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第一章
先人者
しおりを挟む味噌汁はお代わりあるからね
ゆきという名の女が、貞夫と娘のうめに茶碗に盛ったご飯を渡しながら話かけてきた。
おまえさん 貞夫さんっていうのかい。 一体どこから来たんだい?
不思議だねえ
はい、これもね、どうぞ。
何にもないけどね。
焼いた目刺しも貞夫に渡した。
ご飯は白米で大盛りで渡された茶碗を持って貞夫は食べ始めた。
味噌汁は、豆腐とねぎが具として入っており、一口啜った貞夫は懐かしい味と香りに包まれた。
美味い これ美味いです。
そうかい?
こんなもんしかないけどそりゃ良かったよ。
無農薬は間違いないから、野菜でも米でも豆腐でも不味いわけがない。
うん、本当に美味しいな。
この味噌汁の味噌は手作りなんですか?
味噌は買ってきたもんだよ
そこの通りの向こう側に味噌も売って商いしてる店屋があるんだよ。
じゃあ、米もネギとか野菜も買ってきてるんですね?
当たり前じゃないか
米屋もあるし、野菜は人力に積んで売りにきてくれるからね
あんたほんとにどこから来たんだい?
そんなこと聞くなんてさ。
あ、いやすみません。
ところで旦那さんとかはいないのですか?
旦那かい?
居たんだけどさ、
この子が三つになった時に、何処かにいっちまって、そのままだよ。
戻って来ないままだよ。
そ、そうなんですか。
余計なこと聞いてしまってごめんなさい。
謝らなくてもいいさ
もう2年も経つからさ、忘れてしまったよ。
あ、でもそういやあ、うちの旦那も最初出会った時に、変な人だなあと思ったよ。
なんだかあんたに似て、変なこといっぱい聞かれたよ。
突然出会って、夫婦になって子供も授かったってのに、また突然居なくなっちまった。
ほんとにおかしな人だったよ。
その旦那さんは、どこの人なんですか?
江戸ですか?
それがさ、生まれは江戸じゃなくて上方だって言ってたんだよ。
なんでそんなこと聞くんだい?
あ、いやなんとなく興味を持ったというか、意味はないです。
喋ってないで早く食べておくれよ
商売の準備しなきゃいけないから。
定男は急かされながらも味わい深く江戸庶民の朝ごはんをいただいた。
どうやら夢ではなくて、何がどうなったのかはわからないけど、まさに現実のようである。
考えてみても今も定男には理解を超えていた。
さて、これからどうすれば良いのか、全く途方に暮れる定男であった。
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