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第一章 守護騎士選抜試験
第七話 はじめまして。ザイロス様
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馬車はクロッセルに着く。
馬車から降り、馬の横に行く。
「送ってくださりありがとうございました」
そう言って俺は執事の人に頭を下げた。
「こちらこそ、危ない所を助けていただきありがとうございました」
執事の人も頭を下げる。
執事の人が馬を引っ張り、馬車は街道を行く。去り際、窓越しにユウキに手を振った。ユウキは依然としてクールな表情だが、手を振り返してくれた。
さてと、懐かしのギルドに向かうか。
離れていたのはたった1年だけど、あの神竜の中の1年は永遠に感じるぐらい長く感じたからな。すんごい懐かしく感じる。この街もすんごい懐かしい。
――と、ギルドの前まで来たわけだが。
「こんなんだったっけ?」
なんか、ギルド本部の外装が変わっている。
看板は変わらずだ。だから俺が所属していたギルドに間違いはない。しかし、こんな派手な感じだったか? 壁に金箔塗ってあるし、薄紫のベールが掛かっているし。
と、とりあえず入ってみるか。
「いらっしゃいま――せ!?」
本部に入ると、受付嬢のライラちゃんが俺を見て驚いた。懐かしいなぁライラちゃん。眼鏡っ子な美人さんだ。こんなオッサンで役立たずな俺にも丁寧に接してくれた。
ただ……服装が派手になってるな。受付嬢はギルドに指定された制服を着るわけだが、その制服の露出度が広くなっている。ロングスカートではなくミニスカートで、シャツも胸元が空いていて、へそが出ている。
メンバーも変だな……昔は男が7で女が3ぐらいの割合だったのに、今は男女比が逆転してる。明らかに女性が多い。しかも美人ばかりだ。
「し、失礼しました。リザードマンの方に会うのは初めてでして……」
「いや、構わないよ」
「あれ?」
「ん? どうしました?」
「すみません。知っている方に声が似ていたもので……」
凄いな。俺の声を覚えていたのか。
俺は迷っていた。ダンザ=クローニンと名乗り、事情を説明するかどうか。
俺は1年前に死んだことになっているだろう。ほぼ間違いなく。
そんな俺がリザードマンになって帰ってきた……なんて、絶対に馬鹿にされる。
ザイロスとかは確実に面白がるだろうからな。アイツらにまた舐められるのは癪だ。
やっぱ黙っとこう。その方が話もスムーズに進みそうだ。
「俺はザクロと言う者です。このギルドに入団したいのですが」
「入団希望ですか。そうなると、入団試験を受けて貰いますけど……」
「入団試験? そんなの昔は……あ、いや。このギルドは入団試験がないと噂で聞きましたが、ガセだったんですかね」
「昔はそうだったのですが、ちょうど半年前にギルドマスターが変わって、方針も変わったのです」
「マスターが変わった!? ギンさん……前のギルドマスターになにかあったんですか!?」
「はい。ギンマスターは老衰で亡くなり、新たにザイロスという方がギルドマスターになりました」
ザイロスが今のギルドマスター!?
いや、それよりギンさんが……くそっ! あんなに世話になってたのに死に目に会えないなんて……そりゃもう80超えてたもんな。大往生だ。悪いギンさん。後で絶対墓に手を合わせに行くよ。
「ザイロスさんがマスターになってから、弱い人間は要らないと……特に男性は厳しい基準でテストするようにと言われてまして……」
「男だけ、ね」
ライラちゃんの言葉の節々には毒を感じる。ライラちゃんも今のギルド方針に納得いかない様子だ。
この制服もアイツの趣味だな。ギルドを私物化しやがってあの女好きの変態が。
本部内にザイロスの姿はない。クエストで出てるのか、はたまた女遊びでもしてんのか。
「その、どうしますか? 正直、私はここへ入ることは、おススメできません」
「それを受付嬢に言わせるとはな」
「え?」
「入るよ。入団試験受けさせてくれ」
「……わかりました。ではこちらでお待ちください」
来客用のテーブルへ案内される。
「ちなみに試験内容って聞いてもいいですか?」
「試験内容はギルドマスター、ザイロスさんが相手を見て決めます。なので、試験内容はザイロスさんがいらっしゃるまでわかりません」
完全にアイツの気分次第かよ。最悪だな。
「了解です」
椅子に座り、待つ。
周囲の視線が痛い。見知った顔もそこそこいるが、誰もまぁ、そりゃ俺だと気づかないよな。
しかし、変な空気感だ。どこかギクシャクしている。男は隅の方で飲んでるし、女は女でやけに派手な服を着ていて、それでいて顔は暗い。
こんな空気……ギンさんのギルドじゃない。
「おーい! ザイロス様が帰ったぞぉ~!!」
聞きなれた、聞きたくない声が響く。
入り口の方を向く。ザイロスが両脇に美女たちを侍らせてやってきた。中にはカリンとムゥもいる。
「ん~? なんか、爬虫類臭いやつがいるなぁ~?」
「はじめまして。ザイロスさま」
馬車から降り、馬の横に行く。
「送ってくださりありがとうございました」
そう言って俺は執事の人に頭を下げた。
「こちらこそ、危ない所を助けていただきありがとうございました」
執事の人も頭を下げる。
執事の人が馬を引っ張り、馬車は街道を行く。去り際、窓越しにユウキに手を振った。ユウキは依然としてクールな表情だが、手を振り返してくれた。
さてと、懐かしのギルドに向かうか。
離れていたのはたった1年だけど、あの神竜の中の1年は永遠に感じるぐらい長く感じたからな。すんごい懐かしく感じる。この街もすんごい懐かしい。
――と、ギルドの前まで来たわけだが。
「こんなんだったっけ?」
なんか、ギルド本部の外装が変わっている。
看板は変わらずだ。だから俺が所属していたギルドに間違いはない。しかし、こんな派手な感じだったか? 壁に金箔塗ってあるし、薄紫のベールが掛かっているし。
と、とりあえず入ってみるか。
「いらっしゃいま――せ!?」
本部に入ると、受付嬢のライラちゃんが俺を見て驚いた。懐かしいなぁライラちゃん。眼鏡っ子な美人さんだ。こんなオッサンで役立たずな俺にも丁寧に接してくれた。
ただ……服装が派手になってるな。受付嬢はギルドに指定された制服を着るわけだが、その制服の露出度が広くなっている。ロングスカートではなくミニスカートで、シャツも胸元が空いていて、へそが出ている。
メンバーも変だな……昔は男が7で女が3ぐらいの割合だったのに、今は男女比が逆転してる。明らかに女性が多い。しかも美人ばかりだ。
「し、失礼しました。リザードマンの方に会うのは初めてでして……」
「いや、構わないよ」
「あれ?」
「ん? どうしました?」
「すみません。知っている方に声が似ていたもので……」
凄いな。俺の声を覚えていたのか。
俺は迷っていた。ダンザ=クローニンと名乗り、事情を説明するかどうか。
俺は1年前に死んだことになっているだろう。ほぼ間違いなく。
そんな俺がリザードマンになって帰ってきた……なんて、絶対に馬鹿にされる。
ザイロスとかは確実に面白がるだろうからな。アイツらにまた舐められるのは癪だ。
やっぱ黙っとこう。その方が話もスムーズに進みそうだ。
「俺はザクロと言う者です。このギルドに入団したいのですが」
「入団希望ですか。そうなると、入団試験を受けて貰いますけど……」
「入団試験? そんなの昔は……あ、いや。このギルドは入団試験がないと噂で聞きましたが、ガセだったんですかね」
「昔はそうだったのですが、ちょうど半年前にギルドマスターが変わって、方針も変わったのです」
「マスターが変わった!? ギンさん……前のギルドマスターになにかあったんですか!?」
「はい。ギンマスターは老衰で亡くなり、新たにザイロスという方がギルドマスターになりました」
ザイロスが今のギルドマスター!?
いや、それよりギンさんが……くそっ! あんなに世話になってたのに死に目に会えないなんて……そりゃもう80超えてたもんな。大往生だ。悪いギンさん。後で絶対墓に手を合わせに行くよ。
「ザイロスさんがマスターになってから、弱い人間は要らないと……特に男性は厳しい基準でテストするようにと言われてまして……」
「男だけ、ね」
ライラちゃんの言葉の節々には毒を感じる。ライラちゃんも今のギルド方針に納得いかない様子だ。
この制服もアイツの趣味だな。ギルドを私物化しやがってあの女好きの変態が。
本部内にザイロスの姿はない。クエストで出てるのか、はたまた女遊びでもしてんのか。
「その、どうしますか? 正直、私はここへ入ることは、おススメできません」
「それを受付嬢に言わせるとはな」
「え?」
「入るよ。入団試験受けさせてくれ」
「……わかりました。ではこちらでお待ちください」
来客用のテーブルへ案内される。
「ちなみに試験内容って聞いてもいいですか?」
「試験内容はギルドマスター、ザイロスさんが相手を見て決めます。なので、試験内容はザイロスさんがいらっしゃるまでわかりません」
完全にアイツの気分次第かよ。最悪だな。
「了解です」
椅子に座り、待つ。
周囲の視線が痛い。見知った顔もそこそこいるが、誰もまぁ、そりゃ俺だと気づかないよな。
しかし、変な空気感だ。どこかギクシャクしている。男は隅の方で飲んでるし、女は女でやけに派手な服を着ていて、それでいて顔は暗い。
こんな空気……ギンさんのギルドじゃない。
「おーい! ザイロス様が帰ったぞぉ~!!」
聞きなれた、聞きたくない声が響く。
入り口の方を向く。ザイロスが両脇に美女たちを侍らせてやってきた。中にはカリンとムゥもいる。
「ん~? なんか、爬虫類臭いやつがいるなぁ~?」
「はじめまして。ザイロスさま」
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