42 / 56
第42話 拍動
しおりを挟む
「くっ!」
俺はグローブに触れた瞬間ぶっ飛ばされ、廃車に突っ込んだ。
「あなた馬鹿ですか? さっきこのグローブの能力を聞いたでしょう」
「吹っ飛ばされることはわかっていたさ。ただ実際に吹っ飛ばされる感覚を知っておこうと思ってな」
「?」
いま、吹っ飛ばされたことで色々わかった。
まず飛ばされただけじゃダメージはない。そこから何かに激突することでダメージが発生する。簡単な話、何もない空間に飛ばされた所でダメージは無いということだ。それはつまり、奴が使っている高速移動はノーダメージで使えるということ。しかし高速移動中に何かにぶつかればただではすまないということ。
そして吹っ飛ばしの速度にも差があるということがわかった。俺の体重は70kgほど。アイツは背が高くとも細身だから65kgぐらいだろう。アイツの方が明らかに俺より速く吹っ飛んでいた。体重によって吹っ飛ぶ速度は変わる、というわけだ(多分)。
奴のオーパーツの活用法、攻撃方法は何となく見えてきた。
「それでは、まずは体術勝負といきましょうか」
「望む所だ」
俺は廃車から出て、飛び出す。ウルはグローブによる高速移動で俺の背後を取るが、俺はすぐに振り返りウルの右拳を避ける。
ウルは俺を吹っ飛ばそうと執拗に右手を出してくるが、それゆえに読みやすい。俺はウルの右手を潜り抜け、懐に入り、左の肘を腹に入れる。
「やりますね」
「!?」
確実に入った――と思ったら、ギリギリで左手を挟み込まれていた。
俺は義手で追撃しようとするが、それより前に奴の右手に背中をタップされ、地面に向けて吹っ飛ばされた。
「がっ!!?」
ウルは地面にめり込んだ俺にさらに右手を振り下ろしてくる。俺は義手で奴の右手首を掴んで止める。
「【八方塞】!」
ウルに8本の楔を打ち込み移動を封じ、立ち上がって右拳を握る。
「【風神演舞】」
ウルが呟くと、ウルの周囲に竜巻が巻き起こる。
竜巻は一気に広がり、俺は竜巻に巻き込まれ吹き飛ばされた。
「ちっ! 四文字魔法も使えるのか!」
「ええ、まぁ、これだけですけどね。あなた方のように何個も使えはしませんよ」
ウルの右肩に刺さった楔が壊れる。ウルは自由になった右手で己に触れる。すると残った7本の楔が粉々に散った。
ウルは己に吹っ飛ばしをかけることで無理やり楔を剥がしたんだろう。完璧な対応……戦闘経験の多さが伺えるな。
「確かに……A級上位の力はあるな」
「いやいや、まだそこまでの力は見せてませんよ」
ウルは腰に掛けたポーチに左手を突っ込む。
「私の真髄はここからです」
ウルがポーチから出したのは、1発の弾丸。
全身に冷や汗が浮かんだ。
もしも重さで吹っ飛ぶ速度が変わるなら――
弾丸の速度は一体――
「まずい……!」
「さすがは察しが良い」
ウルは弾丸を左手の親指でコイントスするように上に弾く。
そして空中でくるくる回る弾丸に、右手のグローブで触れる。
(弾丸の向き! グローブで触れた角度! 奴の目線から着弾点を読め!!)
カァン!! と乾いた音と共に弾丸は飛ぶ。
速すぎる! 影を辛うじて追える程度……!
俺は何とか弾丸の軌道を読み、義手の手のひらで受ける。弾丸は義手に当たると粉々に散った。
義手から肩に伝わる衝撃――これはヤバい。義手以外で受けたら貫かれる! 【光点軌盾】も容易く撃ち抜かれる威力!!
「素晴らしい! これも防ぐのですか!!」
ウルはまたポーチに左手を突っ込み、そして――
「では、これならどうです?」
ウルは左手をポーチから出す。
握りしめられた左手を上げ、ゆっくり開く。左手から零れ落ちるは8発の弾丸。ウルはひらひらと落ちる弾丸全てに、右手で撫でるように触れる。
――カカカカカカカカン!!!
最早予測で何とかできるレベルじゃない。体を横向きにして狙える面積を縮小、右腕を縦にして脇から頭までを義手でカバーする。
当然、義手でカバーした部位以外は無防備。背中を、腰を、脚を、弾丸が掠める。
「つぅ!?」
弾丸が掠めた部位から血が噴き出る。浅くはないダメージが入る。
「やはり弾丸の数が増えると命中精度が落ちますね」
俺は、焦っていた。
ウルの強さに対して――ではない。
「なん、だ……!?」
弾丸を受けた後、
義手が、カタカタカタカタと震え始めた。
――義手が、おかしい!!!
震えは止まらず、さらにドクンドクンと脈打つような音まで聞こえ始めた。
「や、ばい……!!」
―――――――
面白かったらお気に入り登録&ハートの付与お願いします!
俺はグローブに触れた瞬間ぶっ飛ばされ、廃車に突っ込んだ。
「あなた馬鹿ですか? さっきこのグローブの能力を聞いたでしょう」
「吹っ飛ばされることはわかっていたさ。ただ実際に吹っ飛ばされる感覚を知っておこうと思ってな」
「?」
いま、吹っ飛ばされたことで色々わかった。
まず飛ばされただけじゃダメージはない。そこから何かに激突することでダメージが発生する。簡単な話、何もない空間に飛ばされた所でダメージは無いということだ。それはつまり、奴が使っている高速移動はノーダメージで使えるということ。しかし高速移動中に何かにぶつかればただではすまないということ。
そして吹っ飛ばしの速度にも差があるということがわかった。俺の体重は70kgほど。アイツは背が高くとも細身だから65kgぐらいだろう。アイツの方が明らかに俺より速く吹っ飛んでいた。体重によって吹っ飛ぶ速度は変わる、というわけだ(多分)。
奴のオーパーツの活用法、攻撃方法は何となく見えてきた。
「それでは、まずは体術勝負といきましょうか」
「望む所だ」
俺は廃車から出て、飛び出す。ウルはグローブによる高速移動で俺の背後を取るが、俺はすぐに振り返りウルの右拳を避ける。
ウルは俺を吹っ飛ばそうと執拗に右手を出してくるが、それゆえに読みやすい。俺はウルの右手を潜り抜け、懐に入り、左の肘を腹に入れる。
「やりますね」
「!?」
確実に入った――と思ったら、ギリギリで左手を挟み込まれていた。
俺は義手で追撃しようとするが、それより前に奴の右手に背中をタップされ、地面に向けて吹っ飛ばされた。
「がっ!!?」
ウルは地面にめり込んだ俺にさらに右手を振り下ろしてくる。俺は義手で奴の右手首を掴んで止める。
「【八方塞】!」
ウルに8本の楔を打ち込み移動を封じ、立ち上がって右拳を握る。
「【風神演舞】」
ウルが呟くと、ウルの周囲に竜巻が巻き起こる。
竜巻は一気に広がり、俺は竜巻に巻き込まれ吹き飛ばされた。
「ちっ! 四文字魔法も使えるのか!」
「ええ、まぁ、これだけですけどね。あなた方のように何個も使えはしませんよ」
ウルの右肩に刺さった楔が壊れる。ウルは自由になった右手で己に触れる。すると残った7本の楔が粉々に散った。
ウルは己に吹っ飛ばしをかけることで無理やり楔を剥がしたんだろう。完璧な対応……戦闘経験の多さが伺えるな。
「確かに……A級上位の力はあるな」
「いやいや、まだそこまでの力は見せてませんよ」
ウルは腰に掛けたポーチに左手を突っ込む。
「私の真髄はここからです」
ウルがポーチから出したのは、1発の弾丸。
全身に冷や汗が浮かんだ。
もしも重さで吹っ飛ぶ速度が変わるなら――
弾丸の速度は一体――
「まずい……!」
「さすがは察しが良い」
ウルは弾丸を左手の親指でコイントスするように上に弾く。
そして空中でくるくる回る弾丸に、右手のグローブで触れる。
(弾丸の向き! グローブで触れた角度! 奴の目線から着弾点を読め!!)
カァン!! と乾いた音と共に弾丸は飛ぶ。
速すぎる! 影を辛うじて追える程度……!
俺は何とか弾丸の軌道を読み、義手の手のひらで受ける。弾丸は義手に当たると粉々に散った。
義手から肩に伝わる衝撃――これはヤバい。義手以外で受けたら貫かれる! 【光点軌盾】も容易く撃ち抜かれる威力!!
「素晴らしい! これも防ぐのですか!!」
ウルはまたポーチに左手を突っ込み、そして――
「では、これならどうです?」
ウルは左手をポーチから出す。
握りしめられた左手を上げ、ゆっくり開く。左手から零れ落ちるは8発の弾丸。ウルはひらひらと落ちる弾丸全てに、右手で撫でるように触れる。
――カカカカカカカカン!!!
最早予測で何とかできるレベルじゃない。体を横向きにして狙える面積を縮小、右腕を縦にして脇から頭までを義手でカバーする。
当然、義手でカバーした部位以外は無防備。背中を、腰を、脚を、弾丸が掠める。
「つぅ!?」
弾丸が掠めた部位から血が噴き出る。浅くはないダメージが入る。
「やはり弾丸の数が増えると命中精度が落ちますね」
俺は、焦っていた。
ウルの強さに対して――ではない。
「なん、だ……!?」
弾丸を受けた後、
義手が、カタカタカタカタと震え始めた。
――義手が、おかしい!!!
震えは止まらず、さらにドクンドクンと脈打つような音まで聞こえ始めた。
「や、ばい……!!」
―――――――
面白かったらお気に入り登録&ハートの付与お願いします!
37
お気に入りに追加
127
あなたにおすすめの小説

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。


クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる