バレンタインの後にさよなら~仲良し姉弟の最後のバレンタイン~

倉橋敦司

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バレンタインから十三日⓵

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 実の母が尋ねて来て三日間。
 フツーの毎日が過ぎた。
 両親は実母のことはなにも言わない。
 フツーに朝晩の挨拶。
 フツーに食事をする。
 僕ら四人のときに会話はない。
 だけど・・・
 僕の知らないところで家族の会話・・・
 僕たち姉弟の部屋。
 夜中に目が覚めたとき、隣の布団に姉はいなかった。
 僕、そっとドアを開ける。
 階段の途中。
 茶の間から父の声。

 「正直、ふたりの大学の費用。どうしようかと思ってる。子会社から戻ることはできないと思う。
 お父さんは追い詰められているんだ」
 「だからあの女の言うこと、聞くってわけ?」

 姉の声。とっても静か。
 だけど怒ってること、聞いててよく分かる。

 「もともとあのときだって、引き取るなんて無茶なことだった。
 だけど明日香が悠と仲よくなってしまい、家に連れてくって聞かなかった」

 父の遠慮がちな声。

 「ずっと泣いてたのに、わたしが抱っこしたら笑った。
 声出して笑った。
 わたしの腕を小さな手でつかんだ。
 わたし、小さかった。
 でもよく覚えてる。
 わたし、悠と一緒にいたいって思った。
 ずっと悠を守ってきた。
 これからだって・・・」

 姉の声、聞いたとき、目にちっちゃく涙が浮かんだ。

    
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