神竜に丸呑みされたオッサン、生きるために竜肉食べてたらリザードマンになってた

空松蓮司

文字の大きさ
上 下
7 / 74
第一章 守護騎士選抜試験

第七話 はじめまして。ザイロス様

しおりを挟む
 馬車はクロッセルに着く。
 馬車から降り、馬の横に行く。

「送ってくださりありがとうございました」

 そう言って俺は執事の人に頭を下げた。

「こちらこそ、危ない所を助けていただきありがとうございました」

 執事の人も頭を下げる。
 執事の人が馬を引っ張り、馬車は街道を行く。去り際、窓越しにユウキに手を振った。ユウキは依然としてクールな表情だが、手を振り返してくれた。

 さてと、懐かしのギルドに向かうか。

 離れていたのはたった1年だけど、あの神竜の中の1年は永遠に感じるぐらい長く感じたからな。すんごい懐かしく感じる。この街もすんごい懐かしい。

 ――と、ギルドの前まで来たわけだが。

「こんなんだったっけ?」

 なんか、ギルド本部の外装が変わっている。
 看板は変わらずだ。だから俺が所属していたギルドに間違いはない。しかし、こんな派手な感じだったか? 壁に金箔塗ってあるし、薄紫のベールが掛かっているし。

 と、とりあえず入ってみるか。

「いらっしゃいま――せ!?」

 本部に入ると、受付嬢のライラちゃんが俺を見て驚いた。懐かしいなぁライラちゃん。眼鏡っ子な美人さんだ。こんなオッサンで役立たずな俺にも丁寧に接してくれた。
 ただ……服装が派手になってるな。受付嬢はギルドに指定された制服を着るわけだが、その制服の露出度が広くなっている。ロングスカートではなくミニスカートで、シャツも胸元が空いていて、へそが出ている。

 メンバーも変だな……昔は男が7で女が3ぐらいの割合だったのに、今は男女比が逆転してる。明らかに女性が多い。しかも美人ばかりだ。

「し、失礼しました。リザードマンの方に会うのは初めてでして……」
「いや、構わないよ」
「あれ?」
「ん? どうしました?」
「すみません。知っている方に声が似ていたもので……」

 凄いな。俺の声を覚えていたのか。

 俺は迷っていた。ダンザ=クローニンと名乗り、事情を説明するかどうか。
 俺は1年前に死んだことになっているだろう。ほぼ間違いなく。
 そんな俺がリザードマンになって帰ってきた……なんて、絶対に馬鹿にされる。
 ザイロスとかは確実に面白がるだろうからな。アイツらにまた舐められるのは癪だ。
 やっぱ黙っとこう。その方が話もスムーズに進みそうだ。

「俺はザクロと言う者です。このギルドに入団したいのですが」
「入団希望ですか。そうなると、入団試験を受けて貰いますけど……」
「入団試験? そんなの昔は……あ、いや。このギルドは入団試験がないと噂で聞きましたが、ガセだったんですかね」
「昔はそうだったのですが、ちょうど半年前にギルドマスターが変わって、方針も変わったのです」
「マスターが変わった!? ギンさん……前のギルドマスターになにかあったんですか!?」
「はい。ギンマスターは老衰で亡くなり、新たにザイロスという方がギルドマスターになりました」

 ザイロスが今のギルドマスター!?
 いや、それよりギンさんが……くそっ! あんなに世話になってたのに死に目に会えないなんて……そりゃもう80超えてたもんな。大往生だ。悪いギンさん。後で絶対墓に手を合わせに行くよ。

「ザイロスさんがマスターになってから、弱い人間は要らないと……特に男性は厳しい基準でテストするようにと言われてまして……」
「男だけ、ね」

 ライラちゃんの言葉の節々には毒を感じる。ライラちゃんも今のギルド方針に納得いかない様子だ。
 この制服もアイツの趣味だな。ギルドを私物化しやがってあの女好きの変態が。
 本部内にザイロスの姿はない。クエストで出てるのか、はたまた女遊びでもしてんのか。

「その、どうしますか? 正直、私はここへ入ることは、おススメできません」
「それを受付嬢に言わせるとはな」
「え?」
「入るよ。入団試験受けさせてくれ」
「……わかりました。ではこちらでお待ちください」

 来客用のテーブルへ案内される。

「ちなみに試験内容って聞いてもいいですか?」
「試験内容はギルドマスター、ザイロスさんが相手を見て決めます。なので、試験内容はザイロスさんがいらっしゃるまでわかりません」

 完全にアイツの気分次第かよ。最悪だな。

「了解です」

 椅子に座り、待つ。
 周囲の視線が痛い。見知った顔もそこそこいるが、誰もまぁ、そりゃ俺だと気づかないよな。
 しかし、変な空気感だ。どこかギクシャクしている。男は隅の方で飲んでるし、女は女でやけに派手な服を着ていて、それでいて顔は暗い。

 こんな空気……ギンさんのギルドじゃない。

「おーい! ザイロス様が帰ったぞぉ~!!」

 聞きなれた、聞きたくない声が響く。
 入り口の方を向く。ザイロスが両脇に美女たちを侍らせてやってきた。中にはカリンとムゥもいる。

「ん~? なんか、爬虫類臭いやつがいるなぁ~?」
「はじめまして。ザイロスさま」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

処理中です...