神竜に丸呑みされたオッサン、生きるために竜肉食べてたらリザードマンになってた

空松蓮司

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第三章 カムラ聖堂院

第五十三話 分身

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 実力を測るため、初手はジェイクに譲ることにした。俺は刀を握った体勢で待機し、ジェイクが行動を起こすのを待つ。

「『影分身シャドウコピー』」

 ジェイクは影を足から切り離す。影が立体化し、ジェイクの横に、ジェイクと同じ構えで立つ。
 真っ黒なジェイク。影ジェイクとでも呼ぶか。コピーしたのはジェイクの肉体のみで、ジェイクが身に着けているものはコピーされてない。あくまで生身のジェイクの分身だ。

「俺のユニークスキルを見ても動じないとはな。ハヅキから聞いていたか」

 ハヅキに見つかっていたことに気づいていたか。

「格下が二人に増えただけだろ。動じる必要がどこにある」
「フフ……口だけで終わるなよ。竜人!!」

 ジェイクと影ジェイクが連携を取って肉弾戦を仕掛けてくる。俺は刀から手を離し、体術で応対する。
 分身だけあって息がピッタリだ。完璧なコンビネーション……個々の体術のレベルも高い。しかし、これは……。

(やりづらい!!)

 苦戦しているわけじゃない。
 俺はコイツから誰をターゲットにしたのか聞き出さないといけないため、そこそこのダメージで無力化しないとならないのだ。間違っても殺すのはダメだ。ある程度加減してコイツを倒さないとダメだ。
 しかし、このレベルの手合いだと中途半端な組み技は抜けられてしまうし、思いっきり組み伏せると絞殺してしまう。
 首筋を打ったり、鳩尾を打ったりして気絶させるには繊細なパワーコントロールが必要だ。これもあまり威力が強すぎると殺してしまう。コイツは一流の殺し屋、ならばその辺りは鍛えてそうだしなぁ。

 殺そうと思えば一瞬で殺せる。ただ生け捕りとなると難しい。なんとも面倒な実力の相手だ。

「……無傷で捕らえるのは無理だな」

 俺は神竜刀を引き抜き、まず影ジェイクの首を斬り落とした。

「え……?」

 ジェイクは抜刀のモーションを一切目で追えてなかった。俺は峰打ちでジェイクの右腕を打ち、右腕の骨をへし折る。

「がっ!!」

 ジェイクは距離を取ろうと足に力を込める――が、力を込めた瞬間に軸足右足の甲を踏みつけ、右足の骨をズタズタに砕く。

「~~~~~っっ!!!?」

 悶絶するジェイク。
 俺は続けて左手のチョップをジェイクの左肩におみまいし、肩の骨を砕く。残る最後の四肢、左足を足払いし、転倒させる。

「悪いな。アンタ、中途半端に強いからこうするしかなかった」

 うつ伏せに倒れるジェイク。

「さて、お前の狙い、企み、全て話してもらおうか。誰をターゲットにしたか、他に仲間は居るのか……」
「ま、だだ……!」

 ジェイクは折れた右腕を伸ばし、俺の左足を掴む。筋肉で無理やり腕を動かしたか。凄まじい激痛だろうに。

「なんのつもりだ?」
「奥の手を……くらえっ!」

 ズン。と足もとに違和感を覚えた。 
 地面を見る。俺の、黒い影が――蠢いていた。

「なっ……まさか!!」
「俺の『影分身シャドウコピー』の対象は……自分だけじゃないんだよ!!!」

 俺の影が俺の足から剥がれ、立体化する。

――影ダンザ。

 俺のコピーが、誕生した。

「お前さんはどうやら規格外に強いらしいが、それでも自分自身が相手な――ら!?」

 瞬間、ジェイクの右腕は破裂した。

「うおっ! なんだ!?」

 血が飛び散る。いきなりのグロ展開。

「ふざけるな……こんなパワーがこの世に存在するのか……!? まずいっ!!!」

 ジェイクの左腕も破裂し、ジェイクは目、耳、鼻から血を流す。

「何者だ……貴様!!?」
「おい! なにがどうなってるんだ!! しっかりしろ!!!」
「……ダメだ……解除、できん……俺の制御できるレベル、じゃ――」

 ジェイクは全身を破裂させ、消えた。そこに、血の水溜まりだけが残った。

「なんだよ、わけわからんぞ!! 誰か説明してくれ!!」

 殺気。
 背後から凄まじい殺気を感じ、振り返る。同時に、頬に黒い拳が刺さった。

「うおっ!?」

 あまりのパワーに5メートルほど後退する。

「おいおいおい……御主人様は死んだってのに、なんでお前は残ってるんだ」

 ジェイクが死んで尚、影ダンザは残っていた。まるで亡霊だな。

「影が相手なら、加減はしねぇぞ!!」

 俺は思いっきり刀を振りぬく。

「“雷填・牙絞”!!」

 影ダンザの首に、渾身の抜刀術を繰り出す。だが、刀は鱗一枚斬れず、首の表面で止まった。

「硬っった! 最大威力の抜刀術だぞ!!」

 影ダンザは体を回転させ、尾で殴ってくる。尾に弾き飛ばされ、教会の壁にめり込んだ。

「……冗談じゃないぞ。クソ」

 立ち上がり、影ダンザと向かい合う。

「まさか、と戦う日が来るとはな」





―――――――

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