3 / 257
第三話 天使な筋肉
しおりを挟む
夢を見た。
まだ両親をパパ、ママと呼んでいて、普通の家庭だった時の夢。
多分小学生になるより前、初めてショートケーキを食べた。
二人共笑顔で……
「――ろ、起きろお嬢ちゃん!」
「……あ」
目を開くと真っ白な光が突き刺さり痛い。
火にも炙られていないところを見ると、地獄ではなさそうだ。
死んだ私はどうやら、天国にいったらしい。
光になれれば、目の前にいたのは筋肉。
なんてことだ、天使というのは凄い美女やイケメンではなく、筋肉ムキムキのハゲゴリラだった。
衝撃の事実に口を開ける。
「天使は筋肉ハゲゴリラだった、これは小説の一文になるかもしれない」
「誰が筋肉ハゲゴリラだコラ……その様子じゃ体調に何か問題はなさそうだな」
どうやら私は別に死んでいないようだ。
筋肉曰く私は落葉ダンジョンで倒れていたところを、偶然通りかかった探索者によって救出、教会へと運び出されたそうな。
ここは教会に併設されている無料の医療施設、探索者が強力な存在なので国が金を払っているのだ。
どうしてあんなところに潜ったんだ、筋肉は私に怒るが、私だって本当は入りたくなかった。
事情を説明したが、パーティの正式な登録をしていないなら、その証明は難しいと渋い顔で告げられた。
そんな気はしていた、でなきゃあまりに躊躇が無さすぎる。
ああ、人間なんて信じるんじゃなかった。
「これからどうするんだ? ……お前がその気なら、協会の職員として推薦状を書くのもやぶさかじゃないが……」
「いや、探索者としてこれからは一人でやっていく」
筋肉の話はあまりにありがたすぎる申し出だったが、私だってクマムシくらいのプライドはある。
ゴミみたいな扱いをされて、少し、いや結構傷付いたし、あいつらは絶対に許せない。
でも今の私だと雑魚だ、多分切り掛かったらその場で肉袋になる。
だから頑張る。
今までは体力をつけるだけが目的だったけど、強くなる。強くなってあいつらをボコす。
えーっと強い奴が偉いってのは……焼肉定食? そう、焼肉定食の摂理に従って、私は己の欲望のままに奴らを喰らってみせるのだ。
「そうか……ほら、これお前の武器だろ?」
「おお、愛しの金属バット」
「悪くない選択肢だ。遠心力を利用すれば弱くてもそこそこの威力が出るからな」
筋肉にも褒められた。
人に褒められたの久しぶりかも、えへへ。
◇
まだ体調も完璧じゃない、ここで休んでろ。
筋肉はそう言ってこの部屋から去っていった、協会の支部長らしく忙しいのだろう。
さて、人が居なくなったところで確認することがある。
死ぬ直前か直後か知らないが、聞こえたあの音とスキルについてだ。
「ステータスオープン」
―――――――――――
結城 フォリア 15歳
LV 3
HP 10 MP 15
物攻 11 魔攻 0
耐久 23 俊敏 29
知力 3 運 0
SP 0
スキル
スキル累乗 LV1
悪食 LV5
口下手 LV11
経験値上昇 lv1
称号
生と死の逆転
―――――――――――
やはりというべきか、あれは夢ではなかったらしい。
気になるのは当然『スキル累乗』『経験値上昇』『生と死の逆転』だろう。
目の前に出たウィンドウを突けば、各々スキルの詳細も確認できる。
―――――――――――
経験値上昇 LV1
パッシブスキル
経験値を獲得する時、その量を×2倍
スキル累乗 LV1
パッシブ、アクティブスキルに関わらず、任意のスキルを重ね掛けすることが出来る
現在重ね掛け可能回数 1
生と死の逆転
死を乗り越え、運命を切り開いた証
称号獲得者に『経験値上昇』と『ユニークスキル』を付与
―――――――――――
成程、このへんてこなスキルや称号たちは、私が死んで生き返ったから手に入ったようだ。
確か希望の実でLV10以下復活判定だとか言っていたから、そのおかげだろう。
しかし希望の実で生き返るとは、今まで聞いたことがない。
いったいどれほどの低確率なのか、一個や二個食べたから大丈夫です、という物でもないだろうし、LV10以下でないと判定も出ないとなれば、今まで誰も知らなかったのも当然だ。
要するに私は、最後の最後に悪運があったという訳らしい。
累乗、るいじょー……ぎりぎり覚えている。
学校で学んだ、同じ数字を掛け合わせると凄い大きい数になる奴だ。
序盤は足し算が上でも、続けていけば足し算なんか足元にも及ばない桁になるらしい。
……もしかして
「『スキル累乗』発動、対象『経験値上昇』」
もしかして、もしかしてだ。
例えばこの『スキル累乗』を発動して、経験値上昇が『×4倍』になったとしたら……
『スキル累乗』のLVが上がって、重ね掛けの回数が三回、四回と増えていく時、二倍が四倍、四倍が八倍、八倍が十六倍……ちょっとその先は計算できない。
算数は苦手なのだ、そもそも勉強できないけど。
―――――――――――
経験値上昇 LV1
パッシブスキル
経験値を獲得する時、その量を【×4倍】
現在『スキル累乗』発動中
―――――――――――
「は、はは……!」
心臓が、震えた。
涙がとめどなく溢れ、全身に力が漲る、
私は今、銀杏塩辛に覆われた現実を払拭する、とんでもない力を手に入れてしまったかもしれない。
まだ両親をパパ、ママと呼んでいて、普通の家庭だった時の夢。
多分小学生になるより前、初めてショートケーキを食べた。
二人共笑顔で……
「――ろ、起きろお嬢ちゃん!」
「……あ」
目を開くと真っ白な光が突き刺さり痛い。
火にも炙られていないところを見ると、地獄ではなさそうだ。
死んだ私はどうやら、天国にいったらしい。
光になれれば、目の前にいたのは筋肉。
なんてことだ、天使というのは凄い美女やイケメンではなく、筋肉ムキムキのハゲゴリラだった。
衝撃の事実に口を開ける。
「天使は筋肉ハゲゴリラだった、これは小説の一文になるかもしれない」
「誰が筋肉ハゲゴリラだコラ……その様子じゃ体調に何か問題はなさそうだな」
どうやら私は別に死んでいないようだ。
筋肉曰く私は落葉ダンジョンで倒れていたところを、偶然通りかかった探索者によって救出、教会へと運び出されたそうな。
ここは教会に併設されている無料の医療施設、探索者が強力な存在なので国が金を払っているのだ。
どうしてあんなところに潜ったんだ、筋肉は私に怒るが、私だって本当は入りたくなかった。
事情を説明したが、パーティの正式な登録をしていないなら、その証明は難しいと渋い顔で告げられた。
そんな気はしていた、でなきゃあまりに躊躇が無さすぎる。
ああ、人間なんて信じるんじゃなかった。
「これからどうするんだ? ……お前がその気なら、協会の職員として推薦状を書くのもやぶさかじゃないが……」
「いや、探索者としてこれからは一人でやっていく」
筋肉の話はあまりにありがたすぎる申し出だったが、私だってクマムシくらいのプライドはある。
ゴミみたいな扱いをされて、少し、いや結構傷付いたし、あいつらは絶対に許せない。
でも今の私だと雑魚だ、多分切り掛かったらその場で肉袋になる。
だから頑張る。
今までは体力をつけるだけが目的だったけど、強くなる。強くなってあいつらをボコす。
えーっと強い奴が偉いってのは……焼肉定食? そう、焼肉定食の摂理に従って、私は己の欲望のままに奴らを喰らってみせるのだ。
「そうか……ほら、これお前の武器だろ?」
「おお、愛しの金属バット」
「悪くない選択肢だ。遠心力を利用すれば弱くてもそこそこの威力が出るからな」
筋肉にも褒められた。
人に褒められたの久しぶりかも、えへへ。
◇
まだ体調も完璧じゃない、ここで休んでろ。
筋肉はそう言ってこの部屋から去っていった、協会の支部長らしく忙しいのだろう。
さて、人が居なくなったところで確認することがある。
死ぬ直前か直後か知らないが、聞こえたあの音とスキルについてだ。
「ステータスオープン」
―――――――――――
結城 フォリア 15歳
LV 3
HP 10 MP 15
物攻 11 魔攻 0
耐久 23 俊敏 29
知力 3 運 0
SP 0
スキル
スキル累乗 LV1
悪食 LV5
口下手 LV11
経験値上昇 lv1
称号
生と死の逆転
―――――――――――
やはりというべきか、あれは夢ではなかったらしい。
気になるのは当然『スキル累乗』『経験値上昇』『生と死の逆転』だろう。
目の前に出たウィンドウを突けば、各々スキルの詳細も確認できる。
―――――――――――
経験値上昇 LV1
パッシブスキル
経験値を獲得する時、その量を×2倍
スキル累乗 LV1
パッシブ、アクティブスキルに関わらず、任意のスキルを重ね掛けすることが出来る
現在重ね掛け可能回数 1
生と死の逆転
死を乗り越え、運命を切り開いた証
称号獲得者に『経験値上昇』と『ユニークスキル』を付与
―――――――――――
成程、このへんてこなスキルや称号たちは、私が死んで生き返ったから手に入ったようだ。
確か希望の実でLV10以下復活判定だとか言っていたから、そのおかげだろう。
しかし希望の実で生き返るとは、今まで聞いたことがない。
いったいどれほどの低確率なのか、一個や二個食べたから大丈夫です、という物でもないだろうし、LV10以下でないと判定も出ないとなれば、今まで誰も知らなかったのも当然だ。
要するに私は、最後の最後に悪運があったという訳らしい。
累乗、るいじょー……ぎりぎり覚えている。
学校で学んだ、同じ数字を掛け合わせると凄い大きい数になる奴だ。
序盤は足し算が上でも、続けていけば足し算なんか足元にも及ばない桁になるらしい。
……もしかして
「『スキル累乗』発動、対象『経験値上昇』」
もしかして、もしかしてだ。
例えばこの『スキル累乗』を発動して、経験値上昇が『×4倍』になったとしたら……
『スキル累乗』のLVが上がって、重ね掛けの回数が三回、四回と増えていく時、二倍が四倍、四倍が八倍、八倍が十六倍……ちょっとその先は計算できない。
算数は苦手なのだ、そもそも勉強できないけど。
―――――――――――
経験値上昇 LV1
パッシブスキル
経験値を獲得する時、その量を【×4倍】
現在『スキル累乗』発動中
―――――――――――
「は、はは……!」
心臓が、震えた。
涙がとめどなく溢れ、全身に力が漲る、
私は今、銀杏塩辛に覆われた現実を払拭する、とんでもない力を手に入れてしまったかもしれない。
36
お気に入りに追加
713
あなたにおすすめの小説

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる