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第二章 ラスベルシア家
第三十話 ダンザvsハヅキ
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「ハヅキ! アンタ、いつから……」
「起きた時からずっと屋根裏に気配はあったぜ」
これでアイの話が嘘じゃないとハッキリした。今の動きからして、コイツは間違いなく暗殺のプロだ。
「……クッキーに混ぜた毒も効かず、この不意打ちにも反応するなんて……これまでのターゲットで一番手ごわい相手のようですね」
「え!? あのクッキー毒入ってたの!?」
ユニークスキルが毒を除去したのか、『神竜血』が毒を除去したのかわからんな。
「ちょっとアンタ……!」
俺は人差し指を口に当て、アイに『静かに』とジェスチャーする。
「隣でウチのお姫様が寝てるんだ。起こしたくない。――ハヅキ。お前の遊びに付き合ってやる。その代わり、ルールを一つ付けさせてくれ」
「なんでしょうか」
「音を立てるな。なるべくな」
「いいでしょう。元々、音は立ちません」
ハヅキの体から、音が消える。
呼吸音、心音、足音、気配が消える。
「正面戦闘を挑むのは久しぶりです」
「さてと、得物なしにどう戦う?」
「なにを言っているのですか」
ハヅキは右手と左手の裾から、ナイフを二本取り出した。
「まだまだいくらでも」
「暗器術か。しかし、さっきのでわからなかったか? 俺とお前じゃスピードが違い過ぎる」
「みたいですね。ならば――コンバート」
ハヅキが一瞬、青いオーラを纏った。――と思ったら、ハヅキが一瞬で背後に回りやがった。
眼でハヅキを追えていた俺は、体を反転させ抜刀。ナイフを刀で捌く。
速い。さっきと比べ物にならないほど速い。強化魔法でもかけたか? いや、そんなレベルのステータス上昇ではない。
「コンバート」
今度は赤いオーラを一瞬纏った。
ハヅキはナイフを投げた。ナイフは速く、俺とハヅキの距離が近いこともあって避けきれない。思いっきり床を蹴れば回避はできるが、そうすれば大きな音が鳴ってしまう。
俺は仕方なくナイフを肩に受けた。鱗の表面、古くなった角質が剥がれる。
「今の投擲を受けて無傷……なんて硬さ」
「無傷じゃない。角質が落ちた」
渾身の投擲の後の隙を狙い、俺は峰打ちでハヅキのわき腹を打つ。
「コンバート」
ハヅキは一瞬緑のオーラを纏った。
刀はハヅキを捉えた……が、硬い。ハヅキは刀に弾かれ、床を転がった。しかし無傷だ。
「そういうカラクリか」
最初、超スピードで俺の背後を取った後の一撃。アレは非常に軽かった。だがその直後の投擲は俺の鱗の角質を落とすほどの威力だった。
今の俺の一撃、あの超スピードなら躱せたはずなのに、躱せなかった。代わりに強固な防御力を得ていた。
つまり、ステータスに偏りがあるということ。
恐らくは、喰肉黒衣と同じような仕組みだ。
「ステータスの一極化だな」
「正解です」
「素直だな」
「どうせバレているのに隠す意味がありません。私はステータスを一つ選び、それ以外のステータスを全て低下させることでその選んだステータスを大幅に上昇させることができるのです。ユニークスキル『変換』。わかったところでどうにもなりませんよ」
青いオーラを纏ったらスピード特化、赤いオーラならパワー特化、緑のオーラならディフェンス特化って感じか。
「コンバートの割合を増やせば、その鱗にも傷をつけられるでしょう」
割合を増やす、というのはつまりステータスの低下と上昇の割合を増やすってわけだ。リスクは増えるがリターンも増える。
相手のオーラを見て、その逆をつけばいいわけだが、いかんせんコンバートの切り替えが早すぎる。全速で動けばなんとかなるけど、俺が全速で動いたら床がもたないし音でユウキが起きる。
そうだ。こういう時こそリザードマンの体を活かそう。
せっかくリザードマンになったのに、俺はこれまで人間の戦い方ばっかりしていた。ブレスとかそういうのを見落としていた。活かそう。もっとこの体を。良い練習機会だ。
「いくぜ」
俺はまた峰打ちでハヅキを狙う。だが、
「コンバート」
ハヅキは青いオーラを纏い、屈んで俺の薙ぎ払いを躱す。
ここだ。
俺は刀を捨て、両手で屈んでいるハヅキに掴みかかる。
掴みという攻撃に対し、ディフェンス特化は意味がない。パワー特化でカウンターを狙うのもリスクが高い。ここの選択肢は一つ。
音も無く、ハヅキが消える。ハヅキはスピード特化のまま、飛び上って俺の背後を取ったのだろう。
俺はいま、床に体を向け、跪いている。明確な隙だ。
「コンバード」
背後から声。俺の予想が合っていればパワー特化だ。
「ふん!」
俺は床に手をつき、そして、
「なっ!?」
尻尾を動かして、背後のハヅキの腹に尻尾を巻き付けた。珍しくあのハヅキが驚いたような声を上げた。
「キャッチ。そんで」
俺は尻尾から腕にハヅキをパスして、床に組み伏せる。そして尻尾で刀を拾い、手にパスして刀をハヅキの首元に添える。
「勝負ありだな」
―――――――
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これでアイの話が嘘じゃないとハッキリした。今の動きからして、コイツは間違いなく暗殺のプロだ。
「……クッキーに混ぜた毒も効かず、この不意打ちにも反応するなんて……これまでのターゲットで一番手ごわい相手のようですね」
「え!? あのクッキー毒入ってたの!?」
ユニークスキルが毒を除去したのか、『神竜血』が毒を除去したのかわからんな。
「ちょっとアンタ……!」
俺は人差し指を口に当て、アイに『静かに』とジェスチャーする。
「隣でウチのお姫様が寝てるんだ。起こしたくない。――ハヅキ。お前の遊びに付き合ってやる。その代わり、ルールを一つ付けさせてくれ」
「なんでしょうか」
「音を立てるな。なるべくな」
「いいでしょう。元々、音は立ちません」
ハヅキの体から、音が消える。
呼吸音、心音、足音、気配が消える。
「正面戦闘を挑むのは久しぶりです」
「さてと、得物なしにどう戦う?」
「なにを言っているのですか」
ハヅキは右手と左手の裾から、ナイフを二本取り出した。
「まだまだいくらでも」
「暗器術か。しかし、さっきのでわからなかったか? 俺とお前じゃスピードが違い過ぎる」
「みたいですね。ならば――コンバート」
ハヅキが一瞬、青いオーラを纏った。――と思ったら、ハヅキが一瞬で背後に回りやがった。
眼でハヅキを追えていた俺は、体を反転させ抜刀。ナイフを刀で捌く。
速い。さっきと比べ物にならないほど速い。強化魔法でもかけたか? いや、そんなレベルのステータス上昇ではない。
「コンバート」
今度は赤いオーラを一瞬纏った。
ハヅキはナイフを投げた。ナイフは速く、俺とハヅキの距離が近いこともあって避けきれない。思いっきり床を蹴れば回避はできるが、そうすれば大きな音が鳴ってしまう。
俺は仕方なくナイフを肩に受けた。鱗の表面、古くなった角質が剥がれる。
「今の投擲を受けて無傷……なんて硬さ」
「無傷じゃない。角質が落ちた」
渾身の投擲の後の隙を狙い、俺は峰打ちでハヅキのわき腹を打つ。
「コンバート」
ハヅキは一瞬緑のオーラを纏った。
刀はハヅキを捉えた……が、硬い。ハヅキは刀に弾かれ、床を転がった。しかし無傷だ。
「そういうカラクリか」
最初、超スピードで俺の背後を取った後の一撃。アレは非常に軽かった。だがその直後の投擲は俺の鱗の角質を落とすほどの威力だった。
今の俺の一撃、あの超スピードなら躱せたはずなのに、躱せなかった。代わりに強固な防御力を得ていた。
つまり、ステータスに偏りがあるということ。
恐らくは、喰肉黒衣と同じような仕組みだ。
「ステータスの一極化だな」
「正解です」
「素直だな」
「どうせバレているのに隠す意味がありません。私はステータスを一つ選び、それ以外のステータスを全て低下させることでその選んだステータスを大幅に上昇させることができるのです。ユニークスキル『変換』。わかったところでどうにもなりませんよ」
青いオーラを纏ったらスピード特化、赤いオーラならパワー特化、緑のオーラならディフェンス特化って感じか。
「コンバートの割合を増やせば、その鱗にも傷をつけられるでしょう」
割合を増やす、というのはつまりステータスの低下と上昇の割合を増やすってわけだ。リスクは増えるがリターンも増える。
相手のオーラを見て、その逆をつけばいいわけだが、いかんせんコンバートの切り替えが早すぎる。全速で動けばなんとかなるけど、俺が全速で動いたら床がもたないし音でユウキが起きる。
そうだ。こういう時こそリザードマンの体を活かそう。
せっかくリザードマンになったのに、俺はこれまで人間の戦い方ばっかりしていた。ブレスとかそういうのを見落としていた。活かそう。もっとこの体を。良い練習機会だ。
「いくぜ」
俺はまた峰打ちでハヅキを狙う。だが、
「コンバート」
ハヅキは青いオーラを纏い、屈んで俺の薙ぎ払いを躱す。
ここだ。
俺は刀を捨て、両手で屈んでいるハヅキに掴みかかる。
掴みという攻撃に対し、ディフェンス特化は意味がない。パワー特化でカウンターを狙うのもリスクが高い。ここの選択肢は一つ。
音も無く、ハヅキが消える。ハヅキはスピード特化のまま、飛び上って俺の背後を取ったのだろう。
俺はいま、床に体を向け、跪いている。明確な隙だ。
「コンバード」
背後から声。俺の予想が合っていればパワー特化だ。
「ふん!」
俺は床に手をつき、そして、
「なっ!?」
尻尾を動かして、背後のハヅキの腹に尻尾を巻き付けた。珍しくあのハヅキが驚いたような声を上げた。
「キャッチ。そんで」
俺は尻尾から腕にハヅキをパスして、床に組み伏せる。そして尻尾で刀を拾い、手にパスして刀をハヅキの首元に添える。
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