
だが一発で当てられるとは考えていなかったのだろう。
左右へランダムにステップを踏みながら高速で走り回る度、一瞬前に私がいた場所がはじけ飛ぶ。
雷撃そのものは恐ろしく速く、目で追うことなんて出来そうにない。
加えてその恐ろしい威力。かつて体験し、先ほどカリバーを掴まれた力から鑑みて、恐らく今の私ですら一発食らってしまえばアウトだ。
しかし全て直線であり、彼女の腕からまっすぐにしか飛ばないのが幸いだ。
時々恐ろしいほど正確に私の進行先へ雷撃が飛ぶが、その度琉希によって生み出された岩が盾代わりとなって防ぐ。
流石のアシストだ。
しばらく逃げ回っていると、ふと雷撃の音が消えたことに気付く。
どうやらいったん打ち止めのようで、私もその隙を突いて琉希の下へ舞い戻る。
「ごめん、取られちゃった」
「鉄パイプならありますよ」
「ん、それでいいや。ありがと」
彼女が『アイテムボックス』から取り出した一本の鉄パイプ。
スキルの拡張性から様々なものを入れているのだろう、グリップなど握りやすさこそ劣るものの、今はカリバーの代わりに振れるものがあるだけでありがたい。
軽く力を籠めるも歪みすらしない。彼女のスキルで強化されているので頑丈だ、これならいける。
「やはり奇妙だ、貴様らは年齢の割に魔力が多すぎる」
「私からすればこんな寒い中、裸足に服一枚のお前の方が変だけどね」
見ていて寒々しいにもほどがある。
しかし腹立たしいことだが、彼女にとって私たちの事は敵ですらないのだろう。
視線は右へ左へ、そして独り言にしてはあまりに大きい呟きと共に、しかし私たちの質問には一切答えないまま、少女は私のカリバーを適当に振り回しながら思案に沈み込んでいた。
少し動き回ったせいなのか、はたまた別の理由からか額に汗が垂れる。
はっきり言ってこいつ強すぎる。
ちょっと攻撃を与えて縛るだとか、手加減だとかなんて言っていられる状況ではない。
反撃の意志はあっても本格的に攻撃してくるつもりがないのなら、これは一旦撤退するのも選択肢に入れるべきか。
「私はそういう風には創っていないはず……まさかアレがなにか仕掛けて……? おい貴様、負荷はどうした?」
「ふか……?」
思考と共にあちこちへ彷徨っていた彼女の目線が、突如として私たちへ突き刺さる。
ふか、ふかってなんだ。
まさかフカヒレのフカじゃないだろう、いきなりサメが出てくるのはB級映画だけで十分だ。
何を言っているのかさっぱり分からない。
彼女の中で巡り、完結した問いをいきなり私たちに投げかけられたところで、それに完璧な返答を返せるのはエスパーだけだろう。
もし会話する意思が有るというのなら、一から説明くらいしてくれたっていいじゃないか。
「ふん……気が変わった、直接見た方が早い」
しかし残念ながら説明より己の目で確かめることを選んだらしい。
何を言っているのかと私が眉をひそめた瞬間、一直線に空を舞い、猛烈な勢いでこちらへ飛び込んでくる少女。
来る……!
握り慣れぬ鉄パイプを正面に構え、浅く息を吐き出す。
覚悟を決めたなんて言った手前恥ずかしいことだが、正直気圧されてしまっていた。
小さい体であるが凄まじい威圧感だ。
今まで全く動くことのなかった少女、圧倒的に力の差がある彼女が自発的に攻撃を仕掛ける。
その飛翔は速さに自信のある私ですらもはや影としか捉えられず、ほとんど反応することも出来ず、ただこの身に襲い掛かってくるであろう衝撃に構えることが限界であった。
「ぐぅっ……!?」
「琉希!?」
だが、想定して居たそれは来なかった。
背後から響く苦悶の声に振り向く。
浮かんだまま琉希を掴み上げ、彼女のコートを引っ張る少女。
琉希も岩やチェーンソーを操り必死にぶつけるが、そのどれもがまるで当たってすらいないように弾き返されている。
やられた。
目的は最初からアタッカーの私ではなく後衛である琉希か……!
「お前……っ! 『アクセラレーション』!」
不味い……!
しかしあと一歩のところまで近づいた瞬間。
「ふん。所詮魔術の体系すら理解していない貴様らが、この私に勝てるわけないだろう」
無数の光輝く魔法陣が少女の背後から展開される。
こんなもの……嘘でしょ……?
魔法なんて使えないし、使っているところだってこんなに無数の魔法陣が折り重なり、一枚の巨大な魔法陣を形成しているのなんて見たことがない。
いっそ芸術的とすら言える、緻密な文字と幾何学によって描かれた極光の芸術品。
圧倒的だった。
そして同時に理解した。彼女は理外に存在する怪物なのだと、私たちが歯向かってはいけない存在なのだと。
決して誰も介入することの出来ないはずの加速した世界。
しかし彼女は琉希を手放し、地面に叩き落される彼女を気にする素振りもなくこちらに振り向くと、呆れたように顔をしかめた。
「――!? は」
「貴様が遅いだけだ」
加速した世界で声が伝わる訳がない。
信じがたいことだが、私のスキルは発動した瞬間に打ち消されてしまったらしい。
それに気づいたのは、お腹へ恐ろしい勢いでカリバーが叩きつけられ、めり込み、吹き飛び、いくつもの木へ叩きつけられへし折り、力なく地面へ転がった後だった。
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