『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA

文字の大きさ
104 / 257

第百四話

しおりを挟む
 しばし爽快な爆撃ゲームを楽しんでいたのだが、

「あれ?」

 魔石の供給源小さい花達が尽きた。
 あれだけ一面に咲き誇っていたというのに、今では私の手によって無残に荒らされボロボロになったやつらが、モノ悲し気にいくつか浮かんだり転がったりしているだけだ。
 いうなれば心無い人によって踏みつけられた花畑、或いは連続植物倒壊事件とでも銘打たれそうな光景が広がっている。

 なんだろう……モンスターなはずなのに突然物凄い罪悪感が湧いてきた。
 あれ? 私悪くないよね? 生きてるかも分からないモンスターなんだよね?

 突如として心に湧いてきた良心の呵責、興奮が冷めふと冷静になってしまった人間というのは、どうしてこうも気づかなくていいことに気付いてしまうのだろうか。
 しかし私の都合などモンスターは気にせず……というよりは攻撃の手が止んだからというだけなのかもしれないが、ここにきて漸くゆっくり降下を始めた。

「『鑑定』」

――――――――――――――――
種族 パラ・ローゼルス
名前

LV 3000
HP 70273/90321 MP 3066/5066
物攻 26033 魔攻 36043
耐久 59087 俊敏 3021
知力 21000 運 11
――――――――――――――――

 ええっと、いち、に……2割くらい? 長々と派手にやった割りにはあんまりダメージ入ってないなぁ。
 いや踏みつけて死んでしまうほど弱いモンスターの魔石で二割削れたのだから、相当ダメージが入っている方なのかもしれない。
 まあ自分から降りてきてくれるならこちらも動きやすいけど。

 先ほどの手ごたえからして外の花びらに攻撃しても大した影響は与えられなさそう、か。
 それなら……

「よっと」

 丁度3メートル程度の高さまで降りてきたので、距離をつけ駆けて跳びあがる。
 直径は20メートルはあるかもしれない。足でしっかり上に立ってはっきりと感じるのはその大きさと、鼓動しているかのようにも感じられる振動。
 所々に散らばっている黄色いものは花粉だろうか、先ほどまき散らしていたものもこれなのだろう。それにしても流石の大きさだ、紅く肉厚な花弁はその私程度が飛び乗ってもびくともしない。

 この花で押し花作ってみたい、町のモニュメントに出来ないかな。 

 だが何故だろう、巨大薔薇は花弁の上で歩き回ろうと全く私を振り落とそうとしない、それどころか再度浮遊して愉快な空中旅行まで始める始末。
 こういう時は何か目論んでいるだろうことは既に経験済みだ、簡単に気を抜いていてはいけない。
 一番怪しいのは……花の真ん中、おしべとかめしべとかがあるところだろうか。

 実際既に状況は大きく動いていたし、モンスターによる攻撃は始まっていた……そう、注意がおろそかになった私の足元へと。

「ひゃ!?」

 引きこまれ……!?

 気付いたときには既に足首へ食い込む太く硬い黄金色の触手。それは花びらの隙間と隙間、私の横から巻き付いていた。
 足元を掬われた人を転がすのはなんと容易いことだろう。近くで見れば細かくやわらかな毛の生えた花びらは非常によく滑り、掴む場所のないまま無慈悲に体は引き摺られていく。
 一本、二本、三本……腕を、足を、胴体を動かせぬよう次々に襲い掛かってきては縛り付け、強烈な力で体を花の中央部へと牽引されてしまう。

 嘘、触られた感覚も、巻き付かれた衝撃だって全く感じなかった……!
 現に今だって……まさかこの花粉、麻痺的な成分が……!?

 遅い気付きだが既に体の半分は花の隙間へと入り込んでしまっていて、水に濡れたおかげもあって全身に纏わりつきやすくなった私の身体は既に黄金色へと染まってしまっていた。

「あっ、カリバー……!」

 挙句の果てには意識の隙を突き、右手に握り締めていたカリバーすら巻き取られ、花の中心へ放り投げられてしまう。
 
 くそ、体の感覚が……


 だんだん……なくな……って……







 ないけど問題ない、すごいよく動く。

「あれ?」

 ぶちっ

 ちょっと違和感があったので力を込めて右腕を曲げれば無慈悲に千切れる触手。その瞬間まさか千切れるとは思っていなかったのか、他の触手の動きもピタリと止まった。

 あれ? なんで? 普通こういうのって動けなくなるものなんじゃ……まあいいっか。
 よくよく考えれば私はレベルがこいつより相当高い、転ばされた時はビビったが落ち着いてみれば余裕をもって戦える相手だ。
 ちょっと慎重に考え過ぎたのかもしれない。

 感覚は麻痺しているのだが体は動く、考え方を変えれば痛みを感じないということで、これはある意味利点ですらあるのかもしれない。
 ぶちぶちと触手を千切りつつ外に出れないかと足をバタバタしてみるが、よく滑る表面の影響で逆に体は内側へと飲み込まれていく。
 一度下まで行ってしまって花びらの隙間から抜け出すしかないのだろうか……いや、待てよ。

 確か私が引きずり込まれたのって、花の中心近くだったよな。

「んしょ、よいしょ……っと」

 重く大きなそれを押しのけへしのけ進んでいく。触手が上下から私を捕まえようと巻き付いてくるのだが、無視して引っ張れば容易く千切れてしまうので何の障害にもならない。
 花弁は根元から外に向かって広がるはず、根元へ続く方向をたどって進んでいけば……

「やっぱり! よしよし、今日の私は冴えてる」

 想像通り、突如として広々とした空間が広がった。
 ど真ん中に突き出るのは巨大な柱と、それを囲うように突き出すいくつもの細いそれ。花の中心にたどり着いたのだ。
 そしてその根元にはもう、見るからに弱点ですよと言わんばかりのプルプル柔らかそうな部位。
 ついでにそのわきにはどうぞこれでお殴り下さいませと言わんばかりに、先ほど奪われてしまったカリバーが転がっている。

 これはサンドバッグにしてくださいってことだよね、間違いない。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活

さとう
ファンタジー
生まれつき絶大な魔力を持つハーフィンクス公爵家に生まれた少年、シャドウ。 シャドウは歴代最高と言われるほど絶大な魔力を持っていたが、不幸なことに魔力を体外に放出する才能が全くないせいで、落ちこぼれと呼ばれ冷遇される毎日を送っていた。 十三歳になったある日。姉セレーナ、妹シェリアの策略によって実家を追放され、『闇の森』で魔獣に襲われ死にかける。 だが、シャドウは救われた……世界最高峰の暗殺者教団である『黄昏旅団』最強のアサシン、ハンゾウに。 彼は『日本』から転移した日本人と、シャドウには意味が理解できないことを言う男で、たった今『黄昏旅団』を追放されたらしい。しかも、自分の命がもう少しで尽きてしまうので、自分が異世界で得た知識を元に開発した『忍術』をシャドウに継承すると言う。 シャドウはハンゾウから『忍術』を習い、内に眠る絶大な魔力を利用した『忍術』を発動させることに成功……ハンゾウは命が尽きる前に、シャドウに最後の願いをする。 『頼む……黄昏旅団を潰してくれ』 シャドウはハンゾウの願いを聞くために、黄昏旅団を潰すため、新たなアサシン教団を立ちあげる。 これは、暗殺者として『忍術』を使うアサシン・シャドウの復讐と、まさかの『学園生活』である。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

処理中です...