12 / 14
第12話 ワクワクさせる女
しおりを挟む
樹海に入って最初に出会ったのは意思を持って動く大木、樹人間だ。
大木の枝や根で攻撃してくる魔物でとにかく手数が多い。
「せいっ! せいっ! せーいっ!!」
しかしその手数の多い樹人間の攻撃を盾役のビビアンが大盾で全て弾く。
「ふん!」
弾かれ、弛んだ枝をロアンが斬っていく。
「ロアン、危ない!」
地中からロアンの背後に根を伸ばし、ロアンの背を狙う樹人間。
クレアはその根を投げナイフで迎撃する。
「気を付けなさいって!」
「ふん、お前が援護せずとも反応できていたさ」
「なんですとぉ!」
騎士と錬金術師が共闘する時、基本錬金術師は援護に回る。
クレアの場合は投げナイフによる援護だ。
「いったー! エマ、手首怪我した! 治して!」
「はいはい」
エマは粉末状にしたヒールポーションをビビアンの手首に投げる。粉末を浴びたビビアンの手首はダメージを治していった。
エマは多種多様な錬金液(錬金術で作り上げた薬液)を使用し、味方を治癒することを得意とする錬金術師だ。
「樹人間の急所の毒は除草剤の役割を持つウィードキラー・リキッド」
シグレットはバッグの中から緑色の液体が入った瓶を出し、クロボシに渡す。
クロボシは瓶の中の液体を矢尻に浸し、樹人間に毒矢を撃った。
毒矢を撃たれた樹人間は明らかに動きを悪くする。その隙に駆け出したロアンが樹人間を両断する。
クレアは武器の投擲による援護を得意とし、
エマはポーションによる治癒、
シグレットは毒による相手の弱体化や破壊を得意とする。
3人それぞれタイプが違う援護の形だ。
「みんなお疲れ様」
シグレットは拍手する。
「え? 私たち、めちゃくちゃコンビネーション良くない!?」
クレアが目を輝かせて言う。
「そうね。はじめてにしては中々良かったかも。役割がハッキリ別れてるからかな」
エマも同意する。
「……毒の錬成が得意な錬金術師と弓の名手のコンビ、抜群の相性だな」
ロアンがシグレットとクロボシの連携を称賛する。
「あはは、元銀級に褒められるなんて嬉しいね」
と笑顔で言いつつ、心の内では、
(ふん、まぁ動きは悪くなかったな。だがそれだけでクレアに相応しいとは言い切れない)
シグレットは常にロアンの動きをチェックし、品定めしていた。
戦闘に関しては今のところ、文句のつけようがなさそうだ。
それから何体もの魔物を相手にしつつ、コンビネーションを高めたパーティは樹海の中にある野原にて一息つく。
「そろそろ岩人形の生息地だ。ここで一度休憩しよう」
シグレットが提案する。
「ロアン君、水汲みを手伝ってくれないかな?」
「わかった」
シグレットはロアンを連れて、森の中の川へ向かった。
その背をエマは目で追い、
「クレア、2人の後をつけるよ」
「え? なんで?」
「面白そうだから」
「えー、疲れたから休みたい……」
乗り気じゃないクレアをエマが引っ張って連れていく。
---
川沿い。
水筒に水を汲むロアンとシグレット。
2人を木影から覗き見るクレアとエマ。
「率直に聞くよ、ロアン君」
「む?」
エマは耳を尖らせる。
シグレットは笑顔を剥がし、真剣な顔をする。
「クレアのこと、一人の女性としてどう評価している?」
自分の話題が出てきたことで、乗り気じゃなかったクレアも耳を研ぎ澄まし始めた。
「……女性として、か」
クレアはドキドキと胸を鳴らし、ロアンの答えを待つ。
ロアンは「ふむ」と一息ついて、
「チビ、色気ゼロ、短気暴力娘」
シグレットとクレアの額にピシッと血管が浮かぶ。
「あとはあれだ……」
お、さすがになにか良いこと言うかな? とクレアは胸を躍らせる。
「発情期スケベ」
そこまでロアンが口にしたところでクレアは「あの野郎……」と飛び出そうとするが、エマが「どーどー」とクレアを抱きとめる。
「まったく君はなにもわかっていない……!」
シグレットが怒りを露わにする。
「クレアほど魅力のある女性はいないだろう!」
「ほう? ではどのあたりが魅力的か教えていただこうか」
「まずご飯を食べる時に、リスみたいに頬いっぱいに食べ物を詰める姿が可愛いだろうが!」
「……アレか。共に食事している時にやられると恥ずかしいだけだな」
「どんな人間が相手だろうと物怖じしないタフな精神力! 尊敬に値する!」
「少しは躊躇いを覚えてほしいものだな、誰彼構わずドロップキックするのはどうかと思うぞ」
「武器の錬成能力は他を寄せ付けない、錬金術師として卓越した技術を持っている!」
「武器以外はまるで駄目だがな」
シグレットの誉め言葉を全て打ち返すロアン。
言い淀んだシグレットはロアンを指さす。
「ならばなぜ君はクレアと組んだんだ! ただの成り行きか?」
クレアも気になる質問だった。
ただの成り行きと言えば成り行き。お互いパートナーから見放され、余り者同士組んだに過ぎない。例えロアンが成り行きと答えても責めることはできない……。
「ふん、どうせ本心では誰でもいいんだろう?」
シグレットは視線を尖らせる。
「最初こそは成り行きだ。だが……」
ロアンは小さく笑い、
「もし、学園の全錬金術師の中から自由に1人を選べと言われても、俺はクレア=シーフィアを選ぶだろう。アイツほど……なにをしでかすかワクワクさせる女はいない」
ロアンの、真っすぐな言葉。嘘や冗談ではないと、声色でわかる。
クレアはロアンを直視できず、つい顔を下げてしまう。
「ま、アイツほどなにをやらかすか不安な女もいないがな」
(その余計な一言を我慢できんのか、お前はぁ~!!)
クレアは草陰から殺気をロアンの背中に送る。
「話は以上かな?」
シグレットはロアンの迫力を前に、言葉を止めてしまった。
――その時だった。
「ガアアアアアアアアアアアアアァァァァッッ!!!!!!!」
けたたましい魔獣の叫び声が4人の耳を貫いた。
「この声……!?」
「野原の方ね」
クレアとエマは思わず立ち上がる。
ロアンとシグレットは2人の姿を発見する。
「く、クレア!?」
「あっ、しまった……!」
「やれやれ、趣味の悪い」
「ごめんなさい。でも今はそれどころじゃない。早くビビアンとクロのところへ戻ろう。あの2人が待機している辺りから聞こえている気がする」
「ああ、そしてこの鳴き声聞き覚えがある……」
ロアンは目を細め、
「岩人形だ」
―――――――
面白かったらお気に入り登録&ハートの付与お願いします!
大木の枝や根で攻撃してくる魔物でとにかく手数が多い。
「せいっ! せいっ! せーいっ!!」
しかしその手数の多い樹人間の攻撃を盾役のビビアンが大盾で全て弾く。
「ふん!」
弾かれ、弛んだ枝をロアンが斬っていく。
「ロアン、危ない!」
地中からロアンの背後に根を伸ばし、ロアンの背を狙う樹人間。
クレアはその根を投げナイフで迎撃する。
「気を付けなさいって!」
「ふん、お前が援護せずとも反応できていたさ」
「なんですとぉ!」
騎士と錬金術師が共闘する時、基本錬金術師は援護に回る。
クレアの場合は投げナイフによる援護だ。
「いったー! エマ、手首怪我した! 治して!」
「はいはい」
エマは粉末状にしたヒールポーションをビビアンの手首に投げる。粉末を浴びたビビアンの手首はダメージを治していった。
エマは多種多様な錬金液(錬金術で作り上げた薬液)を使用し、味方を治癒することを得意とする錬金術師だ。
「樹人間の急所の毒は除草剤の役割を持つウィードキラー・リキッド」
シグレットはバッグの中から緑色の液体が入った瓶を出し、クロボシに渡す。
クロボシは瓶の中の液体を矢尻に浸し、樹人間に毒矢を撃った。
毒矢を撃たれた樹人間は明らかに動きを悪くする。その隙に駆け出したロアンが樹人間を両断する。
クレアは武器の投擲による援護を得意とし、
エマはポーションによる治癒、
シグレットは毒による相手の弱体化や破壊を得意とする。
3人それぞれタイプが違う援護の形だ。
「みんなお疲れ様」
シグレットは拍手する。
「え? 私たち、めちゃくちゃコンビネーション良くない!?」
クレアが目を輝かせて言う。
「そうね。はじめてにしては中々良かったかも。役割がハッキリ別れてるからかな」
エマも同意する。
「……毒の錬成が得意な錬金術師と弓の名手のコンビ、抜群の相性だな」
ロアンがシグレットとクロボシの連携を称賛する。
「あはは、元銀級に褒められるなんて嬉しいね」
と笑顔で言いつつ、心の内では、
(ふん、まぁ動きは悪くなかったな。だがそれだけでクレアに相応しいとは言い切れない)
シグレットは常にロアンの動きをチェックし、品定めしていた。
戦闘に関しては今のところ、文句のつけようがなさそうだ。
それから何体もの魔物を相手にしつつ、コンビネーションを高めたパーティは樹海の中にある野原にて一息つく。
「そろそろ岩人形の生息地だ。ここで一度休憩しよう」
シグレットが提案する。
「ロアン君、水汲みを手伝ってくれないかな?」
「わかった」
シグレットはロアンを連れて、森の中の川へ向かった。
その背をエマは目で追い、
「クレア、2人の後をつけるよ」
「え? なんで?」
「面白そうだから」
「えー、疲れたから休みたい……」
乗り気じゃないクレアをエマが引っ張って連れていく。
---
川沿い。
水筒に水を汲むロアンとシグレット。
2人を木影から覗き見るクレアとエマ。
「率直に聞くよ、ロアン君」
「む?」
エマは耳を尖らせる。
シグレットは笑顔を剥がし、真剣な顔をする。
「クレアのこと、一人の女性としてどう評価している?」
自分の話題が出てきたことで、乗り気じゃなかったクレアも耳を研ぎ澄まし始めた。
「……女性として、か」
クレアはドキドキと胸を鳴らし、ロアンの答えを待つ。
ロアンは「ふむ」と一息ついて、
「チビ、色気ゼロ、短気暴力娘」
シグレットとクレアの額にピシッと血管が浮かぶ。
「あとはあれだ……」
お、さすがになにか良いこと言うかな? とクレアは胸を躍らせる。
「発情期スケベ」
そこまでロアンが口にしたところでクレアは「あの野郎……」と飛び出そうとするが、エマが「どーどー」とクレアを抱きとめる。
「まったく君はなにもわかっていない……!」
シグレットが怒りを露わにする。
「クレアほど魅力のある女性はいないだろう!」
「ほう? ではどのあたりが魅力的か教えていただこうか」
「まずご飯を食べる時に、リスみたいに頬いっぱいに食べ物を詰める姿が可愛いだろうが!」
「……アレか。共に食事している時にやられると恥ずかしいだけだな」
「どんな人間が相手だろうと物怖じしないタフな精神力! 尊敬に値する!」
「少しは躊躇いを覚えてほしいものだな、誰彼構わずドロップキックするのはどうかと思うぞ」
「武器の錬成能力は他を寄せ付けない、錬金術師として卓越した技術を持っている!」
「武器以外はまるで駄目だがな」
シグレットの誉め言葉を全て打ち返すロアン。
言い淀んだシグレットはロアンを指さす。
「ならばなぜ君はクレアと組んだんだ! ただの成り行きか?」
クレアも気になる質問だった。
ただの成り行きと言えば成り行き。お互いパートナーから見放され、余り者同士組んだに過ぎない。例えロアンが成り行きと答えても責めることはできない……。
「ふん、どうせ本心では誰でもいいんだろう?」
シグレットは視線を尖らせる。
「最初こそは成り行きだ。だが……」
ロアンは小さく笑い、
「もし、学園の全錬金術師の中から自由に1人を選べと言われても、俺はクレア=シーフィアを選ぶだろう。アイツほど……なにをしでかすかワクワクさせる女はいない」
ロアンの、真っすぐな言葉。嘘や冗談ではないと、声色でわかる。
クレアはロアンを直視できず、つい顔を下げてしまう。
「ま、アイツほどなにをやらかすか不安な女もいないがな」
(その余計な一言を我慢できんのか、お前はぁ~!!)
クレアは草陰から殺気をロアンの背中に送る。
「話は以上かな?」
シグレットはロアンの迫力を前に、言葉を止めてしまった。
――その時だった。
「ガアアアアアアアアアアアアアァァァァッッ!!!!!!!」
けたたましい魔獣の叫び声が4人の耳を貫いた。
「この声……!?」
「野原の方ね」
クレアとエマは思わず立ち上がる。
ロアンとシグレットは2人の姿を発見する。
「く、クレア!?」
「あっ、しまった……!」
「やれやれ、趣味の悪い」
「ごめんなさい。でも今はそれどころじゃない。早くビビアンとクロのところへ戻ろう。あの2人が待機している辺りから聞こえている気がする」
「ああ、そしてこの鳴き声聞き覚えがある……」
ロアンは目を細め、
「岩人形だ」
―――――――
面白かったらお気に入り登録&ハートの付与お願いします!
