18 / 40
STAGE2
第18話 無事帰還――そして新たなる始まり
しおりを挟む
※
「……巡……大丈夫かしら?」
「きっと大丈夫ですよ。だって、帰ってくるって約束――」
「おう、ただいま」
「巡っ!?」「先輩!?」
目の前に唐突に現れた俺を見て、ベッドに座っていた二人が飛び上がり、驚愕に目を見開いた。
「約束通り無事に戻ってきたぞ」
日本への転移は一瞬で完了していた。
恋と詩音は部屋で、俺の帰りを待ってくれていたらしい。
「周防くんは……」
そう尋ねたのは恋だった。
あの後のことを恋はずっと心配していのだろう。
「向こうに残るそうだ」
「……そう、なんだ」
恋は少し複雑そうに、でも直ぐに納得したように微笑んだ。
友人が異世界に残るという選択をしたこと。
そこには色々な想いがあるだろう。
だが一つ言えるのは――。
「これは周防が望んだ選択だ。あいつは後悔なんてしてないさ」
「ええ――。またいつか、会えるといいわね」
「いつでも会えるさ。会いたくなったら、ユグドに転移すればいいんだからな」
俺は思ったままを口にした。
だが、そんな俺を二人の少女は顔を見合わせて、可笑しそうに微笑する。
「そんな軽々と言わないでよ」
「先輩だけでですからね、そんなこと出来るの」
「ぁ……そ、そうか」
俺の反応を聞いて再び恋たちは苦笑した。
異世界への転移は俺にとっては当たり前だが、
(……普通はできないんだよな)
それを容易にこなすことが出来るのは、俺やアルのような例外だけだろう。
「でも、巡がいてくれたらいつでも転移できるのね」
「仮に異世界に残りたいという人がいても寂しくないです!」
「ああ、そうか……この先も異世界に残りたいって生徒がいる可能性があるのか」
詩音に言われて気付いた。
異世界転移後の生徒たちの状況がわからない。
だが、何らかの事情で異世界に残りたいという者がいてもおかしい話ではないだろう。
「それほど多くはいないと思うけどね。家族もいるから」
恋の言う通りだな。
俺が森羅や恋に会う為に現代へ帰って来たように、家族や友人の存在は大きいだろう。
「……って、そうだ! 恋のご両親! すごく心配してるんじゃないか?」
「だと思う……。あんたの無事も確認できたから直ぐに戻らないとね」
安心したような笑顔を向ける恋。
長い間、誰かに心配される感覚というのを忘れていた。
こういう懐かしい感覚……こっちに戻ってきてからずっと感じっぱなしだ。
「恋さん、ずっと先輩のこと心配してたんですよ。そわそわ~って、大丈夫かな~って」
「し、詩音! そんなこと言わなくていいの!」
後輩にからかわれて、恋は頬を真っ赤に染めた。
だが、その気持ちは素直に嬉しい。
「ありがとう、恋。それに詩音もありがとうな」
「……べ、別に……でも、本当に巡に会えて嬉しかった。あんたが助けに来てくれた時、不安でいっぱいだった気持ちが一発でどっかにいちゃった」
「わたしも同じです。シンラや、みんなが突然、いなくなっちゃって……でも、そんな中で先輩だけは傍にいてくれたから――いっぱい安心をもらっちゃいました」
現代で事情を知る仲間はまだ恋と詩音の二人だけだ。
そんな俺たちだからこそ、この先も支え合えることもあるだろう。
「もう心配ない。全部俺が解決してみせるから」
「あまり一人で無茶するんじゃないわよ」
「何かあれば、わたしたちのことも頼ってくださいね」
二人とも本当に心強い。
それはきっと、今も変わらず俺のことを友人として扱ってくれているからなのだろう。
「ところでさ……他の生徒たちがどこに転移したかはわかってるの?」
「いや、今も調査中だ。だが近いうち必ずわかる」
「……先輩が言うと、本当にそうなんじゃないかって気がしてきます」
信じてくれて問題ない。
異世界管理局の女神たちも力を貸してくれているのだから。
「さて、今日はもう解散だ。夜ももう遅い……二人とも送っていくよ」
「別に一人でも大丈夫よ。そんな遠くないんだから」
「あ~恋さん、またそんなこと言って、本当は送ってもらえるのが嬉しいんじゃないですか~?」
「~~~~~~っ! し、詩音!」
「あははっ、恋さんは可愛いなぁ」
ぎゅ~っと恋を、後ろから抱きしめる詩音。
詩音は恋が無事に戻って来てくれたことが本当に嬉しいようだ。
束の間の休息。
懐かしい恋と詩音のやり取りに、俺は安らぎを感じていた。
※
そして二人を家まで送って、俺は再び自宅に戻った。
「はぁ……」
部屋に戻りベッドに倒れる。
誰もいない家は静かで、静かすぎて逆に落ち着かない。
(……森羅はどうしてるかな?)
たった一人の肉親。
出来ることなら、直ぐにでも助けてやりたい。
『――アル、どうだ?』
『そう急くでない。朝になる頃には何かわかっているはずだ』
『……わかった』
無数にある異世界。
その中の一つを一つを検索して特定の転移者を見つけ出すという気が遠くなるような作業を頼んでいるのだから、それも仕方ないだろう。
(……少し休むか)
目を瞑ると直ぐに俺の意識は沈んでいったのだった。
※
そして翌日、
『起きろ』
アルの声で俺は目覚めた。
気付けば外は明るくなっている。
思ったよりも熟睡していたようだ。
『聞いて喜べ。――転移者を発見したぞ』
『……そうか。なら直ぐに始めよう』
次の異世界転移者の救出を――。
「……巡……大丈夫かしら?」
「きっと大丈夫ですよ。だって、帰ってくるって約束――」
「おう、ただいま」
「巡っ!?」「先輩!?」
目の前に唐突に現れた俺を見て、ベッドに座っていた二人が飛び上がり、驚愕に目を見開いた。
「約束通り無事に戻ってきたぞ」
日本への転移は一瞬で完了していた。
恋と詩音は部屋で、俺の帰りを待ってくれていたらしい。
「周防くんは……」
そう尋ねたのは恋だった。
あの後のことを恋はずっと心配していのだろう。
「向こうに残るそうだ」
「……そう、なんだ」
恋は少し複雑そうに、でも直ぐに納得したように微笑んだ。
友人が異世界に残るという選択をしたこと。
そこには色々な想いがあるだろう。
だが一つ言えるのは――。
「これは周防が望んだ選択だ。あいつは後悔なんてしてないさ」
「ええ――。またいつか、会えるといいわね」
「いつでも会えるさ。会いたくなったら、ユグドに転移すればいいんだからな」
俺は思ったままを口にした。
だが、そんな俺を二人の少女は顔を見合わせて、可笑しそうに微笑する。
「そんな軽々と言わないでよ」
「先輩だけでですからね、そんなこと出来るの」
「ぁ……そ、そうか」
俺の反応を聞いて再び恋たちは苦笑した。
異世界への転移は俺にとっては当たり前だが、
(……普通はできないんだよな)
それを容易にこなすことが出来るのは、俺やアルのような例外だけだろう。
「でも、巡がいてくれたらいつでも転移できるのね」
「仮に異世界に残りたいという人がいても寂しくないです!」
「ああ、そうか……この先も異世界に残りたいって生徒がいる可能性があるのか」
詩音に言われて気付いた。
異世界転移後の生徒たちの状況がわからない。
だが、何らかの事情で異世界に残りたいという者がいてもおかしい話ではないだろう。
「それほど多くはいないと思うけどね。家族もいるから」
恋の言う通りだな。
俺が森羅や恋に会う為に現代へ帰って来たように、家族や友人の存在は大きいだろう。
「……って、そうだ! 恋のご両親! すごく心配してるんじゃないか?」
「だと思う……。あんたの無事も確認できたから直ぐに戻らないとね」
安心したような笑顔を向ける恋。
長い間、誰かに心配される感覚というのを忘れていた。
こういう懐かしい感覚……こっちに戻ってきてからずっと感じっぱなしだ。
「恋さん、ずっと先輩のこと心配してたんですよ。そわそわ~って、大丈夫かな~って」
「し、詩音! そんなこと言わなくていいの!」
後輩にからかわれて、恋は頬を真っ赤に染めた。
だが、その気持ちは素直に嬉しい。
「ありがとう、恋。それに詩音もありがとうな」
「……べ、別に……でも、本当に巡に会えて嬉しかった。あんたが助けに来てくれた時、不安でいっぱいだった気持ちが一発でどっかにいちゃった」
「わたしも同じです。シンラや、みんなが突然、いなくなっちゃって……でも、そんな中で先輩だけは傍にいてくれたから――いっぱい安心をもらっちゃいました」
現代で事情を知る仲間はまだ恋と詩音の二人だけだ。
そんな俺たちだからこそ、この先も支え合えることもあるだろう。
「もう心配ない。全部俺が解決してみせるから」
「あまり一人で無茶するんじゃないわよ」
「何かあれば、わたしたちのことも頼ってくださいね」
二人とも本当に心強い。
それはきっと、今も変わらず俺のことを友人として扱ってくれているからなのだろう。
「ところでさ……他の生徒たちがどこに転移したかはわかってるの?」
「いや、今も調査中だ。だが近いうち必ずわかる」
「……先輩が言うと、本当にそうなんじゃないかって気がしてきます」
信じてくれて問題ない。
異世界管理局の女神たちも力を貸してくれているのだから。
「さて、今日はもう解散だ。夜ももう遅い……二人とも送っていくよ」
「別に一人でも大丈夫よ。そんな遠くないんだから」
「あ~恋さん、またそんなこと言って、本当は送ってもらえるのが嬉しいんじゃないですか~?」
「~~~~~~っ! し、詩音!」
「あははっ、恋さんは可愛いなぁ」
ぎゅ~っと恋を、後ろから抱きしめる詩音。
詩音は恋が無事に戻って来てくれたことが本当に嬉しいようだ。
束の間の休息。
懐かしい恋と詩音のやり取りに、俺は安らぎを感じていた。
※
そして二人を家まで送って、俺は再び自宅に戻った。
「はぁ……」
部屋に戻りベッドに倒れる。
誰もいない家は静かで、静かすぎて逆に落ち着かない。
(……森羅はどうしてるかな?)
たった一人の肉親。
出来ることなら、直ぐにでも助けてやりたい。
『――アル、どうだ?』
『そう急くでない。朝になる頃には何かわかっているはずだ』
『……わかった』
無数にある異世界。
その中の一つを一つを検索して特定の転移者を見つけ出すという気が遠くなるような作業を頼んでいるのだから、それも仕方ないだろう。
(……少し休むか)
目を瞑ると直ぐに俺の意識は沈んでいったのだった。
※
そして翌日、
『起きろ』
アルの声で俺は目覚めた。
気付けば外は明るくなっている。
思ったよりも熟睡していたようだ。
『聞いて喜べ。――転移者を発見したぞ』
『……そうか。なら直ぐに始めよう』
次の異世界転移者の救出を――。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい
こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。
社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。
頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。
オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。
破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。
小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。
本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。
お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。
その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。
次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。
本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜
上村 俊貴
ファンタジー
【あらすじ】
普通に事務職で働いていた成人男性の如月真也(きさらぎしんや)は、ある朝目覚めたら異世界だった上に女になっていた。一緒に牢屋に閉じ込められていた謎のしゃべるうさぎと協力して脱出した真也改めマヤは、冒険者となって異世界を暮らしていくこととなる。帰る方法もわからないし特別帰りたいわけでもないマヤは、しゃべるうさぎ改めマッシュのさらわれた家族を救出すること当面の目標に、冒険を始めるのだった。
(しばらく本人も周りも気が付きませんが、実は最強の魔物使い(本人の戦闘力自体はほぼゼロ)だったことに気がついて、魔物たちと一緒に色々無双していきます)
【キャラクター】
マヤ
・主人公(元は如月真也という名前の男)
・銀髪翠眼の少女
・魔物使い
マッシュ
・しゃべるうさぎ
・もふもふ
・高位の魔物らしい
オリガ
・ダークエルフ
・黒髪金眼で褐色肌
・魔力と魔法がすごい
【作者から】
毎日投稿を目指してがんばります。
わかりやすく面白くを心がけるのでぼーっと読みたい人にはおすすめかも?
それでは気が向いた時にでもお付き合いください〜。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
気がついたら異世界に転生していた。
みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。
気がついたら異世界に転生していた。
普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・
冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。
戦闘もありますが少しだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる