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診断
陰鬱な雨
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夕日がキラキラと川の水面を照らしている。河川敷ではキャッチボールをしている少年たち。彼らを夕日の光が照らすように僕と彼女達をオレンジの暖かい光が包みこむ。
そんな景色を眺めていると自分自身の自我を失ってゆく。ついには景色に飲み込まれる。隣の彼女を忘れるかのように。
「翔先輩ってなんで私に告ったんですか?」
一瞬ドキッとした。ここで可愛いからとか胸が大きいからとか答えたら本当に愛してないんじゃないかと思われそうだったから。そもそも可愛くて胸が大きいという理由で告白したのは、紛れもなく事実だった。
「由奈の全てが好きだったからだよ。」
明らかに嘘のように聞こえる言い訳。急に思いついた言い訳がありきたりになってしまったことを後悔するのは遅かった。
「もう先輩~!冗談はよして下さいよ。」
由奈はいつも通りの明るい笑顔だった。
僕はいつもこの笑顔に癒される。
「いや本当だって。」
「本当に~?そろそろ家の近くだ。一緒に帰ってくれてありがとう、翔先輩。じゃあね。」
「また明日~。」
由奈と最近は手を繋いで帰ることが多い。彼女の手は小さくて繋いでいると守りたいと思ってしまうから。他の人には手を出させたくない。
彼女のことを考えながら歩くとすぐに家に着いてしまう。
家に着くとおかしな事に気がついた。手を繋いだ時に由奈の体温が高かった。しかも最近由奈が疲れやすくなっている。何かあったのか?一応電話で聞いておいたほうがよさそうだ。
電話をかけるとすぐに由奈が出た。
いつもこんな調子で電話をするとすぐに出てきてくれる。
「どうしたんですか翔先輩?」
「少し由奈に聞きたいんだけど最近体調大丈夫?熱っぽいから心配して電話をしたんだ。」
「最近関節が痛いけど平気だよ。多分筋肉痛だと思う。」
「一応病院に行ったほうがいいと思う。何かあったら困るから。」
由奈の体調が悪いと俺も心配になってくる。何か重い病気じゃなければ良いんだけど。
「明日遊園地に行く約束だったけど...今度じゃ駄目...?」
「遊園地は今度行こう。由奈が体調が良くなった時に行ったほうが由奈が楽しめるし、明日病院に行って早く元気になってほしい。」
「翔先輩の言う通りだね。心配してくれてありがとう。じゃあ切るね。」
病院に行ってくれるから良かったけど、電話してる時も辛そうだったな。明日は付き合って1年経つから祝おうと思って遊園地に行く予定だったけどそれよりも由奈の体調が心配でたまらない。
俺はベッドに寝転がった。寝ようと思っても由奈のことが心配でそれどころじゃなかった。もし難病だった時、俺は何が出来るんだろうと考えたけど何も思いつかない。こんな無力な奴が彼氏なんて由奈も可哀想だな。今はとにかく病気じゃないことを祈るしかない...
今日由奈は元気そうに振る舞っていたけど、あれは我慢していたのかもしれない。そのことに早く気づけなかった...
スマホで由奈の症状を調べてみる。
検索エンジンに筋肉痛 関節痛 微熱と由奈の症状を打った。
1番最初に載っていたのは膠原病と載っていた。症状もその通りで女性の比率が高いらしい。どんな病気かは何となく分かったところですぐにスマホを閉じた。本当に由奈が膠原病なのではないかというと思うと怖くなった。
検索エンジンの予測機能には難病や治らないなどの言葉が書かれていた。そういう言葉を見ているうちに耐えられなくなった。
とにかく由奈が苦しむ姿なんて見たくない。
由奈は膠原病じゃない、膠原病じゃない、膠原病じゃない...
心臓が脈拍を強く打つ。普段は気づかない心臓の音が自分にも聞こえてくる。緊張というよりも由奈に何かがあったかと思うと怖くなってくる。
外は少し明るくなっていて、もう朝になったのだろう。あれからどれだけの時間が経っただろうか?時計を見ると6時30分になっていた。
「一睡もできなかったな。」
特に眠くはなかった。
今日は由奈と一緒に病院に行く日だ。大丈夫か心配で心が跳ねたボールの様に落ち着かない。一旦外で散歩して落ち着こう。最近は冬が近づいて肌寒い。寒くて起きたくなかったけど由奈のことを思うとそんなことはきにすることでもなかった。
外は少し雨が降り暗かった。何か陰鬱な雰囲気が街中を覆っている様に感じる。病院に行くまであと2時間もある。由奈の家に少し居ようかな...由奈が元気になって欲しい。流石に何も言わずに家に行くのはまずいからメールで今から由奈の家に行くことを伝える。
小雨で肌寒い空気が肌を冷やす。傘にポツポツと雨の音がしたかと思うと止んで、止んだかと思うとまた降り出す。
少し歩くと一軒家の赤い屋根の家に着いた。由奈の家だ。久しぶりに来るので緊張していた。緊張しすぎて冷や汗が流れ、暑い体を冷やしていく。
インターホンを鳴らすと家の奥から足音が聞こえて来る。足音で分かったが多分これは由奈の足音ではないだろう。いつもなら俺のところに喜んでくるのに...
そんな景色を眺めていると自分自身の自我を失ってゆく。ついには景色に飲み込まれる。隣の彼女を忘れるかのように。
「翔先輩ってなんで私に告ったんですか?」
一瞬ドキッとした。ここで可愛いからとか胸が大きいからとか答えたら本当に愛してないんじゃないかと思われそうだったから。そもそも可愛くて胸が大きいという理由で告白したのは、紛れもなく事実だった。
「由奈の全てが好きだったからだよ。」
明らかに嘘のように聞こえる言い訳。急に思いついた言い訳がありきたりになってしまったことを後悔するのは遅かった。
「もう先輩~!冗談はよして下さいよ。」
由奈はいつも通りの明るい笑顔だった。
僕はいつもこの笑顔に癒される。
「いや本当だって。」
「本当に~?そろそろ家の近くだ。一緒に帰ってくれてありがとう、翔先輩。じゃあね。」
「また明日~。」
由奈と最近は手を繋いで帰ることが多い。彼女の手は小さくて繋いでいると守りたいと思ってしまうから。他の人には手を出させたくない。
彼女のことを考えながら歩くとすぐに家に着いてしまう。
家に着くとおかしな事に気がついた。手を繋いだ時に由奈の体温が高かった。しかも最近由奈が疲れやすくなっている。何かあったのか?一応電話で聞いておいたほうがよさそうだ。
電話をかけるとすぐに由奈が出た。
いつもこんな調子で電話をするとすぐに出てきてくれる。
「どうしたんですか翔先輩?」
「少し由奈に聞きたいんだけど最近体調大丈夫?熱っぽいから心配して電話をしたんだ。」
「最近関節が痛いけど平気だよ。多分筋肉痛だと思う。」
「一応病院に行ったほうがいいと思う。何かあったら困るから。」
由奈の体調が悪いと俺も心配になってくる。何か重い病気じゃなければ良いんだけど。
「明日遊園地に行く約束だったけど...今度じゃ駄目...?」
「遊園地は今度行こう。由奈が体調が良くなった時に行ったほうが由奈が楽しめるし、明日病院に行って早く元気になってほしい。」
「翔先輩の言う通りだね。心配してくれてありがとう。じゃあ切るね。」
病院に行ってくれるから良かったけど、電話してる時も辛そうだったな。明日は付き合って1年経つから祝おうと思って遊園地に行く予定だったけどそれよりも由奈の体調が心配でたまらない。
俺はベッドに寝転がった。寝ようと思っても由奈のことが心配でそれどころじゃなかった。もし難病だった時、俺は何が出来るんだろうと考えたけど何も思いつかない。こんな無力な奴が彼氏なんて由奈も可哀想だな。今はとにかく病気じゃないことを祈るしかない...
今日由奈は元気そうに振る舞っていたけど、あれは我慢していたのかもしれない。そのことに早く気づけなかった...
スマホで由奈の症状を調べてみる。
検索エンジンに筋肉痛 関節痛 微熱と由奈の症状を打った。
1番最初に載っていたのは膠原病と載っていた。症状もその通りで女性の比率が高いらしい。どんな病気かは何となく分かったところですぐにスマホを閉じた。本当に由奈が膠原病なのではないかというと思うと怖くなった。
検索エンジンの予測機能には難病や治らないなどの言葉が書かれていた。そういう言葉を見ているうちに耐えられなくなった。
とにかく由奈が苦しむ姿なんて見たくない。
由奈は膠原病じゃない、膠原病じゃない、膠原病じゃない...
心臓が脈拍を強く打つ。普段は気づかない心臓の音が自分にも聞こえてくる。緊張というよりも由奈に何かがあったかと思うと怖くなってくる。
外は少し明るくなっていて、もう朝になったのだろう。あれからどれだけの時間が経っただろうか?時計を見ると6時30分になっていた。
「一睡もできなかったな。」
特に眠くはなかった。
今日は由奈と一緒に病院に行く日だ。大丈夫か心配で心が跳ねたボールの様に落ち着かない。一旦外で散歩して落ち着こう。最近は冬が近づいて肌寒い。寒くて起きたくなかったけど由奈のことを思うとそんなことはきにすることでもなかった。
外は少し雨が降り暗かった。何か陰鬱な雰囲気が街中を覆っている様に感じる。病院に行くまであと2時間もある。由奈の家に少し居ようかな...由奈が元気になって欲しい。流石に何も言わずに家に行くのはまずいからメールで今から由奈の家に行くことを伝える。
小雨で肌寒い空気が肌を冷やす。傘にポツポツと雨の音がしたかと思うと止んで、止んだかと思うとまた降り出す。
少し歩くと一軒家の赤い屋根の家に着いた。由奈の家だ。久しぶりに来るので緊張していた。緊張しすぎて冷や汗が流れ、暑い体を冷やしていく。
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