23 / 257
第二十三話 未発見ではなく
しおりを挟む
うう、痛い……
先生に出会った当初腹パンされた時も痛かったが、今回はそれに匹敵するかもしれない。
カリバーを支えにして中腰になり、よたよたと歩いていく。
「かい……ふく……!」
「大丈夫か君!? ちょっと回復魔法使える奴来てくれ! 協会の術師でもいいから!」
麻婆の体で協会の入り口へたどり着くと、丁度探索を終えたのだろう、壮齢の探索者によって抱き上げられ協会へ運び込まれた。
優しくしてほしい……振動が響いてすっごい痛い。
数人に囲まれて床に安置、暫くすれば奥からお抱えの術師が現れ私に回復魔法をかけた。
中には園崎弟、ウニもいて大丈夫かだとか、いったい何にやられたんだとか言っている。
ウニの様子からして鬼気迫るものなので、騒ぎがどんどん大きくなっていき、私を切りつけた奴がいるのかなどと話がどんどん大きくなっていく。
ヤバい、どうしよう。
逃げよう。
明日しれっと戻ればなんとかなるはず。
何もありませんでした、うん。
「ど、どいて!」
「おい結城待てって! 速っ!?」
ストライク走法で一気にその場を脱出。
繰り返すとまた腰が大変なことになる気がしたので、人だかりを抜けた後はそのまま走って逃げた。
その場で探索者の一人が私の動きを見て
「あー。ありゃ自殺ダッシュやってるわ」
「じゃあさっき苦しんでたのは……」
「その反動だろうなぁ……」
そんな会話をしていたとは知らずに。
◇
検索で疲れた目を休めるように瞑り、嘆息。
あまりに衝撃的な内容に、襲ってきた悲しみや羞恥を流し込むように紙コップの水を飲み干す。
「自殺ダッシュ……」
吐き出すようにこぼれた言葉、それが今見たページに書かれていたタイトルだ。
手書きであれこれ検索したところ、どうやら私のやったスキルの重ね掛けはそんな呼び方で、ある程度知れ渡っていた。
探索者の身体は強い。
流石に今の私だとわからないが、レベルが数百、数千になれば、たとえトラックに引かれようとも平然としていられるほどの耐久力になる。
数十万のレベルならば地雷を踏もうが、なんちゃら爆弾といわれるようなものを食らってもかすり傷すらつくまい。
だが、基本的な構造は人間なのだ。
目が乾けば痛いし、食事をずっと取らなければ死ぬ。
めったなことではならないが、関節を逆に曲げれば折れる。
『怪我をしにくくなる』がしないわけではないというのが、今回の自殺ダッシュの問題点だった。
『ストライク』に限らず攻撃スキルは角度こそある程度自由に変えられるとはいえ、綺麗な一直線を描くようにスキルが導く。
それは効率的なダメージを与えられると同時に、攻撃後の余韻自体が衝撃を和らげる役目もあるから。
しかし私はそのスキルの導きを、『ステップ』によって無理やり遮った。
例えばめちゃくちゃ重たいものがあったとして、それを振り下ろしたとしよう。
そのまま重力に任せて落とすのは簡単だ。
だがその途中で腕を止めて、無理やり上に持ち上げたならどうなるか。
関節を痛めたり、下手したら折れることだってあり得る。
私がしたのはそういうことだった。
ストライクによって踏み込み、腰のひねりも加わった理想的な攻撃。
振り切ることで余計な衝撃を逃がすはずが、強制的に動きを書き換えてステップをしてしまった結果、余計な衝撃は逃げることなくそのまま私の腰を直撃、さらにそれを繰り返したことによって無事、そこそこ高い耐久力を誇る私の腰は破壊されたということ。
あなたが思いついたそれは、『誰もやらなかった』のではなく、『やって駄目だった』ものです。
高レベル、スキルが強力であるほど、より大きな衝撃が体にかかるので気を付けましょう。
と、悲しい一言。
強いて言うのなら『累乗ストライク』のあとに『ステップ』をしなくて良かったと、自分を慰める。
下手したら一発で腰の骨が砕けていたかもしれない。
しかし自殺ダッシュ、もといストライク走法は確かに危険ではあるが、実際相当便利な動きではある。
実際上位の探索者はこれを応用して戦っているらしいので、一切使えないというわけではない。
要は使いようだ。さっきの私みたいに駆けずり回るのではなく、必要な時に最低限使うことが大切なのだ。
将来的にポーションを多用できるほどお金を手に入れたら、たとえストライク走法で身体を痛めてもその場で回復できる。
回復出来ればデメリットなどないのと変わらない、無限に高速で移動できる裏技だ。
だからこの発見は無駄ではなかった、未来で役に立つ予定がある。今そう決めた。
……希望の実でも食べて寝よ。
先生に出会った当初腹パンされた時も痛かったが、今回はそれに匹敵するかもしれない。
カリバーを支えにして中腰になり、よたよたと歩いていく。
「かい……ふく……!」
「大丈夫か君!? ちょっと回復魔法使える奴来てくれ! 協会の術師でもいいから!」
麻婆の体で協会の入り口へたどり着くと、丁度探索を終えたのだろう、壮齢の探索者によって抱き上げられ協会へ運び込まれた。
優しくしてほしい……振動が響いてすっごい痛い。
数人に囲まれて床に安置、暫くすれば奥からお抱えの術師が現れ私に回復魔法をかけた。
中には園崎弟、ウニもいて大丈夫かだとか、いったい何にやられたんだとか言っている。
ウニの様子からして鬼気迫るものなので、騒ぎがどんどん大きくなっていき、私を切りつけた奴がいるのかなどと話がどんどん大きくなっていく。
ヤバい、どうしよう。
逃げよう。
明日しれっと戻ればなんとかなるはず。
何もありませんでした、うん。
「ど、どいて!」
「おい結城待てって! 速っ!?」
ストライク走法で一気にその場を脱出。
繰り返すとまた腰が大変なことになる気がしたので、人だかりを抜けた後はそのまま走って逃げた。
その場で探索者の一人が私の動きを見て
「あー。ありゃ自殺ダッシュやってるわ」
「じゃあさっき苦しんでたのは……」
「その反動だろうなぁ……」
そんな会話をしていたとは知らずに。
◇
検索で疲れた目を休めるように瞑り、嘆息。
あまりに衝撃的な内容に、襲ってきた悲しみや羞恥を流し込むように紙コップの水を飲み干す。
「自殺ダッシュ……」
吐き出すようにこぼれた言葉、それが今見たページに書かれていたタイトルだ。
手書きであれこれ検索したところ、どうやら私のやったスキルの重ね掛けはそんな呼び方で、ある程度知れ渡っていた。
探索者の身体は強い。
流石に今の私だとわからないが、レベルが数百、数千になれば、たとえトラックに引かれようとも平然としていられるほどの耐久力になる。
数十万のレベルならば地雷を踏もうが、なんちゃら爆弾といわれるようなものを食らってもかすり傷すらつくまい。
だが、基本的な構造は人間なのだ。
目が乾けば痛いし、食事をずっと取らなければ死ぬ。
めったなことではならないが、関節を逆に曲げれば折れる。
『怪我をしにくくなる』がしないわけではないというのが、今回の自殺ダッシュの問題点だった。
『ストライク』に限らず攻撃スキルは角度こそある程度自由に変えられるとはいえ、綺麗な一直線を描くようにスキルが導く。
それは効率的なダメージを与えられると同時に、攻撃後の余韻自体が衝撃を和らげる役目もあるから。
しかし私はそのスキルの導きを、『ステップ』によって無理やり遮った。
例えばめちゃくちゃ重たいものがあったとして、それを振り下ろしたとしよう。
そのまま重力に任せて落とすのは簡単だ。
だがその途中で腕を止めて、無理やり上に持ち上げたならどうなるか。
関節を痛めたり、下手したら折れることだってあり得る。
私がしたのはそういうことだった。
ストライクによって踏み込み、腰のひねりも加わった理想的な攻撃。
振り切ることで余計な衝撃を逃がすはずが、強制的に動きを書き換えてステップをしてしまった結果、余計な衝撃は逃げることなくそのまま私の腰を直撃、さらにそれを繰り返したことによって無事、そこそこ高い耐久力を誇る私の腰は破壊されたということ。
あなたが思いついたそれは、『誰もやらなかった』のではなく、『やって駄目だった』ものです。
高レベル、スキルが強力であるほど、より大きな衝撃が体にかかるので気を付けましょう。
と、悲しい一言。
強いて言うのなら『累乗ストライク』のあとに『ステップ』をしなくて良かったと、自分を慰める。
下手したら一発で腰の骨が砕けていたかもしれない。
しかし自殺ダッシュ、もといストライク走法は確かに危険ではあるが、実際相当便利な動きではある。
実際上位の探索者はこれを応用して戦っているらしいので、一切使えないというわけではない。
要は使いようだ。さっきの私みたいに駆けずり回るのではなく、必要な時に最低限使うことが大切なのだ。
将来的にポーションを多用できるほどお金を手に入れたら、たとえストライク走法で身体を痛めてもその場で回復できる。
回復出来ればデメリットなどないのと変わらない、無限に高速で移動できる裏技だ。
だからこの発見は無駄ではなかった、未来で役に立つ予定がある。今そう決めた。
……希望の実でも食べて寝よ。
52
あなたにおすすめの小説
神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として
たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。
だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。
一度目では騙されて振られた。
さらに自分の力不足で全てを失った。
だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。
※他サイト様にも公開しております。
※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活
さとう
ファンタジー
生まれつき絶大な魔力を持つハーフィンクス公爵家に生まれた少年、シャドウ。
シャドウは歴代最高と言われるほど絶大な魔力を持っていたが、不幸なことに魔力を体外に放出する才能が全くないせいで、落ちこぼれと呼ばれ冷遇される毎日を送っていた。
十三歳になったある日。姉セレーナ、妹シェリアの策略によって実家を追放され、『闇の森』で魔獣に襲われ死にかける。
だが、シャドウは救われた……世界最高峰の暗殺者教団である『黄昏旅団』最強のアサシン、ハンゾウに。
彼は『日本』から転移した日本人と、シャドウには意味が理解できないことを言う男で、たった今『黄昏旅団』を追放されたらしい。しかも、自分の命がもう少しで尽きてしまうので、自分が異世界で得た知識を元に開発した『忍術』をシャドウに継承すると言う。
シャドウはハンゾウから『忍術』を習い、内に眠る絶大な魔力を利用した『忍術』を発動させることに成功……ハンゾウは命が尽きる前に、シャドウに最後の願いをする。
『頼む……黄昏旅団を潰してくれ』
シャドウはハンゾウの願いを聞くために、黄昏旅団を潰すため、新たなアサシン教団を立ちあげる。
これは、暗殺者として『忍術』を使うアサシン・シャドウの復讐と、まさかの『学園生活』である。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる