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第五十六話 裸の王様
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落葉ダンジョン、その最終階。
スニーカーの紐を結びなおし、トントンと軽くつま先で地面をたたく。
調子は上々、気分はハイテンション。
一つ歌でも歌いたくなるようないい気分だ。
ただ一つ残念だったことは、私のレベルが上がり過ぎたせいか、道中で全くレベルが上がらなかったこと。
まあ仕方ない。
レベル400の時ですら200レベル相手に、琉希もいて1上がるかどうかであったのだから、二倍どころか十倍近く離れている敵もいる落葉でレベルが上がるなど、そううまい話もないか。
魔石はいくつか拾ったが、今はさほどお金が入用でもないし、必至子いて集める必要もない。
さて、ここのボスはどんなやつかな……っと。
ギィ……と、ちょっと手入れがされていなさそうな音、壊さぬようにゆっくりと扉を開ける。
ダンジョンの扉って壊れるのかな……人が全く入っていない『麗しの湿地』ですら問題なかったし、これもあくまで雰囲気づくりなのかもしれない。
はて、ダンジョンの雰囲気づくりとは? 謎が深まるばかりだ。
扉を抜けた先だが、これが暗くてよく見えない。 じっと目を凝らせば、何やら奥にぼんやり輝いているのが見える。しかしそれだけだ。
だが足音がやけに響くので、どうやら相当このボスエリアがしっかりした密室ということは分かった。
ひとつ入り口近くに設置されていたランプをかっぱらってくれば良かったか? いやしかし戻すのも面倒だし、今更戻るわけにもいかない。
いっそ『累乗ストライク』でカリバーを思いっきり輝かせて、ちらちらと状況を確認して戦うか? なんて考えていた時だった。
「お」
ボンッ
ゆらりと揺れる私の影。
見上げればはるか遠くの天井で煌々と燃えている、動物のらしき頭蓋骨を寄せ集めた趣味の悪いシャンデリア。
いやぁ、これはないな。趣味があまりに悪すぎる、もう少し可愛らしくできない物だろうか。
天井をしばし眺めていたのだが、ちらちらと視界の端で輝くもの鬱陶しい。
一体何かと睨みつけるとそこにあったのは、私の身長と同程度はあろうかという、巨大な淡青色のクリスタル。
綺麗な六角形にカットされており、全体を金色の金属で装飾されていて、見るからに豪華。
くるり、くるりとゆっくり回っていて、カットされた部分がシャンデリアの光を受け乱反射、それが私の視界へ飛び込んできたようだ。
何かに吊り下げられているわけでもなのに、不思議と数十センチ浮かんでいる辺り、やはりあれもダンジョン産の物というわけか。
あれ持ちだしたら高く売れそう。
一瞬邪な考えが浮かぶが、ほかに何かモンスターが居ないあたりあれがボスらしい。
ボスなんて外に持ち出したら……いや持ち出せるかは分からないが、人工的なダンジョン崩壊にも近いことが起こる。
死刑か無期懲役か、どちらにせよまともな最期は遂げられそうにないかな。
まあ死と隣り合わせの探索者やっている時点で、結構な人数がまともな最期なんて遂げられないだろうけど。
何はともあれあれがボスだというのなら、まずはステータスの確認だ。
明かりがともっても何もしてこない辺り、先生や白銀の騎士同様、接近したら変形して何か攻撃を仕掛けてくるのかな?
