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第46話 シーカーとサポーター
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最初に俺が梯子を使って本棚の上にあがり、後から上ってきた如月に手を貸す。
「何を読んでるんだ?」
本を読みふけっているアビスに問う。
魔法の教本とか戦術指南書とかかな。S級シーカーが読んでいる本、気になる。
「ラノベだよ」
アビスは聞きなれぬ単語を口にする。
「ラノベ?」
「そう。ライトノベル。知らないのかい?」
「知らないな。どういったことに役立つ本なんだ?」
アビスはラノベとやらの表紙を見せてくる。ラノベの表紙には――胸の大きな美女達の絵と共に『さきゅレム! 100人のサキュバスと僕の寮生活ハーレム!』と書かれていた。
「……なんだコレ」
「だからラノベだって。中高生向きのライトに読める小説さ。僕はハーレムモノが好きでね。湿っぽい駆け引きとかなく、みんな性に奔放に生きている感じが堪らないんだ」
お、俺には理解できない世界だな……。
「如月ちゃんとはこの前、病室でラノベの話題で盛り上がったよねぇ~」
「え!? は、はい。まぁ……」
「……如月もハーレムが好きなのか?」
「ち、違います! 私はそのぉ……」
「如月ちゃんはBエ――」
わーっ! と如月の叫び声が響く。
き、如月のこんな声、初めて聞いた……。
「アビスさん! 話があるんですよね! ごほっ! ごほっ! 体調が良くないのでパパっと話を進めて欲しいのですが!」
「そうかい? わかったよ」
アビスは本を閉じる。
「ふむ。まずはあの銀髪の男について話そうか」
「銀髪の男?」
如月が首を傾げる。
「美亜、飯塚と共にギルドデュエルに参加した男だ」
「ウルと名乗っていた。フェンリルのギルドメンバーに確認した所、フルネームはウル=ウェンディア。フェンリルに入って日は浅く、B級シーカーであるという情報以外はほとんどない。何か裏があることは確かだけど、中々尻尾を掴ませてくれそうにないね」
「アイツ、赤眼のミノタウロスを倒したのが俺だって知ってたんだよな。表向きはアビスが倒したことになっているのに……」
「それに数原君曰く、ギルドデュエルの勝敗にあまり執着していなかったらしい。もうむちゃくちゃきな臭いよ」
アビスは薄く目を開き、眼光を尖らせる。
ウルに対して、強い警戒を抱いている様子だ……。
「彼については引き続き調査する。次にオリジンについてだけど……」
「オリジン?」
「そっか。如月ちゃんにはまだ詳しい説明をしてなかったね」
アビスは如月に俺の義手、オリジンについて解説する。
「人工オーパーツ……神墓から盗んだオーパーツで造った義手!?」
「驚くのはわかる。バレたら即死刑レベルの重罪だからな」
「なんという無茶を……!」
「まぁまぁ、過ぎたことは良いじゃないか」
「良くはねぇ」
「話を進めるよ。ギルドデュエル中、その義手が暴走した件だけど、アレはまぁ悪いことじゃない」
「そうなのか?」
うん。とアビスは頷き、
「オリジンには卵期、魂写期、孵化の3段階がある。卵期は完全にオリジンが眠っている期間で、退魔属性は持ちつつもオーパーツ本来の力には程遠い状態だ。次に魂写期、これは使用者の魂がオリジンと融合を始め、馴染んでいる期間になる。一番不安定な時期で制御が難しく、さっきみたいに暴走することがある」
「じゃあ今、この義手は魂写期にあるってことか」
「そういうこと。魂写期を終え、魂が完全にオリジンと馴染むと孵化――つまり、その義手が君だけのオーパーツになる。僕の罪と罰や、成瀬美亜のイナヅチのように、特有の形、特有の能力を持つだろう。魂写期から孵化までの期間は短いから、覚醒まであと一歩というわけだ」
「完全なオーパーツに……!」
俺はグッと義手の拳を握る。
「あとちょっと……あとちょっとで……他のシーカーと同じ力が手に入る。シーカーになれる……!」
「そのことなんだけどね……」
アビスは、何やらバツの悪そうな顔をしている。
「葉村君、残念ながら君は公式にシーカーにはなれない」
「…………は?」
シーカーに、なれない?
「考えてもみたまえ。オーパーツを受け取れなかった君がいきなりシーカー登録したらおかしいだろ。間違いなくギルド協会の審査が入る。そこで君が新しくできたオーパーツを振り回してみろ。ギルド協会……果ては神理会の目につくだろう。ほぼ間違いなくオリジンについてバレる」
考えてみれば確かに。
俺がオーパーツを受け取れなかった事実は記録に残っている。その俺がオーパーツを持っていたら怪しまれるのは確実だ。
「君にはこれから如月ちゃんと組んで探索をしてもらうけど、これからも君にはサポーターとして登録してもらう」
ちょっと待て。色々おかしい。
「ま、待ってください! それだとサポーター2人ってことになりますよ!?」
「いいや如月ちゃん、シーカーには君がなるんだ」
如月が、シーカーに!?
「無理です! そんなの……」
「無理じゃないさ。だって君――」
アビスは如月に視線を合わせる。
「オーパーツ、持ってるでしょ?」
―――――――
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「何を読んでるんだ?」
本を読みふけっているアビスに問う。
魔法の教本とか戦術指南書とかかな。S級シーカーが読んでいる本、気になる。
「ラノベだよ」
アビスは聞きなれぬ単語を口にする。
「ラノベ?」
「そう。ライトノベル。知らないのかい?」
「知らないな。どういったことに役立つ本なんだ?」
アビスはラノベとやらの表紙を見せてくる。ラノベの表紙には――胸の大きな美女達の絵と共に『さきゅレム! 100人のサキュバスと僕の寮生活ハーレム!』と書かれていた。
「……なんだコレ」
「だからラノベだって。中高生向きのライトに読める小説さ。僕はハーレムモノが好きでね。湿っぽい駆け引きとかなく、みんな性に奔放に生きている感じが堪らないんだ」
お、俺には理解できない世界だな……。
「如月ちゃんとはこの前、病室でラノベの話題で盛り上がったよねぇ~」
「え!? は、はい。まぁ……」
「……如月もハーレムが好きなのか?」
「ち、違います! 私はそのぉ……」
「如月ちゃんはBエ――」
わーっ! と如月の叫び声が響く。
き、如月のこんな声、初めて聞いた……。
「アビスさん! 話があるんですよね! ごほっ! ごほっ! 体調が良くないのでパパっと話を進めて欲しいのですが!」
「そうかい? わかったよ」
アビスは本を閉じる。
「ふむ。まずはあの銀髪の男について話そうか」
「銀髪の男?」
如月が首を傾げる。
「美亜、飯塚と共にギルドデュエルに参加した男だ」
「ウルと名乗っていた。フェンリルのギルドメンバーに確認した所、フルネームはウル=ウェンディア。フェンリルに入って日は浅く、B級シーカーであるという情報以外はほとんどない。何か裏があることは確かだけど、中々尻尾を掴ませてくれそうにないね」
「アイツ、赤眼のミノタウロスを倒したのが俺だって知ってたんだよな。表向きはアビスが倒したことになっているのに……」
「それに数原君曰く、ギルドデュエルの勝敗にあまり執着していなかったらしい。もうむちゃくちゃきな臭いよ」
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「オリジン?」
「そっか。如月ちゃんにはまだ詳しい説明をしてなかったね」
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「驚くのはわかる。バレたら即死刑レベルの重罪だからな」
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「まぁまぁ、過ぎたことは良いじゃないか」
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「じゃあ今、この義手は魂写期にあるってことか」
「そういうこと。魂写期を終え、魂が完全にオリジンと馴染むと孵化――つまり、その義手が君だけのオーパーツになる。僕の罪と罰や、成瀬美亜のイナヅチのように、特有の形、特有の能力を持つだろう。魂写期から孵化までの期間は短いから、覚醒まであと一歩というわけだ」
「完全なオーパーツに……!」
俺はグッと義手の拳を握る。
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「そのことなんだけどね……」
アビスは、何やらバツの悪そうな顔をしている。
「葉村君、残念ながら君は公式にシーカーにはなれない」
「…………は?」
シーカーに、なれない?
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「ま、待ってください! それだとサポーター2人ってことになりますよ!?」
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如月が、シーカーに!?
「無理です! そんなの……」
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