バレンタインの後にさよなら~仲良し姉弟の最後のバレンタイン~

倉橋敦司

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ホワイトデーの朝②

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 丁寧に包装紙取って箱を開ける。

 あれ?
 チョコだって思ってたのに・・・

 赤いハート型のカード。
 二十センチくらいある大きなカード。
 金の文字。

 <I LOVE YOU!I LOVE YOU!I LOVE YOU!
 たったひとりだけ大好きな悠へ!!         明日香>

 文字の下に、姉さんと僕のツーショット写真。

 そうだ・・・
 バレンタインデーって・・・
 愛を告白する日だったんだ・・・

 「悠!悠!」

 姉さんが、二階から右手を振っている。
 左右に大きく力いっぱい・・・
 
 それなのにタクシーが発車する。
 僕も窓から力いっぱい手を振る。

 「姉さん!」

 すぐ言い直した。

 「明日香ちゃん!明日香ちゃん!」

 思いっきり大声を出した。

 遠くなっていく家。
 明日香ちゃんの姿が小さくなっていく。
 だけどハッキリ見える。
 明日香ちゃんの表情・・・
 心で見えるんだ・・・

 「悠!悠!」

 明日香ちゃんの声はどんどん大きくなる。
 右手が・・・
 広い空を払いのけるぐらい・・・
 大きく大きく振られる・・・
 だけど僕・・・
 窓を閉めた・・・
 涙が噴き出てきて・・・
 もう我慢できなかった・・・
 姉の声って・・・
 タクシーの窓ガラスを通り越して・・・
 まだ聞こえてくる・・・
 ずっと聞こえて欲しいって思った・・・
 僕らの飛行機が飛び立つまで・・・

 初めて気づいた。
 プレゼントを包んでいた二枚の白いハンカチ。
 一枚ずつに、リップを塗った小さな唇のマーク・・・
 そっとぼくのこと、見つめてる。

 折り畳まれた紙片。

 <一枚は悠が持っててね。
 一枚はね。悠の唇を重ねて必ず私に送り返して!
 きっと送って!
 生きてる限り・・・
 きっと一生・・・
 わたし、一緒にいるから・・・>

    
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