「『鑑定』」
――――――――――――――
種族 ゴブリンキングダム
名前 マイケル
LV 500
HP 10000 MP 75383
物攻 0 魔攻 0
耐久 0 俊敏 0
知力 3876 運 40
――――――――――――――
……なんだこのステータスは。
ダンジョンの命を懸けた渾身のギャグなのだろうか、小学生ですら鼻で笑いそうだが。
HPとMP、それと知力だけは高い。
しかしその他のステータスはちょっとお粗末というレベルを超えている、スライムの方が幾分かましだ。
大方なんらかのカードを隠し持っているのだろうが、それにしたってこれは……
何より名前が酷い、宝石にマイケルだなんて何を言っているのかちゃんちゃらおかしい。
それにキングダム……ええっと、王国? だなんて、誰もいないじゃないか。
支える者のいない王なんて、地面に円を描いて俺の領土! なんて言っている子供じゃあるまいし。
さんざんな言い方だが、ほいほい近づくことはしない。
どうせ近づいたらなんかしてくるんだろうなぁ……と、流石の私でも学んでいる。
カリバーを上に構え、縦の衝撃に備える。
「『巨大か゛げぇ……っ!?」
突然襲い掛かってきた横からの衝撃、流石にこれは予想していなかった。
想定外の衝撃に変な声が零れるが、ダメージ自体はさほどでもない。
くるくると全身を吹き飛ばされながらも脳内は冷静、何度か空中を回転しつつ壁に着地、そして蹴り飛ばし地面へと帰還。
一体何が行ったのか、元居た場所へ注意を向ける。
デカい。
最初の感想はその一言。
手に握っているのは木のこん棒だろうか、それだけでも私の胴体より太い。
緑の肌はゴブリン特有のそれ、しかし腕、足、体、そのどれを取っても今まで出会った奴らとは比例できないほどの、バカみたいなサイズ。
こんな奴一体どこにいたのか。
まるで突然現れたみたいに気配もなく私の背後を取り、ぶっ飛ばしてくれた。
「『鑑定』」
――――――――――――――
種族 ホブゴブリン
名前 イーナ
LV 500
HP 2741 MP 0
物攻 632 魔攻 0
耐久 3071 俊敏 202
知力 13 運 40
――――――――――――――
――――――――――――――
種族 ゴブリンキングダム
名前 マイケル
LV 500
HP 10000 MP 74883/75383
――――――――――――――
……なるほどね。
どうやらこのゴブリンキングダムとやら、MPが減っている辺り召喚士に近いらしい。
背後を取ったのではなく、背後に『召喚された』ってところだろう。
そして減ったMPは500、ホブゴブリンのレベルも500。
レベル差があり過ぎてどうかと思っていたが、中々面白くなってきた。
スニーカーの紐を結びなおし、トントンと軽くつま先で地面をたたく。
調子は上々、気分はハイテンション。
一つ歌でも歌いたくなるようないい気分だ。
ただ一つ残念だったことは、私のレベルが上がり過ぎたせいか、道中で全くレベルが上がらなかったこと。
まあ仕方ない。
レベル400の時ですら200レベル相手に、琉希もいて1上がるかどうかであったのだから、二倍どころか十倍近く離れている敵もいる落葉でレベルが上がるなど、そううまい話もないか。
魔石はいくつか拾ったが、今はさほどお金が入用でもないし、必至子いて集める必要もない。
さて、ここのボスはどんなやつかな……っと。
ギィ……と、ちょっと手入れがされていなさそうな音、壊さぬようにゆっくりと扉を開ける。
ダンジョンの扉って壊れるのかな……人が全く入っていない『麗しの湿地』ですら問題なかったし、これもあくまで雰囲気づくりなのかもしれない。
はて、ダンジョンの雰囲気づくりとは? 謎が深まるばかりだ。
扉を抜けた先だが、これが暗くてよく見えない。 じっと目を凝らせば、何やら奥にぼんやり輝いているのが見える。しかしそれだけだ。
だが足音がやけに響くので、どうやら相当このボスエリアがしっかりした密室ということは分かった。
ひとつ入り口近くに設置されていたランプをかっぱらってくれば良かったか? いやしかし戻すのも面倒だし、今更戻るわけにもいかない。
いっそ『累乗ストライク』でカリバーを思いっきり輝かせて、ちらちらと状況を確認して戦うか? なんて考えていた時だった。
「お」
ボンッ
ゆらりと揺れる私の影。
見上げればはるか遠くの天井で煌々と燃えている、動物のらしき頭蓋骨を寄せ集めた趣味の悪いシャンデリア。
いやぁ、これはないな。趣味があまりに悪すぎる、もう少し可愛らしくできない物だろうか。
天井をしばし眺めていたのだが、ちらちらと視界の端で輝くもの鬱陶しい。
一体何かと睨みつけるとそこにあったのは、私の身長と同程度はあろうかという、巨大な淡青色のクリスタル。
綺麗な六角形にカットされており、全体を金色の金属で装飾されていて、見るからに豪華。
くるり、くるりとゆっくり回っていて、カットされた部分がシャンデリアの光を受け乱反射、それが私の視界へ飛び込んできたようだ。
何かに吊り下げられているわけでもなのに、不思議と数十センチ浮かんでいる辺り、やはりあれもダンジョン産の物というわけか。
あれ持ちだしたら高く売れそう。
一瞬邪な考えが浮かぶが、ほかに何かモンスターが居ないあたりあれがボスらしい。
ボスなんて外に持ち出したら……いや持ち出せるかは分からないが、人工的なダンジョン崩壊にも近いことが起こる。
死刑か無期懲役か、どちらにせよまともな最期は遂げられそうにないかな。
まあ死と隣り合わせの探索者やっている時点で、結構な人数がまともな最期なんて遂げられないだろうけど。
何はともあれあれがボスだというのなら、まずはステータスの確認だ。
明かりがともっても何もしてこない辺り、先生や白銀の騎士同様、接近したら変形して何か攻撃を仕掛けてくるのかな?
「『鑑定』」
――――――――――――――
種族 ゴブリンキングダム
名前 マイケル
LV 500
HP 10000 MP 75383
物攻 0 魔攻 0
耐久 0 俊敏 0
知力 3876 運 40
――――――――――――――
……なんだこのステータスは。
ダンジョンの命を懸けた渾身のギャグなのだろうか、小学生ですら鼻で笑いそうだが。
HPとMP、それと知力だけは高い。
しかしその他のステータスはちょっとお粗末というレベルを超えている、スライムの方が幾分かましだ。
大方なんらかのカードを隠し持っているのだろうが、それにしたってこれは……
何より名前が酷い、宝石にマイケルだなんて何を言っているのかちゃんちゃらおかしい。
それにキングダム……ええっと、王国? だなんて、誰もいないじゃないか。
支える者のいない王なんて、地面に円を描いて俺の領土! なんて言っている子供じゃあるまいし。
さんざんな言い方だが、ほいほい近づくことはしない。
どうせ近づいたらなんかしてくるんだろうなぁ……と、流石の私でも学んでいる。
カリバーを上に構え、縦の衝撃に備える。
「『巨大か゛げぇ……っ!?」
突然襲い掛かってきた横からの衝撃、流石にこれは予想していなかった。
想定外の衝撃に変な声が零れるが、ダメージ自体はさほどでもない。
くるくると全身を吹き飛ばされながらも脳内は冷静、何度か空中を回転しつつ壁に着地、そして蹴り飛ばし地面へと帰還。
一体何が行ったのか、元居た場所へ注意を向ける。
デカい。
最初の感想はその一言。
手に握っているのは木のこん棒だろうか、それだけでも私の胴体より太い。
緑の肌はゴブリン特有のそれ、しかし腕、足、体、そのどれを取っても今まで出会った奴らとは比例できないほどの、バカみたいなサイズ。
こんな奴一体どこにいたのか。
まるで突然現れたみたいに気配もなく私の背後を取り、ぶっ飛ばしてくれた。
「『鑑定』」
――――――――――――――
種族 ホブゴブリン
名前 イーナ
LV 500
HP 2741 MP 0
物攻 632 魔攻 0
耐久 3071 俊敏 202
知力 13 運 40
――――――――――――――
――――――――――――――
種族 ゴブリンキングダム
名前 マイケル
LV 500
HP 10000 MP 74883/75383
――――――――――――――
……なるほどね。
どうやらこのゴブリンキングダムとやら、MPが減っている辺り召喚士に近いらしい。
背後を取ったのではなく、背後に『召喚された』ってところだろう。
そして減ったMPは500、ホブゴブリンのレベルも500。
レベル差があり過ぎてどうかと思っていたが、中々面白くなってきた。
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