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第二百話
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思い付きだった。
『累乗スカルクラッシュ』の衝撃は、現状あまりに大きすぎてまともに耐えることが出来ない。
それは『アクセラレーション』中のスキル使用すら軽く上回るもので、ポーションを口に含んでなお瀕死の傷を負うほどだ。
「待ってたよ、この時をさ」
私が岩から飛び降りたと同時に、下の、雪狐が跳躍に使用した岩が消えた。
支えを失い、ゆっくり重力に引かれる私の体。
がばりと開いた口が遂に、おなかへぴったり差し掛かり……
「『アクセラレーション』!」
急速に近づいていたモンスターが、まるで空中にぴったり固定されてしまったかのように固まる。
深呼吸。
「堕ち……ろっ! 『スカルクラッシュ』!」
反動でこちらの身体が浮かび上がると共に、殴りつけた狐の頭がゆっくり、ゆっくりと下に向かって曲がっていく。
地面とは異なり、空中では私を支える足場がない。
つまり、普段体を蝕む反動のエネルギーは、回転など別のベクトルへ変わる。
要するに……
「よっと。『スキル累乗』対象変更、『スカルクラッシュ』」
上へ浮かび上がった私の身体は、いつもと異なり酷い手傷を負うこともなく、琉希によって生み出された岩の裏側へ着地した。
「『解除』」
その瞬間、まるで見えない壁にぶつかったかのように雪狐はのけぞり、腹を晒しながら凄まじい勢いで地面に向かってすっ飛んでいく。
だが指をくわえてそれを見ているだけではない。
こちらも背後の岩を蹴って飛び出すと、地面に向かって高速の落下へ興じた。
「琉希ぃぃぃ! 今すぐ『リジェネ』撃ってええええ!」
必死の叫び。
彼女が実際に聞いているのか、動いてくれるのかはもう見ない。
轟々と風の音が耳元で唸る。
切るように冷たい空気がコートの内側へ潜り込み、全身の服が煽られ暴れ出した。
迫る地面。
先に叩きつけられた雪狐が雪を巻き上げ、無様に腹を晒して突き刺さっているのが見えた。
もしこのまま落ちる勢いと共に、『累乗スカルクラッシュ』を使ったとしよう。
その時、私はスキルそのもの反動と地面へ衝突する衝撃、加えてあの硬い敵を殴った時の反動によって死ぬだろう。
だがやらなければいけない。
これは賭けだ、だが決して分の悪いものではない。
その上、上手くいけば……『累乗スカルクラッシュ』の反動は、大幅に抑え込むことが出来る。
視界の端から飛んできた輝きが身を包み込み、痛みがかすかに引いたのが分かった。
「ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ォ
ォ
オ
オ
お
お
オッ! あっ、やば、『スカルクラッシュ』『アクセラレーション』!」
◇
力尽きた狐がゆっくり消えて行く。
『レベルが合計15382上昇しました』
こういう表現は不思議な気分だが、まあ雪に出来たクレーターとでもいうべきなのだろう。
私の背丈など軽く飛び越える程積み重なっていた雪が吹き飛び、黒々とした地面の上に私たちは立っていた。
「凄い攻撃でしたね……」
「まああれ使ったら死ぬからね」
「頭大丈夫ですか? いや、それより生きてるじゃないですか!」
「うん」
ぺたぺたと二の腕などを触られながら、想像以上に上手くいったことに安堵する。
『累乗ストライク』、そして『累乗スカルクラッシュ』。
当然スカルクラッシュの方が強力な武器ではあるが、縦方向の攻撃は使い勝手が悪く、そして何より衝撃のきつさから今まであまり使ってこなかった。
もし『アクセラレーション』中に累乗スキルを使ったら? この答えは簡単で、まあ死ぬ。
なら、もし『累乗スカルクラッシュ』を使う途中で『アクセラレーション』を使ったら?
雪狐との戦いの中でふと思いついたのだ。
『アクセラレーション』は私の認識からすれば世界が遅くなるだけだが、その実体は私の認識や肉体自体を大幅に強化し、超高速で動いているに過ぎない。
超高速での行動を耐えられるほどに強化された肉体……その状態なら『累乗スカルクラッシュ』の衝撃を最大限抑えることが出来るのではないか、と。
今まで『アクセラレーション』は高速での移動か、攻撃力を高める手段としか思っていなかった私には、これは目からうろことでもいうべきものであった。
非加速状態で『累乗スカルクラッシュ』を撃った場合、『アクセラレーション』を発動しても当然速度はそのままだ。
勿論モンスターに当たるまでの時間で多少速度が上がるかもしれないが、所詮十数センチの距離、大した加速にはならない。
どちらにせよ現状ではじり貧だ。
ダメージはさほど与えられていないし、琉希の回復魔法だって無限に使えるわけではない。
何度も殴り続ければ勝てるだろうが、こちらの疲労は恐ろしい勢いで溜まっていくし、今後の戦いを考慮するのなら出来る限り素早い決着をつけるしかなかった。
そして予想は現実になった。
琉希の『リジェネレート』、『アクセラレーション』に寄る強化、そして『活人剣』による回復によって、私は今も全くダメージを負うことなくぴんぴんしている。
「琉希」
「はい?」
「もう大丈夫」
実際こちらが傷一つないと分かり安心したのだろう、今度は周囲の層になり圧縮された雪をなぞり、氷みたいですねとつぶやいていた彼女が振り返る。
一撃だ。
腹という骨もなく内臓に近い弱点とはいえ、一撃でレベル二十万を超えた雪狐を屠った。
これは希望だ。
圧倒的にレベルが上の存在でも倒しうる、新たなる武器だ。
まあ『アクセラレーション』と『累乗スカルクラッシュ』の両方を使うので、MPの消費が激しく無限に使えるわけではないが。
もし、ママとの戦闘になったとしても……っ。
「行こう、他のモンスターも探そう」
「ですね!」
ともかく、せめて二十万レベルにたどり着くまでは、このダブル使用で一気に駆け抜けよう。
『累乗スカルクラッシュ』の衝撃は、現状あまりに大きすぎてまともに耐えることが出来ない。
それは『アクセラレーション』中のスキル使用すら軽く上回るもので、ポーションを口に含んでなお瀕死の傷を負うほどだ。
「待ってたよ、この時をさ」
私が岩から飛び降りたと同時に、下の、雪狐が跳躍に使用した岩が消えた。
支えを失い、ゆっくり重力に引かれる私の体。
がばりと開いた口が遂に、おなかへぴったり差し掛かり……
「『アクセラレーション』!」
急速に近づいていたモンスターが、まるで空中にぴったり固定されてしまったかのように固まる。
深呼吸。
「堕ち……ろっ! 『スカルクラッシュ』!」
反動でこちらの身体が浮かび上がると共に、殴りつけた狐の頭がゆっくり、ゆっくりと下に向かって曲がっていく。
地面とは異なり、空中では私を支える足場がない。
つまり、普段体を蝕む反動のエネルギーは、回転など別のベクトルへ変わる。
要するに……
「よっと。『スキル累乗』対象変更、『スカルクラッシュ』」
上へ浮かび上がった私の身体は、いつもと異なり酷い手傷を負うこともなく、琉希によって生み出された岩の裏側へ着地した。
「『解除』」
その瞬間、まるで見えない壁にぶつかったかのように雪狐はのけぞり、腹を晒しながら凄まじい勢いで地面に向かってすっ飛んでいく。
だが指をくわえてそれを見ているだけではない。
こちらも背後の岩を蹴って飛び出すと、地面に向かって高速の落下へ興じた。
「琉希ぃぃぃ! 今すぐ『リジェネ』撃ってええええ!」
必死の叫び。
彼女が実際に聞いているのか、動いてくれるのかはもう見ない。
轟々と風の音が耳元で唸る。
切るように冷たい空気がコートの内側へ潜り込み、全身の服が煽られ暴れ出した。
迫る地面。
先に叩きつけられた雪狐が雪を巻き上げ、無様に腹を晒して突き刺さっているのが見えた。
もしこのまま落ちる勢いと共に、『累乗スカルクラッシュ』を使ったとしよう。
その時、私はスキルそのもの反動と地面へ衝突する衝撃、加えてあの硬い敵を殴った時の反動によって死ぬだろう。
だがやらなければいけない。
これは賭けだ、だが決して分の悪いものではない。
その上、上手くいけば……『累乗スカルクラッシュ』の反動は、大幅に抑え込むことが出来る。
視界の端から飛んできた輝きが身を包み込み、痛みがかすかに引いたのが分かった。
「ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ォ
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オ
オ
お
お
オッ! あっ、やば、『スカルクラッシュ』『アクセラレーション』!」
◇
力尽きた狐がゆっくり消えて行く。
『レベルが合計15382上昇しました』
こういう表現は不思議な気分だが、まあ雪に出来たクレーターとでもいうべきなのだろう。
私の背丈など軽く飛び越える程積み重なっていた雪が吹き飛び、黒々とした地面の上に私たちは立っていた。
「凄い攻撃でしたね……」
「まああれ使ったら死ぬからね」
「頭大丈夫ですか? いや、それより生きてるじゃないですか!」
「うん」
ぺたぺたと二の腕などを触られながら、想像以上に上手くいったことに安堵する。
『累乗ストライク』、そして『累乗スカルクラッシュ』。
当然スカルクラッシュの方が強力な武器ではあるが、縦方向の攻撃は使い勝手が悪く、そして何より衝撃のきつさから今まであまり使ってこなかった。
もし『アクセラレーション』中に累乗スキルを使ったら? この答えは簡単で、まあ死ぬ。
なら、もし『累乗スカルクラッシュ』を使う途中で『アクセラレーション』を使ったら?
雪狐との戦いの中でふと思いついたのだ。
『アクセラレーション』は私の認識からすれば世界が遅くなるだけだが、その実体は私の認識や肉体自体を大幅に強化し、超高速で動いているに過ぎない。
超高速での行動を耐えられるほどに強化された肉体……その状態なら『累乗スカルクラッシュ』の衝撃を最大限抑えることが出来るのではないか、と。
今まで『アクセラレーション』は高速での移動か、攻撃力を高める手段としか思っていなかった私には、これは目からうろことでもいうべきものであった。
非加速状態で『累乗スカルクラッシュ』を撃った場合、『アクセラレーション』を発動しても当然速度はそのままだ。
勿論モンスターに当たるまでの時間で多少速度が上がるかもしれないが、所詮十数センチの距離、大した加速にはならない。
どちらにせよ現状ではじり貧だ。
ダメージはさほど与えられていないし、琉希の回復魔法だって無限に使えるわけではない。
何度も殴り続ければ勝てるだろうが、こちらの疲労は恐ろしい勢いで溜まっていくし、今後の戦いを考慮するのなら出来る限り素早い決着をつけるしかなかった。
そして予想は現実になった。
琉希の『リジェネレート』、『アクセラレーション』に寄る強化、そして『活人剣』による回復によって、私は今も全くダメージを負うことなくぴんぴんしている。
「琉希」
「はい?」
「もう大丈夫」
実際こちらが傷一つないと分かり安心したのだろう、今度は周囲の層になり圧縮された雪をなぞり、氷みたいですねとつぶやいていた彼女が振り返る。
一撃だ。
腹という骨もなく内臓に近い弱点とはいえ、一撃でレベル二十万を超えた雪狐を屠った。
これは希望だ。
圧倒的にレベルが上の存在でも倒しうる、新たなる武器だ。
まあ『アクセラレーション』と『累乗スカルクラッシュ』の両方を使うので、MPの消費が激しく無限に使えるわけではないが。
もし、ママとの戦闘になったとしても……っ。
「行こう、他のモンスターも探そう」
「ですね!」
ともかく、せめて二十万レベルにたどり着くまでは、このダブル使用で一気に駆け抜けよう。
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