『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA

文字の大きさ
130 / 257

第百三十話

しおりを挟む
「たっ……助けて……! 誰か、誰かぁっ!?」

 人々は目を逸らす。
 一人の女性が短剣を片onjgame-1619163760手にモンスターへ立ち向かい、けれど全く至らないその力量故無慈悲に刈り取られるその瞬間から。
 そして次に狙われるのは、固まって室内に籠っている己たちだということから。

 しかし彼女も他の人を罵ることはできない。かつて己自身も横に居たものを見捨て、切り捨てたことがあった。

 最初は故意ではなかった、無謀にも気が大きくなり一段飛ばしのFランクダンジョンに潜ってしまった時に、悪魔的な考えと思いながらもついしてしまった。
 目立つ子だった。金髪の、何を考えているのかよく分からない、整っているからこそ不気味な無表情の少女。
 ただ偶々出会ったその小さな少女を、動きも遅く体力もない、どうしてダンジョンなんかに潜ろうと考えたのかと思うほどあまりに足手纏いな存在を、どうせ助けることは出来ないのだからと切りつけ肉壁にした。

 だが一度嵌まってしまった、誰かを踏み台にして生き延びようとする精神は決して歯止めが利かなかった。

 一度なら二度も、二度なら何度でも。
 何事もなければ外で別れることもあったが、ダンジョン内で危険へ直面すればためらいなく見捨ててきた。
 事情を知る者同士で行為を繰り返す度躊躇は無くなり、いつしかそれが当然の行為になった。
 いつか罰を受けるんじゃないか、いつか報いに後悔する日が来るんじゃないか。最初はそう思っていても、次第に心はピクリとも動じることなく、納豆へタレをかけるように至極当然のこととして心へ染み付いてしまった。

 悲鳴が耳に噛み付く。

 そしてついには同じことをしていた、仲間というにはあまりに歪な関係の二人すらも切り捨てた。
 互いに裏切るかもしれない、自分を捨てて先に行くかもしれないと勘繰り合っていた最中に、やられるくらいならと置いてきてしまった。
 だが結局仲間を置き去りにしてまで逃げてきたこの校舎にはモンスターが構えていて、丁度よく現れた哀れな己を食い破らんと、その鋭く尖った牙を剥いて笑っていた。

 己が悪かったのだ。
 後悔に瞼が震え、喉がひりつくがあまりに遅い。

 結局のところ自分がやってきたことと同じことが帰って来ただけのこと。
 そう、ただ切り捨てられる対象に、自分が当てはまる日が来ただけのこと。

 その時、どこかから人の声がした。
 若いというよりは幼い、少女の声だった。

『――!』

 モンスターも、短剣使いの動きもピタリと止まる。

 空から現れたそのちっぽけな黄金はまっすぐにモンスターへと向かい、豪速を保ったまま突き進み続け――

「――ぁぁぁぁあああああ! やばっあくっ、『アクセラレぶげぇっ!? ほぎょおおおっ!? ばべっ!?」

 着地に失敗した。



 とても痛い。
 カッコつけて空を飛んだはいいものの、『アクセラレーション』を解除した瞬間とんでもない風圧に顔だの、口だのが押し広げられてしまいパニックに陥った結果、着地の瞬間に再発動する余裕もなく地面と熱い抱擁を交わしてしまった。
 本当に何も見えなかった、これも新しく対策すべきことの一つだ。

 うっ、鼻擦りむいたみたい……ピリピリする。

「げほっ、げほっ! はあ……助けに来た、これ飲んでいいから」

 モンスターの牽制ついでにカリバーを振り回し、先ほどギリギリ遠くから見えていたであろう一人へ声をかける。

 うつむいていてよく顔は分からないがどうやら大学生程度の女一人、他に装備がない当たり短剣一本で戦っていたようだ。
 しかし満身創痍といった言葉が実によく似合う。手足についた深い切り傷や無数の擦り傷を見る限り、恐らく持ってあと一分……いや、私が落ちてこなければきっと今頃には死んでいたかもしれない。

 二人で暢気に走っていたら間に合わなかった。
 そう、私はこれを予見してあえて飛んだのだ。そしてモンスターに彼女が襲われる前、あえて、そう敢えて盛大に着地失敗することで注意を引き、作戦は予想通り無事成功した。

 うんうんあえて敢えて、いやー助かって良かった!

 彼女へ手持ちのポーションをひとつ投げ渡し後ろへ下がっているよう告げる。
 目の前のモンスター……大きさとしては軽自動車を真っ直ぐに三台並べるほど、しかとみてみればなかなか強そうだ。
 屈強な太い四肢と太く鋭い棘の生えた尻尾、地に浅黒い腹を擦り付け二つに分かれた舌をチロチロと出す姿はさながらドラゴンといえるだろう。

 たらりとドラゴンの口元から垂れた土が下の草に触れ、見る間にぐじゅぐじゅのでろでろになる。
 あれに触れたらやばそうだ。

 まあ私なら負けないけどね。
 なんたって今の私レベルはCランクダンジョンすら容易く踏破できる五万越え、聞けば今回崩壊したのはDランクでも下位のダンジョンというじゃないか。
 ふふ。どれどれ、ステータスを見せてくれたまえよ。

――――――――――――――――

種族 モロモルキングドラゴン
名前 シユマ

LV 38000
HP 198445 MP 73959
物攻 187395 魔攻 19381
耐久 280534 俊敏 70495
知力 39378 運 35

――――――――――――――――

 あ、負けそう。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活

さとう
ファンタジー
生まれつき絶大な魔力を持つハーフィンクス公爵家に生まれた少年、シャドウ。 シャドウは歴代最高と言われるほど絶大な魔力を持っていたが、不幸なことに魔力を体外に放出する才能が全くないせいで、落ちこぼれと呼ばれ冷遇される毎日を送っていた。 十三歳になったある日。姉セレーナ、妹シェリアの策略によって実家を追放され、『闇の森』で魔獣に襲われ死にかける。 だが、シャドウは救われた……世界最高峰の暗殺者教団である『黄昏旅団』最強のアサシン、ハンゾウに。 彼は『日本』から転移した日本人と、シャドウには意味が理解できないことを言う男で、たった今『黄昏旅団』を追放されたらしい。しかも、自分の命がもう少しで尽きてしまうので、自分が異世界で得た知識を元に開発した『忍術』をシャドウに継承すると言う。 シャドウはハンゾウから『忍術』を習い、内に眠る絶大な魔力を利用した『忍術』を発動させることに成功……ハンゾウは命が尽きる前に、シャドウに最後の願いをする。 『頼む……黄昏旅団を潰してくれ』 シャドウはハンゾウの願いを聞くために、黄昏旅団を潰すため、新たなアサシン教団を立ちあげる。 これは、暗殺者として『忍術』を使うアサシン・シャドウの復讐と、まさかの『学園生活』である。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

処理中です...