大人気ダンジョン配信者のサポーターをやっていたけど、あまりにパワハラが酷いから辞めることにする。ん? なんか再生数激オチしているけど大丈夫?

空松蓮司

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第25話 力酔い

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「ほら、意地張ってないで早く頭を下げたら?」

 腕を組み、女王様面で美亜は言う。
 俺は湯呑に入ったお茶をグッと飲み込む。

「ぷはぁ! あー、もう限界だ」
「限界? なにがよ」
「全部言わせてもらうぞ。美亜、お前は最低のシーカーだ」

 美亜の表情が無に変わる。
 俺の言葉の意味を理解できていないんだろう。ならば理解できるまで言うまでだ。

「お前のオーパーツは強力だ。A級レベルはある。だが、お前の技量はC級以下だ。魔法も使えず、体術も並。オーパーツの性能も十分に引き出せていない。お前以外のシーカーの動きを見て確信した。お前は弱い」
「は? は??」
「入院中、A級シーカーの動画配信を見たが、どいつもこいつもお前の倍は優秀だったよ。魔法を使えないA級なんていなかった」

 魔法を使えないのにA級になれているのはそれはそれで凄いことだが、コイツの場合はオーパーツが優秀なだけだ。オーパーツ以外の要素は全てが並以下。

「実力が足りていない癖にサポーターに当たり散らかす。グラビアとか他の仕事にかまけて特訓もしない。怠惰で傲慢、お前ほど程度の低いシーカーも珍しい。俺がお前と組みたいわけがないだろう。お前と組むぐらいなら新人のド素人と組んだ方がマシだ」

 俺は一度瞼を下ろす。美亜がどんな顔をしているか怖くて見れなかったからだ。深呼吸して、意を決して瞼を開き、美亜の顔を見る。

「……そっちか」

 美亜は、号泣していた。
 激怒するか、泣くかの二択だと思っていたから想定内だ。

「……なにそれ……本気で言ってるの……?」
「怒ってもダメなら泣き落としか? 生憎だが、お前のことは理解している。涙は流しても心の内はまったく泣いてないことはわかっている」
「っ!!」

 美亜は腕を振りかぶり、そして振るう。
 俺は美亜のビンタを左手で弾いた。

「……っ!?」
「お前のビンタを受ける気はない。何も間違ったことは言ってないからな」
「アンタ……本気で、本当に本気で……私から離れるつもり?」
「ああ」
「……許さないわよ」
「お互い様だ。飯塚から聞いているかもしれないが、俺が所属しているオッドキャットとフェンリルがギルドデュエルをする。俺も出場するつもりだ。そこで――すべてのケリをつけよう」
「…………許さない。絶対っ! 許さないから!!!」

 隣の部屋に響くぐらいの大声でそう言った後、美亜はカバンを持ってズカズカと足音を鳴らし、外に出て行った。
 美亜の背中を見送り、俺は昔の美亜を思い出す。

 泣き虫で、弱虫で、いじめられっ子だった。そんな美亜を、俺はいじめっ子達から庇っていた。
 あの頃の美亜は……そうだな、如月に似ていたか。弱気だけど、しっかり芯の強さを持っていた。

 アイツが変わったのはオーパーツを手に入れてからだ。

 力に溺れる、という言葉はアイツにピッタリの言葉だ。強力なオーパーツを手に入れ、地位を手に入れたアイツは増長し続け、A級になってその暴走を誰も止められなくなった。オーパーツは所有者の魂に寄生すると言われているが、アイツがああなったのもオーパーツの影響だったりすんのかな……いや、そんなこと言ったらシーカーのほとんどが性格変わってないとおかしいか。

 願わくば昔の美亜に戻って欲しいモノだが、あそこまで歪んでしまってはもう無理かもしれない。

 アイツから見て弱者である俺が、アイツを倒すことで何か変わるだろうか。
 サポーターでありながら、アイツの暴走を止められなかった俺にも責任はある。何とかできるならしてやりたい。ま、あくまで美亜に関してはな。飯塚は問答無用で叩き潰す。

 ギルドデュエル、是が非でも勝たなくちゃならない。

 PCを立ち上げ、メールを開くとアビスからファイル付きのメールが届いていた。ファイルのタイトルは《オッドキャット・サポーター能力表》となっている。
 もちろんファイルにはパスワードが付いている。パスワードはすでに聞いているから、問題なく開ける。

 ファイルの中にはサポーターの情報がズラーっと載っている。厳密には顔写真・名前・性別・年齢・魔力量・体術評価・魔法・特殊技能・性格・知力。ざっと項目はこんな感じ。十分だな。

 その中でもやはりと言うか、目についたのはS級シーカー唯我阿弥数のサポーターだ。名前は――

一色いっしきさえ





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