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告白
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「ナナさんのことが好きなんだけど、つきあってくれない?」
それは学校にいるときに起こった突然の出来事。告白というものを人生初にされた瞬間だった。元々委員会が一緒で一緒に仕事をすることが多かったので、よく話す男子だったとは思う。男子とは比較的話さないナナが、一番話していた男子が初野壱弥《いちや》だった。中学校3年間は同じクラスだったので、何となく気ごころしれている仲だった。母の事故の時にも、積極的に励まそうとしてくれた同級生の一人だった。しかし、男の人として意識はしていなかったので、少し戸惑った。何も心の準備もしていなかったので、初めて彼に対して意識をして視線を合わせた。
「今まで、そういった目で壱弥君のことみていなかったから、ちょっとびっくり」
「少しくらいは意識してくれているかって思っていたのに」
少し照れ笑いの壱弥。いつもこの人は優しい。安心できるタイプだ。
「話しやすい男子で、私が落ち込んでいるときも元気づけてくれたり、委員の仕事を引き受けてくれたり、いつも助かっていたよ」
「好きな人っているのか?」
改めて聞かれると、好きな人いるのかどうかはなはだ疑問だ。樹のことは雰囲気が優し気でいいなと思っていたのは確かだ。
保護者であるエイトの厳しそうな顔が浮かぶ。あの人、恋人できたら紹介しろとかうるさいし。エイトのことは好きといっても、家族として好きなだけ。ムキになって心の中で否定する。
「じゃあ、恋人おためしっていうのは?」
「おためし?」
「友達以上だけど恋人未満として付き合ってよ。気に入ったら恋人に昇格ってこと。俺のこと嫌い?」
「嫌いじゃないけれど……」
「じゃあ決定、嫌ならば友達のままでいよう。そうすればリスクもないし、ね」
エイトみたいな強引さだ。エイトも高校生や大学生の時に恋のひとつくらいあったのかな? 聞いたことないけれど。あの過保護親父は、干渉してきそうだし、この恋はだめだと思う。そんな不安しかよぎらない。
「連絡先ちゃんと交換していなかったよね」
壱弥は意外と積極的で、連絡先を言われるがままに交換してしまう。断るのも変な話だし、戸惑いを隠す。
「今度出かけない?」
「実はさ、男友達ができたら、保護者で父親代わりの人に会わせろって言われていて」
「お父さんみたいな漫画家さんだよね」
「お父さんじゃないけれど、お父さんになる予定だった人。お母さんの婚約者でまだ入籍していなかった人が今保護者で同居していて、って壱弥君は知っているよね」
「厳しそうだな。緊張するけど、一度会うよ」
「ちょっと見た目怖そうだけど、多分良い人だと思うから」
見た目怖そうというところに、壱弥は腰が引けていたように思うが、それでも、今度の日曜日に会いに来るということになって、エイトに報告することに。
「なぬ? 男友達だとぉ?」
やっぱり、エイトはちょっと不機嫌だ。やっぱり娘を嫁にやりたくない心理なのだろうか?
「わかった、一度会わせろ。付き合ってるのか?」
腕組みしたエイトはまるで生活指導の教師のように怖い。
「付き合っていないけれど、付き合ってほしいって言われて……」
ひいっ。こっち見て睨んでる。睨みを利かせるエイトは普通に怖い人という感じだ。知らない人だったら絶対関わりたくない怖い人だ。背筋が凍った。
「友達お試し期間ってことかぁ。こりゃ、品定めのいい機会だ。腕がなるな」
指をぼきぼき鳴らすエイトは今からケンカでもするかのような闘争心を見せる。
「本当にケンカするみたいな怖い顔しないでよ。壱弥君は良い人なんだから」
「おまえ、そいつが好きなのか?」
「まだ、わからないけれど、嫌いではないっていうか」
「遊ばれるようなことがあったら、チーム半妖でお礼参りに行ってやるから、安心しろ」
「お礼参りなんて、安心できません」
なんで、こう心配性かつヤンキー男みたいな人が保護者になっちゃったの? 本当のお父さんはもっとまともで堅実な感じだったと思う。記憶は小さいころしかないからそんなに鮮明ではないけれど。
母が生きていたらこの人が若いお父さんになったのだろうか。父というよりは兄に近いけれど、夫婦のラブラブな空気を思春期の女子には寛容に許容できる気がしない。今はエイトに相手がいないけれど、それが母親だったら、吐き気がしそうだ。
母も40歳だったので、高齢出産とはなるが、子供を生もうと思えば生むことは可能な年齢だ。0歳の赤ちゃんが生まれて、妹か弟ができたら、複雑だったと思う。父親が違う兄弟かぁ。兄弟は欲しかったのだけれど、18歳になって生まれても一緒に遊んだりできないだろうし、むしろ、父親のほうが年が近いなんて。母には生きていてほしかったけれど、やっぱり結婚は反対したかも。母を悲しませちゃったのかな。色々考えてしまう。悪い癖だ。最近不幸続きだったせいかもしれない。
でも、エイトは割と子煩悩そうな気がする。今はお父さんみたいな存在なので、子どもの立場としては、なんとなくそんな気がする。でも、それとこれは別次元の話。エイトの干渉はなかなか厳しそうだ。
それは学校にいるときに起こった突然の出来事。告白というものを人生初にされた瞬間だった。元々委員会が一緒で一緒に仕事をすることが多かったので、よく話す男子だったとは思う。男子とは比較的話さないナナが、一番話していた男子が初野壱弥《いちや》だった。中学校3年間は同じクラスだったので、何となく気ごころしれている仲だった。母の事故の時にも、積極的に励まそうとしてくれた同級生の一人だった。しかし、男の人として意識はしていなかったので、少し戸惑った。何も心の準備もしていなかったので、初めて彼に対して意識をして視線を合わせた。
「今まで、そういった目で壱弥君のことみていなかったから、ちょっとびっくり」
「少しくらいは意識してくれているかって思っていたのに」
少し照れ笑いの壱弥。いつもこの人は優しい。安心できるタイプだ。
「話しやすい男子で、私が落ち込んでいるときも元気づけてくれたり、委員の仕事を引き受けてくれたり、いつも助かっていたよ」
「好きな人っているのか?」
改めて聞かれると、好きな人いるのかどうかはなはだ疑問だ。樹のことは雰囲気が優し気でいいなと思っていたのは確かだ。
保護者であるエイトの厳しそうな顔が浮かぶ。あの人、恋人できたら紹介しろとかうるさいし。エイトのことは好きといっても、家族として好きなだけ。ムキになって心の中で否定する。
「じゃあ、恋人おためしっていうのは?」
「おためし?」
「友達以上だけど恋人未満として付き合ってよ。気に入ったら恋人に昇格ってこと。俺のこと嫌い?」
「嫌いじゃないけれど……」
「じゃあ決定、嫌ならば友達のままでいよう。そうすればリスクもないし、ね」
エイトみたいな強引さだ。エイトも高校生や大学生の時に恋のひとつくらいあったのかな? 聞いたことないけれど。あの過保護親父は、干渉してきそうだし、この恋はだめだと思う。そんな不安しかよぎらない。
「連絡先ちゃんと交換していなかったよね」
壱弥は意外と積極的で、連絡先を言われるがままに交換してしまう。断るのも変な話だし、戸惑いを隠す。
「今度出かけない?」
「実はさ、男友達ができたら、保護者で父親代わりの人に会わせろって言われていて」
「お父さんみたいな漫画家さんだよね」
「お父さんじゃないけれど、お父さんになる予定だった人。お母さんの婚約者でまだ入籍していなかった人が今保護者で同居していて、って壱弥君は知っているよね」
「厳しそうだな。緊張するけど、一度会うよ」
「ちょっと見た目怖そうだけど、多分良い人だと思うから」
見た目怖そうというところに、壱弥は腰が引けていたように思うが、それでも、今度の日曜日に会いに来るということになって、エイトに報告することに。
「なぬ? 男友達だとぉ?」
やっぱり、エイトはちょっと不機嫌だ。やっぱり娘を嫁にやりたくない心理なのだろうか?
「わかった、一度会わせろ。付き合ってるのか?」
腕組みしたエイトはまるで生活指導の教師のように怖い。
「付き合っていないけれど、付き合ってほしいって言われて……」
ひいっ。こっち見て睨んでる。睨みを利かせるエイトは普通に怖い人という感じだ。知らない人だったら絶対関わりたくない怖い人だ。背筋が凍った。
「友達お試し期間ってことかぁ。こりゃ、品定めのいい機会だ。腕がなるな」
指をぼきぼき鳴らすエイトは今からケンカでもするかのような闘争心を見せる。
「本当にケンカするみたいな怖い顔しないでよ。壱弥君は良い人なんだから」
「おまえ、そいつが好きなのか?」
「まだ、わからないけれど、嫌いではないっていうか」
「遊ばれるようなことがあったら、チーム半妖でお礼参りに行ってやるから、安心しろ」
「お礼参りなんて、安心できません」
なんで、こう心配性かつヤンキー男みたいな人が保護者になっちゃったの? 本当のお父さんはもっとまともで堅実な感じだったと思う。記憶は小さいころしかないからそんなに鮮明ではないけれど。
母が生きていたらこの人が若いお父さんになったのだろうか。父というよりは兄に近いけれど、夫婦のラブラブな空気を思春期の女子には寛容に許容できる気がしない。今はエイトに相手がいないけれど、それが母親だったら、吐き気がしそうだ。
母も40歳だったので、高齢出産とはなるが、子供を生もうと思えば生むことは可能な年齢だ。0歳の赤ちゃんが生まれて、妹か弟ができたら、複雑だったと思う。父親が違う兄弟かぁ。兄弟は欲しかったのだけれど、18歳になって生まれても一緒に遊んだりできないだろうし、むしろ、父親のほうが年が近いなんて。母には生きていてほしかったけれど、やっぱり結婚は反対したかも。母を悲しませちゃったのかな。色々考えてしまう。悪い癖だ。最近不幸続きだったせいかもしれない。
でも、エイトは割と子煩悩そうな気がする。今はお父さんみたいな存在なので、子どもの立場としては、なんとなくそんな気がする。でも、それとこれは別次元の話。エイトの干渉はなかなか厳しそうだ。
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