大人気ダンジョン配信者のサポーターをやっていたけど、あまりにパワハラが酷いから辞めることにする。ん? なんか再生数激オチしているけど大丈夫?

空松蓮司

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第33話 ギルドデュエル開始

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 人は一切いない、廃れた街が広がる廃墟の街。
 そこで俺達は向かい合う。

「へぇ、逃げずに来たのね。驚いたわ」
「逃げる理由がねぇだろ」

 正面の美亜と軽く言葉を交わす。
 相変わらず俺を見下しきった顔だ……。

「はっはっは! サポーターのカス共! 今日は蹂躙してやるから覚悟しろ!!」

 そんな飯塚の言葉に真っ先に反応したのは俺ではなく……、

「あぁん!? 舐めてんじゃねぇぞクソ刈り上げ!! 蹂躙するのはこっちじゃボケカスがよぉ!!」
「あんだと時代遅れのリーゼント野郎が!! シーカー様に対する言葉遣いがなってねぇなぁ!!」

 凛空と飯塚が激しく言い合い、胸倉を掴み合う。
 どっちも気性が荒いからこうなることはわかっていた。

「やめてください」

 ギルド協会員の女性が2人を引き離す。

「デュエル前に相手を傷つければその時点で失格としますよ」
「「ちっ!!」」

 2人は舌打ちを重ね、後ろに退く。

「……あなた、何者」

 一色さんがそう問いかけたのは俺も見知らぬフェンリルの銀髪の男だ。

「ウルと言います。新入りです。今日はどうぞよろしく。一色冴さん……」
「……」

 なんというか、妙な雰囲気の男だな。
 余裕があって掴みどころが無い感じだ。

「それでは改めてルールを説明します」

 ギルド協会員がギルドデュエルの内容を解説し始める。

「まず最初に選手にはこちらの転移クリスタルを使用します」

 協会員は青色の結晶――転移クリスタルを出す。
 転移クリスタルは迷宮脱出用のアイテムとして知られているが、その能力は厳密には『迷宮を脱出すること』ではなく、『指定した場所に転移すること』である。
 つまり、廃墟地の適当な場所にマーキングし、俺達を飛ばすことも可能ってことだ。

「転移クリスタルで廃墟地のどこかにあなた方を飛ばした時点でデュエルスタートです。我々は【探機】の魔法で選手全てを見ております。戦闘不能と判断した選手は協会員が保護し、保護エリアに転移させます」
「1つ、質問いいですか?」

 俺は手を挙げて聞く。

「なんでしょうか?」
「戦闘不能の厳密な基準を教えて頂いてもいいですか」
「戦闘能力の喪失、歩行不可のダメージ、敗北を認める発言が戦闘不能の基準に当たります。申し訳ございませんが、上記に当たらなくともこちらの裁量で戦闘を止めることもあります」
「なるほど……」
「無論、殺傷行為は違反とします」

 気絶、あるいは両足の骨折などを狙えばいいか。

「また、いま皆様がいるこの結界で囲まれた区画が保護エリアとなっております」

 いま、俺達がいる廃墟10個分ぐらいのエリアにはオレンジの結界が張られている。通信室と思われる施設や治癒室と思われる施設などがある。
 この結界は境界クリスタルで作ったモノだろうな。

「制限時間は60分。タイムアップの場合、生き残りの人数が多い方が勝利。人数が同数の場合は引き分けとなり、無効試合とします。以上でルール説明は終わりです。何もご質問が無ければギルドデュエルを開始します」

 誰も質問をしなかったため、ギルド協会員3人はそれぞれ2つずつ転移クリスタルを用意した。

「質問は無いようですね。では転移クリスタルを発動します」

 協会員がクリスタルをかざし、魔力を込める。
 転移クリスタルは魔力を込めてから発動まで数分のタイムラグがある。その間に、俺は飯塚に目を向ける。

「俺達が勝ったら如月を解放してもらうぞ、飯塚」
「お前らが勝つ可能性は0だよ、バーカ」

 飯塚は舌を出して挑発してくる。
 俺は小さく笑い、

「飯塚、先に宣言しておいてやるよ」
「ああ?」
「お前じゃ俺に手も足も出ないよ。完膚なきまでに叩き潰してやる」

 飯塚はピキッ、と血管を額に浮かばせる。

「サポーター風情が、俺に逆らったことを一生後悔させてやるよ!!」

 飯塚はそう言い捨て、俺達から視線を切った。

「君達」

 アビスが俺達3人の前に立つ。

「自信を持って挑みなよ。この僕に傷を付けたんだから」
 
 アビスは肘に貼った絆創膏を見せる。
 俺達3人が連携し、俺の義手で付けた傷だ。
 アビスは圧倒的だった。舐めていたわけじゃないが、想像より遥かに強かった。前にオーパーツ有りでもいい勝負できる、とか言っていたがとんでもない。罪と罰、あのオーパーツは対策のしようが無かった。

「わざわざ傷、残しておかなくてもいいのに」

 一色さんが言う。
 俺がつけた傷は3cmほどの裂傷。治癒魔法で簡単に治せるものだ。

「それはできないよ。この傷は君達の努力の証だからね……」

 アビスは絆創膏を嬉しそうに撫でる。

「さて、そろそろかな」

 協会員の持つクリスタルが強く輝く。
 もう間もなく、クリスタルは発動する。

「いってらっしゃい」
「ああ」「おう!」「いってきます」

 最後にアビスに挨拶したところで、俺達は転移した。
 視界が一瞬暗転。気づいた時には十字路、壊れた信号機の前に立っていた。

「さて」

 とりあえず【消気】を発動。廃墟に入り身を隠す。
 廃墟の3階まで上がり、窓から周囲を確認する。
 【探機】と【望遠】を駆使して索敵を開始。

「見つけた」

 俺はとある人物を300メートル先の廃墟の中に確認し、身を隠しながらその人物との距離を詰めていく。
 別の廃墟の5階。そこで身を隠している人物の背後に近づくと、

――ズン。

 と足もとで魔法陣が発動した。

「うおっ!?」

 体重が重くなり、足が地面に引っ付く。

「【印加重】か……!」

 【印加重】はトラップ魔法。地面・床や壁に魔法陣を設置し、魔法陣に触れた相手を重くする効果を持つ。魔法陣は設置後、効果が発動するまで目視できず、触れた時だけ光り輝き1度の発動で消失する。
 俺が見つけた相手――一色冴は、俺の方を振り返り、冷たい瞳をする。

「なにしてるの?」

 背後からの強襲に備えて【印加重】を設置していたのか。さすがだな。

「すみません。侮ってました。まさかすでに罠を設置しているとは……」
「【印加重】は消費魔力が少なく、何個も設置できる便利な魔法。そこら中に仕掛けてある」

 一色さんが手をかざし、【印加重】が解ける。

「とりあえず一色さんと合流出来て良かったです」
「……あっそ」

 なぜか頬を染めて顔を逸らす一色さん。あの冷静沈着な一色さんもさすがにギルドデュエルだと緊張してるのかな?

「じゃあ、取りに行く?」
「はい。凛空を探しつつ、積極的に敵を潰しに行きます」

 幸先はいい。一色さんと合流出来ればもうよっぽどのことが無ければ負けはない。
 さぁ、狩りに行くか。





―――――――

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