死んでもお前の恋人にならない!!!

桜崎 零(サクラザキ レイ)

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27 俺のオカズ見ちゃダメじゃ~ん♡

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「俺と結婚を前提に付き合ってください。」

取り出された小さな箱をゆっくりと開く。中には指輪が1つ入ってて、とてもシンプルで男が着けても平気そうなデザインをしていた。どちらかと言うと、結婚指輪などと言うよりもペアリングよりの指輪だった。まて、そういえばこの指輪どこかで見たことあるぞ?

「この指輪…」

「あっ、やっぱり気づいちゃった?笑」

すると晃介は少し照れくさそうに自分の首にぶら下げていたネックレスを俺に見せる。

やっぱり、どうりで見た事があると思った。
晃介のネックレスは1つのリングにチェーンを通したシンプルなものだった。
皆さんお気ずきであろう…。
そう、晃介がつけているリングは“今俺に差し出した指輪と全く同じもの”。つまり“ペアリング”なのだ。
だが、まだここで驚かないで欲しい。俺が驚いているのはペアリングってこともあるが、1番驚いている理由は…

ー“それを10年前からつけていたこと”だ。

俺は知っている。
晃介がそのネックレスをずっとつけていた事を…。

教師になって初めて“赤羽先生”(晃介)と話した時のことー…

「今日から入りました、五十嵐と申します。よろしくお願いします。」

「こちらこそ、よろしくお願いします。ニコ」

ま、まぶしい…
当時の俺が初めて“赤羽先生”の笑顔を見るなり思ったこと。“赤羽先生”の笑顔はとてつもない破壊力を持っていた。目がとてつもなく癒されるのがじわじわと実感していく幸せ。あぁ、想像妊娠ってやつはこういう風にできるのかって意味わからないことをも思ってしまう程。そう、俺は世に聞く人生初の一目惚れってやつをしてしまった…。だって仕方ないだろ?高身長でガタイがよくイケメン…俺のストライクゾーンドンピシャな人がいればそりゃ、一目惚れするだろ。



ーQ さぁ、ここで問題。俺は相手(同性)を確認する時大抵1番最初に見るのは“顔”だ。
じゃあ2番目に見るものはなんでしょう???


・え、性格?もちろん大切だが違う。それは4番目だ。

・身体?惜しい!それは三番目だ。


分からない??
しょうがない、ヒントをあげよう。
ヒントは“体に身につける物”だ。

もう分かったよな?
じゃあ、答えを言うぞ???
正解はー


A:“左手の薬指”

みんな察しているだろう?
“左手の薬指”を見る理由なんて。理由なんて1つしかない。だが一応分からない人のためにも理由を言っておこう。
“左手の薬指”を見る理由…それは“既婚者”かどうかを確認するためだ。
今のご時世、職場でも指輪をつけていることが当たり前だろう?もし既婚者に手なんてだしたなんてことになってみろ?俺のパーフェクトティーチャーの名が汚れてしまう。ただでさえ世間は狭いんだ、手を出した上に、同じ職場、そしてゲイ!!!そんな問題だらけの3点セットなんてしてみろ?俺は社会に出ることすらできなくなってしまう…。
それらの事があるから職場恋愛は慎重に進めなければならない。だから簡単な話、薬指を確認するだけで既婚者が分かるようになった世間は昔より便利になったものだ。

話は長くなったが、俺が薬指を確認する理由はざっとこんなものだ。
そう、だから俺はこの日も同じように確認したのだ。
赤羽先生が既婚者かどうかを…あんなに顔がよく優しそうな人なんだ、結婚しててもおかしくない。
頼む神!!!俺の人生に希望の光をー!!!


指は……ない!!!つまり、既婚者じゃない!!!
よっしゃぁ!!!!神もついに俺の人生に光をさしてくれたようだ。
俺は心の中で思いっきりガッツポーズをした。


「あっ、五十嵐先生の机僕の後ろなですね!」

なんと赤羽先生の机と俺の机は後ろの向かい側、つまり後ろを振り向けば赤羽先生がすぐそこで仕事をしている状態。神もやっとここまで俺に優しくなったか。

「ほんとだ!これなら赤羽先生に色々とっー」

「おっと、大丈夫ですか?」

自分の奇跡的運の良さに浸っていたせいか足元に意識を向けるのが疎かになった俺は何かにつまづいた。身体の重心が前に傾く瞬間、瞬時に俺の身体を赤羽先生が支えてくれた。

「だ、大丈夫です。少しびっくりしただけなので。逆に助けて貰っちゃってすみません。」

「全然大丈夫ですよ。五十嵐先生悪くないんで。」

そう言うと、赤羽先生は俺がつまづいた所を見る。
足元にはどこのハゲが置いたであろうか、剣道で使う面が置いてあった。

「多分、去年の剣道部の顧問を担当した人の忘れ物ですね。せめて戻してくれればいいのに。チャラ」

「そうですね…えっ、」

この瞬間俺の時が止まった。
無理もない。想像出来なかったんだから。赤羽先生が指輪のネックレスをつけているなんて、一体誰が想像できただろう。

《指輪のネックレスをつけている=既婚者》

この考えが俺の頭の中を駆け巡った。

「ん?どうかしました?」

俺は聞くのを迷ってしまった。もしこれで既婚者だった場合、なんて声をかければいいのだろう…。おめでとうございます?いや、いてもおかしくないのだが…。神からのお恵みだと思っていた俺にそのネックレスは衝撃が強すぎた。
神!上げてから落とすような真似すんなよな!!!

「赤羽先生…それって…」

「あっ…これ見られちゃいました?(照)」

赤羽先生が照れた!?じゃあ、やっぱり…
俺は意を決して聞いた。

「もしかして…結婚…して…るんです…か?」

少しの間があった。
あぁ、この職場でも出会いなしか。まぁ、早い段階に気がつけて良かった。

「プッ…アハハハハ!」

何故か赤羽先生は突然笑いだした。
変化質問してしまっただろうか?やはり既婚者って聞くのはプライベートな事だから…

「あ、すみません。そりゃ、そうですよねそう思いますよね。僕、結婚してませんよ。」

「あっ、そうですよね。結婚して…ってえっ、?!」

してないの?ホントにしてないの?結婚してない詐欺じゃない?????

 「じゃあ…それは?」

「勘違いしますよね。すみません。これ僕が個人的につけてるだけなんです。」

よかっだァァァァァァァァ!!!!!!
神よ!ありがとぉぉぉぉお!!!
なんだよ、もぉ!ただのアクセサリーかよ!!
心配させんなよな、神!♡

だが、今思えばこの時俺はとんでもないものを見てしまった。

「これ、指輪に何か書いてありますか?」

指輪の内側に小さく“promise”と掘られていた。
“promise”つまり“約束”という意味だ。



何かみんな気がついてきたか?
俺もなんだか気がついてきたよ…。


「“約束”?何か意味でもあるんですか?」

「まぁ、僕の友人との。」

「なにか約束でもしたんですか?」

「はい!とても、大切な。でも、これは僕が勝手につけてるだけで。いつかまた会うことが出来たらその友人にも同じものをプレゼントしようと思っているんです!」

「そうなんですか。きっとその人も喜びますよ。」

「はい!」




……。
何も言わないでくれ…
俺が一番この言葉を後悔してるんだから。




「でも、職場でも取らないんですね?」

「はい。一応僕の決意を表したものでもあるので、肌に離さずつけているんです。これを見るとその友人の事を思い出せるので。」

そう言いながら赤羽先生はネックレスを見つめる。

「えっ、お風呂の時もですか?」

「はい!錆びないように手入れもしているんです。」




…………………………。




「えっ、いつからつけてるんですか?」

「え~っと、ちょうど“10年前”からですね!」




そう、こいつはこの“ペアリング”を10年前からつけているんだ。
友人(俺)とのある“約束”を守るために。
そして、現在に至るー


「俺と結婚を前提に付き合ってください。俺、絶対幸せにしてみせるから!」

「お前…そんなに俺のことを…」

どうやら本気のようだ。晃介は10年間、こんなに俺の事を思い続けていてくれた。形はどうであれ、好きと言われて嬉しくないわけが無い。むしろ、今の晃介は俺好み。しかも俺の為にわざわざタイプになってくれたのだ。並大抵の気持ちじゃあここまでならない。

なら、今の俺がやるべき行動は1つ。
ー“謝ること”だ。

本気の気持ちできてくれたのに生半可な気持ちで応える訳にはいかない。俺が許さない。だからまず、俺がすべきことは約束を思い出せないことを謝ることだ。
そして改めて、返事を返そう。

「晃介…あのなっ、、、、ん?」

俺はフリーズした。
多分、これを見てる皆さんは『早く返事を返せよ。』『またフリーズしたのかよ(笑)』と思ってるだろう。だが言い訳をさせてくれ。俺もしようと思ったんだ。だが、今俺が体験したことを貴方自身が体験したらきっと同じ事が言えなくなる…

思い返して欲しい。今俺がかけている丸メガネを。この丸メガネは晃介が別の部屋からとってきた物だ。その別の部屋はきっと昔の物などが閉まっている部屋なのだろう。物置部屋?クローゼット?そんなのはなんでもいい。人の家にとやかく言うつもりはないし、見るつもりもない。勝手に見てはいけないものだと思うし、プライベートなことだから。だが、みえてしまったんだ。なぜならドアが空いていたから。きっと晃介がメガネを取りに行った際に閉め忘れたのだろう。だから、俺が意図してみた訳では無い。そこはわかって欲しい。
…むしろ、見てはいけなかったのかもしれない。知ってはいけなかったのかもしれない…。俺はこの部屋を見たことをとても後悔する……。
晃介が跪いている後ろの扉の向こうから見えたものは、“昔の俺の写真達”だった。同じ高校なら、あっても別に変ではない…が、それが“壁一面に貼ってある”となれば話は別だ。


「うん?どうかした?」

晃介の後ろのを見つめているのに気が付いたのか、晃介は俺の顔を見るなり全てを理解したようだった。

「あーーーーーーー。…ドア開けっぱだったか…」

すると、晃介はよっこらせと立ち上がり後ろの扉の方へ向かう。晃介が手をドアノブに手をかけた途端ピタッと止まった。

「そうだ、せっかくだし見てみる?」

晃介は俺の方を振り返り、ニコッと笑った。

俺はこの瞬間恐怖を感じだ。野性的本能だろうか。これは従った方が身のためだと感じだ。俺は言われるままにスタスタっと晃介の方へ向かった。

「さぁ、入って入って!色々見ていいよ♡あっ、でもエッチな写真とかは見つけちゃダメだよ?♡」

晃介のボケも頭の中に入ってこない。
なぜなら、壁一面に昔の俺の写真。そして…俺(今)の写真があったのだから…。しかもいつ取られたのか分からない…多分盗撮だろう。お昼飯をら食べてる俺、仕事の時の俺、……家に帰る俺。昔と今の俺の写真で壁を埋め尽くされていた。端の方にあるタンスには張り紙が貼ってあり、そこには“昔”と“今”、“♡”と書かれていた。

「あっ、気になる?(笑)いいよ、見ても♡」

俺は恐る恐る中を見る。…すると、そこには“昔”と“今”の俺が使ったであろう使用済みのストローや割り箸、カフェオレの缶、はたまた鼻を噛んだティッシュなどが入っていた……。
そして、1番右の“♡”が書かれた場所を開ける。
そこに入っていたものは……なんと…俺が昔捨てたパンツやシコっていた時の写真…又は入浴シーンの写真だった………。

「ア゙ア゙…!?」

「あっ、ダメだよ~そのは。♡って書いてあるでしょ?俺のオカズ見ちゃダメじゃ~ん♡」

晃介はいつの間にか俺の後ろに立っていた。そして、♡が書いてある引き出しを閉めた。

お前が見ろって言ったんだろ!!!…てか、は?え?オ…カズ…???情報量の渋滞なんだが!?????は?へ??なんでここに俺のパンツが?写真なんかあるの??

「なんで?って顔してるね。教えてあげるよ。俺ね、ずっと人生ってつまんないって思ってたんだ。人を好きになる気持ちもわからなかったし、勉強以外やること無かったから。毎日カツアゲされてても殴られても虐められても、何も心が動かなかったのよ。全部死ぬほどどーでも良くて。生きてるって意味が全くわかんなくて、こんなにつまんねぇなら、死んだ方がマシなんじゃねぇかなって思ってて…」

俺はゆっくりと晃介の方を振り返る。

「でも、そんな俺にも天使が舞い降りだだ。そう、五十嵐くんが俺の心を動かしてくれたんだ!!!初めてあった君はあまりにも美しくて、ボロボロで…何よりもエロくて!こんなに綺麗な生き物がいるのかと驚いて腰が抜けてしまうほどにね。」

こいつが腰を抜かしてた理由はカツアゲされていたからじゃなかったのかよ!!!

「それで俺思ったの!自分のものにしたいって。俺だけのものにしてずっと傍に置いときたいって!だから、まずは君の友達になることにしたんだ!そうすれば君と話せるし、仲良くなれると思って!仲良くなればきっと、五十嵐くんもきっと俺のこと好きになってくれると思ったんだ。それからは毎日が楽しかったんだ!色んな顔の五十嵐くんが見れるからね。あぁっ、恋ってこんなに楽しいものなんだってやっと分かったんだ!!!……だけどね、ダメだった。五十嵐くんちっとも俺のことを好きになってくれない。しかも五十嵐くんが好きだったのは俺じゃなくてあの“クソ教師”だった。ずうぅぅっっっとあの教師の話ばっかで…正直心の中では嫉妬で狂いそうになったよ。だから考えたの。あいつよりもいい男になればいいんだって。五十嵐くんの理想になればいいって。ようやく卒業であの教師ともおさらばすることが出来て…やっと俺の番だって思ったんだ。それからは俺めっちゃ頑張ったんだよ?五十嵐くんの好みになれるように。身体を鍛えて、雰囲気変えて。五十嵐くんと会えなくて死にそうになっても…俺我慢して…会えないから妄想くらいはいいかなって思って五十嵐くんの履いてたパンツや写真でシコって何とか耐えて…。まぁ、離れてからも五十嵐くんの居場所は分かってたんだけどね。だから、五十嵐くんが彼氏を作った時も…何とか耐えて耐えて…やっと迎えに行くことが出来たと思ったのに…」

晃介は俺の肩を強く掴む。

「五十嵐くんの処女が、あんなイキってるクソゴミカスなヤリチンノンケのガキに取られちゃって…」

晃介の手がプルプルと震えてるのが伝わる。てかなんで知ってんの?!

「それなのに、五十嵐くん天然タラシだからあの黒岩ってガキを惚れさせて……」

晃介の力が強くなっていく。
まずい、怒らせたか?

「大丈夫だからね。あんな無理やりなのはノーカンと同じだからね。気にしなくていいよ。俺分かってるから。五十嵐くんただあの変なガキに気に入られちゃっだだけで被害者なんだって。だけど、1人が可愛そうだから構ってあげてるんだって俺わかってるから。」

晃介のが俺を抱きしめる。気味が悪いくらい今度は優しい力加減で俺にハグをしてくる。

「ねぇ、五十嵐くん結婚しようよ。俺、何でもするよ?五十嵐くんの為ならなんでも。ご飯は俺が作るし、掃除も洗濯も家事全般は俺がやるから。あっ、なんなら俺が養うから仕事辞めてもいいよ?ただ、五十嵐くんは何もしないで好きに家にいてくれればいいから。それだけでいいから。」

「…仕事を辞めて…家にいるだけ?」

「そう。」

「なるほど。」

俺は深呼吸をした。

「…なぁ、晃介。」

「なに?」

俺は晃介の腕を解きあいつの顔に手を添える。

「晃介、目閉じてくれ。」

「えっ、それって…」

「いいから。」

「う、うん!」

少し驚いたのか、晃介は嬉しそうに声を弾ませながら目を閉じた。


俺はゆっくりあいつの顔を近づき…












ー晃介の股間を思いっきり蹴飛ばした。








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