大人気ダンジョン配信者のサポーターをやっていたけど、あまりにパワハラが酷いから辞めることにする。ん? なんか再生数激オチしているけど大丈夫?

空松蓮司

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第40話 余裕のV

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 まだだ。まだ足りない。
 殴り飛ばされた後、飯塚は土下座を始めたが、まだ目の奥にどす黒い邪気が見える。
 俺にはわかる。今は懲りているかもしれないが、傷が癒え、状況が整えばコイツはまた同じことを繰り返す。俺や如月に対してはもう何もしないかもしれないが、他の誰かをまた支配する。
 壊さないとならない……徹底的に。コイツの自尊心や嗜虐心を、徹底的に……!

「あぁ!? ゃっ……やぇ……!!」

 俺がまた飯塚に接近しようとした時、


「そこまでです」


 転移クリスタルを使って来たであろうギルド協会員の女性が割って入ってきた。

「どけ。まだそいつは戦闘能力を失っていない」
「失っています。もう勝負はついている……」

 飯塚は協会員の背中に縋りつく。

「アンタはわかっていない。そいつがどれだけの邪悪か……ここで壊さないとまた誰かを虐げる! 必ずだ!!」
「もうこの方の心は折れてます!!」
「そう見せているだけだ! アンタ責任取れるのか? この先、コイツがまた誰かを傷付けたとしても!!!」
「こ、これ以上やるのなら、あなたのギルドの敗北にしますよ!」

 飯塚と同じく、協会員の顔にも恐怖が宿っている。
 俺は協会員の怯えた顔を見て、我に帰る。

「……すみません。わかりました。手を引きます」

 飯塚をチラッと見ると、飯塚はビクッと体を震わせ協会員の背中に隠れた。
 ここまでやればさすがにもう懲りたと信じたいが……。
 協会員が転移クリスタルを使用し、飯塚と一緒に離脱する。

「ふぅ……」

 俺は目を閉じ、肩の力を抜く。

「……落ち着け……まだギルドデュエルは終わってない。飯塚の事は一旦忘れよう……」

 怒りで頭に上った血を下ろし、呼吸を整える。

「一色さんの援護に行くか」

 と、体を反転させると、

「そっちも終わったみたいだね」

 無傷の一色さんが廃墟の影から歩いてきた。

「はい。勝ったみたいですね」
「余裕のV!」

 一色さんは指でVサインを作る。なんかいつもよりテンション高いな。顔もなんかホクホクしている。

「ってことは、あとはあのウルってやつだけか」
「用心した方がいい。あの男の纏っている空気は只者じゃなかった」
「同感です。アビスに似た、得体の知れない感じがアイツにはありました。アイツとエンカウントする前に、凛空ともどこかで合流出来ればいいんですけど」

 その時、眩い光が遠方の空で弾けた。

「アレは凛空の……!」
「【眩光弾】……」

 俺と一色さんは顔を合わせて頷き、光に向かって走り出した。





―――――――

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