1
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」
行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。
相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。
でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!
それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。
え、「何もしなくていい」?!
じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!
こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?
どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。
二人が歩み寄る日は、来るのか。
得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?
意外とお似合いなのかもしれません。笑
錬金術師の成り上がり!? 家族と絶縁したら、天才伯爵令息に溺愛されました
悠十
恋愛
旧題:『ハーレム主人公』とサヨナラしました
家族にとって『どうでも良い子』。それが、レナだった。
いつしか家族からの愛情を諦めたレナの心の支えは、幼馴染の男の子だった。しかし、彼の周りには女の子が侍るようになった。
そして彼は言った。
「みんな好きだよ」
特別が欲しいレナは、彼から離れることを選択した。
だけど、彼が何故か追って来て……
「なんで俺から離れるんだ⁉」
「私にハーレムは無理!」
初恋くらい、奇麗に終わらせたいんだけどな⁉
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◎関連作品
『野良錬金術師ネモの異世界転生放浪録(旧題:野良錬金術師は頭のネジを投げ捨てた!)』
『野良錬金術師ネモの異世界学園騒動録』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◎お知らせ
2022/01/13
いつも閲覧いただき、ありがとうございます。
今回、『ハーレム主人公とサヨナラしました』の書籍化のお話しを頂き、現在調整中です。
また、その調整の中で、改題を検討中です。
改題をする事になりましたら、旧題も載せておきますが、少し混乱をさせてしまうかもしれません。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
2022/01/20
現在書籍化の話が進んでいるため、該当部分を1月27日を目途に引き下げることになりました。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
2022/01/27
書籍化調整にあたり、改題をいたしました。
また、設定の一部変更がありましたことをお知らせいたします。
イヴァン(男爵令息→伯爵令息)
書籍化予定の該当部分の小説を引き下げをいたしました。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
2022/02/28
書籍の販売が開始されました。
お手に取ってご覧いただけましたら幸いです。
婚約破棄されて幽閉された毒王子に嫁ぐことになりました。
氷雨そら
恋愛
聖女としての力を王国のために全て捧げたミシェルは、王太子から婚約破棄を言い渡される。
そして、告げられる第一王子との婚約。
いつも祈りを捧げていた祭壇の奥。立ち入りを禁止されていたその場所に、長い階段は存在した。
その奥には、豪華な部屋と生気を感じられない黒い瞳の第一王子。そして、毒の香り。
力のほとんどを失ったお人好しで世間知らずな聖女と、呪われた力のせいで幽閉されている第一王子が出会い、幸せを見つけていく物語。
前半重め。もちろん溺愛。最終的にはハッピーエンドの予定です。
小説家になろう様にも投稿しています。
美形王子様が私を離してくれません!?虐げられた伯爵令嬢が前世の知識を使ってみんなを幸せにしようとしたら、溺愛の沼に嵌りました
葵 遥菜
恋愛
道端で急に前世を思い出した私はアイリーン・グレン。
前世は両親を亡くして児童養護施設で育った。だから、今世はたとえ伯爵家の本邸から距離のある「離れ」に住んでいても、両親が揃っていて、綺麗なお姉様もいてとっても幸せ!
だけど……そのぬりかべ、もとい厚化粧はなんですか? せっかくの美貌が台無しです。前世美容部員の名にかけて、そのぬりかべ、破壊させていただきます!
「女の子たちが幸せに笑ってくれるのが私の一番の幸せなの!」
ーーすると、家族が円満になっちゃった!? 美形王子様が迫ってきた!?
私はただ、この世界のすべての女性を幸せにしたかっただけなのにーー!
※約六万字で完結するので、長編というより中編です。
※他サイトにも投稿しています。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】
清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。
そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。
「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」
こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。
けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。
「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」
夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。
「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」
彼女には、まったく通用しなかった。
「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」
「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」
「い、いや。そうではなく……」
呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。
──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ!
と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。
※他サイトにも掲載中。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
モブの私がなぜかヒロインを押し退けて王太子殿下に選ばれました
みゅー
恋愛
その国では婚約者候補を集め、その中から王太子殿下が自分の婚約者を選ぶ。
ケイトは自分がそんな乙女ゲームの世界に、転生してしまったことを知った。
だが、ケイトはそのゲームには登場しておらず、気にせずそのままその世界で自分の身の丈にあった普通の生活をするつもりでいた。だが、ある日宮廷から使者が訪れ、婚約者候補となってしまい……
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる