バレンタインの後にさよなら~仲良し姉弟の最後のバレンタイン~

倉橋敦司

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バレンタインから五日②

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 僕、黙って姉の横顔見てる。
 姉の机の上。姉と僕の小さい頃の写真。
 二歳の姉が、赤ん坊の僕を一生懸命抱いている。
 姉は満面の笑み。
 小さい僕、大きく口を開けて泣いてる。
 ずっと同じ写真が飾ってある。 

 「悠ちゃん」

 姉は前向いたまま。
 僕、じっと姉の横顔見る。

 「部屋、別々にしようって思う」

 なんて答えたらいいんだろう。
  
 「大学入るし・・・
 この大学で本当にいいのかってことはあるけど・・・」

 僕に話してるのか、自分に言い聞かせてるのか、よく分からない。

 「お父さんが子会社に出向なんて予想外だったし・・・
 もちろんアルバイトするつもりだったけど、学費とか見ると・・・奨学金って結局、返さなきゃならないし・・・
 ただ入るにしても辞退するにしても、部屋は別々にしようって・・・
 一階の客間、わたしが使えないかって相談してる」

 ずっと一緒の部屋だった。小学生の時は、ひとつの布団で寝た。
 中学生からは別々になったけど・・・
 姉ったら僕の前で平気で着替えなんかしてた。
 僕、部屋の外に出るようにしてた。
 だけど別々の部屋にしようなんてならなかった。
 姉弟でも女と男。早く別々の部屋になるべきだったかもしれない。
 でも僕、言えなかった・・・
    
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