大人気ダンジョン配信者のサポーターをやっていたけど、あまりにパワハラが酷いから辞めることにする。ん? なんか再生数激オチしているけど大丈夫?

空松蓮司

文字の大きさ
上 下
17 / 56

第17話 死闘

しおりを挟む
 バックパックより治癒クリスタルと聖薬せいやくと水筒を出す。
 如月の小さな口に聖薬を押し込み、水筒から水を注いで無理やり聖薬を飲ませる。これで魔障の浸食は止まる。
 そんで外傷を悪化させないために治癒クリスタルを起動させ如月に握らせる。【消気】で如月の気配を薄くし、【光点軌盾】を如月の前に張る。この間約4秒。

 俺は如月から離れ、ミノタウロスの前に出る。
 如月を連れて逃走するのは不可能。アビスが来るまで時間を稼ぐ……!
 今の俺ならミノタウロスの攻撃を捌くことができる。ただ時間を稼ぐだけならできる!

「っ!?」

 ミノタウロスが拳を突き出してきた。その相手は俺ではなく、【光点軌盾】で守られている如月だ。
 俺への攻撃は避けられると直感したか! 如月を使って俺を攻撃の前へ誘う気だ。コイツ、やっぱり悪知恵が働きやがる……!

「ふっざけんなぁ!!」

 【光点軌盾】は気休めに過ぎない。このミノタウロスの攻撃なら良くて1撃しか防げないだろう。あの右拳の後、左を出されたら防ぎきれない。
 俺は如月とミノタウロスの間に割って入り、義手の右腕を出す。
 ダメ元だ。もしかしたらこの一撃で義手は破壊されるかもしれない。それでも、この手しか無かったんだから仕方ない。

 拳と拳が衝突する。
 凄まじい衝突音。弾ける空間。

「ぐ、ぬ……!」

 全身が衝撃で痺れる――が、義手は壊れる様子がない。しっかりとミノタウロスの拳を受け止めている。
 良し! 力勝負に持っていける! 俺の力さえ勝っていれば、押し勝てる……!

「ぶっ飛べよ……!!!」
「グギャ!?」

 俺はミノタウロスの拳を殴り飛ばす。ミノタウロスはよろけて2歩後退する。

「【突竜鎖】!!」

 左手から鎖魔法を発動。鎖を飛ばし、ミノタウロスの右肩に噛みつかせる。

(縮め!)

 鎖を縮めさせ、空を飛び、ミノタウロスとの距離を一気に詰める。その勢いのまま顔面に右ストレートをお見舞いする。
 ミノタウロスは鼻から赤い血を吹き出し、仰向けに倒れる。鎖でしがみついていた俺はそのままもう1回顔面を殴ろうとするが、

「ビャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「つぅ!!?」

 巨大な叫び声を間近で受け、つい攻撃の手を止め両耳を塞いでしまった。ミノタウロスは起き上がり、その勢いで俺を胸で弾き飛ばす。
 如月の正面にある【光点起盾】に背中から激突。痛がっている暇はない。俺は地面を蹴り、ミノタウロスとの距離を詰める。

 そこからは野生の戦いだった。

 策も何もない、単純な殴り合い。回避、防御、カウンター、攻撃。それをひたすらに繰り返す。

「うおおおおおおおおおおおおっっらぁ!!!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 なんだコイツ!? やっぱり魔物の動きじゃない。まるでボクサーだ。全身を上手く使った打撃を打ってくるし、回避能力も高い!! ジャブとストレートのコンビネーションまで使いこなしてくる。
 間違いなくただの特異体じゃない。

 やっぱり強いよお前は。

 だけどなぁ……!

「前の俺とは違う……!」

 今は俺だって、強い!
 ここでお前を――

「倒す!!」

 右拳をミノタウロスの頬に叩きつける。
 お互い全身血まみれ。だが、ダメージの度合いで言えばあっちの方が喰らっている。

「【月華雷】!!」

 左手から三日月の形をした雷撃を放ち、ミノタウロスの顔面にぶつける。ダメージは期待できないが雷の閃光で目つぶしになる。
 隙のできたミノタウロスの胸に飛び込み、右拳を胸の中心に突き刺す。
 ミノタウロスの心臓は人間と同じ位置だ。特異体とは言え、急所は変わらないはず――

「なんだ?」

 硬い感触。ダイヤモンドのように硬い何かが手に当たっている。
 俺はその硬い物体を掴み、引きずり出す。

「!?」

 それは心臓ではなく――剣だった。
 ミノタウロスの肉片の付いた、紫色の剣。この感じ……まさか、

「オーパーツ……!?」

 オーパーツが魔物の体内に!? ありえない。オーパーツには退魔属性がある。魔物と共存できるはずがない。

「ガアアッ!!」
「なっ!?」

 ミノタウロスの傷口から飛び出た肉の管が俺の手にあるオーパーツに伸び、絡めとる。剣のオーパーツはまたミノタウロスの体内に取り込まれる。
 ミノタウロスのエネルギーの流れがオーパーツを中心に回っている気がする。本来心臓がある位置にアレがあり、心臓が無かったことを考えるに、オーパーツが心臓代わりになっている可能性が高い。

 コイツ、何から何まで異常過ぎる……!

「葉村さん!!」

 如月の叫び声。
 ミノタウロスの体内にオーパーツがあったことで、動揺した俺はミノタウロスの裏拳をモロに腹に喰らった。

「がはっ!」

 吹っ飛び、10メートルは離れていた岩壁に突っ込む。
 致命傷じゃない。立ち上がれる。いくつか骨が逝った感触はあるが、戦える。

「おいおい……」

 ミノタウロスは自分の胸に手を突っ込み、さっきの剣のオーパーツを抜いた。オーパーツは禍々しく変容し、人間が扱うぐらいの大きさだった剣はミノタウロスが握れるぐらいの大剣に変わり、その刀身を真っ黒に染めた。

 オーパーツから黒いエネルギー体が発せられ、魔物に流れ込んできている。やはり、あのオーパーツが魔物にエネルギーを与えている。
 オーパーツが原動力なのはほぼ確定。オーパーツを壊せば奴は止まる、もしくは死ぬだろう。だがオーパーツは基本破壊不可。となると戦えないぐらいに体を削るしかない。幸い、奴に再生能力は無いからな。

「オーパーツを使う魔物とか反則だろ、まったくよ……!」

 こっちもなりふり構ってられないな。

 やるしかない。俺のとっておき――五文字魔法、【幻影自在陣】を。





―――――――

面白かったらお気に入り登録&ハートの付与お願いします!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

処理中です...